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【論文581】森が炭素を吸う速さの頂点と、ためる量の頂点は、別の林齢にある

要旨

森は二酸化炭素を吸うので、「森を守る」と「森を育てる」は同じ方向の話だと思われやすい。本稿が示すのは、森が炭素を吸う速さ、平均の吸う速さ、ためる量の三つは、それぞれ別の林齢で頂点を迎え、若い森ほど吸い、古い森ほどためていることである。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、吸う速さの頂点は $\mathbf{27.465307}$ 年である。閉じた式 $\ln3/k$ と数値が一致し、そのとき $\mathbf{8.8889}$ m$^3$/ha/年、二酸化炭素にして $\mathbf{8.4741}$ t/ha/年である(第2節)。

第二に、平均の吸う速さの頂点は $\mathbf{47.595342}$ 年である。そこで吸う速さと平均が $\mathbf{6.474337}$ m$^3$/ha/年で一致し、二酸化炭素にして $\mathbf{6.1722}$ t/ha/年である(第3節)。

第三に、ためる量は増え続ける。$120$ 年で上限の $\mathbf{0.975513}$、$20$ 年の森の $\mathbf{5.841932}$ 倍である。そのとき吸う速さは頂点の $\mathbf{0.054640}$ 倍しかない(第4節)。

第四に、これが本稿の芯である。三つの頂点が三つの林齢にある。吸う速さは $27$ 年余り、平均の吸う速さは $48$ 年足らず、ためる量は際限なく後ろにある。若い森ほど吸い、古い森ほどためている(第4節)。

第五に、平均の頂点は平らである。伐る齢を $40$ 年にしても $\mathbf{0.981505}$、$55$ 年でも $\mathbf{0.987201}$ しか落ちない。ところが同じ $60$ 年で、ためる量は上限の $\mathbf{0.751789}$、吸う速さは頂点の $\mathbf{0.506284}$ と大きく動く(第5節)。

第六に、分離子は、流れか、ためか、である。平均の頂点で伐って植え替えると、吸う速さの平均は最大になるが、ためる量の平均は上限の $\mathbf{0.254899}$ に落ちる(第5節)。

キーワード:森林の炭素、チャップマン=リチャーズの成長曲線、連年成長、平均成長、林齢。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。チャップマン=リチャーズの成長曲線も、連年成長と平均成長の関係も標準的である。成長曲線は代表値である。上限 $500$ m$^3$/ha、速さの定数 $0.04$/年、指数 $3$ と置いた。樹種と土地で大きく変わる。炭素への換算は代表値である。材の密度 $0.4$ t/m$^3$、枝葉と根を足す $1.3$ 倍、炭素の割合 $0.5$ と置いた。伐った木材にたまる炭素を入れていない。伐った材が家や家具として長く残れば、その分の炭素はたまったままである。本稿は森の中の蓄積だけを見る。土の炭素・枯死・間伐・災害を入れていない。林業の政策を勧めない。「伐るべきか守るべきか」には答えない。示すのは、何を最大にするかで答えが変わることである。既刊との関係:論文547 は、発注量の最適の周りが平らなので、最適を厳密に守る必要がないと示した。平均成長の頂点も同じく平らである。本稿はそれに、平らな量のそばで別の量が大きく動くことを並べる。論文386 は、「溶けにくい」が溶解度と溶ける速さの二つの量を指していると示した。「森がよく吸う」も、速さとためる量の二つを指している。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。三つの頂点は一つの成長曲線から出る同根だが、測っている量が違う。加えたのは、吸う速さの頂点を閉じた式 $\ln3/k$ と数値で確かめたこと、平均の頂点で吸う速さと平均が一致することを確かめたこと、ためる量が増え続けるあいだに吸う速さが落ちていくことを並べたこと、伐って植え替える一回りの平均の蓄積を閉じた式と数値積分で出したこと、分離子を流れとためる量の区別に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:林分の材積(ためる量)を、チャップマン=リチャーズの成長曲線

$$V(t)=V_{\max}\left(1-e^{-kt}\right)^{3}$$

で表す。吸う速さは連年成長 $V'(t)$、伐って植え替える一回りの平均の吸う速さは平均成長 $V(t)/t$ である。材積は、材の密度・枝葉と根・炭素の割合・$44/12$ を掛けて二酸化炭素に直す。

観察 1.1 森は二酸化炭素を吸う。そのため「森を守る」と「森を育てる」は、同じ方向の話だと思われやすい。だが「よく吸う森」と「たくさんためている森」が同じ森とは限らない。

問い:森が炭素を吸う速さ、平均の吸う速さ、ためる量は、それぞれ何年で頂点を迎えるか。

2. 吸う速さの頂点

計算 2.1:上限 $500$ m$^3$/ha、$k=0.04$/年で、吸う速さ $V'(t)$ の頂点を出した。閉じた式 $\ln3/k=\mathbf{27.465307}$ 年と、数値で探した頂点が $10^{-4}$ 年で一致した。

観察 2.2 吸う速さは若い森で最も大きい。頂点で $\mathbf{8.8889}$ m$^3$/ha/年、二酸化炭素にして $\mathbf{8.4741}$ t/ha/年である。植えてから三十年足らずの、まだ上限の半分にも届かない森が、いちばん速く吸う。

3. 平均の吸う速さの頂点

計算 3.1:平均成長 $V(t)/t$ の頂点を、$V'(t) t=V(t)$ を解いて出した。頂点は $\mathbf{47.595342}$ 年で、そこで吸う速さと平均は $\mathbf{6.474337}$ m$^3$/ha/年で一致した($10^{-9}$)。

観察 3.2 平均の頂点は、吸う速さの頂点より二十年遅い。二酸化炭素にして $\mathbf{6.1722}$ t/ha/年である。伐って植え替えを繰り返すなら、この齢で伐るのが一年あたりにならして最も多く吸う。

4. ためる量

計算 4.1:林齢ごとに、ためる量と吸う速さを並べた。

林齢 蓄積(m$^3$/ha) 上限に対して 吸う速さ(m$^3$/ha/年) 頂点に対して
$20$ 年 $\mathbf{83.4924}$ $\mathbf{0.166985}$ $\mathbf{8.1752}$ $\mathbf{0.919714}$
$40$ 年 $\mathbf{254.1837}$ $\mathbf{0.508367}$ $\mathbf{7.7161}$ $\mathbf{0.868063}$
$60$ 年 $\mathbf{375.8944}$ $\mathbf{0.751789}$ $\mathbf{4.5003}$ $\mathbf{0.506284}$
$80$ 年 $\mathbf{441.3152}$ $\mathbf{0.882630}$ $\mathbf{2.2504}$ $\mathbf{0.253171}$
$120$ 年 $\mathbf{487.7567}$ $\mathbf{0.975513}$ $\mathbf{0.4857}$ $\mathbf{0.054640}$
$200$ 年 $\mathbf{499.4970}$ $\mathbf{0.998994}$ $\mathbf{0.0201}$ $\mathbf{0.002263}$

観察 4.2 これが本稿の芯である。吸う速さは $27$ 年余り、平均の吸う速さは $48$ 年足らず、ためる量は際限なく後ろで頂点を迎える。三つの頂点が三つの林齢にある。若い森ほど吸い、古い森ほどためている。

観察 4.3 古い森は、ほとんど吸わずに、たくさんためている。$120$ 年の森は $20$ 年の森の $\mathbf{5.841932}$ 倍ためているが、吸う速さは頂点の $0.054640$ 倍しかない。「吸っていない森は役に立たない」とも、「ためている森が最もよい」とも言えない。測っている量が違う。

5. 伐って植え替えると

計算 5.1:平均の頂点 $47.595342$ 年で伐って植え替える一回りの、平均の蓄積を出した。閉じた式と数値積分が $10^{-6}$ で一致し、$\mathbf{127.4494}$ m$^3$/ha、上限の $\mathbf{0.254899}$ である。その一回りの平均の吸う速さは $\mathbf{6.4743}$ m$^3$/ha/年である。

観察 5.2 吸う速さの平均を最大にすると、ためる量の平均は四分の一になる。年を経た森は、吸う速さはほぼ $0$ だが、ためる量は上限に近い。伐って植え替えれば吸う速さを保てるが、森の中にためておける量は上限の四分の一ほどに下がる。

計算 5.3:伐る齢を平均の頂点の前後にずらした。

伐る齢 平均の吸う速さ(頂点に対して)
$35$ 年 $\mathbf{0.943602}$
$40$ 年 $\mathbf{0.981505}$
$55$ 年 $\mathbf{0.987201}$
$60$ 年 $\mathbf{0.967652}$

観察 5.4 平均の頂点は平らである。伐る齢を $40$ 年から $55$ 年まで動かしても、平均の吸う速さは頂点の $98$ パーセントを割らない。ところが同じ $60$ 年で、ためる量は上限の $0.751789$、吸う速さ(連年)は頂点の $0.506284$ と、別の量は大きく動いている。平らな量だけを見ていると、動いている量を見落とす。

6. 分離子

観察 6.1 分離子は、流れか、ためか、である。吸う速さは成長曲線の傾き(流れ)、ためる量は曲線の高さ(ため)である。流れは曲線の途中で頂点を迎え、ためは最後まで増える。どちらを最大にするかで、よい林齢の答えが変わる。

観察 6.2 論文547 と同じく、最適の周りは平らである。あちらでは、発注量を最適の $2$ 倍にしても総費用は $1.25$ 倍にしかならなかった。こちらでも、伐る齢を前後にずらしても平均の吸う速さはほとんど落ちない。本稿が加えるのは、その平らな量のそばで、ためる量と連年の吸う速さが大きく動いていることである。

観察 6.3 論文386 と同じ型である。あちらでは、「溶けにくい」が溶解度と溶ける速さの二つの量を指していた。こちらでは、「森がよく吸う」が、吸う速さとためる量の二つを指している。

観察 6.4 論文300 の基準では同根だが、量が違う。三つの頂点は、どれも一つの成長曲線から出る。違うのは、曲線の傾きを見るか、傾きの平均を見るか、高さを見るかである。

観察 6.5 言わないこと。林業の政策を勧めない。伐った木材にたまる炭素も入れていないので、「伐るべきか守るべきか」には答えられない。示したのは、何を最大にするかで答えが変わるということである。

7. 点呼と結び

  1. 吸う速さの頂点 $\mathbf{27.465307}$ 年(計算 2.1):閉じた式 $\ln3/k$ と一致。
  2. 頂点で $\mathbf{8.4741}$ t-CO$_2$/ha/年(観察 2.2):若い森がいちばん速い。
  3. 平均の頂点 $\mathbf{47.595342}$ 年(計算 3.1):吸う速さと平均が $\mathbf{6.474337}$ で一致。
  4. $120$ 年で上限の $\mathbf{0.975513}$(計算 4.1):ためる量は増え続ける。
  5. 三つの頂点が三つの林齢(観察 4.2):本稿の芯。
  6. $120$ 年の森は $\mathbf{5.841932}$ 倍ため、吸う速さは $\mathbf{0.054640}$ 倍(観察 4.3):測る量が違う。
  7. 一回りの平均の蓄積は上限の $\mathbf{0.254899}$(計算 5.1):吸う速さを保つ代わり。
  8. $40$ 年で $\mathbf{0.981505}$、$55$ 年で $\mathbf{0.987201}$(計算 5.3):平均の頂点は平ら。
  9. 分離子は流れかためか(観察 6.1):傾きか高さか。
  10. 論文547 と同じく平ら(観察 6.2):そのそばで別の量が動く。

結び:森は二酸化炭素を吸うので、「森を守る」と「森を育てる」は同じ方向の話だと思われやすい。ところが吸う速さ、平均の吸う速さ、ためる量は、それぞれ別の林齢で頂点を迎える。チャップマン=リチャーズの成長で、吸う速さの頂点は閉じた式 $\ln3/k$ のとおり $\mathbf{27.465307}$ 年、そこで二酸化炭素にして $\mathbf{8.4741}$ t/ha/年である。平均の吸う速さの頂点は $\mathbf{47.595342}$ 年で、そこで吸う速さと平均が $\mathbf{6.474337}$ m$^3$/ha/年で一致する。ためる量は $120$ 年でも上限の $\mathbf{0.975513}$ へと増え続け、$20$ 年の森の $\mathbf{5.841932}$ 倍になるが、そのとき吸う速さは頂点の $\mathbf{0.054640}$ 倍しかない。若い森ほど吸い、古い森ほどためている。平均の頂点で伐って植え替えれば吸う速さの平均は最大になるが、森の中にためておける量の平均は上限の $\mathbf{0.254899}$ に落ちる。平均の頂点は平らで、$40$ 年でも $\mathbf{0.981505}$、$55$ 年でも $\mathbf{0.987201}$ しか落ちないが、同じ $60$ 年でためる量は上限の $\mathbf{0.751789}$、吸う速さは頂点の $\mathbf{0.506284}$ と大きく動く。分離子は、流れか、ためか、である。吸う速さは成長曲線の傾き、ためる量は高さで、流れは途中で頂点を迎え、ためは最後まで増える。論文300 の基準で、三つの頂点は一つの成長曲線から出る同根だが、測っている量が違う。既刊との位置、論文547 と同じく最適の周りは平らで、本稿はそのそばで別の量が大きく動くことを並べた。論文386 の「溶けにくい」が二つの量を指したように、「森がよく吸う」も二つの量を指している。正直に言えば、成長曲線と炭素への換算は代表値で、伐った木材にたまる炭素も、土の炭素も、枯死も間伐も災害も入れていない。そして林業の政策は勧めない。示したのは、何を最大にするかで、よい林齢の答えが変わるということである。

参考文献

  1. Davis, L. S., Johnson, K. N., Bettinger, P., & Howard, T. E. (2001). Forest Management: To Sustain Ecological, Economic, and Social Values (4th ed.). McGraw-Hill.
  2. Pretzsch, H. (2009). Forest Dynamics, Growth and Yield. Springer.
  3. Richards, F. J. (1959). A Flexible Growth Function for Empirical Use. Journal of Experimental Botany.
  4. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  5. 山岸勇輝 (2026). 『溶解度は一つも動いていないのに、溶ける速さが $1000$ 倍になる』[論文386]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22699119
  6. 山岸勇輝 (2026). 『最適の周りが平らなので、最適を厳密に守る必要がない』[論文547]. Zenodo. 10.5281/zenodo.23014175

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「森が炭素を吸う速さの頂点と、ためる量の頂点は、別の林齢にある」[論文581]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014343

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 森が炭素を吸う速さの頂点と、ためる量の頂点は、別の林齢にある [論文581]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/581 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014343

Yamagishi, Y. (2026). The Age at Which a Forest Takes Up Carbon Fastest Is Not the Age at Which It Holds the Most [Paper 581]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/581; DOI: 10.5281/zenodo.23014343

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