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【論文587】天窓が壁の窓の二倍明るいのは、曇りの空の話である

要旨

天窓は同じ広さの壁の窓より明るい、と言われる。本稿が示すのは、その「二倍」は空全体から光が来る曇りの日の話で、直射日光では勝ち負けが太陽高度 $45$ 度を境に入れ替わることである。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、一様に明るい空では、天窓は壁の窓のちょうど $\mathbf{2.000000}$ 倍を受ける。窓の面に届く光は、空の輝度に、窓から見える空の広がりを傾きで重みづけたもの(投影立体角)を掛けたもので、水平な窓で $\pi$、鉛直な窓で $\pi/2$ である(第2節)。

第二に、CIE 標準曇天空では $\mathbf{2.524124}$ 倍になる。天頂が地平の $3$ 倍明るく、天窓はその明るい天頂を正面に見るからである(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。直射日光では、壁の窓と天窓の比は太陽高度 $h$ の余接 $\cot h$ で決まり、$45$ 度で等しくなる。太陽が $45$ 度より低ければ、太陽の方を向いた壁の窓が勝つ(第3節)。

第四に、北緯 $35.7$ 度の南中で比べると、季節で勝ち負けが入れ替わる。冬至(高度 $30.86$ 度)は南の壁の窓が天窓の $\mathbf{1.673529}$ 倍、春分・秋分($54.30$ 度)は天窓が $\mathbf{1.391647}$ 倍、夏至($77.74$ 度)は天窓が $\mathbf{4.601847}$ 倍である(第3節)。

第五に、南中高度が $45$ 度を下回るのは、太陽の赤緯が $-9.30$ 度より南のときである。そのあいだ、晴れた昼には壁の窓が勝つ(第3節)。

第六に、分離子は、光が空全体から来るか、一つの方向から来るかである。同じ余弦の射影が、曇りの日には天窓を、冬の晴れた昼には壁の窓を勝たせる(第4節)。

キーワード:採光、天窓、投影立体角、CIE 標準曇天空、太陽高度。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。面に届く光の余弦則、一様な空と CIE 標準曇天空の輝度の分布、太陽の南中高度は、すべて標準的である。部屋を設計しない。窓の透過率、部屋の中の反射、窓の奥行きや庇、周りの建物は入れない。窓の面に届く光だけを比べる。部屋の中の机の上の明るさ(昼光率)は計算しない。地面の照り返しを入れない。壁の窓は空だけから光を受けるとした。照り返しを入れると壁の窓の値は上がる。直射日光は直射だけを比べる。晴れた空の散乱光は入れない。太陽は南中で、壁の窓は真南を向くとした。日付を言わない。季節は太陽の赤緯($\pm23.44$ 度と $0$ 度)で言う。既刊との関係:論文214 は、レンズは明るくできるが、輝度は受動的な光学系で増やせないことを示した。窓も輝度を増やさない。窓の面の明るさは、空の輝度と、窓から見える空の広がりと傾きで決まる。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。曇天の「天窓が $2$ 倍から $2.524124$ 倍」と直射の「$\cot h$」は、どちらも窓の面への余弦の射影という一つの根から出る。加えたのは、一様な空と曇天で、天窓と壁の窓の照度を数値積分と閉じた式の二つの道で出したこと、直射日光で勝ち負けが $45$ 度で入れ替わることを示したこと、北緯 $35.7$ 度の三つの南中で比を出したこと、分離子を光の来る方向の広がりに置いたことである。

1. 記法と問い

設定:空の高度 $\gamma$・方位 $\phi$ の方向の輝度を $L$ とする。水平な天窓の面と、真南を向いた鉛直な壁の窓の面に空から届く照度は

$$E_{\mathrm{h}}=\int L\sin\gamma\,d\Omega,\qquad
E_{\mathrm{v}}=\int L\cos\gamma\cos\phi\,d\Omega$$

である(壁の窓は前の半分の空だけを見る。$\phi$ は窓の向きから測る)。

観察 1.1 天窓は同じ広さの壁の窓より明るい、二倍明るい、と言われる。上を向いた窓は空を広く見る。それがいつでも二倍なのか、空の様子で変わるのかは、別の問いである。

問い:天窓は、いつでも壁の窓の二倍の光を受けるのか。

2. 曇りの空

計算 2.1:一様な空(輝度 $1$)と、CIE 標準曇天空(天頂の輝度 $1$、輝度 $L=(1+2\sin\gamma)/3$)で、二つの窓の照度を数値積分と閉じた式で出した。

空 天窓 壁の窓 天窓÷壁の窓
一様 $3.141592654$($\pi$) $1.570796327$($\pi/2$) $\mathbf{2.000000}$
CIE 曇天 $2.443460953$($7\pi/9$) $0.968043220$ $\mathbf{2.524124}$

曇天の壁の窓の閉じた式は $(2/3)(\pi/4+2/3)$ で、数値積分との差は四つの照度とも $6.6\times10^{-11}$ 以下である。

観察 2.2 一様な空の $2$ 倍は、幾何そのものである。水平な窓は空の半球全体を、傾きの余弦で重みづけて見る。その広がりが $\pi$ である。鉛直な窓は前の半分の空しか見ず、しかも頭上の空を浅い角度で見るので $\pi/2$ になる。空の輝度は窓で増えない。窓が受ける光は、窓から見える空の広がりで決まる。

観察 2.3 曇天では天窓の勝ちがさらに大きい。CIE 標準曇天空では天頂が地平の $\mathbf{3.000000}$ 倍明るい。天窓はその明るい天頂を正面に見て、壁の窓は暗い地平を正面に見る。比は $2$ から $2.524124$ に上がり、壁の窓は天窓の $0.396177$ 倍しか受けない。

3. 直射日光

計算 3.1:太陽が高度 $h$ にあり、壁の窓がその方位を向いているとき、直射日光の照度は天窓で $\sin h$、壁の窓で $\cos h$ に比例する。比は $\cot h$ である。北緯 $35.7$ 度の南中で、

日 南中高度 壁の窓÷天窓 天窓÷壁の窓
冬至 $30.86$ 度 $\mathbf{1.673529}$ $0.597540$
春分・秋分 $54.30$ 度 $0.718573$ $\mathbf{1.391647}$
夏至 $77.74$ 度 $0.217304$ $\mathbf{4.601847}$

観察 3.2 これが本稿の芯である。直射日光では、勝ち負けは太陽高度 $45$ 度で入れ替わる。高度 $44.9$ 度では壁の窓が、$45.1$ 度では天窓が勝つ、冬至の南中では、南の壁の窓が天窓の $1.673529$ 倍を受ける。「天窓は二倍明るい」は、晴れた冬の昼には逆になる。

観察 3.3 北緯 $35.7$ 度で南中高度が $45$ 度を下回るのは、太陽の赤緯が $-9.30$ 度より南のときである。そのあいだ、晴れた昼には南の壁の窓が勝つ、夏至には逆に、天窓が壁の窓の $4.601847$ 倍の直射を受ける。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、光が空全体から来るか、一つの方向から来るかである。空全体から来るなら、窓から見える空の広さが効き、天窓が $2$ 倍から $2.524124$ 倍勝つ。一つの方向から来るなら、その方向と窓の向きの角度だけが効き、$45$ 度で入れ替わる。同じ窓が、空の様子で勝ったり負けたりする。

観察 4.2 論文214 と並べる。あちらは、レンズは明るくできるが、輝度は受動的な光学系で増やせないことを示した。窓も同じで、輝度を増やさない。変えられるのは、どれだけの空を、どの傾きで見るかだけである。

観察 4.3 論文300 の基準では同根である。曇天の比も直射の比も、窓の面への余弦の射影から出る。違うのは、光が来る方向の広がりだけである。

観察 4.4 言わないこと。部屋を設計しない。窓の透過率・部屋の中の反射・周りの建物・地面の照り返しは入れていない。示したのは、窓の面に空から届く光の比が、光の来る方向の広がりで決まり、直射では $45$ 度で入れ替わることである。

5. 点呼と結び

  1. 一様な空で天窓は $\mathbf{2.000000}$ 倍(計算 2.1):$\pi$ と $\pi/2$。
  2. $2$ 倍は幾何そのもの(観察 2.2):窓から見える空の広がり。
  3. CIE 曇天で $\mathbf{2.524124}$ 倍(計算 2.1):天頂が地平の $\mathbf{3.000000}$ 倍明るい。
  4. 数値積分と閉じた式の差は $6.6\times10^{-11}$ 以下(計算 2.1):二つの道。
  5. 直射では比は $\cot h$(計算 3.1):$45$ 度で等しい。
  6. 冬至の南中で壁の窓が $\mathbf{1.673529}$ 倍(観察 3.2):本稿の芯。
  7. 春分・秋分は天窓が $\mathbf{1.391647}$ 倍(計算 3.1):高度 $54.30$ 度。
  8. 夏至は天窓が $\mathbf{4.601847}$ 倍(観察 3.3):高度 $77.74$ 度。
  9. 赤緯 $-9.30$ 度より南で壁の窓が勝つ(観察 3.3):晴れた昼に。
  10. 分離子は光の来る方向の広がり(観察 4.1):空全体か一方向か。

結び:天窓は同じ広さの壁の窓より明るい、二倍明るい、と言われる。それは曇りの空の話である。一様に明るい空の下で、水平な天窓は壁の窓のちょうど $\mathbf{2.000000}$ 倍を受ける。窓から見える空の広がりが、水平な窓で $\pi$、鉛直な窓で $\pi/2$ だからで、輝度は窓で増えない。天頂が地平の $3$ 倍明るい CIE 標準曇天空なら $\mathbf{2.524124}$ 倍になる。直射日光では、比は太陽高度の余接で決まり、$45$ 度で入れ替わる。北緯 $35.7$ 度の冬至の南中(高度 $30.86$ 度)には、南の壁の窓が天窓の $\mathbf{1.673529}$ 倍を受け、春分・秋分には天窓が $\mathbf{1.391647}$ 倍、夏至には $\mathbf{4.601847}$ 倍を受ける。太陽の赤緯が $-9.30$ 度より南のあいだ、晴れた昼には壁の窓が勝つ。分離子は、光が空全体から来るか、一つの方向から来るかである。同じ余弦の射影が、曇りの日には天窓を、冬の晴れた昼には壁の窓を勝たせる。論文300 の基準で、二つは同根である。既刊との位置、論文214 が示したとおり輝度は増やせないので、窓が変えられるのは、どれだけの空を、どの傾きで見るかだけである。正直に言えば、比べたのは窓の面に空から直接届く光だけで、窓の透過率・部屋の中の反射・周りの建物・地面の照り返し・晴れた空の散乱光は入れていない。部屋の中の明るさは計算しておらず、部屋も設計しない。

参考文献

  1. CIE (2003). Spatial Distribution of Daylight: CIE Standard General Sky. Commission Internationale de l’Éclairage.
  2. Duffie, J. A., & Beckman, W. A. (2013). Solar Engineering of Thermal Processes (4th ed.). Wiley.
  3. Moon, P., & Spencer, D. E. (1942). Illumination from a Non-Uniform Sky. Illuminating Engineering.
  4. 山岸勇輝 (2026). 『レンズは明るくできるが、明るさは増やせない』[論文214]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22119392
  5. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「天窓が壁の窓の二倍明るいのは、曇りの空の話である」[論文587]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014373

YOI 587第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 天窓が壁の窓の二倍明るいのは、曇りの空の話である [論文587]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/587 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014373

Yamagishi, Y. (2026). A Skylight Is Twice as Bright as a Wall Window Only Under a Cloudy Sky [Paper 587]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/587; DOI: 10.5281/zenodo.23014373

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