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【論文595】露出の三角形は三角形ではない

要旨

写真の露出は、絞り・シャッター速度・ISO 感度を頂点とする「三角形」で説明されることが多い。本稿が示すのは、光の量を決めるのは絞りとシャッター速度の二つだけで、ISO 感度は光を一つも増やさず、集めた信号を増幅するだけであり、暗い写真のざらつきを決めているのは増幅ではなく、集めた光子の数であることである。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、画素が集める光の量は、二つの設定だけで決まる。集める電子の数はシャッターを開けている時間に比例し、F 値の二乗に反比例する。ISO 感度はこの数を変えない(第2節)。

第二に、これが本稿の芯である。同じ明るさの写真を三通りに撮ると、SN 比は光の量で決まる。ISO $100$・$1/100$ 秒で $\mathbf{70.457486}$、ISO $1600$・$1/1600$ 秒で $\mathbf{17.565607}$、ISO $100$・$1/1600$ 秒で撮って $16$ 倍に持ち上げると $\mathbf{16.739737}$ である(第3節)。

第三に、光を減らした損と、感度を上げた得は、桁が違う。光を $16$ 分の $1$ にした損は $\mathbf{4.011105}$ 倍(光子の雑音だけなら $\sqrt{16}=4$)、感度を上げた得は読み出し雑音の差だけの $\mathbf{1.049336}$ 倍である(第3節)。

第四に、光を集めれば SN 比はその平方根で上がる。光を $2$ 倍集めると $\mathbf{1.416748}$ 倍、$4$ 倍で $\mathbf{2.005383}$ 倍になる(第3節)。

第五に、光子と読み出し雑音を乱数で作っても同じである。光子をポアソン分布、読み出し雑音を正規分布で $200000$ 個作って推定した SN 比は、式と相対差 $1.2\times10^{-3}$ 以内で一致する(第4節)。

第六に、分離子は、その設定が集める光子の数を変えるか、集めたあとの増幅を変えるかである。絞りとシャッター速度は前者、ISO 感度は後者である(第5節)。

キーワード:露出、ISO 感度、ショット雑音、SN 比、写真。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。光子の雑音(ショット雑音)、読み出し雑音、それらを合わせた SN 比の式は、すべて標準的である。一つの画素の、中間の明るさだけを見る。数は代表値である。基準の露出で $5000$ 電子、読み出し雑音は ISO $100$ で $6$ 電子、ISO $1600$ で $2$ 電子とした(感度を上げると入力に換算した読み出し雑音が下がる撮像素子を想定した)。暗電流、画素ごとのばらつき、量子化、ノイズを消す処理は入れない。被写界深度と動きのぶれは扱わない。絞りとシャッター速度にはもう一つずつ働きがあるが、本稿は光の量だけを見る。機材を評価しない。既刊との関係:論文312 は、長く測れば下がる雑音と下がらない雑音があることを示し、射程注記で増幅器の雑音指数を扱わないとした。本稿のシャッター速度は光子の雑音を下げる側の「長く測る」で、ISO 感度は 312 が空けた増幅器の席に当たる。論文358 は、被写界深度の深さが測定値ではなく約束であることを示し、射程注記で機材を評価しないとした。本稿は同じカメラの、別の設定を見る。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。絞りとシャッター速度は同じ量(集める光子の数)を動かす同根で、ISO 感度はそれとは別根である。加えたのは、同じ明るさの写真を三通りに撮って SN 比を並べたこと、光を減らした損と感度を上げた得を分けて数に出したこと、乱数で作った標本で式を確かめたこと、分離子を「光子の数か増幅か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:一つの画素が集める電子の数 $N$ は、シャッターを開けている時間 $t$ に比例し、F 値 $N_f$ の二乗に反比例する。光子の数はばらつき、その標準偏差は $\sqrt N$ である。読み出しの回路が足す雑音を $\sigma_r$ 電子とすると、

$$N\propto\frac{t}{N_f^{\,2}},\qquad \mathrm{SN}=\frac{N}{\sqrt{N+\sigma_r^{\,2}}}$$

である。ISO 感度は、この $N$ を何倍の数値として出力するかを決める増幅で、$N$ そのものは変えない。

観察 1.1 写真の露出は、絞り・シャッター速度・ISO 感度の「三角形」で説明されることが多い。三つのどれかを動かせば、残りで釣り合いを取れる、という見方である。三つが同じ種類の量かどうかは、別の問いである。

問い:暗い場面で写真がざらつくのは、感度を上げたからなのか、光が足りないからなのか。

2. 集める光

観察 2.1 画素が集める光の量は、絞りとシャッター速度の二つだけで決まる。絞りを開ければ入る光が増え、シャッターを長く開ければ集める時間が延びる。ISO 感度は、集め終わった電子の数を何倍に数えるかを決めるだけで、画素に入る光子を一つも増やさない。

3. 三つの撮り方

計算 3.1:同じ明るさの写真を三通りに撮った(中間の明るさの画素・基準の露出で $5000$ 電子)。

撮り方 集めた電子 読み出し雑音 SN 比
A:ISO $100$・$1/100$ 秒 $5000.0$ $6.0$ $\mathbf{70.457486}$
B:ISO $1600$・$1/1600$ 秒 $312.5$ $2.0$ $\mathbf{17.565607}$
C:ISO $100$・$1/1600$ 秒を $16$ 倍に $312.5$ $6.0$ $\mathbf{16.739737}$

光を $16$ 分の $1$ にした損は A÷B $=\mathbf{4.011105}$(光子の雑音だけなら $\sqrt{16}=4$)、感度を上げた得は B÷C $=\mathbf{1.049336}$ である。ISO $100$ の基準から光を $2$ 倍集めると SN 比は $\mathbf{1.416748}$ 倍、$4$ 倍で $\mathbf{2.005383}$ 倍になる。

観察 3.2 これが本稿の芯である。B と C は同じだけ光を集めていて、SN 比は $17.565607$ と $16.739737$ でほとんど変わらない。A と B は同じ明るさの写真なのに、SN 比が $4$ 倍違う。ざらつきを決めているのは、写真の明るさでも感度でもなく、集めた光子の数である。感度を上げた得は、読み出しの回路の雑音が下がった分の $1.049336$ 倍だけである。

4. 乱数で確かめる

計算 4.1:式とは別の道として、光子の数をポアソン分布、読み出し雑音を正規分布の乱数で $200000$ 個作り、平均と標準偏差から SN 比を推定した(乱数の種は固定)。B で $17.546460$(式 $17.565607$)、C で $16.719687$(式 $16.739737$)、相対差は $1.2\times10^{-3}$ 以内である。

観察 4.2 式は、光子が一つずつばらつくことだけから出ている。乱数で作った標本も、光子の数と読み出し雑音だけで同じ SN 比になる。増幅は、どちらのばらつきにも同じ倍率を掛けるので、比を変えない。

5. 分離子

観察 5.1 分離子は、その設定が集める光子の数を変えるか、集めたあとの増幅を変えるかである。絞りとシャッター速度は光子の数を変える。ISO 感度は増幅を変える。三角形の三つの頂点は同じ種類ではない。二つが光を集め、一つが数え方を変える。

観察 5.2 論文312 の席に座る。あちらは、長く測れば下がる雑音と下がらない雑音があることを示し、射程注記で増幅器の雑音指数を扱わないとした。シャッター速度は、光子の雑音を下げる「長く測る」側にあり、ISO 感度は 312 が空けた増幅器の側にある。

観察 5.3 論文358 と並べる。あちらは、被写界深度の深さが約束であることを示した。本稿は同じカメラの、光の量の側を見た。絞りには、被写界深度と光の量という二つの働きがある。

観察 5.4 論文300 の基準では、絞りとシャッター速度は同根、ISO 感度は別根である。絞りとシャッター速度は同じ量(集める光子の数)を動かす。ISO 感度が動かすのは、別の量(増幅の倍率)である。

観察 5.5 言わないこと。機材を評価しない。数は代表値で、撮像素子によって読み出し雑音の値も感度による下がり方も違う。示したのは、ざらつきを決めるのが集めた光子の数だという式の形である。

6. 点呼と結び

  1. 光の量は絞りとシャッター速度だけで決まる(観察 2.1):ISO 感度は光を増やさない。
  2. ISO $100$・$1/100$ 秒で SN 比 $\mathbf{70.457486}$(計算 3.1):基準。
  3. ISO $1600$・$1/1600$ 秒で $\mathbf{17.565607}$(計算 3.1):同じ明るさの写真。
  4. 光を減らした損は $\mathbf{4.011105}$ 倍(計算 3.1):光子の雑音だけなら $4$。
  5. 感度を上げた得は $\mathbf{1.049336}$ 倍(計算 3.1):読み出し雑音の差だけ。
  6. 持ち上げても $\mathbf{16.739737}$(観察 3.2):本稿の芯。
  7. 光 $2$ 倍で $\mathbf{1.416748}$ 倍、$4$ 倍で $\mathbf{2.005383}$ 倍(計算 3.1):平方根で上がる。
  8. 乱数の標本と式の差は $1.2\times10^{-3}$ 以内(計算 4.1):二つの道。
  9. 論文312 の増幅器の席に座る(観察 5.2):ISO 感度はそこにある。
  10. 分離子は光子の数か増幅か(観察 5.1):三つの頂点は同じ種類ではない。

結び:写真の露出は、絞り・シャッター速度・ISO 感度を頂点とする「三角形」で説明されることが多い。光の量を決めるのは、絞りとシャッター速度の二つだけである。ISO 感度は光を一つも増やさず、集めた信号を増幅するだけである。同じ明るさの写真を ISO $100$・$1/100$ 秒と ISO $1600$・$1/1600$ 秒で撮ると、集めた光は $16$ 分の $1$ になり、SN 比は $\mathbf{70.457486}$ から $\mathbf{17.565607}$ へ $\mathbf{4.011105}$ 分の $1$ に落ちる。同じ $1/1600$ 秒を ISO $100$ で撮って $16$ 倍に持ち上げても $\mathbf{16.739737}$ で、感度を上げた得は $\mathbf{1.049336}$ 倍しかない。光を $2$ 倍集めれば $\mathbf{1.416748}$ 倍、$4$ 倍で $\mathbf{2.005383}$ 倍になり、乱数で作った標本も式と相対差 $1.2\times10^{-3}$ 以内で一致した。分離子は、その設定が集める光子の数を変えるか、集めたあとの増幅を変えるかである。ざらつきを決めているのは感度ではなく、集めた光子の数である。論文300 の基準で、絞りとシャッター速度は同根、ISO 感度は別根である。既刊との位置、論文312 が射程注記で空けていた増幅器の席に ISO 感度が座り、シャッター速度は 312 の「長く測れば下がる雑音」の側に座る。論文358 が見た被写界深度とは、同じ絞りの別の働きである。正直に言えば、一つの画素の中間の明るさだけを見て、数は代表値とし、暗電流、画素ごとのばらつき、量子化、ノイズを消す処理は入れていない。被写界深度と動きのぶれも扱わず、機材も評価しない。

参考文献

  1. Holst, G. C., & Lomheim, T. S. (2011). CMOS/CCD Sensors and Camera Systems (2nd ed.). SPIE Press.
  2. Janesick, J. R. (2001). Scientific Charge-Coupled Devices. SPIE Press.
  3. Ray, S. F. (2002). Applied Photographic Optics (3rd ed.). Focal Press.
  4. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  5. 山岸勇輝 (2026). 『長く測れば下がる雑音と、下がらない雑音がある』[論文312]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22174709
  6. 山岸勇輝 (2026). 『被写界深度の「深さ」は、測定値ではなく約束である』[論文358]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22697216

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「露出の三角形は三角形ではない」[論文595]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014406

YOI 595第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 露出の三角形は三角形ではない:光を集めるのは二つで、ISO 感度は増幅するだけである [論文595]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/595 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014406

Yamagishi, Y. (2026). The Exposure Triangle Is Not a Triangle: Two Settings Gather Light, and ISO Only Amplifies [Paper 595]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/595; DOI: 10.5281/zenodo.23014406

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