要旨
一年で日の入りが最も早いのは、昼が最も短い冬至の日だ、と思われやすい。本稿が示すのは、日時計と時計のずれ(均時差)が、軌道の離心率と黄道の傾きという二つの原因の和であり、冬至のころ一日約 $0.5$ 分ずつ変わるので、日の入りが最も早い日は冬至の半月前に、日の出が最も遅い日は半月後にずれることである。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、均時差には大きさの違う山と谷が二つずつある。離心率 $0.0167$・黄道傾斜 $23.44$ 度で、最大 $\mathbf{16.4187}$ 分、最小 $\mathbf{-14.2455}$ 分、小さな山と谷が $+3.6841$ 分と $-6.5099$ 分で、ゼロは年に四回ある(第2節)。
第二に、均時差は二つの原因の和である。軌道の離心率の分の振幅は $\mathbf{7.6550}$ 分(一次近似の $2e$ で $7.6547$ 分)、黄道の傾きの分の振幅は $\mathbf{9.8664}$ 分(一次近似の $\tan^2(\varepsilon/2)$ で $9.8634$ 分)で、二つの和は全体と $4.1\times10^{-13}$ 分以内で一致する(第2節)。
第三に、原因を一つずつにすると形が変わる。傾きだけなら山と谷は $\pm9.8664$ 分でそろい、ゼロは年四回、離心率だけなら $\pm7.6550$ 分でゼロは年二回である。大きな山と小さな山が交互に並ぶのは、一年と半年の二つの周期が重なるからである(第3節)。
第四に、近日点の向きが $90$ 度ずれると形が変わるが、$180$ 度ずれても変わらない。$90$ 度なら最大 $\mathbf{14.5793}$ 分・最小 $\mathbf{-16.6434}$ 分になる。$180$ 度で変わらないのは、傾きの分が半年周期だからである(第3節)。
第五に、これが本稿の芯である。北緯 $35.7$ 度で、日の入りが最も早い日は冬至の $15.61$ 日前、日の出が最も遅い日は冬至の $16.07$ 日後に来る。冬至の均時差は $+1.6951$ 分で、一日に $\mathbf{0.4975}$ 分ずつ減る。昼の真ん中が毎日遅れていくので、昼が最も短い日と、日の入りが最も早い日がずれる(第4節)。
第六に、分離子は、昼の長さを見るか、昼の真ん中(南中)の時刻も見るかである。昼の長さだけなら冬至が底になる。南中の時刻が動くと、日の出と日の入りの底は別々の日に分かれる(第5節)。
キーワード:均時差、日の入り、冬至、ケプラーの方程式、黄道傾斜。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。均時差、ケプラーの方程式と中心差、黄経から赤経への換算、日の出の方程式は、すべて標準的である。軌道要素は代表値である。離心率 $0.0167$、黄道傾斜 $23.44$ 度、近日点黄経 $282.94$ 度とし、年による変化は入れない。日の出と日の入りは幾何だけで計算する。論文414 と同じく北緯 $35.7$ 度の地方平均時で、大気差と太陽の視半径は入れない。暦の上の日付を言わない。近日点と冬至から数えた日数で言う。暦と時計の歴史は扱わない。既刊との関係:論文414 は、不定時法の一刻が季節で $1.5$ 倍変わることを示し、射程注記で「均時差を入れない(真太陽時と平均太陽時の差は主題ではない」とした)本稿はその席に座り、同じ北緯 $35.7$ 度の日の出の式に均時差を入れる。論文535 は、月の経度秤動を離心率の $2e$ から出した。本稿の均時差の離心率の分も、同じ $2e$(ケプラーの方程式の中心差)から出る。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。月の経度秤動と太陽の均時差という、別々の場所で出会った二つの $2e$ は、中心差という一つの源を持つ。その意味で同根である。加えたのは、均時差を二つの原因に分けてそれぞれの振幅を一次近似と突き合わせたこと、原因を一つずつにしたときと近日点の向きを変えたときの形を並べたこと、日の入りが最も早い日と日の出が最も遅い日を冬至からの日数で出したこと、分離子を「昼の長さか、南中の時刻か」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:太陽の平均黄経を $L$、真の黄経を $\lambda$、赤経を $\alpha$ とする。日時計の時刻(見かけの太陽時)と時計の時刻(平均太陽時)の差、均時差 $E$ は
$$E=(L-\lambda)+(\lambda-\alpha)\approx-2e\sin M+\tan^2\frac{\varepsilon}{2}\,\sin2\lambda$$
で、前の項は軌道が円でないために太陽が黄道の上を一様に進まないこと(離心率 $e$ と平均近点角 $M$)、後の項は黄道が赤道に傾いていること(傾き $\varepsilon$)から出る。
観察 1.1 一年で日の入りが最も早いのは、昼が最も短い冬至の日だ、と思われやすい。昼が最も短いなら、日の入りも最も早いはずだ、という見方である。昼の長さと日の入りの時刻が同じ日に底を打つかは、別の問いである。
問い:日の入りが最も早い日は、冬至の日か。
2. 二つの原因
計算 2.1:離心率 $0.0167$、黄道傾斜 $23.44$ 度、近日点黄経 $282.94$ 度で、ケプラーの方程式を解き、一年を $0.01$ 日刻みで均時差を出した。
| 山と谷(近日点から数えた日) | 均時差 |
|---|---|
| $39.01$ 日 | $\mathbf{-14.2455}$ 分 |
| $130.84$ 日 | $+3.6841$ 分 |
| $203.91$ 日 | $-6.5099$ 分 |
| $303.96$ 日 | $\mathbf{+16.4187}$ 分 |
幅は $30.6642$ 分、ゼロになるのは近日点から $102.28$・$161.00$・$241.12$・$355.95$ 日の年四回である。離心率の分の振幅は $\mathbf{7.6550}$ 分(一次近似 $2e$ で $7.6547$ 分)、傾きの分の振幅は $\mathbf{9.8664}$ 分(一次近似 $\tan^2(\varepsilon/2)$ で $9.8634$ 分)で、二つの分の和と全体の差は $4.1\times10^{-13}$ 分以下だった。
観察 2.2 均時差は二つの原因の和である。離心率の分は、近日点の近くで太陽が速く進むために出る。傾きの分は、黄道の上を一様に進んでも、赤道に写すと進み方がむらになるために出る。どちらも一次近似とよく合い、足すと全体になる。
3. 原因を一つずつにする
計算 3.1:片方の原因を消し、また近日点の向きを変えて、同じ計算をした。
| 場合 | 最大 | 最小 | ゼロの回数 |
|---|---|---|---|
| 二つとも | $+16.4187$ 分 | $-14.2455$ 分 | $4$ |
| 傾きだけ(離心率 $0$) | $+9.8664$ 分 | $-9.8664$ 分 | $4$ |
| 離心率だけ(傾き $0$) | $+7.6550$ 分 | $-7.6550$ 分 | $2$ |
| 近日点の向きが $90$ 度ずれる | $\mathbf{+14.5793}$ 分 | $\mathbf{-16.6434}$ 分 | $4$ |
| 近日点の向きが $180$ 度ずれる | $+16.4187$ 分 | $-14.2455$ 分 | $4$ |
観察 3.2 大きな山と小さな山が交互に並ぶのは、二つの周期が重なるからである。傾きの分は半年周期で山と谷がそろい、離心率の分は一年周期で一つずつである。二つを足すと、山の一つは強め合い、もう一つは打ち消し合う。$+16.4187$ 分と $+3.6841$ 分の差はそこから出る。
観察 3.3 近日点の向きが半周ずれても形は変わらない。傾きの分は半年周期なので、近日点から数えた日の上では、$180$ 度ずらしても同じ形に重なる。$90$ 度ずらすと重なり方が変わり、最大 $14.5793$ 分・最小 $-16.6434$ 分になる。
4. 冬至の前後
計算 4.1:論文414 と同じ北緯 $35.7$ 度で、日の出と日の入りの時刻(地方平均時・幾何だけ)を均時差を入れて出した。冬至(黄経 $270$ 度)は近日点から $352.54$ 日(前の年の側)である。
| 冬至からの日数 | 時刻 | |
|---|---|---|
| 昼が最も短い日 | $+0.00$ 日 | |
| 日の入りが最も早い日 | $-15.61$ 日 | $16.6952$ 時(冬至は $16.7616$ 時) |
| 日の出が最も遅い日 | $+16.07$ 日 | $7.2505$ 時(冬至は $7.1819$ 時) |
最も早い日の入りは冬至より $3.9798$ 分早く、最も遅い日の出は冬至より $4.1116$ 分遅い。冬至の均時差は $+1.6951$ 分で、一日に $\mathbf{0.4975}$ 分ずつ減る。
観察 4.2 これが本稿の芯である。冬至のころ、昼の長さはほとんど変わらないが、均時差が一日約 $0.5$ 分ずつ減るので、時計で見た昼の真ん中(南中)が毎日約 $0.5$ 分ずつ遅れていく。昼の長さの底(冬至)の前では、南中の遅れが日の入りを遅らせる向きに効き、日の入りの底が冬至より前に来る。日の出はその逆で、底が冬至より後に来る。
5. 分離子
観察 5.1 分離子は、昼の長さを見るか、昼の真ん中の時刻も見るかである。昼の長さだけなら冬至が底になる。南中の時刻が動くと、日の出と日の入りの底は冬至をはさんで別々の日に分かれる。「冬至は日の入りが最も早い」は、南中の時刻が動かない場合についてだけ正しい。
観察 5.2 論文414 の席に座る。あちらは、不定時法の一刻が季節で $1.5$ 倍変わることを北緯 $35.7$ 度の日の出の式で示し、射程注記で均時差を入れないとした。本稿は同じ式に均時差を入れ、日の出と日の入りの底が冬至から半月ずつずれることを示した。
観察 5.3 論文535 と、論文300 の意味で同根である。あちらは、月の経度秤動を離心率の $2e$ から出した。本稿の均時差の離心率の分も、同じ $2e$ から出る。月の見える面積と、日時計と時計のずれという、別々の場所で出会った二つの $2e$ が、ケプラーの方程式の中心差という一つの源を持つ。
観察 5.4 言わないこと。暦の上の日付は言わず、時計の歴史も扱わない。大気差と太陽の視半径を入れていないので、実際の日の出と日の入りの時刻はこれとずれる。示したのは、日の出と日の入りの底が冬至から半月ずつずれるという形と、その理由である。
6. 点呼と結び
- 均時差は最大 $\mathbf{16.4187}$ 分・最小 $\mathbf{-14.2455}$ 分(計算 2.1):ゼロは年四回。
- 離心率の分の振幅 $\mathbf{7.6550}$ 分(計算 2.1):一次近似 $2e$ の $7.6547$ 分。
- 傾きの分の振幅 $\mathbf{9.8664}$ 分(計算 2.1):一次近似の $9.8634$ 分。
- 二つの和と全体の差は $4.1\times10^{-13}$ 分以下(計算 2.1):二つの原因の和。
- 傾きだけならゼロ四回、離心率だけならゼロ二回(計算 3.1):半年と一年の周期。
- 近日点が $90$ 度ずれると $\mathbf{14.5793}$ 分と $\mathbf{-16.6434}$ 分(観察 3.3):$180$ 度では変わらない。
- 日の入りが最も早い日は冬至の $15.61$ 日前(観察 4.2):本稿の芯。
- 日の出が最も遅い日は冬至の $16.07$ 日後(計算 4.1):底が分かれる。
- 冬至の均時差は一日 $\mathbf{0.4975}$ 分ずつ減る(計算 4.1):南中が毎日遅れる。
- 分離子は昼の長さか、南中の時刻か(観察 5.1):論文535 の $2e$ と同根。
結び:一年で日の入りが最も早いのは、昼が最も短い冬至の日だ、と思われやすい。日時計と時計のずれ(均時差)は、二つの原因の和である。離心率 $0.0167$・黄道傾斜 $23.44$ 度で、均時差は最大 $\mathbf{16.4187}$ 分・最小 $\mathbf{-14.2455}$ 分になり、軌道の離心率の分(振幅 $\mathbf{7.6550}$ 分)と黄道の傾きの分(振幅 $\mathbf{9.8664}$ 分)を足すと全体になる。一年周期と半年周期が重なるので、大きな山と小さな山が交互に並ぶ。近日点の向きが $90$ 度ずれると形は $\mathbf{14.5793}$ 分と $\mathbf{-16.6434}$ 分に変わり、$180$ 度では変わらない。冬至のころ、均時差は一日に $\mathbf{0.4975}$ 分ずつ減る。時計で見た昼の真ん中が毎日遅れていくので、北緯 $35.7$ 度では日の入りが最も早い日が冬至の $15.61$ 日前、日の出が最も遅い日が $16.07$ 日後に来る。昼が最も短い日と、日の入りが最も早い日は、同じ日ではない。分離子は、昼の長さを見るか、南中の時刻も見るかである。昼の長さだけなら冬至が底で、南中が動くと日の出と日の入りの底が冬至をはさんで分かれる。既刊との位置、論文414 が射程注記で空けていた均時差の席に座った。均時差の離心率の分は、論文535 が月の経度秤動を出した $2e$ と同じ中心差から出る。別々の場所で出会った二つの $2e$ として、論文300 の意味で同根である。正直に言えば、軌道要素は代表値で年による変化を入れず、日の出と日の入りは大気差と視半径を入れない幾何だけで出した。暦の日付は言わず、時計の歴史も扱っていない。
参考文献
- Hughes, D. W., Yallop, B. D., & Hohenkerk, C. Y. (1989). The Equation of Time. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society.
- Meeus, J. (1998). Astronomical Algorithms (2nd ed.). Willmann-Bell.
- Smart, W. M. (1977). Textbook on Spherical Astronomy (6th ed.). Cambridge University Press.
- 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
- 山岸勇輝 (2026). 『同じ「一刻」が、季節で $1.5$ 倍変わる』[論文414]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22699766
- 山岸勇輝 (2026). 『月の見える面積を決めているのは、二つの法線がどちら側にあるかである』[論文535]. Zenodo. 10.5281/zenodo.23014119
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「日の入りが最も早い日は冬至の半月前に来る」[論文596]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014410
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 日の入りが最も早い日は冬至の半月前に来る:日時計と時計のずれは、二つの原因の和である [論文596]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/596 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014410
Yamagishi, Y. (2026). The Earliest Sunset Comes Half a Month Before the Winter Solstice: the Gap Between Sundial and Clock Is the Sum of Two Causes [Paper 596]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/596; DOI: 10.5281/zenodo.23014410
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