要旨
三目並べは、$3\times3$ のますに二人が交互に印を置き、縦・横・斜めのどれかに自分の印を三つ並べた方が勝つ遊びである。「先手はどれだけ勝つか」を、三つの数え方で出す。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、手順を等しく数えると、先手の勝ちは $\mathbf{0.514108}$ である。勝負がついた所で止める手順は $255168$ 通りで、先手の勝ち $131184$、後手の勝ち $77904$、引き分け $46080$ だった(第2節)。
第二に、でたらめに打つと、先手の勝ちは $\mathbf{0.584921}$ である。二人とも空いたますから等しい確率で選ぶと、先手の勝ちは正確に $737/1260$、後手は $121/420=0.288095$、引き分けは $8/63=0.126984$ だった。乱数で $200000$ 局打たせると先手の勝ちは $0.584060$ で、式との差は $0.000861$ だった(第3節)。
第三に、二人とも最善を尽くすと、先手の勝ちは $0$ である。初めの局面の値は引き分けで、初手を $9$ か所のどこに打っても引き分けだった(第4節)。
第四に、これが本稿の芯である。三つの数は、何を等しいと置くかの違いである。手順を一本ずつ等しく数えるか、一手ごとに空いたますを等しく選ぶか、互いに最善を選ぶか。でたらめに打つと、短く終わる手順ほど確率が大きく、先手の勝ちは早く決まるので、手順で数えたときより大きくなる(第5節)。
第五に、最善の側では、応手が一つ間違うだけで負ける。先手が角に打つと、後手の $8$ か所の応手のうち $7$ か所は負けに落ち、引き分けに残るのは中央だけである。先手が中央に打つと、辺の $4$ か所が負けに落ちる(第4節)。
キーワード:三目並べ、ゲーム木、先手の勝率、最善手、数え方の重み。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。三目並べが最善同士で引き分けになること、手順が $255168$ 通り・局面が $5478$ 通りであることは、いずれも既知である。有限の対局が最善同士で決まった結果を持つことは、ツェルメロ($1913$)以来知られている。定石を扱わない。最善の応手は、中央・角・辺の初手のあとの一手だけを示す。人の打ち方を論じない。「でたらめに打つ」は空いたますを等しい確率で選ぶことに限る。既刊との関係:論文164 は「確率」が頻度・信念・公理・文脈の四つの住所を持つと示した。本稿の三つの数は、同じ木の上で何を等しいと置くかの違いで、確率の置き場所が数を変える例である。論文602 はニムの局面を総当たりで解いた。三目並べも同じく木を全部たどって解けるが、ここでは勝ち負けそのものより、それを割合で言うときの重みが問題になる。加えたのは、同じ木から三つの割合を出して並べたこと、でたらめに打つ確率を分数で正確に出し、乱数と突き合わせたこと、分離子を「何を等しいと置くか」に置き、手順の長さが重みを変えることを示したことである。
1. 記法と問い
設定:ますに $0$ から $8$ の番号を左上から振る(中央が $4$、角が $0,2,6,8$、辺が $1,3,5,7$)。先手と後手が交互に空いたますに印を置き、三つ並べた方が勝ち、九つ埋まって並ばなければ引き分けである。勝負がついた所で対局は止まる。
問い:「先手が勝つ割合」はいくらか。答は数え方でどう変わるか。
2. 手順を数える
計算 2.1:初めの局面から、勝負がつくまでの手順を全部たどって数えた。
| 結果 | 手順の数 | 割合 |
|---|---|---|
| 先手の勝ち | $131184$ | $\mathbf{0.514108}$ |
| 後手の勝ち | $77904$ | $0.305305$ |
| 引き分け | $46080$ | $0.180587$ |
| 合計 | $255168$ | $1$ |
計算 2.2:手順の途中に現れる局面(盤の印の置かれ方)は、初めの空の盤を入れて $5478$ 通りだった。回転と裏返しの $8$ 通りで重なるものをまとめると $765$ 通りになる。
観察 2.3 手順で数えると、先手は半分をわずかに超えて勝つ。$255168$ 通りの手順のうち、先手が勝って終わるのは $131184$ 通りである。これは「どの手順も一本として等しく数える」と置いたときの割合である。
3. でたらめに打つ
計算 3.1:二人とも、空いたますから等しい確率で一つを選んで打つとき、結果の確率を局面ごとに分数で正確に積み上げた。
| 結果 | 確率(分数) | 小数 |
|---|---|---|
| 先手の勝ち | $737/1260$ | $\mathbf{0.584921}$ |
| 後手の勝ち | $121/420$ | $0.288095$ |
| 引き分け | $8/63$ | $0.126984$ |
三つの和はちょうど $1$ である。乱数で $200000$ 局を打たせると、先手の勝ちは $0.584060$ で、分数の値との差は $0.000861$(乱数のばらつきの範囲)だった。
観察 3.2 でたらめに打つと、先手の勝ちは手順で数えたときより大きい。$0.584921$ 対 $0.514108$ で、引き分けは逆に $0.126984$ 対 $0.180587$ と小さい。同じ木の上で数えているのに、答が違う。
4. 最善を尽くす
計算 4.1:先手は勝ちを、後手は先手の負けを最も大きくするように互いに選ぶとして、局面の値(先手の勝ち $1$・引き分け $0$・後手の勝ち $-1$)を終わりから決めた。初めの局面の値は $0$ で、初手を $9$ か所のどこに打っても値は $0$ だった。
計算 4.2:初手のあと、後手の応手のうち負けに落ちるもの(値が $1$ になるもの)を数えた。
| 先手の初手 | 負けに落ちる応手 | 引き分けに残る応手 |
|---|---|---|
| 中央($4$) | 辺の $1,3,5,7$ | 角の $4$ か所 |
| 角($0$) | $1,2,3,5,6,7,8$ の $7$ か所 | 中央だけ |
| 辺($1$) | $3,5,6,8$ | 残る $4$ か所 |
観察 4.3 最善同士なら、誰も勝たない。そして引き分けに残る道は細い。先手が角に打つと、後手は中央に打つほかに引き分ける手が無い。最善の側から見た「先手の勝ち」は $0$ だが、それは応手を一つも誤らないときの話である。
5. 分離子
観察 5.1 これが本稿の芯である。三つの数は、何を等しいと置くかの違いである。手順で数えるときは、どの手順も一本として等しい。でたらめに打つときは、一手ごとに空いたますが等しい。最善のときは、互いに最も良い手だけが選ばれる。同じ $255168$ 本の手順の木に、三つの別の重みを置いている。
観察 5.2 でたらめに打つと、短い手順ほど重い。長さ $L$ の手順の確率は、一手ごとに選べるますが $9,8,7,\dots$ と減るので、$9\times8\times\cdots\times(10-L)$ 分の $1$ である。引き分けは必ず九手かかり、先手の勝ちは五手・七手・九手目に決まる。短く終わる先手の勝ちは、手順で数えたときより重く数えられる。だから先手の勝ちが $0.514108$ から $0.584921$ に上がり、引き分けが下がる。
観察 5.3 論文164 と並べる。164 は「確率」が四つの住所を持つと示した。本稿の三つは、どれも同じ盤と同じ規則から出るが、何を等しいと置くかで数が変わる。「先手の勝つ確率は」と聞かれたら、まず住所を聞き返す必要がある。
観察 5.4 論文602 と並べる。602 はニムの局面を総当たりで解き、繰り上がりのない足し算で勝ち負けを見分けた。三目並べも木を全部たどれば解けるが、答は「引き分け」の一語で済んでしまう。割合を問うと、木に置く重みが要る。
観察 5.5 言わないこと。定石は扱わず、人の打ち方も論じない。示したのは、同じ木から出る三つの割合と、その違いが重みの置き方から来ることである。
6. 点呼と結び
- 手順は $255168$ 通り(計算 2.1):先手 $131184$・後手 $77904$・引き分け $46080$。
- 手順で数えた先手の勝ち $\mathbf{0.514108}$(計算 2.1):半分をわずかに超える。
- 局面は $5478$、まとめて $765$(計算 2.2):回転と裏返しの $8$ 通り。
- でたらめに打つと先手の勝ち $737/1260=\mathbf{0.584921}$(計算 3.1):乱数でも $0.584060$。
- 引き分けは $0.180587$ から $0.126984$ へ(観察 3.2):同じ木で答が違う。
- 最善同士なら値は $0$(計算 4.1):どの初手でも引き分け。
- 角に打たれたら、引き分けに残る応手は中央だけ(計算 4.2):$7$ か所は負け。
- 三つの数は何を等しいと置くかの違い(観察 5.1):本稿の芯。
- でたらめに打つと短い手順ほど重い(観察 5.2):早い勝ちが重く数えられる。
- 確率を問う前に住所を聞き返す(観察 5.3):論文164。
結び:三目並べで先手はどれだけ勝つか。答は、何を等しいと置くかで三つに分かれる。勝負がつくまでの手順 $255168$ 通りを等しく数えると先手の勝ちは $0.514108$、二人とも空いたますから等しい確率で打つと $737/1260=0.584921$、二人とも最善を尽くすと $0$ で必ず引き分けになる。同じ木に、三つの別の重みを置いている。でたらめに打つと、長さ $L$ の手順の確率は一手ごとの選べるますの数の積の逆数で、短く終わる先手の勝ちが重く数えられる。最善の側では、先手が角に打つと後手は中央に打つほかに引き分ける手が無い。既刊との位置、論文164 の言う確率の住所が、同じ盤の上で数を変える例である。論文602 のニムと同じく木を全部たどって解けるが、割合を問うと重みが要る。正直に言えば、定石も人の打ち方も扱わず、三つの数え方を並べただけである。
参考文献
- Berlekamp, E. R., Conway, J. H., & Guy, R. K. (1982). Winning Ways for your Mathematical Plays. Academic Press.
- von Neumann, J., & Morgenstern, O. (1944). Theory of Games and Economic Behavior. Princeton University Press.
- 山岸勇輝 (2026). 『「確率」は四つの住所を持つ』[論文164]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22092815
- 山岸勇輝 (2026). 『ニムの勝ち負けは、繰り上がりのない足し算で決まる』[論文602]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22805951
- Zermelo, E. (1913). Über eine Anwendung der Mengenlehre auf die Theorie des Schachspiels. Proceedings of the Fifth International Congress of Mathematicians.
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「三目並べで先手が勝つ割合は、何を等しいと置くかで三つに分かれる」[論文607]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014454
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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/607・DOI 10.5281/zenodo.23014454・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 三目並べで先手が勝つ割合は、何を等しいと置くかで三つに分かれる [論文607]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/607 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014454
Yamagishi, Y. (2026). How Often the First Player Wins at Tic-Tac-Toe Splits Three Ways by What Is Taken as Equal [Paper 607]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/607; DOI: 10.5281/zenodo.23014454
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author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {How Often the First Player Wins at Tic-Tac-Toe Splits Three Ways by What Is Taken as Equal},
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