Yamagishi Complexity Torus Lab山岸勇輝ラボ

【論文611】扉を替えて当たる確率は、司会者がどう開けるかで決まる

要旨

三つの扉の一つに車、残る二つにヤギがいる。挑戦者が一つを選ぶと、司会者が残りの二つから一つを開けてヤギを見せ、挑戦者に扉を替えるかを尋ねる(モンティ・ホールの問題)。替えて当たる確率を、司会者の開け方ごとに数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、司会者が知っていれば、替えて当たるのは $2/3$ である。車の位置と司会者の開け方の場合を分数で数え上げると、替えて $2/3$、そのままで $1/3$ だった。乱数で $200000$ 回試すと、替えて当たったのは $0.666915$ だった(第2節)。

第二に、司会者が知らずに開けたなら、替えても $1/2$ である。司会者が残りの二つから等しく一つを開け、たまたまヤギだった場合だけを数えると、替えてもそのままでも $1/2$ だった。乱数では、車を開けてしまった回を除いた $133400$ 回のうち $0.500435$ が替えて当たった(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。分離子は、扉ではなく司会者の開け方の規則である。同じ扉が同じように開いて同じヤギが見えても、司会者が知っていたか、知らなかったかで答が変わる。開いた扉が伝えるのは、ヤギの位置ではなく、司会者がそれを選んだという事実である(第3節)。

第四に、司会者に癖があると、答は $1/2$ から $1$ まで動く。外れの扉が二つあるとき、司会者が扉 $2$ を確率 $q$ で開けるとする。扉 $2$ が開いたとき替えて当たる確率は $1/(1+q)$ で、$q=0$ なら $1$、$q=1/4$ なら $4/5$、$q=3/4$ なら $4/7$、$q=1$ なら $1/2$ だった(第3節)。

第五に、扉が多いと差は大きくなる。扉が $n$ 枚で、司会者が外れを $n-2$ 枚開けるなら、替えて当たるのは $(n-1)/n$ で、$100$ 枚なら $0.99$ である(第3節)。

キーワード:モンティ・ホール問題、条件付き確率、司会者の規則、ベイズの定理、確率の逆説。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。替えれば $2/3$ で当たること(セルヴィン、$1975$)、司会者の知識と規則で答が変わること(ギルマン、$1992$ ほか。ローゼンハウスの $2009$ 年の本がまとめている)は、いずれも既知である。人がなぜ替えないかは扱わない。確率を数えるだけで、判断の心理には立ち入らない。司会者の規則は仮定である。「知っていて外れを開ける」「知らずに等しく開ける」「癖 $q$ で開ける」の三つを並べるだけで、どれが実際の番組かは述べない。既刊との関係:論文164 は「確率」が四つの住所を持つと示した。本稿では、同じ扉が開いても司会者の規則という住所が確率を変える。論文607 は、三目並べの先手の勝ちが何を等しいと置くかで三つに分かれることを示した。本稿でも、司会者がどう開けるかを何と置くかで答が変わる。加えたのは、三つの規則を同じ数え上げで並べ、分数で正確に出したこと、分数と乱数の二つの道筋を突き合わせたこと、分離子を「司会者の開け方の規則」に置き、癖 $q$ で答が $1/2$ から $1$ まで動くことを示したことである。

1. 記法と問い

設定:扉を $0,1,2$ とし、車は三つのどれかに等しい確率で置かれる。挑戦者は扉 $0$ を選ぶ。司会者は扉 $1$ か $2$ の一つを開ける。ここでは扉 $2$ が開いてヤギが見えた場合を考え、替えるとは扉 $1$ に移ることである。

司会者の三つの規則:(一)車の場所を知っていて、外れの扉を開ける。外れが二つなら等しく選ぶ。(二)知らずに、扉 $1$ と $2$ から等しく一つを開ける(車を開けてしまった回は数えない)。(三)知っていて外れを開けるが、外れが二つなら扉 $2$ を確率 $q$ で開ける。

問い:扉 $2$ が開いてヤギが見えたとき、替えて当たる確率はいくらか。何で決まるか。

2. 数え上げと乱数

計算 2.1:車の位置(三通り)と司会者の開け方の場合を分数で数え上げ、扉 $2$ が開いてヤギが見えた場合で条件づけた。

司会者の規則 替えて当たる そのままで当たる
(一)知っていて外れを開ける $2/3$ $1/3$
(二)知らずに等しく開ける $1/2$ $1/2$

計算 2.2:数え上げとは独立に、乱数で $200000$ 回ずつ試した。規則(一)では替えて当たった割合が $0.666915$、規則(二)では車を開けてしまった回を除いた $133400$ 回のうち $0.500435$ だった。

観察 2.3 二つの規則で、答が違う。規則(一)では、挑戦者が最初に外れを選んでいれば(確率 $2/3$)、司会者は残る外れを開けるしかなく、替えれば必ず車に当たる。規則(二)では、司会者がヤギを見せたこと自体が偶然で、最初の選びが当たりだった可能性を減らさない。

3. 分離子

観察 3.1 これが本稿の芯である。分離子は、扉ではなく司会者の開け方の規則である。規則(一)と(二)で、開いた扉も見えたヤギも同じである。違うのは、司会者がその扉を選んだ理由だけである。開いた扉が伝えるのはヤギの位置ではなく、司会者の選びで、その選びが何を知ってなされたかで確率が変わる。

計算 3.2:規則(三)で、癖 $q$ ごとに替えて当たる確率を分数で数えた。

癖 $q$ 替えて当たる 式 $1/(1+q)$
$0$ $1$ $1$
$1/4$ $4/5$ $4/5$
$1/2$ $2/3$ $2/3$
$3/4$ $4/7$ $4/7$
$1$ $1/2$ $1/2$

観察 3.3 癖が分かれば、答は $1/2$ から $1$ まで動く。$q=0$ の司会者は、外れが二つあればいつも扉 $1$ を開ける。その司会者が扉 $2$ を開けたなら、扉 $1$ が車だったからで、替えれば必ず当たる。$q=1$ なら扉 $2$ が開いても何も分からず $1/2$ である。等しく選ぶ $q=1/2$ が、よく知られた $2/3$ である。

観察 3.4 扉が多いと、差が大きくなる。扉が $n$ 枚で、司会者が知っていて外れを $n-2$ 枚開けるなら、替えて当たるのは $(n-1)/n$ で、$10$ 枚なら $0.9$、$100$ 枚なら $0.99$ である。最初の選びが当たりである $1/n$ は、司会者が何枚開けても動かない。

観察 3.5 論文164 と論文607 と並べる。164 は「確率」が四つの住所を持つと示し、607 は三目並べの先手の勝ちが何を等しいと置くかで三つに分かれると示した。本稿では、同じ扉と同じヤギから、司会者の規則という仮定を置き直すだけで $1/2$ にも $2/3$ にも $1$ にもなる。確率を答える前に、その規則を尋ねる必要がある。

観察 3.6 言わないこと。人がなぜ替えないかは扱わない。実際の番組の司会者がどの規則だったかも述べない。示したのは、三つの規則のそれぞれで替えて当たる確率を正確に出し、乱数で確かめたことである。

4. 点呼と結び

  1. 司会者が知っていれば替えて $2/3$(計算 2.1):そのままは $1/3$。
  2. 乱数で $0.666915$(計算 2.2):二つの道筋。
  3. 知らずに開けたなら替えても $1/2$(計算 2.1):乱数で $0.500435$。
  4. 分離子は司会者の開け方の規則(観察 3.1):本稿の芯。
  5. 開いた扉が伝えるのは司会者の選び(観察 3.1):ヤギの位置ではない。
  6. 癖 $q$ なら $1/(1+q)$(計算 3.2):五つの $q$ で一致。
  7. $q=0$ なら替えれば必ず当たる(観察 3.3):$q=1$ なら $1/2$。
  8. 扉 $n$ 枚なら $(n-1)/n$(観察 3.4):$100$ 枚で $0.99$。
  9. 最初の選びの $1/n$ は動かない(観察 3.4):何枚開けても。
  10. 確率の前に規則を尋ねる(観察 3.5):論文164・607。

結び:三つの扉の一つに車があり、挑戦者が一つを選んだあと、司会者が残りから一つ開けてヤギを見せる。扉を替えて当たる確率は、司会者がどう開けるかで決まる。司会者が車の場所を知っていて外れを開けるなら $2/3$、知らずに開けてたまたまヤギなら $1/2$ で、分数の数え上げと $200000$ 回の乱数が合った。分離子は扉ではなく、司会者の開け方の規則である。開いた扉とヤギが同じでも、司会者の選びが何を知ってなされたかで答が変わる。外れが二つのとき片方を確率 $q$ で開ける癖があれば $1/(1+q)$ で、$1/2$ から $1$ まで動く。扉が多いと差は大きくなる。$n$ 枚から外れを $n-2$ 枚開ければ替えて $(n-1)/n$ である。既刊との位置、論文164 の確率の住所、論文607 の何を等しいと置くかに続き、ここでは司会者の規則が確率を決める。正直に言えば、司会者の規則は仮定であり、人の判断の心理は扱っていない。

参考文献

  1. Gillman, L. (1992). The car and the goats. The American Mathematical Monthly.
  2. Rosenhouse, J. (2009). The Monty Hall Problem: The Remarkable Story of Math’s Most Contentious Brain Teaser. Oxford University Press.
  3. Selvin, S. (1975). A problem in probability. The American Statistician.
  4. 山岸勇輝 (2026). 『「確率」は四つの住所を持つ』[論文164]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22092815
  5. 山岸勇輝 (2026). 『三目並べで先手が勝つ割合は、何を等しいと置くかで三つに分かれる』[論文607]. Zenodo. 10.5281/zenodo.23014454

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「扉を替えて当たる確率は、司会者がどう開けるかで決まる」[論文611]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014472

YOI 611第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/611・DOI 10.5281/zenodo.23014472・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 扉を替えて当たる確率は、司会者がどう開けるかで決まる [論文611]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/611 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014472

Yamagishi, Y. (2026). The Chance of Winning by Switching Doors Is Decided by How the Host Opens Them [Paper 611]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/611; DOI: 10.5281/zenodo.23014472

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  author = {Yamagishi, Yuuki},
  title = {The Chance of Winning by Switching Doors Is Decided by How the Host Opens Them},
  year = {2026},
  howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/611},
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  note = {Preprint, edition 1}
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