要旨
地球の核について、私たちは「大きさ」と「液体であること」の二つを知っている。本稿は、その二つがそれぞれ別の観測から来ており、一つの観測では両方は決まらないことを数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、大きさは影が決める。P 波の影が始まる角距離 $103$ 度から、まっすぐ進むと置いて核の半径を出すと $3966.0$ km(実際の $\mathbf{1.139667}$ 倍)になる(第2節)。
第二に、まっすぐ進むと置くと、核は大きく出る。実際の核から出る角距離は $\mathbf{113.783157}$ 度で、観測の $103$ 度より $\mathbf{10.783157}$ 度大きい(第2節)。
第三に、これが本稿の芯である。液体であることは、別の波が決める。S 波の速さは $\sqrt{\mu/\rho}$ なので、ずれ弾性率が $0$ ならちょうど $\mathbf{0.000000}$ になる(第3節)。
第四に、同じ場所で P 波は伝わる。$\mu=0$ でも P 波は $\mathbf{8.062258}$ km/s で通る(第3節)。
第五に、S 波の不在は、ゆるい固体でも説明できない。$\mu$ が $10^{9}$ Pa あれば $\mathbf{0.316228}$ km/s、$10^{10}$ Pa なら $\mathbf{1.000000}$ km/s で伝わってしまう(第3節)。
第六に、分離子は、大きさを問うか、状態を問うかである。影の角度は大きさしか言わず、横波の不在は状態しか言わない(第4節)。
キーワード:地震波、影の帯、外核、ずれ弾性率、横波、代表値。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。P 波の影の帯、S 波が外核を通らないこと、弾性波の速さの式は、いずれも既知である。ごく粗い置き方である。波がまっすぐ進むとして核の大きさを出し、走時曲線も速度構造も作らない。値は代表値である。影の始まり $103$ 度、終わり $143$ 度、外核の密度 $10000$ kg/m³、体積弾性率 $6.5\times10^{11}$ Pa は代表値である。内核に入らない。内核が固体であることや、そこを通る波は扱わない。観測を論じない。観測網、震源の決め方、位相の同定は主題ではない。地球の組成を論じない。核が鉄であるかどうかは扱わない。既刊との関係:論文814 は、月までの距離が影と時計だけで出るが、影のすぼまりを入れないと四割遠くなることを示した。本稿はその隣に置く。あちらは影を柱と置いて四割、こちらは波をまっすぐと置いて $1.139667$ 倍で、どちらも「置き方」が答を動かす。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。大きさを決める観測と状態を決める観測は別根であり、片方から他方は出ない。加えたのは、影の始まりから核の半径を出して実際との比を $1.139667$ と測ったこと、実際の核から出る角距離との差を $10.783157$ 度と測ったこと、ずれ弾性率を動かして S 波の速さがどこで $0$ になるかを並べたこと、分離子を「大きさか、状態か」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:地震の波には、進む向きに縮む P 波と、横にずれる S 波がある。速さは次の式で決まる。
$$v_P=\sqrt{\frac{K+\tfrac43\mu}{\rho}},\qquad
v_S=\sqrt{\frac{\mu}{\rho}}$$
ここで $K$ は体積弾性率、$\mu$ はずれ弾性率、$\rho$ は密度である。地球の半径を $6371$ km、外核の半径を $3480$ km とする。
問い:核の大きさと、核が液体であることは、それぞれ何が決めているのか。
2. 大きさは影が決める
計算 2.1:波がまっすぐ進むとすると、核をかすめる線の角距離は $2\arccos(r/R)$ である。観測の影の始まり $103$ 度を代入して核の半径を出した。
| 測ったもの | 値 |
|---|---|
| 影の始まり(観測の代表値) | $103$ 度 |
| そこから出る核の半径 | $3966.0$ km |
| 実際の核の半径との比 | $1.139667$ |
| 実際の核から出る角距離 | $113.783157$ 度 |
| 観測との差 | $10.783157$ 度 |
観察 2.2 まっすぐ進むと置くと、核は大きく出る。実際の $3480$ km の $1.139667$ 倍になる。深いほど速くなるので波は上に凸に曲がり、同じ核でも影はもっと手前から始まる。まっすぐと置けば、その差を核の大きさで埋めることになる。
観察 2.3 それでも桁は合う。影の帯は $103$ 度から $143$ 度の $40$ 度ぶんで、角度をひとつ測れば核の大きさが一割の精度で出る。「何かが中にある」ではなく「どれだけ大きいか」を、角度が直接に言う。
3. 液体であることは横波が決める
計算 3.1:外核の密度 $10000$ kg/m³・体積弾性率 $6.5\times10^{11}$ Pa として、ずれ弾性率を変えた。
| $\mu$(Pa) | P 波(km/s) | S 波(km/s) |
|---|---|---|
| $0$ | $8.062258$ | $0.000000$ |
| $10^{9}$ | $8.070522$ | $0.316228$ |
| $10^{10}$ | $8.144528$ | $1.000000$ |
| $10^{11}$ | $8.850612$ | $3.162278$ |
観察 3.2 これが本稿の芯である。$\mu=0$ でだけ、S 波の速さがちょうど $0$ になる。同じ場所で P 波は $8.062258$ km/s で伝わる。横波が通らないことは、そこにずれに抗する力が無いということで、それが「液体である」の中身である。
観察 3.3 ゆるい固体では説明できない。$\mu$ が $10^{9}$ Pa あれば S 波は $0.316228$ km/s、$10^{10}$ Pa なら $1.000000$ km/s で伝わってしまう。「やわらかいから遅い」では、影ではなく弱い波が見えるはずで、観測は不在を言っている。
4. 分離子
観察 4.1 分離子は、大きさを問うか、状態を問うかである。影の角度は大きさしか言わず、横波の不在は状態しか言わない。片方の観測からもう片方は出ない。
観察 4.2 論文814・300 と並べる。814 は、月食の影から距離を出すとき、影を柱と置くと四割遠くなることを示した。ここでも、波をまっすぐと置くと核が $1.139667$ 倍大きく出る。置き方が答を動かす点で同じ型である。300 は同根か別根かが判定できることを示した。大きさと状態は別根である。
観察 4.3 言わないこと。走時曲線、速度構造、内核、観測網、核の組成は扱わない。示したのは、二つの問いに二つの波が要るということである。
5. 点呼と結び
- 影の始まり $103$ 度(計算 2.1):観測の代表値。
- 核の半径 $3966.0$ km(計算 2.1):まっすぐ置いた場合。
- 実際との比 $\mathbf{1.139667}$(観察 2.2):一割ほど大きい。
- 実際からの角距離 $\mathbf{113.783157}$ 度(計算 2.1):観測より大きい。
- 差 $\mathbf{10.783157}$ 度(計算 2.1):波が曲がるぶん。
- 影の帯は $40$ 度(観察 2.3):$103$ から $143$ 度。
- $\mu=0$ で S 波 $\mathbf{0.000000}$(計算 3.1):本稿の芯。
- 同じ場所で P 波 $\mathbf{8.062258}$ km/s(計算 3.1):縦波は通る。
- $\mu=10^{10}$ Pa で S 波 $\mathbf{1.000000}$ km/s(観察 3.3):ゆるい固体では説明できない。
- 大きさか、状態か(観察 4.1):分離子・論文814・300。
結び:核の大きさは P 波の影が決め、核が液体であることは S 波の不在が決める。影の始まり $103$ 度から、波がまっすぐ進むと置いて核の半径を出すと $3966.0$ km(実際の $1.139667$ 倍)で、実際の核から出る角距離は $113.783157$ 度と観測より $10.783157$ 度大きい。深いほど速いので波は曲がり、その差をまっすぐの置き方は核の大きさで埋めるからである。いっぽう S 波の速さは $\sqrt{\mu/\rho}$ なので、ずれ弾性率が $0$ のときだけちょうど $0.000000$ になり、同じ場所で P 波は $8.062258$ km/s で伝わる。$\mu$ が $10^{10}$ Pa あれば S 波は $1.000000$ km/s で伝わってしまう。だから観測が言っているのは「遅い」ではなく「不在」である。分離子は、大きさを問うか、状態を問うかである。既刊との位置:論文814 の「影の置き方が答を動かす」の隣に置き、論文300 の規律で大きさと状態を別根として扱った。正直に言えば、波をまっすぐと置いたごく粗い計算で、走時曲線も内核も扱っていない。
参考文献
- 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/300 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22171914
- 山岸勇輝 (2026). 『月までの距離は影と時計だけで出るが、影のすぼまりを入れないと四割遠くなる』[論文814]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/814 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23015478
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「核の大きさは P 波の影が決め、核が液体であることは S 波の不在が決める」[論文824]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/824
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/824・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 核の大きさは P 波の影が決め、核が液体であることは S 波の不在が決める [論文824]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/824
Yamagishi, Y. (2026). The Size of the Core Is Fixed by the P-Wave Shadow, and That It Is Liquid by the Absence of S Waves [Paper 824]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/824
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author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {The Size of the Core Is Fixed by the P-Wave Shadow, and That It Is Liquid by the Absence of S Waves},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/824},
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