要旨
大きい数を小さい余りの組に置き換えると計算が楽になる。本稿は、そのとき何が残り何が消えるかを数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、法が互いに素なら余りの組はちょうど一度ずつ起こる。$105$ 個の数が作る組は $105$ 通りで、重なりも欠けも無い(第2節)。
第二に、足し算も掛け算も余りごとに別々にできる。$105\times15$ 組を全部試して食い違いは $0$ 件である(第2節)。
第三に、これが本稿の芯である。大小はほとんど読めない。三つの余りがそろって向く対は $10920$ 組のうち $1260$ 組($\mathbf{0.115385}$)しかない(第3節)。
第四に、そろっていても当てにならない。その $1260$ 組のうち $372$ 組($\mathbf{0.295238}$)は本当の大小と逆である(第3節)。
第五に、法が互いに素でないと起こる組も減る。$(6,10,15)$ では積 $900$ に対して $30$ 通り($0.033333$)しか起こらない(第4節)。
第六に、分離子は、足し算と掛け算を問うか、大小を問うかである。同じ表し方が、ある問いには十分で、別の問いには何も答えない(第5節)。
キーワード:中国剰余定理、剰余、互いに素、最小公倍数、大小の比べ、全数え上げ。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。中国剰余定理、互いに素な法のもとで余りの組と数が一対一に対応すること、和と積が余りごとに計算できること、剰余数系では大小の比較に復元が要ることは、いずれも既知である。暗号を扱わない。公開鍵の方式や、剰余数系の実装には入らない。計算の速さを論じない。どの表し方が速いかは主題ではない。定理を証明しない。中国剰余定理は既知として使い、小さい法で全数え上げをするだけである。干支の数え方を扱わない。周期の最大公約数で何通り起こるかを数えるのは論文605 の射程である。拡張しない。負の数や有理数への拡張、多項式の場合には入らない。既刊との関係:論文605 は干支が百二十通りではなく六十通りしかないことを、周期の最大公約数で数えた。本稿はその席には座らず、隣に置く。あちらは何通り起こるかを数えた。こちらは余りに分けたとき、どの演算が残ってどの演算が消えるかを数える。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。足し算・掛け算と大小は、その基準で別根である。加えたのは、足し算と掛け算の食い違いが $0$ 件だと全数え上げで確かめたこと、余りの向きがそろう対が $0.115385$ しかないと測ったこと、そろっていても $0.295238$ が逆だと測ったこと、分離子を「足し算と掛け算か、大小か」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:互いに素な法 $m_1,\dots,m_k$ を選び、数 $x$ をその余りの組に置き換える。
$$x \longmapsto (x \bmod m_1,\ \dots,\ x \bmod m_k),\qquad
M=\prod_i m_i$$
本稿は $m=(3,5,7)$、$M=105$ を使う。置き換えた先で何ができて何ができないかを、全数え上げで見る。
問い:余りに分けると、何が残り何が消えるのか。
2. 残るもの
計算 2.1:$0$ から $104$ までの $105$ 個の数が作る余りの組を数えた。
| 数えたもの | 値 |
|---|---|
| 法 | $3$・$5$・$7$ |
| 積 | $105$ |
| 実際に起こる組 | $105$ 通り |
| 起こりうる組 | $105$ 通り |
観察 2.2 重なりも欠けも無い。$105$ 個の数が $105$ 通りの組をちょうど一度ずつ作る。だから余りの組から元の数を取り戻せる。
計算 2.3:足し算と掛け算が余りごとにできるかを、全数え上げで確かめた。
| 試したこと | 食い違い |
|---|---|
| 余りごとに足して組み直す | $0$ 件 |
| 余りごとに掛けて組み直す | $0$ 件 |
観察 2.4 二つの演算は、そのまま持ち越せる。三つの小さい計算に分かれ、互いに繰り上がりを見合う必要が無い。これが「余りに分けると楽になる」の中身である。
3. 消えるもの
計算 3.1:$105$ 個の数から作れる $10920$ 組の対について、三つの余りがそろって小さい(または三つともそろって大きい)と言えるかを数えた。
| 数えたもの | 組数 | 割合 |
|---|---|---|
| 全部の対 | $10920$ | $1.000000$ |
| 三つの余りがそろって向く対 | $1260$ | $0.115385$ |
| そのうち本当の大小と逆 | $372$ | $0.295238$ |
観察 3.2 これが本稿の芯である。ほとんどの対では何も言えない。$0.115385$ しか向きがそろわず、残りは三つの余りがばらばらの向きを指す。大小は余りのどれか一つには乗っておらず、三つを合わせた位置に乗っているからである。
観察 3.3 そろっていても当てにならない。向きのそろった $1260$ 組のうち $372$ 組($0.295238$)は本当の大小と逆である。つまり「三つとも小さいから小さい」という読み方は、三回に一回近く外れる。
観察 3.4 足し算と掛け算のほうは一件も外れなかった。片方は食い違い $0$ 件、もう片方は $0.295238$ が逆である。同じ表し方の上で、二つの問いの答え方がまったく違う。
4. 法が互いに素でないとき
計算 4.1:法の組を変えて、実際に起こる余りの組の数を数えた。
| 法 | 積 | 最小公倍数 | 起こる組 | 割合 |
|---|---|---|---|---|
| $(4,6)$ | $24$ | $12$ | $12$ | $0.500000$ |
| $(4,9)$ | $36$ | $36$ | $36$ | $1.000000$ |
| $(6,10,15)$ | $900$ | $30$ | $30$ | $0.033333$ |
観察 4.2 互いに素であることは、組が全部起こることと同じである。$(4,9)$ では割合が $1.000000$、$(4,6)$ では $0.500000$、$(6,10,15)$ では $0.033333$ である。起こる組の数は積ではなく最小公倍数で決まる。
観察 4.3 論文605 が数えたのは、この側である。あちらは十干と十二支という一組の周期で、何通り起こるかを最大公約数から出した。ここでは同じ仕組みを、三つの法まで並べて割合で見ている。座るのではなく隣に置く。
5. 分離子
観察 5.1 分離子は、足し算と掛け算を問うか、大小を問うかである。前者は余りの中で閉じており、後者は全体の位置を要る。だから大小を知るには、いったん元の数へ戻さなければならない。
観察 5.2 同じ表し方が、問いによって十分にも空にもなる。一つの表し方の良し悪しは、表し方だけでは決まらない。何を聞くかが決まって初めて決まる。
観察 5.3 論文300 の規律で言えば別根である。和と積は余りごとに閉じ、大小は閉じない。片方ができることは、もう片方ができることの理由にならない。
観察 5.4 言わないこと。暗号も、計算の速さも、干支の数え方も扱わない。示したのは、表し方を変えると演算ごとに残り方が違うということである。
6. 点呼と結び
- $105$ 個が $105$ 通りを作る(計算 2.1):重なりも欠けも無い。
- 足し算の食い違い $0$ 件(計算 2.3):持ち越せる。
- 掛け算の食い違い $0$ 件(計算 2.3):同じく。
- 向きがそろう対は $\mathbf{0.115385}$(計算 3.1):本稿の芯。
- そのうち $\mathbf{0.295238}$ が逆(計算 3.1):三回に一回近く。
- 片方 $0$ 件、片方 $0.295238$(観察 3.4):同じ表し方の上で。
- $(4,9)$ は $1.000000$(計算 4.1):互いに素。
- $(4,6)$ は $0.500000$(計算 4.1):半分しか起こらない。
- $(6,10,15)$ は $\mathbf{0.033333}$(計算 4.1):最小公倍数が決める。
- 足し算と掛け算か、大小か(観察 5.1):分離子・論文605・300。
結び:余りに分けると足し算と掛け算は残るが、大小は消える。法 $3$・$5$・$7$ では $105$ 個の数が $105$ 通りの組をちょうど一度ずつ作り、足し算も掛け算も余りごとに別々にできて食い違いは $0$ 件である。どちらの演算も余りの中で閉じているからである。ところが大小は、三つの余りがそろって向く対が $10920$ 組のうち $1260$ 組($0.115385$)しかなく、しかもそのうち $372$ 組($0.295238$)は本当の大小と逆である。大小は余りのどれか一つにではなく、三つを合わせた位置に乗っているからである。法が互いに素でないと起こる組も減り、$(4,6)$ では $0.500000$、$(6,10,15)$ では $0.033333$ しか起こらず、決めているのは積ではなく最小公倍数である。既刊との位置:論文605 が「何通り起こるか」を数えた席の隣に置き、論文300 の規律で和・積と大小を別根として扱った。正直に言えば、数えたのは法 $3$・$5$・$7$ と、いくつかの小さい組だけで、一般の場合は数えていない。
参考文献
- Hardy, G. H., & Wright, E. M. (2008). An Introduction to the Theory of Numbers. Oxford University Press.
- 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/300 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22171914
- 山岸勇輝 (2026). 『干支は百二十通りではなく、六十通りしかない』[論文605]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/605 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014440
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「余りに分けると足し算と掛け算は残るが、大小は消える」[論文842]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/842
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 余りに分けると足し算と掛け算は残るが、大小は消える [論文842]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/842
Yamagishi, Y. (2026). Split Into Remainders, Addition and Multiplication Survive but Order Vanishes [Paper 842]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/842
@misc{yamagishi2026yoi842,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {Split Into Remainders, Addition and Multiplication Survive but Order Vanishes},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/842},
note = {Preprint, edition 1}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
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