【論文857】音の高さは張力と重さの比しか見ないが、楽器にかかる力は張力そのものである

要旨

弦を締めれば音が高くなり、太くすれば低くなる。本稿は、その二つが一つの比に畳まれ、比に入らない量が楽器にかかることを数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、同じ高さでも、太さで要る張力が大きく違う。$110$ Hz を出すのに、直径 $1.0$ mm は $\mathbf{125.3011}$ N、$0.5$ mm は $31.3253$ N 要る(第2節)。

第二に、その比は太さの二乗である。太さを $2$ 倍にすると要る張力は $4.000000$ 倍になる(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。高さは比しか見ない。張力と線密度を両方 $2$ 倍にしても高さは $110$ Hz のままで、楽器にかかる力だけが $250.6022$ N に倍増する(第3節)。

第四に、高さを上げるには張力が二乗で要る。半音で $\mathbf{1.122462}$ 倍、一オクターブで $4$ 倍である(第3節)。

第五に、わずかな張力の変化が音を狂わせる。張力が $1$ パーセント変わると $\mathbf{8.613176}$ セント狂う(第3節)。

第六に、分離子は、音の高さを問うか、楽器にかかる力を問うかである。同じ音を出す二本の弦が、楽器に $4$ 倍違う力をかけうる(第4節)。

キーワード:弦の張力、線密度、メルセンヌの法則、セント、楽器にかかる力、模型。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。弦の基本振動数が $\frac{1}{2L}\sqrt{T/\mu}$ であること(メルセンヌの法則)、線密度が断面積に比例すること、高さを一オクターブ上げるには張力が $4$ 倍要ること、セントの定義は、いずれも既知である。実在の楽器を主張しない。長さ $0.648$ m、鋼の密度 $7850$ kg/m$^{3}$、直径 $1.0$ mm と $0.5$ mm は模型の値で、どの楽器や弦の銘柄にも対応しない。巻き弦を入れない。芯線に巻き線を巻いた弦は扱わない。無垢の鋼の弦だけを見る。曲げの硬さを入れない。弦の曲げ剛性で倍音が理想からずれることは扱わない。音楽を論じない。音色、演奏、調律の方式は主題ではない。既刊との関係:論文466 は全部を合わせられないことが証明された事実であることを示し、射程注記で楽器を論じないと空けた。本稿はその隣に置く。あちらは音の高さの比の側、こちらは高さを作る弦の側である。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。音の高さと楽器にかかる力は、その基準で別根である。加えたのは、同じ高さを太さの違う二本で出して張力を比べたこと、張力と線密度を同じ倍率で変えても高さが変わらず力だけが変わると測ったこと、張力の $1$ パーセントが $8.613176$ セントになると測ったこと、分離子を「音の高さか、楽器にかかる力か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:長さ $L$、張力 $T$、線密度 $\mu$ の弦を考える。鋼の無垢の弦なら、線密度は密度と断面積の積である。

$$f=\frac{1}{2L}\sqrt{\frac{T}{\mu}},\qquad
\mu=\rho\,\frac{\pi d^{2}}{4},\qquad
T=(2Lf)^{2}\mu$$

高さ $f$ に入るのは $T/\mu$ という比だけである。本稿は $L=0.648$ m、$\rho=7850$ kg/m$^{3}$ で数える。

問い:同じ高さの音を出す弦は、楽器に同じ力をかけるか。

2. 同じ高さ、違う張力

計算 2.1:同じ $110$ Hz を、太さの違う二本で出した。

直径 線密度 要る張力
$1.0$ mm $6.165376\times10^{-3}$ kg/m $125.3011$ N
$0.5$ mm $1.541344\times10^{-3}$ kg/m $31.3253$ N
比 、 $4.000000$

観察 2.2 同じ高さでも、要る張力は太さの二乗で違う。太さを $2$ 倍にすると線密度が $4$ 倍になり、同じ高さを保つには張力も $4$ 倍要る。式に戻すと、二本とも $110$ Hz で差は $10^{-9}$ 未満である。

3. 比と、比に入らない量

計算 3.1:直径 $1.0$ mm の弦で、張力と線密度を両方 $2$ 倍にした。

量 もとの弦 両方 $2$ 倍
高さ $110$ Hz $110.000000$ Hz
楽器にかかる力(張力) $125.3011$ N $250.6022$ N

観察 3.2 これが本稿の芯である。高さは比しか見ない。高さは $110.000000$ Hz のまま変わらないのに、楽器にかかる力は $250.6022$ N に倍増する。高さの式では $T$ と $\mu$ が割り算で畳まれ、力には $T$ がそのまま出るからである。

計算 3.3:高さを変えるのに要る張力の倍率と、張力の揺れが音に与える狂いを出した。

量 値
半音上げる張力の倍率 $1.122462$
一オクターブ上げる張力の倍率 $4.000000$
張力 $1$ パーセントの変化による狂い $8.613176$ セント

観察 3.4 高さは張力の平方根でしか動かない。だから一オクターブには $4$ 倍の張力が要り、張力の $1$ パーセントは高さの $0.5$ パーセント弱、$8.613176$ セントになる。楽器にかかる力のほうは、張力と同じ割合で動く。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、音の高さを問うか、楽器にかかる力を問うかである。前者は $T/\mu$ の比で決まり、後者は $T$ そのもので決まる。同じ音を出す二本の弦が、楽器に $4$ 倍違う力をかけうる。

観察 4.2 論文466 の隣に置く。466 は全部を合わせられないことが証明された事実であることを示し、楽器を論じないと空けた。あちらは音の高さの比が合わせきれない側、こちらは同じ高さを作る弦の側で、高さに現れない量が楽器に残る。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。高さと力は、その基準で別根である。

観察 4.3 言わないこと。実在の楽器も、巻き弦も、曲げの硬さによる倍音のずれも、音色も扱わない。示したのは、高さに畳まれた比の外に、楽器が受ける力が残るということである。

5. 点呼と結び

  1. 高さは $T/\mu$ の比(第1節):割り算で畳まれる。
  2. $1.0$ mm で $\mathbf{125.3011}$ N(計算 2.1):$110$ Hz。
  3. $0.5$ mm で $31.3253$ N(計算 2.1):同じ $110$ Hz。
  4. 比は $4.000000$(計算 2.1):太さの二乗。
  5. 両方 $2$ 倍でも $110.000000$ Hz(計算 3.1):本稿の芯。
  6. 力は $250.6022$ N に倍増(計算 3.1):比に入らない量。
  7. 半音で $\mathbf{1.122462}$ 倍(計算 3.3):張力は二乗で要る。
  8. 一オクターブで $4$ 倍(計算 3.3):同じく。
  9. 張力 $1$ パーセントで $\mathbf{8.613176}$ セント(計算 3.3):わずかでも狂う。
  10. 音の高さか、楽器にかかる力か(観察 4.1):分離子・論文466・300。

結び:音の高さは張力と重さの比しか見ないが、楽器にかかる力は張力そのものである。長さ $0.648$ m の鋼の弦で同じ $110$ Hz を出すと、直径 $1.0$ mm は $125.3011$ N、$0.5$ mm は $31.3253$ N の張力が要り、比は $4.000000$ である。太さを $2$ 倍にすると線密度が $4$ 倍になり、同じ高さを保つには張力も $4$ 倍要るからである。張力と線密度を両方 $2$ 倍にしても高さは $110.000000$ Hz のままで、楽器にかかる力だけが $250.6022$ N に倍増する。高さの式では $T$ と $\mu$ が割り算で畳まれ、力には $T$ がそのまま出るからである。高さは張力の平方根でしか動かないので、半音に $1.122462$ 倍、一オクターブに $4$ 倍の張力が要り、張力の $1$ パーセントが $8.613176$ セントの狂いになる。既刊との位置:論文466 の「高さの比が合わせきれない側」の隣に、同じ高さを作る弦の側を置き、論文300 の規律で高さと力を別根として扱った。正直に言えば、無垢の鋼の弦の模型で、巻き弦や曲げの硬さによる倍音のずれは入れていない。

参考文献

  1. Fletcher, N. H., & Rossing, T. D. (1998). The Physics of Musical Instruments. Springer.
  2. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/300 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22171914
  3. 山岸勇輝 (2026). 『全部を合わせられないことは、証明された事実である』[論文466]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/466 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22733284

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「音の高さは張力と重さの比しか見ないが、楽器にかかる力は張力そのものである」[論文857]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/857

YOI 857第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 音の高さは張力と重さの比しか見ないが、楽器にかかる力は張力そのものである [論文857]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/857

Yamagishi, Y. (2026). Pitch Sees Only the Ratio of Tension to Weight, but the Instrument Bears the Tension Itself [Paper 857]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/857

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