要旨
日本の1,889市区町村について、産業小分類ごとに「人口が何人の市区町村から、その分類の事業所が現れるか」を数えた。
市区町村を人口の順に並べ、前後101市区町村の窓の中で、その分類が1軒以上ある市区町村の割合が初めて50%を超える位置の人口を、50%到達人口と呼ぶ。
対象433分類のうち 390 で目安が出た。理容業・美容業・菓子パン小売業・一般診療所は、最小の人口の市区町村(155人)でも半分以上にある。
自動車整備業は 970人、歯科診療所は 1,033人、学習塾は 3,107人、司法書士事務所は 5,238人、税理士事務所は 11,775人 である。
釧路総合振興局管内の8市町村では、その人口で目安を超えている分類のうち、実際にあるのは 64.2% から 89.0% である。
この表(433分類)は、どの市区町村にも当てられる。付録として全件を付した。
1. はじめに
先行する報告(R001)で、市区町村にある産業小分類の数は人口の常用対数でほぼ決まることを示した(R² = 0.925)。
残るのは、どの分類がという問いである。
どの商売が、人口何人の町から現れるか。
数ではなく順番を扱うので、分類ごとに1つの数字を与える必要がある。
2. データ
| 事業所 | 総務省・経済産業省「令和3年 経済センサス-活動調査」(2021年6月1日)。産業小分類526 × 市区町村 |
| 人口 | 総務省「住民基本台帳に基づく人口」2026年1月1日 |
市区町村は、集計行を除いた 1,889(R001 の単位A)。
産業小分類526のうち93は「管理,補助的経済活動を行う事業所」で、これを外した。
本社・本部の機能を表す分類であり、実際に商売をしている店や工場ではないためである。対象は 433分類。
3. 目安の出し方、全市区町村を母数にすると使えない
はじめ、「その人口以上の市区町村を集めたとき、半分以上にその分類がある、いちばん小さい人口」を目安にした。
この定義では、身近な商売がすべて最小の人口(155人)に張り付く。 全国を母数にすると、理容業も学習塾も税理士事務所も、すでに半分以上の市区町村にあるからである。
そこで、人口の近い市区町村どうしで比べる形に改めた。
市区町村を人口の小さい順に並べ、前後あわせて101市区町村の窓をずらしながら、その窓の中でその分類が1軒以上ある市区町村の割合を見る。
50%到達人口 = その割合が初めて50%を超える位置の人口。
433分類のうち 390 で値が出た。残る43は、どの人口帯でも窓の半分に届かない分類である。
4. 結果
4-1 身近な商売の階段

図1 人口が何人の町から、その商売が現れるか(身近な20分類)。
点は50%到達人口。橙の点線は白糠町(6,840人)と釧路市(151,566人)の人口。横軸は常用対数の目盛である。
| 50%到達人口 | 分類 |
|---|---|
| 155 | 理容業、美容業、菓子・パン小売業、一般診療所、その他の娯楽業 |
| 312 | 専門料理店 |
| 742 | 電気工事業 |
| 970 | 自動車整備業 |
| 1,033 | 喫茶店、歯科診療所 |
| 1,243 | 酒場、ビヤホール |
| 1,455 | 医薬品・化粧品小売業 |
| 1,501 | 管工事業 |
| 2,063 | 貸家業、貸間業 |
| 2,160 | 教養・技能教授業 |
| 2,253 | 洗濯業 |
| 3,107 | 学習塾 |
| 5,238 | 公証人役場、司法書士事務所、土地家屋調査士事務所 |
| 11,775 | 公認会計士事務所、税理士事務所 |
| 13,106 | 駐車場業 |
床屋と美容室と診療所は、人口155人の市区町村にもある。
税理士事務所が現れるのは、その76倍の人口からである。
4-2 小さい町にもある分類/大きい町にしかない分類
155人で半分を超える分類には、市町村機関(1,888市区町村にある)、郵便局(1,887)、小学校(1,883)、土木工事業(1,879)、燃料小売業(1,877)、その他の飲食料品小売業(1,876)、老人福祉・介護事業(1,865)、中学校(1,864)が並ぶ。
50%到達人口が大きい側は、製造業に偏る。ボイラ・原動機製造業(652,241人)、動植物油脂製造業(479,587人)、産業用運搬車両製造業(470,718人)、製糸業・紡績業(441,947人)などである。
行政と生活の下支えは小さな町にもあり、素材と部品の製造は大きな町に集まる。
4-3 釧路総合振興局管内に当てる
その市区町村の人口で50%到達人口を超えている分類のうち、実際にあるのは何割か。
| 市町村 | 人口 | 目安を超える分類 | 実際にある | 割合 |
|---|---|---|---|---|
| 釧路市 | 151,566 | 320 | 273 | 85.3% |
| 釧路町 | 18,021 | 177 | 142 | 80.2% |
| 厚岸町 | 7,976 | 118 | 105 | 89.0% |
| 浜中町 | 5,172 | 96 | 74 | 77.1% |
| 標茶町 | 6,698 | 114 | 93 | 81.6% |
| 弟子屈町 | 6,327 | 112 | 97 | 86.6% |
| 鶴居村 | 2,368 | 67 | 43 | 64.2% |
| 白糠町 | 6,840 | 115 | 95 | 82.6% |
たとえば白糠町(6,840人)は、学習塾の目安(3,107人)を超えているが、学習塾の事業所は計上されていない。
目安を超えていながら無い分類が、その市区町村について次に調べる対象になる。
5. 考察
5-1 数ではなく、順番が出る
R001 は分類の数を人口で説明した。本稿はその内訳に立ち入り、どの分類がどの人口帯で現れるかを1分類1つの数字で表した。
両者を合わせると、ある人口の市区町村について「何種類あるはずか」と「どれがあるはずか」の両方が言える。
5-2 目安であって、条件ではない
50%到達人口は、人口の近い市区町村を横に並べたときの位置であって、その人口があればその商売が成り立つという意味ではない。
道路や鉄道のつながり、隣接する市区町村の規模、産業の来歴によって、同じ人口でも事情は異なる。
5-3 定義が結果を決める
第3節のとおり、最初の定義では身近な商売がすべて155人に張り付いた。「半分以上にある」をどの母集団で測るかが、結果のすべてを決めていた。
数える前に母集団を決め、それを明示しなければならない。
6. 限界
- 事業所は2021年6月1日、人口は2026年1月1日で、5年ずれている
- 窓の幅(101市区町村)は、なめらかさと細かさの兼ね合いで選んだ。幅を変えれば値は多少動く
- 「ある」は、その分類の事業所が1軒以上あるという意味である。秘匿や未回答の扱いは、元の表に従っている
- 産業小分類は行政上の区分であり、実務の呼び名と1対1では対応しない
- 本社機能の分類(管理,補助的経済活動を行う事業所、93分類)は外してある
- 目安が出なかった43分類については、何も言っていない
7. 再現の手順
- e-Stat から、令和3年 経済センサスの産業小分類別 事業所数(市区町村別)を取得する
- 総務省から、住民基本台帳に基づく人口(2026年1月1日、市区町村別)を取得する
- 集計行を除き、市区町村コードで突き合わせる
- 「管理,補助的経済活動を行う事業所」の分類を外す
- 人口の小さい順に並べ、前後101市区町村の窓で、その分類がある割合が初めて50%を超える位置を探す
本稿の数値は、すべて1本のスクリプト(kensan_185)の出力である。中間の数値を手で書き写していない。
付録 433分類の表
50%到達人口・ある市区町村の数・ある側と無い側の人口の中央値・全国の事業所数を、433分類すべてについて表にした(kensan_185_分類ごとの人口の目安.csv)。
参考文献・データの出典
- 総務省統計局・経済産業省「令和3年 経済センサス-活動調査」産業小分類別 事業所数(市区町村別)
- 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」2026年1月1日現在
- 山岸勇輝「市区町村の人口と、そこにある産業小分類の数、全国1,889市区町村と、釧路総合振興局管内8市町村」(R001)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22872218
1と2は e-Stat および各府省のサイトで公開されている。
版の記録
| 版 | 日付 | 内容 |
|---|---|---|
| 第1版 | 2026-09-21 | 初出 |
引用のしかた
山岸勇輝(2026)「その商売は、人口何人の町から現れるか、産業小分類433の「50%到達人口」 [R002]」Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22872356
(この DOI は concept DOI。常に最新の版を指す。引用にはこれを使う)
© 2026 山岸 勇輝(Yuuki YAMAGISHI)
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書誌
山岸勇輝(2026)「その商売は、人口何人の町から現れるか」[R002]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22872356
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). その商売は、人口何人の町から現れるか [R002]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/R002 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22872356
Yamagishi, Y. (2026). At What Population Does a Trade Appear? The 50% Threshold Population for 433 Industrial Subcategories [R002]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/R002; DOI: 10.5281/zenodo.22872356
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author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {At What Population Does a Trade Appear? The 50% Threshold Population for 433 Industrial Subcategories},
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