Yamagishi Complexity Torus Lab山岸勇輝ラボ

【F054】足種は、三つの物差しのどれに対して一定かで分かれる

要旨

本稿が問うのは、ある足種がどの時計なのかをどうやって決めるか、である。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。

第一に、★★ これが本稿の芯である。五つの足種すべてで、宣言どおりの物差しの変動係数がいちばん小さくなった(5 / 5)。 時計で刻む足は時間の 0.0092、ティックで刻む足はティックの 0.0000、経路で刻む足は経路の 0.0011 である(第3節)。

第二に、★★ ところが順位相関では分類できない。 五つの足種とも、三つの物差しすべてと 1.0000 の相関を持ち、最大 − 最小は 0.0000 である(第4節)。

第三に、★ だから分類に使えるのは相関ではなく、一定さ(変動係数)である。 相関は「一緒に増えるか」しか見ておらず、「一本あたり同じだけ増えるか」を見ていない(第4節)。

第四に、★ 刻み幅を倍にすると、本数はちょうど半分になる。 五つとも 0.5000 から 0.5056 である(第5節)。

第五に、★★ 「時計は誰も動かなくても進む」は、実装では成り立たない。 一分足の一本の時間の中央は 57.5 秒であって 60 秒ではなく、時間の変動係数も 0.1687 ある(第6節)。

第六に、★ 合成乱数でも同じ分類になる。 最小の変動係数は 0.0000 から 0.1687 で実測と同じである。分類は市場の性質ではなく、足の作り方の性質である(第7節)。

本稿の射程(scope note):新しい数学定理も新しい法則も主張しない。時間変形と従属確率過程は古典的な題材である。特定の商材や提唱者を論じない。実在の教材、その著者、販売元は主題ではなく、一切名指さない。売買を論じない。成績も損益も測っていない。足種を五つに固定している。練行足・絶対座標グリッドは入れていない(第7節)。五つのうち二つは定義から同じである。ティック足と出来高足で、それは [F053] で測ってある(第7節)。ティックの無い枠に足を作らない規約に依っている。その規約が答えを動かすことは [F049] で測ってある(第6節)。射程は日中・少数銘柄に限る。四銘柄・六年の測定である。月次の時系列モメンタム(数十市場・保有1〜12ヶ月)は学術的に文書化されており、本稿はそれを否定しない。予測を主張しない。

1. 記法と問い

本系列は「足種は時計である」を何度も測ってきた。★ では、ある足種がどの時計なのかを、どうやって決めるのか。

物差しは三つある。

物差し 中身
時間 経過した秒
出来事の数 経過したティックの本数
変位の絶対量 経過した経路の長さ

観察 1.1:★ 足を作るとは、この三つのどれかを一本あたり一定に保つことである。

観察 1.2:★ だから「一本あたりの増分の散らばり」を三つとも測れば、どれを一定にしたかが分かる。 名前で決めなくてよい。

観察 1.3:練行足が別の時計であることは [F017] で測ってある。 ★ 本稿が加えるのは、どの時計かを判定する物差しそのものである。

問い:ある足種がどの時計なのかは、何を測れば決まるのか。

2. 測る量と設計を、先に書く

走らせる前に宣言し、実行時には変えていない。

足種 一定にしたもの
T 一分足 時間
H 一時間足 時間
K ティック足 出来事の数
V 出来高足 出来事の数
R レンジ足 変位の絶対量
物差し 時間(秒)/ ティックの本数 / 経路の長さ(pips)
一定さ 一本あたり増分の変動係数(標準偏差 ÷ 平均)
相関 足の番号と、物差しの積み上げの順位相関
倍 刻み幅を 2 倍にしたときの本数の比
基準線 ティックまで合成乱数(3 系列・時刻は実測のまま)
分離子 どの物差しに対して一定にしたか
銘柄・期間 USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD/2019–2024

観察 2.1:★ 判定の量を先に決めておくのが要である。 測ってから「これが一定だった」と言うのでは後出しになる。

観察 2.2:N は 5,120・4,534・4,780・9,046 ティック、S は 511.6875・340.5750・488.2750・1749.0050 pips である。 ★ 一時間足と本数がそろうように取ってある。

観察 2.3:★ ティック足と出来高足は、為替では定義から同じである。 それは [F053] で測ってあり、本稿では「同じものが同じ場所に出る」ことの検算として使う。

予言(測る前に書いた)

① ★★ 各足種は、三つのうちちょうど一つに対して一定になる。

② ★ 残りの二つに対しては一定にならない。

③ ★ 刻み幅を倍にすると、本数はちょうど半分になる。

④ ★★ 「時計は誰も動かなくても進む」は、実装では成り立たない。

⑤ 合成乱数でも同じ分類になる。

⑥ ★ 三つの物差しは互いに強く相関しているので、順位相関では分類できない。

3. どの物差しに対して一定か

一本あたり増分の変動係数。一定にした物差しでは 0 に近くなる。

計算 3.1 五つの足種 × 三つの物差し(四銘柄の中央)

足種 一定にしたもの 時間の CV ティックの CV 経路の CV
T 一分足 時間 0.1687 0.8680 1.2722
H 一時間足 時間 0.0092 0.6895 0.9273
K ティック足 出来事の数 3.2569 0.0000 0.2900
V 出来高足 出来事の数 3.2569 0.0000 0.2900
R レンジ足 変位の絶対量 3.3240 0.2358 0.0011

観察 3.2:★★ これが本稿の芯である。予言①②は当たった。五つの足種すべてで、宣言どおりの物差しがいちばん小さい(5 / 5)。

観察 3.3:★ 表は対角に並んでいる。 時計で刻む足は時間が 0.0092、ティックで刻む足はティックが 0.0000、経路で刻む足は経路が 0.0011 である。

観察 3.4:★ 次に小さい値との差もはっきりしている。 一時間足は 0.0092 に対し次が 0.6895 で 75.31 倍、レンジ足は 0.0011 に対し次が 0.2358 で 212.20 倍である。

観察 3.5:★ ティック足と出来高足は、三つの物差しすべてで同じ値である。 定義から同じものだからで、これは検算であって発見ではない。

観察 3.6:⚠️ ティック足の 0.0000 は、丸めではなく定義から厳密にゼロである。 だから「次に小さい値との比」は意味を持たない。

図1 足種は、どの物差しに対して一定かで分かれる

図1:横が足種、縦が一本あたり増分の変動係数(対数目盛り)。三つの物差しを並べてある。

4. 順位相関では分類できない

計算 4.1 足の番号と、物差しの積み上げの順位相関(四銘柄の中央)

足種 時間との相関 ティックとの相関 経路との相関 最大 − 最小
T 一分足 1.0000 1.0000 1.0000 0.0000
H 一時間足 1.0000 1.0000 1.0000 0.0000
K ティック足 1.0000 1.0000 1.0000 0.0000
V 出来高足 1.0000 1.0000 1.0000 0.0000
R レンジ足 1.0000 1.0000 1.0000 0.0000

観察 4.2:予言⑥は当たった。 ★★ 五つの足種とも、三つの物差しすべてと 1.0000 の相関を持つ。最大 − 最小は 0.0000 である。

観察 4.3:★★ 理由は単純である。三つの物差しはどれも単調に増えるので、足の番号と必ず 1.0000 で相関する。

観察 4.4:★★ だから相関では分類できない。 相関は「一緒に増えるか」しか見ておらず、「一本あたり同じだけ増えるか」を見ていない。

観察 4.5:★ 分類に使えるのは一定さ(変動係数)である。 第3節の表は 0.0000 から 3.3240 まで広がっており、相関の 0.0000 とは対照的である。

5. 刻み幅を倍にすると、本数は半分になる

計算 5.1 本数の比(四銘柄の中央)

足種 刻み幅を 2 倍にしたときの本数の比
T 一分足 0.5013
H 一時間足 0.5056
K ティック足 0.5000
V 出来高足 0.5000
R レンジ足 0.5000

観察 5.2:予言③は当たった。 ★ 比は 0.5000 から 0.5056 で、中央 0.5000 である。

観察 5.3:★ ティック足・出来高足・レンジ足はちょうど 0.5000 である。 積み上げた量を二倍にするだけなので、定義から半分になる。

観察 5.4:★ 時計で刻む足だけ 0.5013 と 0.5056 で、わずかに半分を超える。 ティックの無い枠に足を作らないので、空いた枠のぶんだけずれるからだと読めるが、本稿は機序を測っていない。

6. 「時計は誰も動かなくても進む」は、実装では成り立たない

計算 6.1 時計で刻む足の中身(四銘柄の中央)

足種 一本の時間の中央(秒) 時間の CV
T 一分足 57.5 0.1687
H 一時間足 3599.0 0.0092

観察 6.2:★★ 予言④は当たった。時計で刻んだ足でも、時間の変動係数は 0 にならない。

観察 6.3:★★ 一分足の一本の時間の中央は 57.5 秒であって、60 秒ではない。 ティックの無い枠に足を作らないので、誰も動かない時間は飛ばされるからである。

観察 6.4:★ 一時間足は 3599.0 秒・変動係数 0.0092 で、一分足よりずっと 0 に近い。 一本が長いほど、飛ばされる枠の割合が小さくなるからである。

観察 6.5:★ つまり「座標時間は外から貼った目盛りで、誰も動かなくても進む」という理屈は、実装では成り立たない。 この規約が答えを動かすことは [F049] で測ってある。

図2 相関はどれも高い。だから相関では分類できない

図2:横が足種、縦が足の番号との順位相関。三つの物差しを並べてあり、縦軸は 1 の近くに拡大してある。

7. 基準線と限界

計算 7.1 値動きだけを合成乱数に差し替える(四銘柄の中央)

足種 実測の最小 CV 合成乱数の最小 CV 実測の相関の幅 合成乱数の相関の幅
T 一分足 0.1687 0.1687 0.0000 0.0000
H 一時間足 0.0092 0.0092 0.0000 0.0000
K ティック足 0.0000 0.0000 0.0000 0.0000
V 出来高足 0.0000 0.0000 0.0000 0.0000
R レンジ足 0.0011 0.0002 0.0000 0.0000

観察 7.2:予言⑤は当たった。 ★ 合成乱数でも、最小の変動係数は 0.0000 から 0.1687 で実測と同じである。

観察 7.3:★★ つまり分類は市場の性質ではなく、足の作り方の性質である。 値動きを乱数に差し替えても、どの足がどの時計かは変わらない。

観察 7.4:★ 時計で刻む足の 0.1687 と 0.0092 は、実測と合成乱数で完全に一致する。 時刻とティックの並びを実測のまま置いているからで、これも検算である。

観察 7.5:★ この基準線が何についてゼロなのかは [F033] で測ってある。

限界

  1. ⚠️ 足種を五つに固定している。 練行足・絶対座標グリッドは入れていない。
  2. 五つのうち二つは定義から同じである。 ティック足と出来高足で、それは [F053] で測ってある。
  3. 刻み幅を一通りに決めている。 N と S である。
  4. 物差しを三つに固定している。 ほかの物差しなら別の分類になりうる。
  5. ティックの無い枠に足を作らない規約に依っている。
  6. 時計で刻む足の比が半分をわずかに超える機序を測っていない。
  7. 四銘柄・六年である。 他の市場、他の期間について述べるものではない。

結び

足を作るとは、何かを一本あたり一定に保つことである。では、ある足種が何を一定にしたのかは、どうやって決まるのか。

★★ 一本あたり増分の変動係数を三つの物差しで測れば決まる。 五つの足種すべてで、宣言どおりの物差しがいちばん小さくなった(5 / 5)。 時計で刻む足は時間の 0.0092、ティックで刻む足はティックの 0.0000、経路で刻む足は経路の 0.0011 である。

★ 表は対角に並ぶ。 次に小さい値との差も、一時間足で 75.31 倍、レンジ足で 212.20 倍とはっきりしている。

★★ ところが順位相関では分類できない。 五つの足種とも、三つの物差しすべてと 1.0000 の相関を持ち、最大 − 最小は 0.0000 である。三つの物差しはどれも単調に増えるので、足の番号と必ず 1.0000 で相関するからである。

★★ だから使えるのは相関ではない。 相関は「一緒に増えるか」しか見ておらず、「一本あたり同じだけ増えるか」を見ていない。

★ 刻み幅を倍にすると、本数はちょうど半分になる(0.5000 から 0.5056)。積み上げた量を二倍にするだけだからである。

★★ そして「時計は誰も動かなくても進む」は、実装では成り立たない。 一分足の一本の時間の中央は 57.5 秒であって 60 秒ではなく、変動係数も 0.1687 ある。ティックの無い枠に足を作らないので、誰も動かない時間は飛ばされる。

★ 合成乱数でも分類は変わらない(最小の変動係数 0.0000 から 0.1687)。分類は市場の性質ではなく、足の作り方の性質である。

だから足種を論じるときに書くべきなのは、名前でも相関でもない。 ★ 一本あたり増分の変動係数を、三つの物差しすべてについて書くことである。 そうすれば、その足がどの時計なのかは一行で決まる。

データと再現

データ 為替は Dukascopy 由来のティック(2019 年以降はミリ秒・bid・ask まで一致することを確認済み)。金は Dukascopy
期間 2019–2024(六年)
銘柄 USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD
T 一分足 一分ごと
H 一時間足 一時間ごと
K ティック足 N ティックごと。N = 総ティック数 ÷ 一時間足の本数
V 出来高足 出来高の合計が N になるごと(出来高 = ティックの本数)
R レンジ足 経路の長さの合計が S になるごと。S は K の一本あたりの中央
物差し 時間(秒)/ ティックの本数 / 経路の長さ(pips)
一定さ 一本あたり増分の変動係数(標準偏差 ÷ 平均)
相関 足の番号と、物差しの積み上げの順位相関
倍 刻み幅を 2 倍にしたときの本数の比
基準線 ティックまで合成乱数(3 系列)。時刻は実測のまま置く
検算 検算/F054.py(--zu で図も書き出す)。本文の数字はすべて 検算/F054_output.txt から取っている
図 図/F054_zu1・図/F054_zu2(png・svg・英語版)
乱数の種 固定。再実行しても同じ値が出る
土台の検査 _ツール/audit_bars.py(足の先読み・夏時間・日の区切り)。記録は _土台の検査.txt

参考文献

  • 山岸勇輝 (2026). 練行足は、別の時計である [F017]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22891823
  • 山岸勇輝 (2026). 合成乱数には、ボラティリティの群れが無い [F033]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22893674
  • 山岸勇輝 (2026). ティックの無い枠に足を作ると、値は動かないのに数えた回数が動く [F049]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22897116
  • 山岸勇輝 (2026). 為替の「出来高足」は、ティック足と恒等的に同じものである [F053]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22898174

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「足種は、三つの物差しのどれに対して一定かで分かれる」[F054]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22898240

YOI F054FX と金融ビットコインに記録済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS

住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F054・DOI 10.5281/zenodo.22898240・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 足種は、三つの物差しのどれに対して一定かで分かれる [F054]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F054 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22898240

Yamagishi, Y. (2026). Bar Types Are Separated by Which of Three Rulers They Hold Constant [F054]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F054; DOI: 10.5281/zenodo.22898240

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