要旨
本稿が問うのは、為替の「出来高足」と「ティック足」が同じものか、である。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。
第一に、★★ 恒等的に同じである。 足の切れ目の一致率は四銘柄とも 1.0000 で、本数も 2,183,483・2,184,429・2,183,491・2,090,836 と一本残らず同じである(第3節)。
第二に、★ 数値が近いから同根なのではない。定義が同じだから同じなのである。 為替の出来高はティックの本数なので、「出来高が N たまった」と「ティックが N 来た」は同じ文である(第3節)。
第三に、これが本稿の芯である。★★ 積むものを値動きに変えると、たちまち別物になる。 一致率は 0.0135 へ、74.2 分の一に落ちる(第4節)。
第四に、★ 分離子は「何を積んだか」であって、刻みの大きさではない。 本数をそろえても、切れ目はほとんど一致しない(第4節)。
第五に、★★ ただし私の言い方が不正確だった。値動きで積む足が一定にしているのは経路の長さであって、一本の値動きではない。 一本の値動きの散らばりは 15.36 で、ティック足の 16.85 とほとんど変わらない(第5節)。
第六に、★ 合成乱数でも一致率は 1.0000 である。 恒等式なので当然であり、一致したことは検算であって発見ではない(第6節)。
本稿の射程(scope note):新しい数学定理も新しい法則も主張しない。為替に中央の取引所が無いことも、ティックが気配の更新であることも既知である。特定の商材や提唱者を論じない。実在の教材、その著者、販売元は主題ではなく、一切名指さない。特定の配信元を論じない。ティックの本数は配信元で変わる(第7節)。売買を論じない。成績も損益も測っていない。予言④の言い方が不正確だった。経路の長さと一本の値動きは別の量である(第5節)。刻み幅を一通りに決めている(第7節)。射程は日中・少数銘柄に限る。四銘柄・六年の測定である。月次の時系列モメンタム(数十市場・保有1〜12ヶ月)は学術的に文書化されており、本稿はそれを否定しない。予測を主張しない。
1. 記法と問い
為替には中央の取引所が無いので、売買された枚数は誰にも分からない。取引の道具に出る「出来高」は、その一本に入ったティックの本数である。
| 言われること | 言われないこと |
|---|---|
| 出来高足を使っている | 為替の出来高が何を数えているか |
| 出来高足とティック足は似ている | 似ているのか、同じなのか |
| 値動きで刻む足も同じ仲間である | 何を積んだかが違うこと |
観察 1.1:★ だとすれば「出来高足」と「ティック足」は同じものではないのか。
観察 1.2:★ ただし数値が近いだけでは同根と認めない。 何を動かせば答えが変わるかで分ける。
観察 1.3:為替の出来高が値動きの言い換えではないことは [F043] で測ってある。 ★ 本稿が問うのは、その出来高で刻んだ足が何と同じか、である。
問い:出来高足とティック足は同じか。そして何を変えれば別物になるのか。
2. 測る量と設計を、先に書く
走らせる前に宣言し、実行時には変えていない。
| A ティック足 | N ティックごと。N = 総ティック数 ÷ 一分足の本数 |
| B 出来高足 | 出来高の合計が N になるごと(★ 出来高 = ティックの本数) |
| C レンジ足 | 経路の長さの合計が S になるごと。S は A の一本あたりの中央にそろえる |
| 一致 | 足の終わりのティック番号の集合が一致した割合 |
| 測る量 | 一本の時間(秒)・一本の値動き(pips)・一本のティック数 |
| 散らばり | 90%点 ÷ 10%点 |
| 基準線 | ティックまで合成乱数(3 系列・時刻は実測のまま) |
| 分離子 | 何を積んだか(ティックの本数か、値動きの絶対量か) |
| 銘柄・期間 | USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD/2019–2024 |
観察 2.1:★ 切れ目で比べるのが要である。 本数が近いだけでは足りない。同じティックで切れているかを見る。
観察 2.2:N は 86・76・80・151 ティック、S は 8.4000・5.5750・8.0000・28.7475 pips である。
観察 2.3:★ S は「一本の正味の値動き」ではなく「一本の経路の長さ」にそろえた。 正味に合わせると、経路のほうがずっと長いので本数が桁で合わない。
予言(測る前に書いた)
① ★★ 恒等的に同じになる。 足の切れ目が一本残らず一致するはずである。
② ★ だが「出来高」を値動きの絶対量に変えると、たちまち別物になる。
③ ★ 一致率は、何を積んだかで決まり、刻みの大きさでは決まらない。
④ 値動きの絶対量で積む足は、一本の値動きが定義からそろう。
⑤ ★ 一本の時間は、値動きで積む足のほうが大きく散らばる。
⑥ 合成乱数でも、①の一致は恒等的に成り立つ。
3. 出来高足とティック足は、恒等的に同じである
計算 3.1 切れ目の一致
| 銘柄 | A の本数 | B の本数 | 切れ目の一致率 |
|---|---|---|---|
| USDJPY | 2,183,483 | 2,183,483 | 1.0000 |
| EURUSD | 2,184,429 | 2,184,429 | 1.0000 |
| GBPUSD | 2,183,491 | 2,183,491 | 1.0000 |
| XAUUSD | 2,090,836 | 2,090,836 | 1.0000 |
観察 3.2:予言①は当たった。 ★★ 一致率は四銘柄とも 1.0000 である。
観察 3.3:★ これは検算であって、発見ではない。 為替の出来高はティックの本数なので、「出来高が N たまった」と「ティックが N 来た」は同じ文である。
観察 3.4:★★ だから二つを並べて比べることに意味は無い。 同じ規則に二つの名前が付いているだけである。
観察 3.5:★ ティック数で刻んだ足が時計で刻んだ足と別の時計であることは [F018] で測ってある。 本稿が加えるのは、その「ティックで刻む」の別名が出来高足だということである。
4. 積むものを変えると、たちまち別物になる
計算 4.1 三つの足の一致率
| 銘柄 | A と B の一致率 | A と C の一致率 | 比 |
|---|---|---|---|
| USDJPY | 1.0000 | 0.0140 | 0.0140 |
| EURUSD | 1.0000 | 0.0139 | 0.0139 |
| GBPUSD | 1.0000 | 0.0131 | 0.0131 |
| XAUUSD | 1.0000 | 0.0074 | 0.0074 |
観察 4.2:予言②は当たった。 ★★ A と C の一致率は中央 0.0135 で、A と B の 1.0000 と比べて 74.2 分の一である。
観察 4.3:★★ これが分離子である。「何を積んだか」を変えると答えが変わり、刻みの大きさを変えても変わらない。 C の本数は 2,393,506・2,309,241・2,331,643・2,285,825 で、A とほぼ同じ桁にそろえてある。
観察 4.4:★ つまり本数をそろえても、切れ目はほとんど一致しない。 同じくらいの本数の足が、まったく違うところで切れている。
図1:横が銘柄、縦が切れ目の一致率。左がティック足と出来高足、右がティック足とレンジ足で、点線が 1 である。
5. ★ ただし「値動きで積む」も、一本の値動きを揃えない
計算 5.1 三つの足種で、何がそろい何が散らばるか(四銘柄の中央)
| 足種 | 一本の時間(秒) | 散らばり | 一本の値動き(pips) | 散らばり | ティック数 | 散らばり |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ティック足 | 42.3 | 7.04 | 0.9750 | 16.85 | 83 | 1.00 |
| 出来高足 | 42.3 | 7.04 | 0.9750 | 16.85 | 83 | 1.00 |
| レンジ足 | 37.1 | 12.28 | 1.0500 | 15.36 | 76 | 2.25 |
観察 5.2:予言⑤は当たった。 一本の時間の散らばりは、ティック足 7.04 に対しレンジ足 12.28 である。
観察 5.3:★★ だが予言④の言い方が不正確だった。 一本の値動きの散らばりは 16.85 から 15.36 へしか下がらない。 ほとんど揃っていない。
観察 5.4:★★ 理由は、レンジ足が一定にしているのが経路の長さであって、一本の正味の値動きではないからである。 足の中で上下に往復すれば、経路は伸びるのに正味の値動きは残らない。
観察 5.5:★ つまり「値動きの絶対量」という一語が、二つの別の量を指していた。 経路の長さ(往復で増える)と、正味の変位(往復で消える)である。
観察 5.6:★ 一定にしたものは、ちゃんと 1.00 になっている。 ティック足と出来高足はティック数の散らばりが 1.00 で、レンジ足は経路を一定にしているのでその量では揃っている。表に出ている 15.36 は、揃っていない別の量のほうである。
6. 合成乱数でも、一致率は 1.0000 である
計算 6.1 値動きだけを合成乱数に差し替える
| 銘柄 | 実測 A−B | 合成乱数 A−B | 実測 A−C | 合成乱数 A−C |
|---|---|---|---|---|
| USDJPY | 1.0000 | 1.0000 | 0.0140 | 0.0124 |
| EURUSD | 1.0000 | 1.0000 | 0.0139 | 0.0132 |
| GBPUSD | 1.0000 | 1.0000 | 0.0131 | 0.0124 |
| XAUUSD | 1.0000 | 1.0000 | 0.0074 | 0.0066 |
観察 6.2:予言⑥は当たった。 ★ 合成乱数でも A と B の一致率は 1.0000 である。
観察 6.3:★★ 恒等式なので当然である。一致したことは検算であって、発見ではない。
観察 6.4:★ A と C の一致率も、合成乱数で中央 0.0124 と実測の 0.0135 に近い。 値動きで積むか本数で積むかの違いは、市場の性質ではなく定義の違いである。
観察 6.5:★ この基準線が何についてゼロなのかは [F033] で測ってある。
図2:横が足種、縦が散らばり(90%点 ÷ 10%点・対数目盛り)。時間・値動き・ティック数を並べ、点線が 1 である。
7. 限界
- ⚠️ 予言④の言い方が不正確だった。 「値動きの絶対量で積む足は一本の値動きがそろう」と書いたが、一定にしているのは経路の長さであって正味の変位ではない。
- 特定の配信元を論じていない。 ティックの本数は配信元で変わる。ここで使ったのは一つである。
- 刻み幅を一通りに決めている。 N と S である。
- 足種を三つに固定している。 練行足・時計で刻む足は入れていない。
- 売買を論じていない。 成績も損益も測っていない。
- 一致を「終わりのティック番号の集合」で測っている。 別の測り方なら別の数字になる。
- 四銘柄・六年である。 他の市場、他の期間について述べるものではない。
結び
為替には中央の取引所が無い。だから取引の道具に出る「出来高」は、その一本に入ったティックの本数である。
★★ すると「出来高足」と「ティック足」は、恒等的に同じものになる。 切れ目の一致率は四銘柄とも 1.0000 で、本数も一本残らず同じである。
★ これは検算であって、発見ではない。 「出来高が N たまった」と「ティックが N 来た」は、同じ文だからである。 だから二つを並べて比べることに意味は無い。同じ規則に二つの名前が付いているだけである。
★★ ところが積むものを値動きに変えると、たちまち別物になる。 一致率は 0.0135 へ、74.2 分の一に落ちる。本数を同じ桁にそろえてあっても、切れ目はほとんど一致しない。
★ だから分離子は「何を積んだか」であって、刻みの大きさではない。
★★ そして私の言い方が一つ不正確だった。 「値動きの絶対量で積む足は一本の値動きがそろう」と書いたが、散らばりは 16.85 から 15.36 へしか下がらない。 一定にしているのは経路の長さであって、正味の変位ではないからである。足の中で往復すれば、経路は伸びるのに変位は残らない。
★ つまり「値動きの絶対量」という一語が、二つの別の量を指していた。 往復で増える量と、往復で消える量である。
★ 合成乱数でも一致率は 1.0000 で、A と C の一致率も 0.0124 と実測の 0.0135 に近い。 どちらも市場の性質ではなく、定義の性質である。
だから足種を比べるときに要るのは、名前ではない。 ★ 何を一本あたり一定にしたのかを書くことである。 そして「値動き」と書くときは、経路の長さなのか正味の変位なのかまで書くことである。
データと再現
| データ | 為替は Dukascopy 由来のティック(2019 年以降はミリ秒・bid・ask まで一致することを確認済み)。金は Dukascopy |
| 期間 | 2019–2024(六年) |
| 銘柄 | USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD |
| A ティック足 | N ティックごと。N = 総ティック数 ÷ 一分足の本数(年ごと・銘柄ごと) |
| B 出来高足 | 出来高の合計が N になるごと。出来高はティック一本につき 1 |
| C レンジ足 | 経路の長さ(|中値の差| の積み上げ)の合計が S になるごと。S は A の一本あたりの中央 |
| 一致 | 足の終わりのティック番号の集合が一致した割合 |
| 測る量 | 一本の時間(秒)・一本の値動き(pips)・一本のティック数 |
| 散らばり | 90%点 ÷ 10%点 |
| 基準線 | ティックまで合成乱数(3 系列)。時刻は実測のまま置く |
| 検算 | 検算/F053.py(--zu で図も書き出す)。本文の数字はすべて 検算/F053_output.txt から取っている |
| 図 | 図/F053_zu1・図/F053_zu2(png・svg・英語版) |
| 乱数の種 | 固定。再実行しても同じ値が出る |
| 土台の検査 | _ツール/audit_bars.py(足の先読み・夏時間・日の区切り)。記録は _土台の検査.txt |
参考文献
- 山岸勇輝 (2026). ティック数で刻んだ足は、時計で刻んだ足と別の時計である [F018]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22891916
- 山岸勇輝 (2026). 合成乱数には、ボラティリティの群れが無い [F033]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22893674
- 山岸勇輝 (2026). 為替の「出来高」は、値動きの言い換えではない [F043]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22894928
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「為替の「出来高足」は、ティック足と恒等的に同じものである」[F053]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22898174
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 為替の「出来高足」は、ティック足と恒等的に同じものである [F053]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F053 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22898174
Yamagishi, Y. (2026). A Volume Bar in Foreign Exchange Is Identically a Tick Bar [F053]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F053; DOI: 10.5281/zenodo.22898174
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author = {Yamagishi, Yuuki},
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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