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【F053】為替の「出来高足」は、ティック足と恒等的に同じものである

要旨

本稿が問うのは、為替の「出来高足」と「ティック足」が同じものか、である。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。

第一に、★★ 恒等的に同じである。 足の切れ目の一致率は四銘柄とも 1.0000 で、本数も 2,183,483・2,184,429・2,183,491・2,090,836 と一本残らず同じである(第3節)。

第二に、★ 数値が近いから同根なのではない。定義が同じだから同じなのである。 為替の出来高はティックの本数なので、「出来高が N たまった」と「ティックが N 来た」は同じ文である(第3節)。

第三に、これが本稿の芯である。★★ 積むものを値動きに変えると、たちまち別物になる。 一致率は 0.0135 へ、74.2 分の一に落ちる(第4節)。

第四に、★ 分離子は「何を積んだか」であって、刻みの大きさではない。 本数をそろえても、切れ目はほとんど一致しない(第4節)。

第五に、★★ ただし私の言い方が不正確だった。値動きで積む足が一定にしているのは経路の長さであって、一本の値動きではない。 一本の値動きの散らばりは 15.36 で、ティック足の 16.85 とほとんど変わらない(第5節)。

第六に、★ 合成乱数でも一致率は 1.0000 である。 恒等式なので当然であり、一致したことは検算であって発見ではない(第6節)。

本稿の射程(scope note):新しい数学定理も新しい法則も主張しない。為替に中央の取引所が無いことも、ティックが気配の更新であることも既知である。特定の商材や提唱者を論じない。実在の教材、その著者、販売元は主題ではなく、一切名指さない。特定の配信元を論じない。ティックの本数は配信元で変わる(第7節)。売買を論じない。成績も損益も測っていない。予言④の言い方が不正確だった。経路の長さと一本の値動きは別の量である(第5節)。刻み幅を一通りに決めている(第7節)。射程は日中・少数銘柄に限る。四銘柄・六年の測定である。月次の時系列モメンタム(数十市場・保有1〜12ヶ月)は学術的に文書化されており、本稿はそれを否定しない。予測を主張しない。

1. 記法と問い

為替には中央の取引所が無いので、売買された枚数は誰にも分からない。取引の道具に出る「出来高」は、その一本に入ったティックの本数である。

言われること 言われないこと
出来高足を使っている 為替の出来高が何を数えているか
出来高足とティック足は似ている 似ているのか、同じなのか
値動きで刻む足も同じ仲間である 何を積んだかが違うこと

観察 1.1:★ だとすれば「出来高足」と「ティック足」は同じものではないのか。

観察 1.2:★ ただし数値が近いだけでは同根と認めない。 何を動かせば答えが変わるかで分ける。

観察 1.3:為替の出来高が値動きの言い換えではないことは [F043] で測ってある。 ★ 本稿が問うのは、その出来高で刻んだ足が何と同じか、である。

問い:出来高足とティック足は同じか。そして何を変えれば別物になるのか。

2. 測る量と設計を、先に書く

走らせる前に宣言し、実行時には変えていない。

A ティック足 N ティックごと。N = 総ティック数 ÷ 一分足の本数
B 出来高足 出来高の合計が N になるごと(★ 出来高 = ティックの本数)
C レンジ足 経路の長さの合計が S になるごと。S は A の一本あたりの中央にそろえる
一致 足の終わりのティック番号の集合が一致した割合
測る量 一本の時間(秒)・一本の値動き(pips)・一本のティック数
散らばり 90%点 ÷ 10%点
基準線 ティックまで合成乱数(3 系列・時刻は実測のまま)
分離子 何を積んだか(ティックの本数か、値動きの絶対量か)
銘柄・期間 USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD/2019–2024

観察 2.1:★ 切れ目で比べるのが要である。 本数が近いだけでは足りない。同じティックで切れているかを見る。

観察 2.2:N は 86・76・80・151 ティック、S は 8.4000・5.5750・8.0000・28.7475 pips である。

観察 2.3:★ S は「一本の正味の値動き」ではなく「一本の経路の長さ」にそろえた。 正味に合わせると、経路のほうがずっと長いので本数が桁で合わない。

予言(測る前に書いた)

① ★★ 恒等的に同じになる。 足の切れ目が一本残らず一致するはずである。

② ★ だが「出来高」を値動きの絶対量に変えると、たちまち別物になる。

③ ★ 一致率は、何を積んだかで決まり、刻みの大きさでは決まらない。

④ 値動きの絶対量で積む足は、一本の値動きが定義からそろう。

⑤ ★ 一本の時間は、値動きで積む足のほうが大きく散らばる。

⑥ 合成乱数でも、①の一致は恒等的に成り立つ。

3. 出来高足とティック足は、恒等的に同じである

計算 3.1 切れ目の一致

銘柄 A の本数 B の本数 切れ目の一致率
USDJPY 2,183,483 2,183,483 1.0000
EURUSD 2,184,429 2,184,429 1.0000
GBPUSD 2,183,491 2,183,491 1.0000
XAUUSD 2,090,836 2,090,836 1.0000

観察 3.2:予言①は当たった。 ★★ 一致率は四銘柄とも 1.0000 である。

観察 3.3:★ これは検算であって、発見ではない。 為替の出来高はティックの本数なので、「出来高が N たまった」と「ティックが N 来た」は同じ文である。

観察 3.4:★★ だから二つを並べて比べることに意味は無い。 同じ規則に二つの名前が付いているだけである。

観察 3.5:★ ティック数で刻んだ足が時計で刻んだ足と別の時計であることは [F018] で測ってある。 本稿が加えるのは、その「ティックで刻む」の別名が出来高足だということである。

4. 積むものを変えると、たちまち別物になる

計算 4.1 三つの足の一致率

銘柄 A と B の一致率 A と C の一致率 比
USDJPY 1.0000 0.0140 0.0140
EURUSD 1.0000 0.0139 0.0139
GBPUSD 1.0000 0.0131 0.0131
XAUUSD 1.0000 0.0074 0.0074

観察 4.2:予言②は当たった。 ★★ A と C の一致率は中央 0.0135 で、A と B の 1.0000 と比べて 74.2 分の一である。

観察 4.3:★★ これが分離子である。「何を積んだか」を変えると答えが変わり、刻みの大きさを変えても変わらない。 C の本数は 2,393,506・2,309,241・2,331,643・2,285,825 で、A とほぼ同じ桁にそろえてある。

観察 4.4:★ つまり本数をそろえても、切れ目はほとんど一致しない。 同じくらいの本数の足が、まったく違うところで切れている。

図1 出来高足はティック足と同じもの。値動きで積むと別物になる

図1:横が銘柄、縦が切れ目の一致率。左がティック足と出来高足、右がティック足とレンジ足で、点線が 1 である。

5. ★ ただし「値動きで積む」も、一本の値動きを揃えない

計算 5.1 三つの足種で、何がそろい何が散らばるか(四銘柄の中央)

足種 一本の時間(秒) 散らばり 一本の値動き(pips) 散らばり ティック数 散らばり
ティック足 42.3 7.04 0.9750 16.85 83 1.00
出来高足 42.3 7.04 0.9750 16.85 83 1.00
レンジ足 37.1 12.28 1.0500 15.36 76 2.25

観察 5.2:予言⑤は当たった。 一本の時間の散らばりは、ティック足 7.04 に対しレンジ足 12.28 である。

観察 5.3:★★ だが予言④の言い方が不正確だった。 一本の値動きの散らばりは 16.85 から 15.36 へしか下がらない。 ほとんど揃っていない。

観察 5.4:★★ 理由は、レンジ足が一定にしているのが経路の長さであって、一本の正味の値動きではないからである。 足の中で上下に往復すれば、経路は伸びるのに正味の値動きは残らない。

観察 5.5:★ つまり「値動きの絶対量」という一語が、二つの別の量を指していた。 経路の長さ(往復で増える)と、正味の変位(往復で消える)である。

観察 5.6:★ 一定にしたものは、ちゃんと 1.00 になっている。 ティック足と出来高足はティック数の散らばりが 1.00 で、レンジ足は経路を一定にしているのでその量では揃っている。表に出ている 15.36 は、揃っていない別の量のほうである。

6. 合成乱数でも、一致率は 1.0000 である

計算 6.1 値動きだけを合成乱数に差し替える

銘柄 実測 A−B 合成乱数 A−B 実測 A−C 合成乱数 A−C
USDJPY 1.0000 1.0000 0.0140 0.0124
EURUSD 1.0000 1.0000 0.0139 0.0132
GBPUSD 1.0000 1.0000 0.0131 0.0124
XAUUSD 1.0000 1.0000 0.0074 0.0066

観察 6.2:予言⑥は当たった。 ★ 合成乱数でも A と B の一致率は 1.0000 である。

観察 6.3:★★ 恒等式なので当然である。一致したことは検算であって、発見ではない。

観察 6.4:★ A と C の一致率も、合成乱数で中央 0.0124 と実測の 0.0135 に近い。 値動きで積むか本数で積むかの違いは、市場の性質ではなく定義の違いである。

観察 6.5:★ この基準線が何についてゼロなのかは [F033] で測ってある。

図2 一定にしたものはそろい、しなかったものが散らばる

図2:横が足種、縦が散らばり(90%点 ÷ 10%点・対数目盛り)。時間・値動き・ティック数を並べ、点線が 1 である。

7. 限界

  1. ⚠️ 予言④の言い方が不正確だった。 「値動きの絶対量で積む足は一本の値動きがそろう」と書いたが、一定にしているのは経路の長さであって正味の変位ではない。
  2. 特定の配信元を論じていない。 ティックの本数は配信元で変わる。ここで使ったのは一つである。
  3. 刻み幅を一通りに決めている。 N と S である。
  4. 足種を三つに固定している。 練行足・時計で刻む足は入れていない。
  5. 売買を論じていない。 成績も損益も測っていない。
  6. 一致を「終わりのティック番号の集合」で測っている。 別の測り方なら別の数字になる。
  7. 四銘柄・六年である。 他の市場、他の期間について述べるものではない。

結び

為替には中央の取引所が無い。だから取引の道具に出る「出来高」は、その一本に入ったティックの本数である。

★★ すると「出来高足」と「ティック足」は、恒等的に同じものになる。 切れ目の一致率は四銘柄とも 1.0000 で、本数も一本残らず同じである。

★ これは検算であって、発見ではない。 「出来高が N たまった」と「ティックが N 来た」は、同じ文だからである。 だから二つを並べて比べることに意味は無い。同じ規則に二つの名前が付いているだけである。

★★ ところが積むものを値動きに変えると、たちまち別物になる。 一致率は 0.0135 へ、74.2 分の一に落ちる。本数を同じ桁にそろえてあっても、切れ目はほとんど一致しない。

★ だから分離子は「何を積んだか」であって、刻みの大きさではない。

★★ そして私の言い方が一つ不正確だった。 「値動きの絶対量で積む足は一本の値動きがそろう」と書いたが、散らばりは 16.85 から 15.36 へしか下がらない。 一定にしているのは経路の長さであって、正味の変位ではないからである。足の中で往復すれば、経路は伸びるのに変位は残らない。

★ つまり「値動きの絶対量」という一語が、二つの別の量を指していた。 往復で増える量と、往復で消える量である。

★ 合成乱数でも一致率は 1.0000 で、A と C の一致率も 0.0124 と実測の 0.0135 に近い。 どちらも市場の性質ではなく、定義の性質である。

だから足種を比べるときに要るのは、名前ではない。 ★ 何を一本あたり一定にしたのかを書くことである。 そして「値動き」と書くときは、経路の長さなのか正味の変位なのかまで書くことである。

データと再現

データ 為替は Dukascopy 由来のティック(2019 年以降はミリ秒・bid・ask まで一致することを確認済み)。金は Dukascopy
期間 2019–2024(六年)
銘柄 USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD
A ティック足 N ティックごと。N = 総ティック数 ÷ 一分足の本数(年ごと・銘柄ごと)
B 出来高足 出来高の合計が N になるごと。出来高はティック一本につき 1
C レンジ足 経路の長さ(|中値の差| の積み上げ)の合計が S になるごと。S は A の一本あたりの中央
一致 足の終わりのティック番号の集合が一致した割合
測る量 一本の時間(秒)・一本の値動き(pips)・一本のティック数
散らばり 90%点 ÷ 10%点
基準線 ティックまで合成乱数(3 系列)。時刻は実測のまま置く
検算 検算/F053.py(--zu で図も書き出す)。本文の数字はすべて 検算/F053_output.txt から取っている
図 図/F053_zu1・図/F053_zu2(png・svg・英語版)
乱数の種 固定。再実行しても同じ値が出る
土台の検査 _ツール/audit_bars.py(足の先読み・夏時間・日の区切り)。記録は _土台の検査.txt

参考文献

  • 山岸勇輝 (2026). ティック数で刻んだ足は、時計で刻んだ足と別の時計である [F018]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22891916
  • 山岸勇輝 (2026). 合成乱数には、ボラティリティの群れが無い [F033]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22893674
  • 山岸勇輝 (2026). 為替の「出来高」は、値動きの言い換えではない [F043]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22894928

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「為替の「出来高足」は、ティック足と恒等的に同じものである」[F053]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22898174

YOI F053FX と金融ビットコインに記録済み

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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F053・DOI 10.5281/zenodo.22898174・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 為替の「出来高足」は、ティック足と恒等的に同じものである [F053]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F053 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22898174

Yamagishi, Y. (2026). A Volume Bar in Foreign Exchange Is Identically a Tick Bar [F053]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F053; DOI: 10.5281/zenodo.22898174

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指紋(SHA-256)と確かめ方
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