Yamagishi Complexity Torus Lab山岸勇輝ラボ

【F055】同じ一つの規則を五つの時計で回すと、揃うのは方向とコストだけである

要旨

本稿が問うのは、同じ一つの規則を五つの時計で回したとき、何が揃って何が揃わないか、である。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。

第一に、★★ これが本稿の芯である。揃ったのは二つだけだった。 方向の情報 D は -0.0540 から +0.2789 pips のあいだにあり、五つともコスト 0.7123 から 0.7304 pips を下回る。そのコストは 1.0254 倍しか違わない(第3節・第4節)。

第二に、★★ 揃わないものは大きく違う。 件数は 57.4639 倍、一本の時間は 62.5735 倍、一本の値動きは 11.3276 倍ちがう(第4節)。

第三に、★ 一定にしたものが揃う。 一時間足の時間の散らばりは 1.00、ティック足の値動きの散らばりは 14.92 で、どちらもその足がいちばん小さい(第5節)。

第四に、★★ 予言④は外れた。 変位で刻むレンジ足の 15.01 より、出来事の数で刻むティック足の 14.92 のほうが小さい。「値動き」という一語が、経路の長さと正味の変位という二つの量を指していた(第6節)。

第五に、★ 一分足だけ日次 t が 2 を超えた(-2.9864)。ただし額は -0.0540 pips で、コスト 0.7129 pips を大きく下回る(第3節)。

第六に、★ 合成乱数でも同じ形になる。 D は -0.1598 から +0.0222 pips で、日次 |t| は 0.1044 までである(第7節)。

本稿の射程(scope note):新しい数学定理も新しい法則も主張しない。時間変形と従属確率過程は古典的な題材である。特定の商材や提唱者を論じない。実在の教材、その著者、販売元は主題ではなく、一切名指さない。規則を一つに固定している。直前の足の向きで建て、24 本先で決済する(第7節)。出口を論じない。固定の先までの値動きで測っており、成績も損益も測っていない。五つのうち二つは定義から同じである。ティック足と出来高足で、それは [F053] で測ってある(第5節)。[F019] は四つの時計で同じことをしている。本稿が加えるのは五つ目と、揃う量と揃わない量を一枚の表にすることである(第1節)。射程は日中・少数銘柄に限る。四銘柄・六年の測定である。月次の時系列モメンタム(数十市場・保有1〜12ヶ月)は学術的に文書化されており、本稿はそれを否定しない。予測を主張しない。

1. 記法と問い

本系列は「足種は時計である」を何度も測ってきた。時計で刻む足、出来事の数で刻む足、変位の絶対量で刻む足がある。★ では、同じ一つの規則をその五つで回したら、何が揃って何が揃わないのか。

刻むもの 一本あたり一定にするもの
時計 経過した時間
出来事の数 経過したティックの本数
変位の絶対量 経過した経路の長さ

観察 1.1:★ 規則の文は、五つとも一字も変わらない。 「直前の足が上げたら買い、下げたら売り、24 本先で決済する」と書ける。変わるのは「一本」の意味だけである。

観察 1.2:★ だから、答えが変わったとすれば、それは規則ではなく一本の意味が変えたことになる。

観察 1.3:[F019] は四つの時計で同じことをしている。 ★ 本稿が加えるのは、五つ目(出来高足)と、揃う量と揃わない量を一枚の表にすることである。 重なりは大きいので、そこを先に書いておく。

観察 1.4:どの足種がどの物差しに対して一定かは [F054] で測ってある。 ★ 本稿はその上で「同じ規則を回す」ほうを見る。

問い:同じ一つの規則を五つの時計で回すと、何が揃い、何が揃わないのか。

2. 測る量と設計を、先に書く

走らせる前に宣言し、実行時には変えていない。

時計 刻むもの
T 一分足 時計
H 一時間足 時計
K ティック足 出来事の数
V 出来高足 出来事の数
R レンジ足 変位の絶対量
規則 直前の足の向き(終値 − 始値の符号)で建て、24 本先で決済
D 平均(向き × これから 24 本先の値動き)。単位は pips
t 日次クラスタ
コスト その足の中のスプレッドの中央(pips)
散らばり 上位一割の点 ÷ 下位一割の点(1.00 なら完全に一定)
基準線 ティックまで合成乱数(3 系列・時刻とスプレッドは実測のまま)
分離子 何で刻んだか(時計・出来事の数・変位の絶対量)
銘柄・期間 USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD/2019–2024

観察 2.1:★ 刻みの大きさは、一時間足と本数がそろうように取ってある。 N は 5,120・4,534・4,780・9,046 ティック、S は 511.6875・340.5750・488.2750・1749.0050 pips である。

観察 2.2:★ 本数をそろえたのは、件数の差が「刻みが粗いか細かいか」から来るのを避けるためである。 それでも件数は揃わない。理由は第4節に出る。

予言(測る前に書いた)

① ★★ 方向の情報は、五つとも揃ってゼロになる。

② ★ 一本あたりのコストは揃う。

③ ★★ 件数と一本の時間は揃わない。

④ ★ 一本の値動きの散らばりは、変位で刻む足がいちばん小さい。

⑤ ★ 出来高足はティック足と揃う。

⑥ 合成乱数でも、揃う量は揃い、揃わない量は揃わない。

3. 同じ一つの規則を、五つの時計で回す

計算 3.1 五つの時計(四銘柄の中央)

時計 刻むもの 件数 D(pips) 日次 t コスト(pips)
T 一分足 時計 2,084,015 -0.0540 -2.9864 0.7129
H 一時間足 時計 36,266 +0.2789 +0.1188 0.7199
K ティック足 出来事の数 36,322 -0.0355 +0.2277 0.7123
V 出来高足 出来事の数 36,322 -0.0355 +0.2277 0.7123
R レンジ足 変位の絶対量 37,825 +0.2164 +0.2450 0.7304

観察 3.2:予言①は当たった。 ★★ D は -0.0540 から +0.2789 pips のあいだにあり、五つともコスト 0.7123 から 0.7304 pips を下回る。

観察 3.3:予言②は当たった。 ★ コストは 0.7123 から 0.7304 pips で、最大 ÷ 最小は 1.0254 倍である。 時計を変えても、払う額は変わらない。

観察 3.4:★ 一分足だけ日次 t が 2 を超えた(-2.9864)。 ただし額は -0.0540 pips で、コスト 0.7129 pips を大きく下回る。 ★ 件数が 2,084,015 あるので、小さな額でも t は立つ。

観察 3.5:★ t が立つことと、額が足りることは別である。 本系列で何度も出た形がここでも出た。

観察 3.6:★ ティック足と出来高足は、件数も D も t もコストも、四つとも同じ値である。 定義から同じものだからで、これは検算であって発見ではない。

図1 どの時計で回しても、方向は出ない

図1:横が時計、縦が D(pips)。実測と合成乱数を並べ、一本あたりのコストを破線で重ねてある。

4. 揃うものと、揃わないもの

計算 4.1 七つの量(四銘柄の中央・最大 ÷ 最小)

量 最小 最大 最大 ÷ 最小 揃ったか
方向の情報 D -0.0540 0.2789 ― 揃わない
一本のコスト 0.7123 0.7304 1.0254 揃った
件数 36266.5000 2084015.5000 57.4639 揃わない
一本の時間(秒) 57.5168 3599.0229 62.5735 揃わない
一本の値動き(pips) 0.7250 8.2125 11.3276 揃わない
値動きの散らばり 14.9171 32.2500 2.1620 揃わない
時間の散らばり 1.0018 9.1525 9.1362 揃わない

観察 4.2:予言③は当たった。 ★★ 件数は 57.4639 倍、一本の時間は 62.5735 倍ちがう。

観察 4.3:⚠️ D の行は「揃わない」に入れてある。 符号をまたぐので比が定義できず、値そのものは揃っていないからである。 ★ 揃っているのは「五つともコストを下回る」という点であって、D の数値ではない。 そこは分けて書かなければならない。

観察 4.4:★ 表は二つに割れる。 1.0254 倍のコストと、57.4639 倍・62.5735 倍・11.3276 倍の群である。

観察 4.5:★ 一分足の一本の値動きの中央は 0.7250 pips で、一本あたりのコスト 0.7129 pips とほとんど同じである。 一分足では、一本の値動きがまるごとコストに消える。

観察 4.6:★ 本数をそろえて取ったのに件数が 57.4639 倍ちがうのは、一分足だけ刻みを宣言で固定したからである。 N と S は一時間足に合わせてあり、一分足は合わせていない。

図2 揃うものと、揃わないもの

図2:横が量、縦が最大 ÷ 最小(対数目盛り)。2 倍のところに破線を引いてある。

5. 一定にしたものは揃い、しなかったものが散らばる

計算 5.1 一本の中身(四銘柄の中央)

時計 一本の時間(秒) 散らばり 一本の値動き(pips) 散らばり
T 一分足 57.5 1.31 0.7250 32.25
H 一時間足 3599.0 1.00 5.7750 20.63
K ティック足 2838.9 5.58 7.9250 14.92
V 出来高足 2838.9 5.58 7.9250 14.92
R レンジ足 2603.6 9.15 8.2125 15.01

観察 5.2:★ 時計で刻む足は時間が揃う。 一時間足の時間の散らばりは 1.00 で、上位一割と下位一割が同じ値である。

観察 5.3:★ 出来事の数と変位で刻む足は、時間が散らばる。 ティック足 5.58、レンジ足 9.15 である。

観察 5.4:★ 逆に、時計で刻む足は値動きが散らばる。 一分足 32.25、一時間足 20.63 である。

観察 5.5:予言⑤は当たった。 ★ ティック足と出来高足の切れ目の一致率は 1.0000 である。 為替では出来高がティックの本数なので、二つは同じ規則である。それは [F053] で測ってある。

観察 5.6:★ 一分足の一本の時間の中央は 57.5 秒であって 60 秒ではない。 ティックの無い枠に足を作らないからで、それは [F049] で測ってある。

6. 予言④は外れた。「値動き」が二つの量を指していた

計算 6.1 値動きの散らばりを小さい順に(四銘柄の中央)

時計 一定にしたもの 値動きの散らばり
K ティック足 出来事の数 14.92
V 出来高足 出来事の数 14.92
R レンジ足 変位の絶対量 15.01
H 一時間足 時間 20.63
T 一分足 時間 32.25

観察 6.2:★★ 予言④は外れた。 変位で刻むレンジ足 15.01 より、出来事の数で刻むティック足 14.92 のほうが小さい。

観察 6.3:★★ 理由は、レンジ足が一定にしているのが経路の長さであって、一本の正味の値動きではないからである。 足の中で上下に往復すれば、経路は伸びるのに正味の値動きは残らない。

観察 6.4:★★ つまり「値動き」という一語が、往復で増える量(経路の長さ)と往復で消える量(正味の変位)という二つの別の量を指していた。 私はその二つを区別せずに予言を書いた。

観察 6.5:★ 同じ言い方の誤りは [F053] でも踏んでいる。 そこでも一本の値動きの散らばりは下がりきらなかった。

観察 6.6:★ ただし 14.92 と 15.01 の差はほとんど無い。 「外れた」の中身は「レンジ足が負けた」ではなく「差がつかなかった」である。

観察 6.7:★ 順序そのものは意味を持つ。 出来事の数と変位で刻む三つが 14.92・14.92・15.01 で固まり、時計で刻む二つが 20.63・32.25 と離れる。

7. 基準線と限界

計算 7.1 値動きだけを合成乱数に差し替える(四銘柄の中央)

時計 実測 D 合成乱数 D 実測の日次 t の絶対値 合成乱数の日次 t の絶対値 実測のコスト
T 一分足 -0.0540 +0.0005 2.9864 0.0256 0.7129
H 一時間足 +0.2789 -0.1598 0.1188 0.0517 0.7199
K ティック足 -0.0355 -0.1088 0.2277 0.1044 0.7123
V 出来高足 -0.0355 -0.1088 0.2277 0.1044 0.7123
R レンジ足 +0.2164 +0.0222 0.2450 0.0791 0.7304

観察 7.2:予言⑥は当たった。 ★ 合成乱数の D は -0.1598 から +0.0222 pips で、実測の -0.0540 から +0.2789 と同じ帯にある。

観察 7.3:★ 合成乱数の日次 t の絶対値は 0.1044 までである。 一分足の実測 2.9864 だけが、合成乱数から離れている。

観察 7.4:★ その 2.9864 も、額は -0.0540 pips でコスト 0.7129 pips を大きく下回る。 合成乱数と区別がつくことと、食えることは別である。

観察 7.5:★ この基準線が何についてゼロなのかは [F033] で測ってある。

限界

  1. ⚠️ 規則を一つに固定している。 直前の足の向きで建て、24 本先で決済する。
  2. 出口を論じていない。 固定の先までの値動きで測っている。
  3. 刻みの大きさを一通りに決めている。 N と S である。
  4. 五つのうち二つは定義から同じである。 ティック足と出来高足で、それは [F053] で測ってある。
  5. 一分足だけ刻みを宣言で固定しており、他の四つと本数がそろっていない。
  6. [F019] は四つの時計で同じことをしている。 本稿が加えるのは五つ目と一枚の表である。
  7. 四銘柄・六年である。 他の市場、他の期間について述べるものではない。

結び

同じ一つの規則を、五つの時計で回した。建てる文も決済する文も一字も変えていない。変えたのは「一本」の意味だけである。

★★ 揃ったのは二つだけだった。 方向の情報 D は -0.0540 から +0.2789 pips のあいだにあり、五つともコスト 0.7123 から 0.7304 pips を下回る。そのコストは 1.0254 倍しか違わない。

★★ 揃わないものは大きく違う。 件数は 57.4639 倍、一本の時間は 62.5735 倍、一本の値動きは 11.3276 倍である。

★ 一定にしたものが揃う。 一時間足は時間の散らばりが 1.00、ティック足は値動きの散らばりが 14.92 で、どちらもその足がいちばん小さい。

★ 一分足だけ日次 t が 2 を超えた(-2.9864)。だが額は -0.0540 pips で、一本の値動きの中央 0.7250 pips がまるごとコスト 0.7129 pips に消える足である。t が立つことと、額が足りることは別である。

★★ そして予言④は外れた。 変位で刻むレンジ足の 15.01 より、ティック足の 14.92 のほうが小さい。「値動き」という一語が、往復で増える経路の長さと、往復で消える正味の変位という二つの量を指していた。 同じ誤りを [F053] でも踏んでいる。

★ 合成乱数でも同じ形になる(D は -0.1598 から +0.0222)。

だから時計を選ぶことは、答えを選ぶことではない。 ★ 時計を選ぶと、件数と一本の意味が変わる。出てくる答えは変わらない。 「この足種なら見える」と言うときに要るのは、足種の名前ではなく、その足で測った額とコストを並べた一行である。

データと再現

データ 為替は Dukascopy 由来のティック(2019 年以降はミリ秒・bid・ask まで一致することを確認済み)。金は Dukascopy
期間 2019–2024(六年)
銘柄 USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD
T 一分足 一分ごと
H 一時間足 一時間ごと
K ティック足 N ティックごと。N = 総ティック数 ÷ 一時間足の本数
V 出来高足 出来高の合計が N になるごと(出来高 = ティックの本数)
R レンジ足 経路の長さの合計が S になるごと。S は K の一本あたりの中央
規則 直前の足の向き(終値 − 始値の符号)で建て、24 本先で決済
D 平均(向き × これから 24 本先の値動き)。単位は pips
t 日次クラスタ
コスト その足の中のスプレッドの中央(pips)
散らばり 上位一割の点 ÷ 下位一割の点
基準線 ティックまで合成乱数(3 系列)。時刻とスプレッドは実測のまま置く
検算 検算/F055.py(--zu で図も書き出す)。本文の数字はすべて 検算/F055_output.txt から取っている
図 図/F055_zu1・図/F055_zu2(png・svg・英語版)
乱数の種 固定。再実行しても同じ値が出る
土台の検査 _ツール/audit_bars.py(足の先読み・夏時間・日の区切り)。記録は _土台の検査.txt

参考文献

  • 山岸勇輝 (2026). 同じ規則を、四つの時計で回すと何が揃い何が揃わないか [F019]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22891953
  • 山岸勇輝 (2026). 合成乱数には、ボラティリティの群れが無い [F033]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22893674
  • 山岸勇輝 (2026). ティックの無い枠に足を作ると、値は動かないのに数えた回数が動く [F049]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22897116
  • 山岸勇輝 (2026). 為替の「出来高足」は、ティック足と恒等的に同じものである [F053]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22898174
  • 山岸勇輝 (2026). 足種は、三つの物差しのどれに対して一定かで分かれる [F054]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22898240

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「同じ一つの規則を五つの時計で回すと、揃うのは方向とコストだけである」[F055]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22898302

YOI F055FX と金融ビットコインに記録済み

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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F055・DOI 10.5281/zenodo.22898302・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 同じ一つの規則を五つの時計で回すと、揃うのは方向とコストだけである [F055]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F055 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22898302

Yamagishi, Y. (2026). Run One Rule on Five Clocks and Only the Direction and the Cost Agree [F055]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F055; DOI: 10.5281/zenodo.22898302

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