同じに見える二つを、動かして見分ける道具の話です。数学が苦手でも大丈夫です。絵を見ながら、ゆっくり読んでください。
数学や物理が得意な方、より深く学びたい方・研究したい方は、詳しい記事「分離子(ぶんりし)とは何か」へどうぞ。
空を、鳥が一羽飛んでいます。でも、本当に一羽でしょうか。
窓から見えるのは、ここだけです。見えている所だけでは、一羽か二羽か分かりません。
合流して、別れる渡り鳥
実は、この鳥は二羽でした。二羽は途中で合流して、しばらく一緒に飛んでいたのです。一緒に飛んでいる所だけを見ても、どちらがどちらかは分かりません。
下のつまみで「日にち」を動かしてみてください。先へ進めると、どうなるでしょう。手前へもどすと、どうでしょう。
二羽が重なって、一羽に見えます。
合流した所を過ぎると、二羽は別々の道へ行きました。手前へもどすと、来た所も別でした。同じに見えた二羽は、出どころ(根)がちがう鳥だったのです。
ここで大事なことが一つあります。最後まで一緒に飛んだとしても、同じ所から来た鳥とは決まりません。「このつまみでは分かれなかった」というだけです。
絵の場所の名前は、このたとえのために作ったものです。気づいて分けるのは鳥ではなく、つまみを動かした人の方です。
三つの言葉
ここまでのことに、名前を付けておきます。
動かしたら、二つが分かれたもの。
記事の言葉では:同じに見える二つについて、何を動かすと別々に振る舞うか。その動かすものです。
同じに見えても、ちがう所から来ていること。
記事の言葉では:数や見た目が同じでも、出どころ(根)が別であること。
別々に見えても、同じ所から来ていること。
記事の言葉では:別々の場所で出会った二つが、同じ出どころを持つこと。
鳥の話では、渡り鳥の日にちが分離子でした。二羽は別根でした。では、同根はどうやって確かめるのでしょう。それを、木で見てみます。
根っこで確かめる木
1土の上だけを見ると
花をつけた一本の木に見えます。根元は生け垣にかくれています。本当に一本の木でしょうか。
2風を吹かせると
風を吹かせると、木の両側の枝が別々にゆれました。けれども、同じ木の枝どうしでも、風では別々にゆれます。根が一つでも二つでも、同じようにゆれるのです。だから風では、同じ根か別の根かは分かりません。
木は、根から水を吸い上げて、枝の先の花まで運びます。そこで、色のついた水(色水)を使います。色水を吸った根につながる花だけが、色に染まります。
3地面の片側に色水をまく
片方の枝の花だけが染まりました。片方だけ染まったので、二本は根が別の木です。これが別根です。答え合わせに土の中を見せると、根が二つありました。
お話の決まり:色水を吸った根につながる花は、みな染まることにしています。本物の大きな木で、ここまではっきり染まるとは限りません。
4別の木で試すと
同じ形の、別の木です。地面の片側に色水をまいたのに、両方の枝の花が染まりました。それでも、まだ「同じ根かもしれない」です。二本の木の根が、どちらも色水の所まで来ているだけかもしれないからです。これを同根の候補と呼びます。
5その木の土を掘ってみる
土を掘ると、根は一つで、両方の枝につながっていました。ここまでたどって、初めて同根と言えます。
木の話から分かることは三つです。片方だけ染まれば別根。両方染まれば、まだ「かも」(同根の候補)。根までたどれたら同根。また、風のように、同じ木でも別々に動いてしまうものでは、見分けられません。
同じ海の、二匹の鮭
たとえ話です。同じ海で、そっくりな二匹の鮭が並んで泳いでいます。鮭は、生まれた川へ帰ると言われます。このお話では、鮭は生まれた川の水が増えると、その川の方へ向きを変えることにします。この二匹は、同じ川から来たのでしょうか。
1同じ海で、並んで泳ぐ二匹
見た目では、どちらの川から来たのか分かりません。
2海を冷やすと
二匹とも、同じように深くもぐりました。海の冷たさは、両方に同じように効きます。だからこれでは分かりません。
3西の川の水位を上げる
西の川から来た一匹だけが、向きを変えました。もう一匹は動きません。二匹は別の川から来ていました(別根)。海を冷やしたときは、一緒にもぐった二匹でした。
4今度は、東の川の水位を上げる
西の川は、元にもどしました。今度は、もう一匹が向きを変えました。こちらは東の川から来ていました。二つの川の両方で確かめると、二匹の出どころがはっきりします。
お話の決まり:鮭が生まれた川の水位にこう応える、というのは、たとえのための決まりです。本物の鮭がこう動くとは限りません。鮭の話の根は、鮭が生まれた川です。木の絵では根が下にありましたが、鮭の絵では根(川)が上にあります。このたとえは、noteの記事「同じ数でも、別の川から来ている」から借りました。
合言葉
動かしてみる。
片方だけ動いたら、べつの根っこ。
いっしょに動いたら、まだ「かも」。
計算の途中でも、同じことが起きる
これは、数学や物理の計算でも起きます。複雑な計算を進めていくと、だれでも途中で、いま出てきた式がどの型の、何を計算しているのかが分からなくなることがあるのではないでしょうか。プログラムでいう「型のエラー」に似た取り違えです。
別の所から来た二つの量が、計算の途中で同じ2や同じ4π(πは円周率、3.14…のこと)になって合流すると、どちらがどちらか分からなくなります。そんなときも、合言葉は同じです。何か一つを動かして、片方だけが動くかを見ます。
より深く学びたい方・研究したい方へ
ここから先は、数学と物理の話です。同じ考えで、2や4πのような数を分けます。ここで読み終えても大丈夫です。
詳しい記事:分離子(ぶんりし)とは何か:同じに見える二つを、動かして見分ける(月と太陽・線の絵・動かせる六つの実験・論文の一覧)
この頁は、査読を経ていない、著者自身による公開(プレプリント)の論文の考え方を、たとえ話でやさしくまとめたものです。絵の場所の名前や、色水・鮭の動き方は、たとえのためのお話の決まりです。
論文はどれもCC BY 4.0で公開しています。分離子の考えのもとになった論文300の記録は、YOIの記録のページにあります。