Yamagishi Complexity Torus Lab山岸勇輝ラボ

【M055】老衰の死亡が 2005→2024 年に 7.85 倍になったうち、人口の年齢構成の分は 2.51 倍、年齢ごとの率の分は 3.25 倍

要旨

人口動態統計の死因年次推移分類(1950〜2024 年・5 歳階級)で、老衰の死亡の増え方を、人口の年齢構成・年齢ごとの率・同じ年齢の中の死因の入れ替わりの三つに分けて並べた。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。

第一に、表はそろっている。どの死因・年も 総数 = 男 + 女、5 歳階級の和 + 不詳 = 総数 で、老衰のシートから逆算した人口と全死因のシートから逆算した人口は相対 0.001 未満でそろう(第3節)。

第二に、老衰の死亡数は 1950 年の 58,412 から 2000 年の 21,213 まで減り、2024 年には 206,887 になった。 2005→2024 年の 7.85 倍(年齢不詳を除く)のうち、率を 2005 年のままにして人口の年齢構成だけを 2024 年にすると 2.51 倍、人口を 2005 年のままにして年齢ごとの率だけを 2024 年にすると 3.25 倍になる。同じ分類の 2005→2016 年でも、率の分(1.98 倍)が年齢構成の分(1.80 倍)より大きい(第4節)。

第三に、年齢ごとの率は U の字を描いた。 85〜89 歳の老衰の率(人口 10 万対)は、1950 年の 10813.0 から 2005 年の 290.3 まで 37.2 分の 1 に下がり、2024 年には 1043.5(2005 年の 3.59 倍)に戻った。80〜84 歳・85〜89 歳とも、男女どちらでも 2005 年がいちばん低い(第5節)。

第四に、ここが本稿の芯である。2005→2024 年に、80 歳以上のどの 5 歳階級でも、老衰の率は 2.66〜4.36 倍に上がり、肺炎・心疾患(高血圧性を除く)・脳血管疾患の率の和は 0.50〜0.59 倍に下がった。全死因の率は 0.85〜1.26 倍で、この二つのどちらの幅とも重ならない。 全死因に占める老衰の割合は、100 歳以上で 0.226 から 0.478 になった(第6節)。

第五に、老衰の率の増えた分 ÷ 三つの率の和の減った分は、80〜84 歳の 0.21 から年齢とともに大きくなり、95〜99 歳で 0.99、100 歳以上で 1.83 になる。 95〜99 歳では、増えた分と減った分がほぼ同じ大きさである。分類が同じ 2005→2016 年でも、同じ並び(0.11 から 1.49)になる(第7節)。

第六に、分けるのは人口の年齢構成か、年齢ごとの率か、同じ年齢の中の死因の入れ替わりか。老衰の増え方には三つとも入っていて、どれか一つで言い切れない。

射程注記:本稿は新しい数学定理も新しい法則も主張しない。死亡数と死亡率は公開の表にあり、年齢構成と率に分ける方法は古くからある。本稿はそれを老衰に当てて並べた。本稿は公開の集計データの数の形を述べる構造的解釈であり、医学的な助言・診断・治療の推奨ではない。著者は医師ではない。個人の健康に関する判断は医師・医療機関に相談すること。査読を経ていないプレプリントである。 「老衰」という診断の是非は論じない。 死因は死亡診断書にもとづく原死因で、書いた人を責めるものではない。同じ年齢の中で老衰の率が上がり、ほかの死因の率が下がった形が、診断書の書き方の移り変わりなのか、亡くなり方そのものの変わり方なのかは、この集計の数では分けられない。看取った家族が読むことを考え、一人の亡くなり方の見通しとしては書かない。データについて:人口動態統計(e-Stat)は政府標準利用規約(第2.0版)に従って使い、本稿の比は、これを加工して作成した。本稿が加えたこと:老衰の死亡の増え方を、年齢構成・年齢ごとの率・同じ年齢の中の死因の入れ替わりに分け、年齢ごとの率が 2005 年を底に U の字を描くこと、80 歳以上のどの年齢でも老衰と三つの死因が逆向きに動き、その釣り合いが年齢とともに傾くことを、一つの表から示したこと。

1. 記号と問い

  • 老衰:死因年次推移分類の Hi13。心疾患は「心疾患(高血圧性を除く)」(Hi05)。
  • 三つの和:同じ年齢の、肺炎(Hi07)・心疾患(高血圧性を除く)(Hi05)・脳血管疾患(Hi06)の死亡率の和。
  • 年齢構成の分・率の分:率を前の年のままにして人口だけ後の年にした死亡数と、人口を前の年のままにして率だけ後の年にした死亡数を、前の年の死亡数で割った比。
  • 率:人口 10 万対の死亡率。

問い:老衰の死亡が増えたのは、高齢の人が増えたからか、同じ年齢で老衰の率が上がったからか。上がったなら、同じ年齢のほかの死因はどう動いたか。

観察 1.1:M001 は、「死亡率が上がった」が年齢構成の動きと年齢別の率の動きを一語で呼んでいることを示した。M020 は、1950 年の死因の 1 位は結核だが、いまの年齢構成にそろえると老衰になることを示した。本稿は、その老衰の数そのものの増え方を分ける。

2. 下見と設計

正直に書く:設計は表を見てから決めた。

内容
表 人口動態統計 令和6年(確定数)上巻 第5.15表(死因年次推移分類 × 性 × 5 歳階級 × 年次の死亡数と死亡率)
下見で気づいたこと 老衰の死亡数がいちばん少ないのは 2000 年、80〜89 歳の老衰の率がいちばん低いのは 2005 年で、底の年が違った
比べる年 2005 年(率の底)と 2024 年。2017 年に死因の分類の一部改正があったので(M041)、同じ分類の中の 2005→2016 年も並べる
物差し 年齢構成の分と率の分、年齢ごとの率の倍率、全死因に占める老衰の割合、老衰の増えた分 ÷ 三つの減った分

3. データと確かめ

計算 3.1 取得したファイルを SHA-256 で固定し、次を確かめた。

  • 表の題名は「上巻 死亡 第5.15表 … 死亡数及び死亡率(人口10万対)」。シート「総数」「13老衰」「07肺炎」「05心疾患」「06脳血管疾患」があり、死因名は Hi13老衰・Hi07肺炎・Hi05心疾患(高血圧性を除く)・Hi06脳血管疾患。
  • 年は 1950〜2005 年の 5 年おき・2010 年・2014〜2024 年の 24 個で、どのシートも同じ。
  • どの死因・年も 死亡数の総数 = 男 + 女、どの死因・性・年も 5 歳階級の和 + 不詳 = 総数。
  • 人口は全死因のシートの死亡数 ÷ 死亡率 × 100,000 で出した。老衰のシートから同じように逆算した人口とは、2005 年以降・80 歳以上の 191 個の升目で相対 0.00053 以内でそろう。

4. 年齢構成の分と、率の分

計算 4.1 老衰の死亡数の伸びを分ける(年齢不詳を除く 21 の 5 歳階級)

期間 死亡数 倍率 年齢構成の分 率の分 二つの積
2005→2024 年 26,360 → 206,885 7.85 2.51 3.25 8.15
2005→2016 年 26,360 → 92,836 3.52 1.80 1.98 3.55
2016→2024 年 92,836 → 206,885 2.23 1.39 1.62 2.26

観察 4.2:2005→2024 年の 7.85 倍は、年齢構成の分 2.51 倍と率の分 3.25 倍に分かれる。 二つの積 8.15 は実際の比と相対 0.038 以内でそろう。三つの期間とも、率の分のほうが年齢構成の分より大きい。高齢の人が増えただけでは、老衰の死亡の増え方の半分にも届かない。

5. 年齢ごとの率は U の字を描いた

観察 5.1:85〜89 歳の老衰の率は、1950 年の 10813.0 から 2005 年の 290.3 まで 37.2 分の 1 に下がり、2024 年には 1043.5 に戻った(2005 年の 3.59 倍)。 80〜84 歳も 1950 年の 5584.1 から 2005 年の 68.6 に下がり、2024 年に 299.0 になった。80〜84 歳・85〜89 歳とも、男女計・男・女のどれも 2005 年がいちばん低い。老衰の死亡数の底(2000 年)と年齢ごとの率の底(2005 年)は同じ年ではない。

図1 85〜89 歳の死因ごとの死亡率

図1:85〜89 歳の死因ごとの死亡率(人口 10 万対・縦は対数)。金が老衰、緑が肺炎、橙が心疾患(高血圧性を除く)、紫が脳血管疾患、灰色の破線が全死因。縦の点線は 2005 年。

6. 芯、同じ年齢の中で、老衰と三つの死因は逆向きに動いた

計算 6.1 80 歳以上の 5 歳階級ごとの率(人口 10 万対・2005 年 → 2024 年)

年齢 老衰 老衰の倍率 三つの和の倍率 全死因の倍率 全死因に占める老衰
80〜84 歳 68.6 → 299.0 4.36 0.50 0.85 0.013 → 0.069
85〜89 歳 290.3 → 1043.5 3.59 0.51 0.91 0.032 → 0.128
90〜94 歳 1080.0 → 3199.8 2.96 0.53 0.97 0.071 → 0.217
95〜99 歳 3044.6 → 8454.0 2.78 0.57 1.09 0.127 → 0.324
100 歳以上 8522.0 → 22666.7 2.66 0.59 1.26 0.226 → 0.478

観察 6.2:80 歳以上のどの 5 歳階級でも、老衰の率は 2.66〜4.36 倍に上がり、肺炎・心疾患・脳血管疾患の率の和は 0.50〜0.59 倍に下がった。全死因の率は 0.85〜1.26 倍で、老衰の幅とも三つの和の幅とも重ならない。 老衰の倍率は年齢が高いほど小さい(80〜84 歳 4.36、100 歳以上 2.66)が、全死因に占める割合は年齢が高いほど大きく、100 歳以上では 0.478 になった。分類が同じ 2005→2016 年でも、どの年齢でも老衰は上がり(1.79〜2.20 倍)、三つの和は下がった(0.67〜0.78 倍)。

図2 80 歳以上の年齢ごとの率の倍率

図2:80 歳以上の 5 歳階級ごとの、2024 年の率 ÷ 2005 年の率。金が老衰、紺が肺炎・心疾患・脳血管疾患の和、灰色が全死因。点線は 1(変わらない)。

7. 増えた分と減った分の釣り合いは、年齢とともに傾く

計算 7.1 老衰の率の増えた分 ÷ 三つの率の和の減った分(人口 10 万対)

年齢 老衰の増えた分(2005→2024) 三つの減った分(2005→2024) 比(2005→2024) 比(2005→2016)
80〜84 歳 230.4 1094.1 0.21 0.11
85〜89 歳 753.2 2129.2 0.35 0.22
90〜94 歳 2119.8 3781.3 0.56 0.42
95〜99 歳 5409.4 5456.5 0.99 1.05
100 歳以上 14144.7 7736.7 1.83 1.49

観察 7.2:比は 80〜84 歳の 0.21 から年齢とともに大きくなり、95〜99 歳で 0.99、100 歳以上で 1.83 になる。 80〜84 歳では、三つの死因が減った分のうち老衰で増えたのは一部で、全死因の率は下がった(0.85 倍)。95〜99 歳では、増えた分と減った分がほぼ同じで、100 歳以上では老衰の増えた分のほうが大きく、全死因の率は上がった(1.26 倍)。同じ分類の 2005→2016 年でも、比は 0.11 から 1.49 まで同じ向きに並ぶ。

観察 7.3:この形は、同じ年齢の死亡の中で「どの死因の名で数えられるか」が移った形とも、亡くなり方そのものが変わった形とも読める。二つを分けるのは、この集計の数ではできない。 言えるのは、老衰の増え方が、年齢構成・年齢ごとの率・同じ年齢の中の入れ替わりの三つを一語で呼んでいることまでである。

8. 限界

  1. 死因は原死因で、どの死因の名で数えるかは死亡診断書と分類の決まりによる。 書き方の移り変わりと亡くなり方の変わり方は分けられない。「老衰」という診断の是非は論じない。
  2. 2017 年に死因の分類の一部改正があった(肺炎の数え方が変わった・M041)。2005→2024 年の三つの和の下がりにはその分が入るので、同じ分類の 2005→2016 年も並べた。
  3. 人口は死亡数 ÷ 死亡率から逆算した。2005 年より前の 90〜94 歳の率は 90 歳以上の値なので、年齢の細かい比べは 2005 年以降にした。
  4. 全国の年ごとの集計で、都道府県・施設は比べない。一人の亡くなり方の見通しではない。

結び

老衰の死亡数は 2000 年を底に増え、2005→2024 年の 7.85 倍は、人口の年齢構成の分 2.51 倍と年齢ごとの率の分 3.25 倍に分かれた。85〜89 歳の老衰の率は 1950 年から 2005 年に 37.2 分の 1 まで下がって U の字の底を打ち、2024 年に 3.59 倍に戻った。80 歳以上のどの年齢でも、老衰の率は 2.66〜4.36 倍に上がり、肺炎・心疾患・脳血管疾患の率の和は 0.50〜0.59 倍に下がり、その釣り合いは 95〜99 歳でほぼ 1(0.99)になった。

分けているものは三つ、人口の年齢構成か、年齢ごとの率か、同じ年齢の中の死因の入れ替わりか。

「老衰で亡くなる人が増えた」と聞いたら、高齢の人が増えたのか、同じ年齢で老衰と呼ばれる割合が増えたのか、同じ年齢のほかの死因はどう動いたのかを、一緒に確かめる。

データと再現

データ 人口動態統計 令和6年(確定数)上巻 第5.15表(厚生労働省・e-Stat)(2026 年 9 月 26 日に取得)
利用条件 e-Stat は政府標準利用規約(第2.0版)に従う。本稿の比は、これを加工して作成したもので、国が作成した数ではない
範囲 日本・1950〜2024 年
検算 検算/M055.py(--zu で図も書く)。本文の数字はすべて 検算/M055_output.txt から取った
生データ data/ に取得したファイルと SOURCES.md(URL・取得日・SHA-256・利用条件・定義と計算の置き方)
図 図/M055_zu1・図/M055_zu2(png・svg・英語版)

参考文献

  • 厚生労働省. 人口動態統計 令和6年(確定数)上巻 第5.15表. e-Stat(2026年9月26日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
  • 山岸勇輝 (2026). 「死亡率が上がった」は、年齢構成の動きと年齢別の率の動きを一語で呼んでいる [M001]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22963112
  • 山岸勇輝 (2026). 1950 年の死因の 1 位は結核だが、いまの年齢構成にそろえると老衰で、結核は 5 位になる [M020]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22968057
  • 山岸勇輝 (2026). 2017 年の肺炎の死亡の減りは、同じ死亡票を新旧の分類で数え直した比でほぼ言い当てられる。肺炎は実際の段差 0.826 に対して新旧比 0.810、65 の死因で相関 0.969、減った分は認知症・アルツハイマー病・心不全・COPD などへ移った [M041]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22974374

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「老衰の死亡が 2005→2024 年に 7.85 倍になったうち、人口の年齢構成の分は 2.51 倍、年齢ごとの率の分は 3.25 倍」[M055]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22975275

YOI M055医療統計ビットコインに記録済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS

住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M055・DOI 10.5281/zenodo.22975275・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 老衰の死亡が 2005→2024 年に 7.85 倍になったうち、人口の年齢構成の分は 2.51 倍、年齢ごとの率の分は 3.25 倍 [M055]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M055 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22975275

Yamagishi, Y. (2026). Of the 7.85-Fold Rise in Deaths from Senility from 2005 to 2024, the Age Composition Accounts for 2.51-Fold and the Age-Specific Rates for 3.25-Fold [M055]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M055; DOI: 10.5281/zenodo.22975275

@misc{yamagishi2026yoiM055,
  author = {Yamagishi, Yuuki},
  title = {Of the 7.85-Fold Rise in Deaths from Senility from 2005 to 2024, the Age Composition Accounts for 2.51-Fold and the Age-Specific Rates for 3.25-Fold},
  year = {2026},
  howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M055},
  doi = {10.5281/zenodo.22975275},
  note = {Preprint}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
f92e48fdb956a2c822bec4135ae5eee843e0f730ac95326f10592a8ec3f70ae5 yamagishi_M055_7_85_fold_rise_deaths_senility_2005_2024_20260926_jp.pdf
42b8e742a6020c77a858cbbdfe2a53fa6caeac9ca0ac37cd99cc21b407df3a4b yamagishi_M055_7_85_fold_rise_deaths_senility_2005_2024_20260926_en.pdf

PDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。