要旨
令和7年国民生活基礎調査(介護票)で、介護が必要になった原因を、主な原因(一つ)と原因(複数回答)の二つの表で、性と年齢ごとに並べた。数は「介護を要する者 10 万対」(介護を要する者の総数を 100,000 としたときの数)である。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。
第一に、表はそろっている。主な原因の和・男女の和・年齢の和は丸めの幅(最大 3)で総数に一致し、複数回答の和はどの升目でも総数以上、要介護度別の表の原因ごとの総数は主な原因の表と一致する(第3節)。
第二に、男女計の 1 位は、主な原因では認知症(16,743)、複数回答では高齢による衰弱(26,100)である。 男性は主な原因でも複数回答でも脳血管疾患が 1 位(6,737・8,997)。女性の主な原因は、高齢による衰弱 11,821・骨折・転倒 11,739・認知症 11,723 と、1 位と 3 位の差が 98(女性の計の 0.0015)しかない(第4節)。
第三に、ここが本稿の芯である。主な原因の 1 位は年齢で入れ替わる。 男女計では 65〜79 歳が脳血管疾患(75〜79 歳で 0.231)、80〜89 歳が認知症(85〜89 歳で 0.224)、90 歳以上が高齢による衰弱(0.298)。高齢による衰弱の割合は 65〜69 歳の 0.019 から 90 歳以上の 0.298 まで年齢とともに上がり、脳血管疾患は 75〜79 歳から下がる。複数回答でも、入れ替わりの順は同じである(第5節)。
第四に、複数回答 ÷ 主な原因は、原因によって 1.25 から 3.50 まで違う。 視覚・聴覚障害 3.50・糖尿病 3.12・呼吸器疾患 2.61・心疾患 2.53 の四つは、挙がることは多いが主な原因にはなりにくい。パーキンソン病 1.25・脳血管疾患 1.33・認知症 1.35 は、挙がればほぼ主な原因になる(第6節)。
第五に、主な原因によって要介護度の構成も違う。 主な原因が認知症の人は要支援の割合が 0.126 と小さく、関節疾患は 0.600、視覚・聴覚障害は 0.592 と大きい(第7節)。
第六に、分けるのは原因を一つだけ選ぶか、当てはまるものを全部選ぶか。「介護が必要になった原因の 1 位」は、選び方と年齢と性によって答えが替わる。
射程注記:本稿は新しい数学定理も新しい法則も主張しない。原因の数は公開の表にあり、本稿はそれを並べて比べただけである。本稿は公開の集計データの数の形を述べる構造的解釈であり、医学的な助言・診断・治療の推奨ではない。著者は医師ではない。個人の健康に関する判断は医師・医療機関に相談すること。査読を経ていないプレプリントである。 原因を減らす方法・予防には立ち入らない。 国民生活基礎調査は抽出の調査で、数は推計である。本稿の数は「介護を要する者 10 万対」で人数ではなく、差の小さい順位(女性の 1〜3 位など)は、調査の揺れの中にあるかもしれない。原因は調査の答え(主な原因は一つ、複数回答は当てはまるものすべて)で、医学的な診断の記録ではない。介護する家族・介護を受ける本人が読むことを考え、一人の見通しとしては書かない。データについて:国民生活基礎調査(e-Stat)は政府標準利用規約(第2.0版)に従って使い、本稿の割合・比は、これを加工して作成した。本稿が加えたこと:介護が必要になった原因を、主な原因と複数回答の二つの表で並べ、1 位が選び方で認知症から高齢による衰弱に替わること、年齢で脳血管疾患・認知症・高齢による衰弱と入れ替わること、挙がっても主な原因になりにくい原因があることを示したこと。
1. 記号と問い
- 主な原因:第23表。介護が必要になった主な原因を一つだけ答えたもの。
- 複数回答:第25表。当てはまる原因をすべて答えたもの。
- 10 万対:介護を要する者の総数を 100,000 としたときの数。
- 割合:性・年齢の升目ごとに、原因の数 ÷ その升目の総数。
- 順位:その他・わからない・不詳を除いた 12 の原因の中の順位。
- 複数回答 ÷ 主な原因:同じ原因の、複数回答の数 ÷ 主な原因の数(男女計)。
問い:「介護が必要になった原因の 1 位」は、一つだけ選ぶか全部選ぶか、何歳か、男女どちらかで、どう替わるか。
観察 1.1:M045 は、「糖尿病の人」の数が何を数えるかで桁が変わることを示した。M058 は、要介護(要支援)認定の割合が、どの区分まで数えるかで年齢の傾きが変わることを示した。本稿は、介護の原因を数える二つの数え方を並べる。
2. 下見と設計
正直に書く:設計は表を見てから決めた。
| 内容 | |
|---|---|
| 表 | 令和7年国民生活基礎調査(介護票)第23表(主な原因 × 通院の有無 × 性 × 年齢階級)、第25表(原因・複数回答 × 同じ区分)、第24表(要介護度 × 主な原因) |
| 下見で気づいたこと | 数は人数ではなく「介護を要する者 10 万対」だった。そのため升目の中の割合と、同じ原因の二つの表の比で比べる |
| 通院の有無 | 総数の区分だけを使う |
| 物差し | 1 位の原因、年齢ごとの割合、複数回答 ÷ 主な原因、要介護度の構成 |
3. データと確かめ
計算 3.1 取得した 3 本のファイルを SHA-256 で固定し、次を確かめた。
- 第23表の題名は「第023表 介護を要する者数,介護が必要となった主な原因・通院の有無・性・年齢階級別」、第25表は「第025表 … 介護が必要となった原因(複数回答)…」、第24表は「第024表 介護を要する者数,現在の要介護度の状況・介護が必要となった主な原因別」。三つとも「介護を要する者数10万対」。
- 原因の見出しは総数と 15 区分で、第23表と第25表で同じ。総数の行は 100,000。
- 丸めの差は、主な原因の和と総数が最大 3、男 + 女 と総数が最大 1、年齢の和と計が最大 2。複数回答の原因の和は、どの升目でも総数以上。
- 第24表の原因ごとの総数は、第23表の総数の行と 15 区分すべてで一致する。
4. 全体と男女の 1 位
計算 4.1 上位 5 つの原因(10 万対)
| 主な原因(一つ) | 複数回答 | |
|---|---|---|
| 男女計 | 認知症 16,743・高齢による衰弱 15,586・骨折・転倒 14,638・脳血管疾患 12,496・関節疾患 9,134 | 高齢による衰弱 26,100・認知症 22,539・骨折・転倒 22,517・脳血管疾患 16,653・関節疾患 16,350 |
| 男 | 脳血管疾患 6,737・認知症 5,021・高齢による衰弱 3,766・骨折・転倒 2,899・心疾患 1,963 | 脳血管疾患 8,997・認知症 6,896・高齢による衰弱 6,790・心疾患 5,020・骨折・転倒 4,857 |
| 女 | 高齢による衰弱 11,821・骨折・転倒 11,739・認知症 11,723・関節疾患 7,453・脳血管疾患 5,758 | 高齢による衰弱 19,310・骨折・転倒 17,660・認知症 15,643・関節疾患 12,901・脳血管疾患 7,656 |
観察 4.2:男女計の 1 位は、主な原因では認知症(16,743)、複数回答では高齢による衰弱(26,100)で、選び方で 1 位が替わる。 男性は、どちらでも脳血管疾患が 1 位。女性の主な原因は、高齢による衰弱 11,821・骨折・転倒 11,739・認知症 11,723 で、1 位と 3 位の差は 98(女性の計 65,762 の 0.0015)。この三つの順位は、抽出の調査の揺れの中にあるかもしれない。
5. 芯、1 位は年齢で入れ替わる
計算 5.1 年齢ごとの主な原因の割合(男女計)
| 年齢 | 脳血管疾患 | 認知症 | 高齢による衰弱 | 骨折・転倒 | 関節疾患 | 1 位 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 65〜69 歳 | 0.192 | 0.078 | 0.019 | 0.055 | 0.049 | 脳血管疾患 |
| 70〜74 歳 | 0.216 | 0.073 | 0.036 | 0.113 | 0.059 | 脳血管疾患 |
| 75〜79 歳 | 0.231 | 0.138 | 0.041 | 0.094 | 0.091 | 脳血管疾患 |
| 80〜84 歳 | 0.129 | 0.178 | 0.098 | 0.145 | 0.138 | 認知症 |
| 85〜89 歳 | 0.070 | 0.224 | 0.169 | 0.167 | 0.083 | 認知症 |
| 90 歳以上 | 0.058 | 0.158 | 0.298 | 0.185 | 0.079 | 高齢による衰弱 |
観察 5.2:男女計の主な原因の 1 位は、65〜79 歳が脳血管疾患、80〜89 歳が認知症、90 歳以上が高齢による衰弱である。 高齢による衰弱の割合は 65〜69 歳の 0.019 から 90 歳以上の 0.298 まで年齢とともに上がり、脳血管疾患は 75〜79 歳の 0.231 から 90 歳以上の 0.058 まで下がる。男性は 80〜84 歳まで脳血管疾患が 1 位で、認知症が 1 位になるのは 85〜89 歳。複数回答でも、男女計の入れ替わりの順(脳血管疾患 → 認知症 → 高齢による衰弱)は同じで、90 歳以上では高齢による衰弱が 0.485 挙がる。

図1:年齢ごとの主な原因の割合(男女計)。紫が脳血管疾患、紺が認知症、金が高齢による衰弱、橙が骨折・転倒、緑が関節疾患。
6. 挙がるが、主な原因にはなりにくい
計算 6.1 複数回答 ÷ 主な原因(男女計・10 万対)
| 原因 | 主な原因 | 複数回答 | 複数回答 ÷ 主な原因 |
|---|---|---|---|
| 視覚・聴覚障害 | 1,901 | 6,655 | 3.50 |
| 糖尿病 | 2,861 | 8,924 | 3.12 |
| 呼吸器疾患 | 1,885 | 4,923 | 2.61 |
| 心疾患 | 4,818 | 12,192 | 2.53 |
| 関節疾患 | 9,134 | 16,350 | 1.79 |
| 悪性新生物 | 2,992 | 5,190 | 1.73 |
| 高齢による衰弱 | 15,586 | 26,100 | 1.67 |
| 骨折・転倒 | 14,638 | 22,517 | 1.54 |
| 脊髄損傷 | 1,744 | 2,399 | 1.38 |
| 認知症 | 16,743 | 22,539 | 1.35 |
| 脳血管疾患 | 12,496 | 16,653 | 1.33 |
| パーキンソン病 | 2,968 | 3,699 | 1.25 |
観察 6.2:視覚・聴覚障害(3.50)・糖尿病(3.12)・呼吸器疾患(2.61)・心疾患(2.53)の四つは、複数回答で主な原因の 2.5 倍を超えて挙がる。 挙がることは多いが、それを主な原因とする人は少ない。反対に、パーキンソン病(1.25)・脳血管疾患(1.33)・認知症(1.35)は、挙がればほぼ主な原因になる。どの原因も、複数回答は主な原因以上である。

図2:原因ごとの、主な原因(紺・一つ)と原因(金・複数回答)の数(男女計・介護を要する者 10 万対)。
7. 主な原因ごとの要介護度
計算 7.1 主な原因ごとの要支援・要介護3〜5の割合(第24表)
| 主な原因 | 要支援の割合 | 要介護3〜5の割合 |
|---|---|---|
| 脳血管疾患 | 0.278 | 0.353 |
| 心疾患 | 0.422 | 0.228 |
| 悪性新生物 | 0.349 | 0.216 |
| 呼吸器疾患 | 0.424 | 0.195 |
| 関節疾患 | 0.600 | 0.127 |
| 認知症 | 0.126 | 0.308 |
| パーキンソン病 | 0.265 | 0.372 |
| 糖尿病 | 0.407 | 0.215 |
| 視覚・聴覚障害 | 0.592 | 0.065 |
| 骨折・転倒 | 0.372 | 0.216 |
| 脊髄損傷 | 0.485 | 0.183 |
| 高齢による衰弱 | 0.422 | 0.125 |
観察 7.2:主な原因が認知症の人は、要支援の割合が 0.126 と、12 の原因でいちばん小さい。 関節疾患(0.600)と視覚・聴覚障害(0.592)は、要支援の割合がいちばん大きい。要介護3〜5の割合は、パーキンソン病(0.372)と脳血管疾患(0.353)が大きい。要介護3〜5だけを数えると、主な原因の順は認知症・脳血管疾患・骨折・転倒・高齢による衰弱となり、高齢による衰弱は全区分の 2 位から 4 位になる。どの区分まで数えるかで順が変わる形は、M058 が認定の割合で見たものと同じである。
8. 限界
- 国民生活基礎調査は抽出の調査で、数は推計。本稿の数は 10 万対で、人数ではない。差の小さい順位は、揺れの中にあるかもしれない。
- 原因は調査の答えで、医学的な診断の記録ではない。「高齢による衰弱」「わからない」などの答えの中身は、この表では分からない。
- 一つの年(2025 年)の年齢の違いの比べで、同じ人の変わり方ではない。
- 原因を減らす方法・予防には立ち入らない。都道府県は比べない。一人の見通しではない。
結び
介護が必要になった原因の 1 位は、主な原因(一つ)では認知症、複数回答では高齢による衰弱だった。年齢では、65〜79 歳の脳血管疾患、80〜89 歳の認知症、90 歳以上の高齢による衰弱と入れ替わり、女性は 1〜3 位が 98 の差に並んでいた。視覚・聴覚障害・糖尿病・呼吸器疾患・心疾患は、挙がることは多いが主な原因にはなりにくかった。
分けているものは一つ、原因を一つだけ選ぶか、当てはまるものを全部選ぶか。
「介護が必要になった原因の 1 位」と聞いたら、主な原因の数か複数回答の数か、何歳の、男女どちらの数かを、一緒に確かめる。
データと再現
| データ | 令和7年国民生活基礎調査(介護票)第23表・第25表・第24表(厚生労働省・e-Stat)(2026 年 9 月 26 日に取得) |
| 利用条件 | e-Stat は政府標準利用規約(第2.0版)に従う。本稿の割合・比は、これを加工して作成したもので、国が作成した数ではない |
| 範囲 | 日本・2025 年 |
| 検算 | 検算/M059.py(--zu で図も書く)。本文の数字はすべて 検算/M059_output.txt から取った |
| 生データ | data/ に取得した 3 本と SOURCES.md(URL・取得日・SHA-256・利用条件・定義と計算の置き方) |
| 図 | 図/M059_zu1・図/M059_zu2(png・svg・英語版) |
参考文献
- 厚生労働省. 令和7年国民生活基礎調査 介護 第23表・第25表・第24表. e-Stat(2026年9月26日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
- 山岸勇輝 (2026). 「糖尿病の人」の数は、何を数えるかで桁が変わる。70 歳以上の 10 万人あたり、検査で強く疑われる 19,500・通院している 12,130・その日に受療した 449〜1,948・一年に亡くなる 44.8、40〜49 歳からの上がり方も 3.1 倍から 29.4 倍まで違う [M045]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22974556
- 山岸勇輝 (2026). 要介護(要支援)認定の割合は、65〜84 歳では 4.26〜4.97 年ごとに倍になり、同じ年齢の死亡率(5.87〜7.90 年)より速い。85 歳から遅くなるのは要支援で、要介護3〜5だけを数えると 90〜94 歳まで 4.64〜5.61 年ごとに倍になり続ける [M058]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22975817
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「介護が必要になった主な原因の 1 位は認知症(10 万対 16,743)だが、当てはまるものを全部選ぶと高齢による衰弱(26,100)」[M059]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22975921
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M059・DOI 10.5281/zenodo.22975921・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 介護が必要になった主な原因の 1 位は認知症(10 万対 16,743)だが、当てはまるものを全部選ぶと高齢による衰弱(26,100) [M059]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M059 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22975921
Yamagishi, Y. (2026). The Leading Main Cause for Needing Care Is Dementia (16,743 per 100,000), but Choosing All That Apply It Is Frailty Due to Old Age (26,100) [M059]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M059; DOI: 10.5281/zenodo.22975921
@misc{yamagishi2026yoiM059,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {The Leading Main Cause for Needing Care Is Dementia (16,743 per 100,000), but Choosing All That Apply It Is Frailty Due to Old Age (26,100)},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M059},
doi = {10.5281/zenodo.22975921},
note = {Preprint}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
5b4e6efc320c5aaebff53204584dca74738e16eae4ef19abbf49f2984559d570 yamagishi_M059_leading_main_cause_needing_care_dementia_20260926_jp.pdf2cab1dda1fc908613af38c6994bf3bed2bc03928e8b8d9eee5edf3623c484b85 yamagishi_M059_leading_main_cause_needing_care_dementia_20260926_en.pdfPDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。