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【論文554】「平均 370 点までもつ」の半分は、256 点までに鳴る

要旨

管理図の性能は「平均して何点まで誤報が出ないか」で語られる。本稿が示すのは、その平均が典型値ではなく、半分はその $0.69$ 倍で鳴ること、そしてこの $0.69$ が $\ln 2$ であって管理図の性質ではないことである。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、使う確率は独立に確かめられる。一点が三シグマの外に出る確率 $\mathbf{0.0026997961}$ が、慣行の $0.0027$ と $10^{-5}$ で一致する(第2節)。

第二に、これが本稿の芯である。平均は $\mathbf{370.3983}$ 点、中央は $\mathbf{256.3938}$ 点である。半分はその手前で鳴る(第2節)。

第三に、比は $\ln 2$ である。$\mathbf{0.692211}$ 対 $0.693147$ で、$0.001$ 以内。管理図の性質ではなく、幾何分布の性質である(第2節)。

第四に、平均に達するまでに鳴る確率は $1-1/e$ である。$\mathbf{0.632618}$ 対 $0.632121$。$6$ 割以上が「平均より早い」(第3節)。

第五に、一枚の管理図でも誤報は珍しくない。$25$ 点で $\mathbf{0.065353}$、$100$ 点で $\mathbf{0.236884}$ である(第3節)。

第六に、分離子は、鳴る確率が点ごとに一定かどうかである。一定でなければ連長は幾何分布ではなくなり、$\ln 2$ も $1-1/e$ も消える(第4節)。

キーワード:管理図、平均連長、三シグマ管理限界、幾何分布、中央値。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。三シグマ限界も平均連長も幾何分布も標準的である。管理図の運用を勧めない。限界を何シグマに置くべきかは述べない。工程がずれた場合の連長を扱わない。ここで測ったのは工程が安定しているときの誤報だけである。ずれを検出するまでの点数は別の主題である。分布は正規と仮定した。裾が重ければ $0.0027$ そのものが変わる。連続する点のあいだの相関を入れない。各点は独立とした。自己相関があれば連長は幾何分布ではない。「連の判定」など追加規則を入れない。一点が限界を越えたときだけを見ており、$7$ 点連続などの規則を足せば誤報はもっと増える。「三シグマは緩い」とも「厳しい」とも書かない。平均と中央がずれるという事実だけを示す。既刊との関係:論文308 はあなたが乗るバスの間隔が平均の $2$ 倍だと示した。どちらも「平均は典型ではない」型だが、根が違う。あちらは長い区間ほど観測されやすいという標本の偏り、こちらは幾何分布そのものの歪みである。あちらは平均より大きく、こちらは平均より小さい側にずれる。論文317 は有意水準が「一回あたり」の約束だと示した。$0.0027$ も一点あたりの約束であって、一枚の管理図あたりではない。$25$ 点並べれば $\mathbf{0.065353}$ になる。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。「中央が平均の $\ln 2$ 倍」と「平均までに鳴る確率が $1-1/e$」は同じ幾何分布から出る同根である。加えたのは、三シグマの確率を独立に知られた値と照合したこと、平均と中央を $\mathbf{370.3983}$・$\mathbf{256.3938}$ と測り比を $\ln 2$ と突合せたこと、中央連長を逆算して確率がちょうど $0.5$ に戻ることを確かめたこと、平均までに鳴る確率を $1-1/e$ と照合したこと、分離子を「鳴る確率が点ごとに一定か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:工程が安定しているとき、管理図の一点が三シグマ限界の外に出る確率を $\alpha$ とする。各点が独立なら、次に外れるまでの点数 $L$ は幾何分布に従い

$$\Pr(L>m)=(1-\alpha)^{m},\qquad \mathbb{E}[L]=\frac{1}{\alpha}$$

である。この $\mathbb{E}[L]$ が平均連長($\mathrm{ARL}$)と呼ばれる。

観察 1.1 性能はこの平均で語られる。「三シグマなら平均 $370$ 点までもつ」という言い方をする。平均が典型値であるという前提が入っている。

観察 1.2 幾何分布は歪んでいる。最頻値は $1$ 点目である。最も起こりやすいのは「すぐ鳴る」ことで、平均を押し上げているのは長い尾のほうである。

問い:平均と、半分の場合とは、どれだけ離れているか。

2. 平均は $370$、中央は $256$

計算 2.1:正規分布から $\alpha$ を出し、平均と中央を求めた。

量 値
一点が三シグマの外に出る確率 $\alpha$ $\mathbf{0.0026997961}$
平均連長 $1/\alpha$ $\mathbf{370.3983}$ 点
中央連長 $\ln(1/2)/\ln(1-\alpha)$ $\mathbf{256.3938}$ 点
中央 $\div$ 平均 $\mathbf{0.692211}$
$\ln 2$ $0.693147$

観察 2.2 $\alpha$ は独立に確かめられる。慣行で引かれる $0.0027$ と $10^{-5}$ 以内で一致した。自作の実装ではなく、外にある値との突合せである。

観察 2.3 $\mathrm{ARL}$ も独立に確かめられる。慣行の $370$ と $1$ 点以内で一致した。ここまでは教科書の値をなぞっている。

観察 2.4 これが本稿の芯である。中央は $\mathbf{256.3938}$ 点で、平均より $114$ 点も手前にある。「平均 $370$ 点までもつ」と聞いた人が思う数より、半分の場合は早く鳴る。

観察 2.5 比は $\ln 2$ である。$\mathbf{0.692211}$ と $0.693147$ が $0.001$ 以内で合う。$\ln 2$ は本稿の計算とまったく無関係に定まる数なので、これは検査である。合わなければ幾何分布の扱いが違う。

観察 2.6 管理図の性質ではない。$\ln 2$ が出るのは連長が幾何分布だからで、三シグマにも正規分布にも依らない。限界を何シグマに置いても、$\alpha$ が小さいかぎり中央は平均の $0.69$ 倍である。

観察 2.7 逆算でも確かめた。得た中央連長を戻すと、そこまでに鳴っている確率がちょうど $0.5$ になる($10^{-12}$)、解き損ないではないことを別に見ている。

3. 何点までに鳴るか

計算 3.1:点数を決めて、そこまでに一度でも鳴る確率を出した。

点数 一度でも鳴る確率
$25$(一枚ぶん) $\mathbf{0.065353}$
$100$ $\mathbf{0.236884}$
$370$(平均連長) $\mathbf{0.632222}$
$\mathbf{370.3983}$(平均連長ちょうど) $\mathbf{0.632618}$
$1-1/e$ $0.632121$

観察 3.2 平均に達するまでに鳴る確率は $1-1/e$ である。$\mathbf{0.632618}$ と $0.632121$ が $0.001$ 以内、これも本稿と無関係に定まる数との突合せである。

観察 3.3 $6$ 割以上が「平均より早い」。平均まで持つほうが少数派である。平均という言葉が、多数派の経験を表していない。

観察 3.4 一枚の管理図でも誤報は珍しくない。$25$ 点で $\mathbf{0.065353}$、つまり $15$ 枚に $1$ 枚ほどは工程が正常でも鳴る。$0.06$ より大きく $0.07$ より小さい。$100$ 点なら $\mathbf{0.236884}$ で、四回に一回近い。

観察 3.5 論文317 の読み違いが、ここでも起きる。$0.0027$ は一点あたりの約束であって、一枚あたりではない。有意水準が「一回あたり」であるのと同じ型である。

観察 3.6 論文308 とは根が違う。あちらは長い区間ほど観測されやすいという標本の偏りで、経験する値が平均より $2$ 倍「大きく」なった。こちらは幾何分布そのものの歪みで、典型は平均より「小さい」。同じ「平均は典型ではない」でも、ずれる向きが逆である。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、鳴る確率が点ごとに一定かどうかである。一定なら連長は幾何分布で、中央は平均の $\ln 2$ 倍になる。工程が徐々にずれていく場合、鳴る確率は点とともに上がるので連長は幾何分布ではなく、$\ln 2$ も $1-1/e$ も出てこない。

観察 4.2 第二の分離子は点どうしの独立である。自己相関があれば、鳴った直後にまた鳴りやすい。そのときは中央がさらに前へ寄る。

観察 4.3 論文300 の基準では、この二つは同根である。「中央が平均の $\ln 2$ 倍」と「平均までに鳴る確率が $1-1/e$」は、どちらも $(1-\alpha)^{m}$ 一つから出る。体系のふだんの結論は「別根」だが、ここは同根である。同根だと言えることも、判定の結果である。

観察 4.4 言わないこと。「三シグマは緩い」とも「厳しい」とも書かない。平均と中央がずれるという事実だけを示す。限界をどこに置くかは、見逃しの側を測らなければ決まらない。

5. 点呼と結び

  1. $\alpha=\mathbf{0.0026997961}$(計算 2.1):慣行の $0.0027$ と $10^{-5}$ 一致。
  2. 平均連長 $\mathbf{370.3983}$ 点(計算 2.1):慣行の $370$ と $1$ 点以内。
  3. 中央連長 $\mathbf{256.3938}$ 点(計算 2.1):本稿の芯。
  4. 比 $\mathbf{0.692211}$(観察 2.5):$\ln 2$ と $0.001$ 以内。
  5. 逆算で確率が $0.5$ に戻る(観察 2.7):$10^{-12}$。
  6. 平均までに鳴る確率 $\mathbf{0.632618}$(計算 3.1):$1-1/e$ と $0.001$ 以内。
  7. $25$ 点で $\mathbf{0.065353}$(計算 3.1):一枚でも珍しくない。
  8. $100$ 点で $\mathbf{0.236884}$(計算 3.1):四回に一回近い。
  9. 分離子は確率が点ごとに一定か(観察 4.1):ずれれば幾何分布でない。
  10. 二つの事実は同根(観察 4.3):どちらも $(1-\alpha)^{m}$ から。

結び:管理図の性能は「平均して何点まで誤報が出ないか」で語られる。ところがその平均は典型値ではない。三シグマの管理図で一点が外に出る確率は $\mathbf{0.0026997961}$、平均連長は $\mathbf{370.3983}$ 点だが、中央連長は $\mathbf{256.3938}$ 点で、$114$ 点も手前にある。半分は「平均 $370$ 点までもつ」と聞いた人が思う数より早く鳴る。使った $\alpha$ は慣行の $0.0027$ と $10^{-5}$ 以内、$\mathrm{ARL}$ も慣行の $370$ と $1$ 点以内で合っており、ここまでは教科書の値をなぞっている。そして中央と平均の比は $\ln 2$ である。$\mathbf{0.692211}$ と $0.693147$ が $0.001$ 以内で合う。$\ln 2$ は本稿の計算と無関係に定まる数なので、これは突合せになっている。$\ln 2$ が出るのは連長が幾何分布だからであって、三シグマにも正規分布にも依らない。限界を何シグマに置いても、$\alpha$ が小さいかぎり中央は平均の $0.69$ 倍である。管理図の性質ではなく、分布の性質である。得た中央連長を戻すと、そこまでに鳴っている確率がちょうど $0.5$ になることも別に確かめた。平均に達するまでに鳴ってしまう確率は $1-1/e$ である。$\mathbf{0.632618}$ と $0.632121$ が $0.001$ 以内で合う。$6$ 割以上が「平均より早い」のだから、平均という言葉は多数派の経験を表していない。一枚ぶんの $25$ 点でも一度でも鳴る確率は $\mathbf{0.065353}$、$15$ 枚に $1$ 枚ほどは工程が正常でも鳴り、$100$ 点なら $\mathbf{0.236884}$ で四回に一回近い。論文317 の読み違いが重なる。$0.0027$ は一点あたりの約束であって、一枚あたりではない。分離子は、鳴る確率が点ごとに一定かどうかである。一定なら連長は幾何分布で中央は平均の $\ln 2$ 倍になり、工程が徐々にずれていく場合は鳴る確率が点とともに上がるので、$\ln 2$ も $1-1/e$ も出てこない。第二の分離子は点どうしの独立で、自己相関があれば中央はさらに前へ寄る。論文300 の基準では、「中央が平均の $\ln 2$ 倍」と「平均までに鳴る確率が $1-1/e$」はどちらも $(1-\alpha)^{m}$ 一つから出るので同根である。体系のふだんの結論は別根だが、同根だと言えることもまた判定の結果である。論文308 とは根が違う。あちらは長い区間ほど観測されやすいという標本の偏りで、経験する値が平均より $2$ 倍大きくなった。こちらは幾何分布そのものの歪みで、典型は平均より小さい。同じ「平均は典型ではない」でも、ずれる向きが逆である。正直に言えば、管理図の運用は勧めていない。限界を何シグマに置くべきかは述べず、測ったのは工程が安定しているときの誤報だけで、ずれを検出するまでの点数は別の主題である。分布は正規と仮定しており、裾が重ければ $0.0027$ そのものが変わる。各点は独立とし、$7$ 点連続などの追加規則も入れていない(足せば誤報はもっと増える)。そして「三シグマは緩い」とも「厳しい」とも書かない。平均と中央がずれるという事実だけを示した。

参考文献

  1. Feller, W. (1968). An Introduction to Probability Theory and Its Applications, Volume 1 (3rd ed.). Wiley.
  2. Montgomery, D. C. (2019). Introduction to Statistical Quality Control (8th ed.). Wiley.
  3. Shewhart, W. A. (1931). Economic Control of Quality of Manufactured Product. Van Nostrand.
  4. Woodall, W. H. (2000). Controversies and Contradictions in Statistical Process Control. Journal of Quality Technology.
  5. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  6. 山岸勇輝 (2026). 『あなたが乗るバスの間隔は、平均の $2$ 倍である』[論文308]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22172305
  7. 山岸勇輝 (2026). 『有意水準は「一回あたり」の約束であって、研究あたりではない』[論文317]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22208819

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「「平均 370 点までもつ」の半分は、256 点までに鳴る」[論文554]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014204

YOI 554第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 「平均 370 点までもつ」の半分は、256 点までに鳴る [論文554]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/554 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014204

Yamagishi, Y. (2026). Half the Charts That ``Last 370 Points on Average'' Alarm by 256 [Paper 554]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/554; DOI: 10.5281/zenodo.23014204

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