【論文621】コラッツの操作は平均して縮むが、3 を 5 に替えると平均して伸びる

要旨

正の整数 $n$ が奇数なら $3n+1$ に、偶数なら $n/2$ に置き換える操作をくり返すと、どの数から始めてもいつか $1$ に着くと予想されている(コラッツの予想)。その振る舞いを数で確かめ、なぜ縮むのか、何を替えると縮まなくなるのかを見る。新しい定理も法則も主張しない。予想は証明しない。

第一に、$10^6$ までのどの数も $1$ に着く。$2$ から $10^6$ まで全部を回すと、どれもいつかは出発点より小さくなり、$1$ に着いた。手数の平均は $\mathbf{131.434555}$、最長は $837799$ の $524$ 手である。$27$ は $111$ 手かかり、途中で $9232$ まで上がる(第2節)。

第二に、平均すると、一歩ごとに縮む。奇数の一歩を $(3n+1)/2$ とまとめると、一歩は半分の確率で約 $1.5$ 倍、半分の確率で $0.5$ 倍になり、倍率の幾何平均は $\sqrt{3/4}=\mathbf{0.866025}$ である。大きな数から $2000$ 本を $40$ 歩ずつ回すと、実測は $\mathbf{0.864706}$ だった(第3節)。

第三に、これが本稿の芯である。分離子は、掛ける数が $4$ より小さいかどうかである。$3$ を $5$ に替えると倍率の幾何平均は $\sqrt{5/4}=\mathbf{1.118034}$ になり、平均して伸びる。$1$ から $10000$ のうち $9274$ 個が $10^{12}$ を超え、輪に入ったのは $726$ 個だけだった(第4節)。

第四に、平均して縮んでも、$1$ に着くとは限らない。$3n+1$ を $3n-1$ に替えても倍率の幾何平均は同じ $\sqrt{3/4}$ で平均して縮むが、$1$ から $10000$ は $1$ を含む輪($3244$ 個)、$5$ を含む輪($3213$ 個)、$17$ を含む長さ $18$ の輪($3543$ 個)の三つに分かれた。縮むことは、どの輪に落ちるかまでは決めない(第4節)。

キーワード:コラッツ予想、3n+1 問題、幾何平均、停止時間、力学系。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。$3n+1$ の問題とその一般化(ラガリアス、$1985$)、停止までの手数の性質(テラス、$1976$)、確率による見立ては、いずれも既知である(ラガリアス編の本が集めている)。予想を証明しない。$10^6$ まで確かめるのは証明ではない。「平均して縮む」は奇数と偶数が半々に出るとした見立てで、個々の数について何も保証しない。一般の $an+b$ の理論は扱わない。$3n+1$・$3n-1$・$5n+1$ の三つだけを比べる。既刊との関係:論文195 は、「安定」が何を揺らすかで六つの別の言葉に分かれることを示した。本稿の $1\to4\to2\to1$ の輪は、平均して縮むことで引き込まれる輪で、同じ縮み方でも $3n-1$ では引き込む輪が三つある。加えたのは、$10^6$ までの手数を表で数え、一つずつ回した値と見本で突き合わせたこと、倍率の幾何平均を式と乱数の二つで出したこと、分離子を「掛ける数と $4$」に置き、$5n+1$ と $3n-1$ で確かめたことである。

1. 記法と問い

設定:正の整数 $n$ に、奇数なら $an+1$、偶数なら $n/2$ を対応させる操作を考える($a=3$ がコラッツの操作)。$1$ に着くまでの回数を手数と呼ぶ。

問い:どの数も $1$ に着くか。なぜ縮むのか。$a$ を替えると何が起きるか。

2. $10^6$ まで回す

計算 2.1:$2$ から $10^6$ までの各数を、出発点より小さい数に落ちるまで回し、そこから先の手数は表から足した。どの数もいつかは出発点より小さくなったので、全部が $1$ に着いた。

量 値
手数の平均($2$〜$10^6$) $\mathbf{131.434555}$
最長 $837799$ の $524$ 手
$27$ の手数・途中の最大 $111$ 手・$9232$

表の値は、無作為に選んだ $2000$ 個について、一つずつ最後まで回した手数と一致した。

観察 2.2 小さな数でも、長く遠回りする。$27$ は $9232$ まで上がってから $111$ 手で $1$ に戻る。上がり下がりは激しいが、$10^6$ までの一つも $1$ を避けなかった。

3. 平均の縮み方

観察 3.1 奇数の一歩と、そのあと必ず来る半分の一歩をまとめる。奇数 $n$ は $(3n+1)/2$ に、偶数 $n$ は $n/2$ に移ると見ると、一歩の倍率はおよそ $1.5$ か $0.5$ である。奇数と偶数が半々に出るなら、倍率の幾何平均は

$$\sqrt{\frac{3}{2}\times\frac12}=\sqrt{\frac34}=0.866025$$

で、平均して縮む。

計算 3.2:$10^{20}$ から $10^{21}$ の数を無作為に $2000$ 個選び、$40$ 歩ずつ回して一歩の倍率の幾何平均を測ると $\mathbf{0.864706}$ だった。

観察 3.3 検算で、一度偏った測り方をした。最初は出発点を必ず奇数にしたので、最初の一歩が必ず伸びる向きになり、実測は $0.878061$ だった。最初の一歩だけ $1.5$ 倍に固定した見立ての予測 $0.878000$ と一致したので、偏りの出どころを確かめてから、出発点を無作為に直した。

4. 分離子

計算 4.1:$a$ を替えて、$1$ から $10000$ の行き先を数えた($10^{12}$ を超えたら「飛び出した」とした)。

操作 倍率の幾何平均 $1$〜$10000$ の行き先
$3n+1$ $\sqrt{3/4}=0.866025$ すべて $1$ を含む輪
$3n-1$ $\sqrt{3/4}=0.866025$ $1$ の輪 $3244$・$5$ の輪 $3213$・$17$ の輪 $3543$
$5n+1$ $\sqrt{5/4}=\mathbf{1.118034}$ 飛び出した $9274$・輪 $726$

$5n+1$ で輪に入った $726$ 個は、$13$ を含む輪($383$ 個)、$1$ を含む長さ $7$ の輪($256$ 個)、$17$ を含む輪($87$ 個)だった。

観察 4.2 これが本稿の芯である。分離子は、掛ける数 $a$ が $4$ より小さいかどうかである。倍率の幾何平均は $\sqrt{a/4}$ で、$a<4$ なら平均して縮み、$a>4$ なら平均して伸びる。$a=5$ では $1$ から $10000$ の九割以上が $10^{12}$ を超えた。$3$ と $5$ の違いは、$4$ の手前か向こうかである。

観察 4.3 平均して縮むことは、$1$ に着くことを保証しない。$3n-1$ は $3n+1$ と同じ縮み方をするのに、$1$ から $10000$ が三つの輪に分かれた。縮むことは数がどこまでも大きくならない見立てを与えるだけで、落ちる先の輪がいくつあるかは別の問いである。$3n+1$ で $1$ を含む輪しか見つかっていないことは、縮み方からは出てこない。

観察 4.4 論文195 と並べる。195 は「安定」が何を揺らすかで六つに分かれると示した。コラッツの輪は、平均の縮み方という意味で引き込む輪である。だが同じ縮み方をする $3n-1$ では、引き込む輪が三つある。引き込むことと、ただ一つであることは別である。

観察 4.5 言わないこと。予想は証明しない。$10^6$ まで確かめても、その先は分からない。$5n+1$ の数が本当に限りなく大きくなるかも証明しない。示したのは、$10^6$ までの数え上げ、平均の縮み方の式と実測、そして掛ける数を替えたときの違いである。

5. 点呼と結び

  1. $10^6$ までのどの数も $1$ に着く(計算 2.1):表と一つずつの回しで一致。
  2. 手数の平均 $\mathbf{131.434555}$、最長 $837799$ の $524$ 手(計算 2.1):知られた値と一致。
  3. $27$ は $9232$ まで上がって $111$ 手(観察 2.2):激しく遠回りする。
  4. 倍率の幾何平均 $\sqrt{3/4}=\mathbf{0.866025}$(観察 3.1):平均して縮む。
  5. 実測 $\mathbf{0.864706}$(計算 3.2):二つの道筋。
  6. 出発点を奇数に固定すると $0.878$ に偏る(観察 3.3):予測 $0.878000$ で確かめた。
  7. $5n+1$ は $\sqrt{5/4}=\mathbf{1.118034}$(計算 4.1):$9274$ 個が飛び出す。
  8. 分離子は掛ける数と $4$(観察 4.2):本稿の芯。
  9. $3n-1$ は同じ縮み方で三つの輪(観察 4.3):縮むことは行き先を決めない。
  10. 引き込むこととただ一つであることは別(観察 4.4):論文195。

結び:奇数なら $3$ 倍して $1$ を足し、偶数なら半分にする操作は、$10^6$ までのどの数から始めても $1$ に着いた。平均すると、一歩ごとに縮むからである。奇数の一歩をまとめると一歩の倍率は $1.5$ か $0.5$ で、幾何平均は $\sqrt{3/4}=0.866025$、乱数で測ると $0.864706$ だった。分離子は、掛ける数が $4$ より小さいかどうかである。$3$ を $5$ に替えると $\sqrt{5/4}=1.118034$ で平均して伸び、$1$ から $10000$ のうち $9274$ 個が $10^{12}$ を超えた。そして、縮むことは $1$ に着くことを保証しない。$3n-1$ は同じ縮み方で、三つの輪に分かれた。既刊との位置:論文195 の「安定」の一つの意味で引き込む輪だが、引き込む輪がただ一つかは別の問いである。正直に言えば、予想は証明しておらず、$10^6$ までを数え、平均の見立てを測っただけである。

参考文献

  1. Lagarias, J. C. (1985). The $3x+1$ problem and its generalizations. The American Mathematical Monthly.
  2. Lagarias, J. C. (Ed.) (2010). The Ultimate Challenge: The $3x+1$ Problem. American Mathematical Society.
  3. Terras, R. (1976). A stopping time problem on the positive integers. Acta Arithmetica.
  4. 山岸勇輝 (2026). 『「安定」は六つの別の言葉であり、分けているのは何を揺らすかである』[論文195]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/195 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22107170

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「コラッツの操作は平均して縮むが、3 を 5 に替えると平均して伸びる」[論文621]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/621

YOI 621第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). コラッツの操作は平均して縮むが、3 を 5 に替えると平均して伸びる [論文621]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/621

Yamagishi, Y. (2026). The Collatz Map Shrinks on Average, but Replacing 3 by 5 Makes It Grow [Paper 621]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/621

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