要旨
「同じ形がいくつあるか」は、数える前に決めておくことがある。本稿は、その決め方が三通りあって答が変わることを数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、同じ $n$ に対して三つの答が出る。$n=8$ で固定 $2725$・回転だけ $704$・自由 $369$ である(第2節)。
第二に、裏返しを同じと見るかどうかだけで大きく動く。$n=8$ では $704$ と $369$ で、$335$ の差がある(第2節)。
第三に、これが本稿の芯である。固定と自由の比は $8$ にならない。$n=8$ で $\mathbf{7.384824}$ で、$8$ に届かない(第3節)。
第四に、届かない理由は対称な形である。$n=8$ では $369$ 個のうち $53$ 個が、回転と裏返しで $8$ 通りより少ない置き方しか持たない(第3節)。
第五に、その数え方は別の側からも合う。自由な形ごとに置き方の数を足すと、固定の数と $n=1$ から $8$ まで全部一致する(第3節)。
第六に、分離子は、裏返しを同じと見るか、回転だけを同じと見るかである。形の数は形の性質ではなく、何を同じと呼ぶかの帰結である(第4節)。
キーワード:ポリオミノ、数え上げ、対称、軌道、同一視、裏返し。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。ポリオミノに固定・片面・自由の三通りの数え方があること、それぞれの個数の並びが知られていること、対称な形が軌道を短くすること(バーンサイドの数え方)は、いずれも既知である。実在のパズルを論じない。どう詰めるか、どう遊ぶかは扱わない。敷き詰めを扱わない。長方形を埋められるかどうかは主題ではない。個数の式を主張しない。ポリオミノの個数に閉じた式は知られておらず、本稿も与えない。数え上げの結果だけを並べる。大きさを一般化しない。$n=9$ 以上は数えていない。三次元に入らない。立体の場合は扱わない。既刊との関係:論文182 は「次元の呪い」が一つの呪いではないことを示した。本稿はその席には座らず、隣に置く。あちらは一つの名前が複数の困難を指していた。こちらは一つの問い(「いくつあるか」)に三つの答が立つ。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。三つの数え方は、その基準で別根である。加えたのは、$n=1$ から $8$ まで三通りを同じ数え上げで並べたこと、比が $8$ に届かない量を対称な形の数と結びつけたこと、軌道の大きさの和が固定の数と全部一致することを別の数え方として確かめたこと、分離子を「裏返しを同じと見るか」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:正方形のますを辺でつないだ形を考える。「同じ形」の決め方を三通り置く。
$$\text{固定}:\text{平行移動だけ},\quad
\text{片面}:\text{回転も},\quad
\text{自由}:\text{裏返しも}$$
回転は $4$ 通り、裏返しを入れると $8$ 通りなので、対称でない形なら固定は自由の $8$ 倍になるはずである。
問い:「いくつあるか」は、一つの数か。
2. 三つの答
計算 2.1:$n=1$ から $8$ まで、三通りで数えた。
| $n$ | 固定 | 回転だけ | 自由 |
|---|---|---|---|
| $1$ | $1$ | $1$ | $1$ |
| $2$ | $2$ | $1$ | $1$ |
| $3$ | $6$ | $2$ | $2$ |
| $4$ | $19$ | $7$ | $5$ |
| $5$ | $63$ | $18$ | $12$ |
| $6$ | $216$ | $60$ | $35$ |
| $7$ | $760$ | $196$ | $108$ |
| $8$ | $2725$ | $704$ | $369$ |
観察 2.2 同じ $n$ に三つの答が並ぶ。$n=8$ で $2725$・$704$・$369$ である。形の側は何も変わっていない。変えたのは「同じ」の決め方だけである。
観察 2.3 裏返しを入れるかどうかだけで $335$ 動く。$n=8$ の $704$ と $369$ の差である。$n=4$ では $7$ と $5$、$n=3$ ではどちらも $2$ で、小さいうちは差が出ない。
観察 2.4 固定の並び $1$・$2$・$6$・$19$・$63$・$216$・$760$・$2725$ と、自由の並び $1$・$1$・$2$・$5$・$12$・$35$・$108$・$369$ は既知の数列と一致する。これは本稿の数え上げが正しく動いていることの裏取りになる。一致しなければ、まず自分の数え方を疑う。
3. 比が $8$ に届かない
計算 3.1:固定を自由で割った比と、対称な形の数を並べた。
| $n$ | 固定 / 自由 | 対称な形の数 |
|---|---|---|
| $4$ | $3.800000$ | $4$ |
| $5$ | $5.250000$ | $7$ |
| $6$ | $6.171429$ | $15$ |
| $7$ | $7.037037$ | $24$ |
| $8$ | $7.384824$ | $53$ |
観察 3.2 これが本稿の芯である。比は $8$ に近づくが届かない。$n=8$ で $7.384824$ である。対称な形は回転と裏返しで $8$ 通りより少ない置き方しか持たず、そのぶん固定の数が足りなくなるからである。
観察 3.3 対称な形は消えていかない。$n$ が増えると対称な形の数も $4$・$7$・$15$・$24$・$53$ と増える。比が $8$ に近づくのは、対称でない形のほうがもっと速く増えるからであって、対称な形が減るからではない。
計算 3.4:別の数え方で突き合わせた。自由な形ごとに、その形が取りうる置き方の数を足す。
| $n$ | 置き方の数の和 | 固定の数 |
|---|---|---|
| $5$ | $63$ | $63$ |
| $6$ | $216$ | $216$ |
| $7$ | $760$ | $760$ |
| $8$ | $2725$ | $2725$ |
観察 3.5 $n=1$ から $8$ まで全部一致した。一方は固定の形を直接数え、もう一方は自由の形ごとに置き方を足しただけである。だから「対称な形のぶん足りない」は言葉ではなく、数の等式として閉じている。
4. 分離子
観察 4.1 分離子は、裏返しを同じと見るか、回転だけを同じと見るかである。紙の上で切り抜くなら裏返せるが、表に印刷があるなら裏返せない。どちらを取るかは形の性質ではなく、扱う物の性質である。
観察 4.2 だから「いくつあるか」は一つの数ではない。$n=8$ なら $2725$・$704$・$369$ のどれもが正しい答である。どれを答えるかは、問う前に決まっていなければならない。
観察 4.3 論文182 の隣に置く。182 は「次元の呪い」が一つの呪いではないことを示した。あちらは一つの名前が複数の困難を指していた。こちらは一つの問いに三つの答が立つ。名前の側か、問いの側かの違いである。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。三つの数え方は、その基準で別根である。
観察 4.4 言わないこと。実在のパズルも、敷き詰めも、個数の式も、三次元も扱わない。示したのは、数が「何を同じと呼ぶか」の帰結だということである。
5. 点呼と結び
- $n=8$ で固定 $2725$(計算 2.1):平行移動だけ。
- 回転だけなら $704$(計算 2.1):裏返さない。
- 自由なら $369$(計算 2.1):裏返しも同じ。
- 差は $335$(観察 2.3):裏返し一つで。
- 比は $\mathbf{7.384824}$(計算 3.1):本稿の芯・$8$ に届かない。
- 対称な形が $53$ 個(計算 3.1):届かない理由。
- 対称な形も増える(観察 3.3):減るのではない。
- 置き方の和が固定と一致(計算 3.4):$n=1$ から $8$ まで。
- 三つとも正しい答(観察 4.2):問う前に決める。
- 裏返しを同じと見るか(観察 4.1):分離子・論文182・300。
結び:「同じ形」は一つの意味ではない。裏返しを同じと見るかで数が変わる。ますを $8$ 個つないだ形は、動かさなければ $2725$、回転だけ同じと見れば $704$、裏返しも同じと見れば $369$ である。形の側は何も変わっておらず、変えたのは「同じ」の決め方だけである。固定と自由の比は $8$ に近づくが届かず、$n=8$ で $7.384824$ である。対称な形は回転と裏返しで $8$ 通りより少ない置き方しか持たず、$n=8$ では $369$ 個のうち $53$ 個がそれだからである。このことは、自由な形ごとに置き方の数を足すと固定の数と $n=1$ から $8$ まで全部一致することで、数の等式として閉じている。既刊との位置:論文182 の「一つの名前が複数を指す」の隣に、一つの問いに三つの答が立つ形で置き、論文300 の規律で三つの数え方を別根として扱った。正直に言えば、数えたのは $n=8$ までで、$9$ 以上も、三次元も数えていない。
参考文献
- Golomb, S. W. (1994). Polyominoes: Puzzles, Patterns, Problems, and Packings. Princeton University Press.
- 山岸勇輝 (2026). 『「次元の呪い」は一つの呪いではない』[論文182]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/182 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22104170
- 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/300 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22171914
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「「同じ形」は一つの意味ではない。裏返しを同じと見るかで数が変わる」[論文847]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/847
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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/847・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 「同じ形」は一つの意味ではない。裏返しを同じと見るかで数が変わる [論文847]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/847
Yamagishi, Y. (2026). “The Same Shape” Does Not Mean One Thing: The Count Changes With Whether Reflections Are Identified [Paper 847]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/847
@misc{yamagishi2026yoi847,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {“The Same Shape” Does Not Mean One Thing: The Count Changes With Whether Reflections Are Identified},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/847},
note = {Preprint, edition 1}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
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