要旨
リサイクル率は「何割回したか」で語られる。本稿は、新しい材料を決めているのが「回らなかった割合」であることを数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、使える回数は回らなかった割合の逆数である。$r=0.9$ で $10$ 回、$0.95$ で $20$ 回、$0.99$ で $100$ 回である(第2節)。
第二に、これが本稿の芯である。同じ改善でも、高い率のほうが大きく効く。$0.90$ から $0.95$ で新しい材料は $\mathbf{0.500000}$ 倍、$0.50$ から $0.55$ では $\mathbf{0.900000}$ 倍である(第3節)。
第三に、率は二つの割合の積である。回収 $0.9$ と歩留まり $0.8$ で $0.72$、使える回数は $3.571429$ 回である(第4節)。
第四に、どちらを上げるかで効き方が違う。回収を $1.0$ にすると $5.000000$ 回、歩留まりを $0.9$ にすると $\mathbf{5.263158}$ 回である(第4節)。
第五に、式は一回ずつ足した結果と一致する。$1/(1-r)$ と、回るたびに $r$ 倍になる量を足し続けた和は、差 $10^{-9}$ 未満で一致する(第2節)。
第六に、分離子は、回した割合を問うか、回らなかった割合を問うかである。新しい材料は後者に比例するので、率が高いほど一点の重みが増す(第5節)。
キーワード:リサイクル率、等比級数、回収、歩留まり、新しい材料、模型。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。等比級数の和 $1/(1-r)$、再生の率が回収率と工程の歩留まりの積で書けること、高い率ほど改善の効きが大きくなることは、いずれも既知である。実在の値を主張しない。$r$、回収 $0.9$、歩留まり $0.8$ は模型の値で、どの制度や統計にも対応しない。良し悪しを論じない。環境への効果や費用は扱わない。劣化を入れない。材料が回るたびに傷んで回数に上限があることは入れない。定義に入らない。率を重さで数えるか個数で数えるかの違いは扱わない。既刊との関係:論文446 は理論の下限がたくさん取ろうとすると上がることを示した。本稿はその隣に置く。あちらは高い回収率の最後の一点が高くつき、こちらは高い率の最後の一点がよく効く。同じ「高い率の一点」の、費用の側と効きの側である。論文519 はゼノンの四つの逆理が一つの解決を共有していないことを示し、射程注記で等比級数の和を既知として置いた。ここではその和が、使える回数としてそのまま出る。加えたのは、率ごとに使える回数と新しい材料の割合を並べたこと、同じ $0.05$ の改善で $0.500000$ 倍と $0.900000$ 倍に分かれると測ったこと、回収と歩留まりのどちらを上げるかで回数が違うと測ったこと、分離子を「回した割合か、回らなかった割合か」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:材料を一回使うたびに、割合 $r$ が次の使用に回り、$1-r$ が失われるとする。新しい材料一単位で使える回数 $U$ と、一回あたりに要る新しい材料は次のようになる。
$$U=\sum_{n=0}^{\infty}r^{n}=\frac{1}{1-r},\qquad
\text{一回あたりの新しい材料}=1-r,\qquad
r=c\times y$$
$c$ は回収の割合、$y$ は再生の歩留まりである。
問い:率を上げたとき、新しい材料はどれだけ減るのか。
2. 使える回数
計算 2.1:率ごとに使える回数と、一回あたりの新しい材料を出した。
| $r$ | 使える回数 | 一回あたりの新しい材料 |
|---|---|---|
| $0.50$ | $2.000000$ | $0.500000$ |
| $0.55$ | $2.222222$ | $0.450000$ |
| $0.70$ | $3.333333$ | $0.300000$ |
| $0.90$ | $10.000000$ | $0.100000$ |
| $0.95$ | $20.000000$ | $0.050000$ |
| $0.99$ | $100.000000$ | $0.010000$ |
観察 2.2 回数は回らなかった割合の逆数である。$1-r$ が $0.1$ から $0.01$ になると、回数は $10$ 回から $100$ 回になる。式と、回るたびに $r$ 倍になる量を足し続けた和は、差 $10^{-9}$ 未満で一致した。
3. 同じ改善、違う効き
計算 3.1:同じ $0.05$ の改善を、低い率と高い率で比べた。
| 改善 | 新しい材料の倍率 |
|---|---|
| $0.50$ から $0.55$ | $0.900000$ |
| $0.90$ から $0.95$ | $0.500000$ |
観察 3.2 これが本稿の芯である。高い率のほうが大きく効く。$0.90$ から $0.95$ で新しい材料は半分になるのに、$0.50$ から $0.55$ では一割しか減らない。新しい材料は回らなかった割合に比例し、$0.10$ から $0.05$ は半分、$0.50$ から $0.45$ は一割減だからである。
4. 回収と歩留まり
計算 4.1:率を回収と歩留まりの積とし、どちらを上げるかで比べた。
| 場合 | 率 | 使える回数 |
|---|---|---|
| 回収 $0.9$・歩留まり $0.8$ | $0.720000$ | $3.571429$ |
| 回収を $1.0$ に | $0.800000$ | $5.000000$ |
| 歩留まりを $0.9$ に | $0.810000$ | $5.263158$ |
観察 4.2 同じ $0.1$ を上げても、どちらを上げるかで違う。歩留まりを $0.9$ にすると $5.263158$ 回で、回収を $1.0$ にした $5.000000$ 回を上回る。積の中では、もとが小さいほうを上げたほうが率が大きく上がるからである。
5. 分離子
観察 5.1 分離子は、回した割合を問うか、回らなかった割合を問うかである。率 $0.90$ と $0.95$ は「回した割合」では $0.05$ しか違わないが、「回らなかった割合」では $2$ 倍違う。新しい材料が比例するのは後者なので、率が高いほど一点の重みが増す。
観察 5.2 論文446・519 の隣に置く。446 は理論の下限がたくさん取ろうとすると上がることを示した。あちらは高い回収率の最後の一点が高くつき、こちらは最後の一点がよく効く。同じ「高い率の一点」の、費用の側と効きの側である。519 は等比級数の和を既知として置いた。ここではその和が、使える回数としてそのまま出る。
観察 5.3 言わないこと。実在の制度や統計も、環境への効果や費用も、材料の劣化も、率の定義の違いも扱わない。示したのは、新しい材料が回らなかった割合に比例するということである。
6. 点呼と結び
- 使える回数は $1/(1-r)$(第1節):等比級数。
- $0.9$ で $10$ 回(計算 2.1):回らなかった割合 $0.1$。
- $0.99$ で $100$ 回(計算 2.1):$0.01$。
- $0.90$ から $0.95$ で $\mathbf{0.500000}$ 倍(計算 3.1):本稿の芯。
- $0.50$ から $0.55$ で $\mathbf{0.900000}$ 倍(計算 3.1):一割しか減らない。
- 率は回収と歩留まりの積(計算 4.1):$0.720000$。
- 回収を $1.0$ で $5.000000$ 回(計算 4.1):上げ方の一つ。
- 歩留まりを $0.9$ で $\mathbf{5.263158}$ 回(計算 4.1):こちらが効く。
- 式と足し算が差 $10^{-9}$ 未満(観察 2.2):別々に出した。
- 回した割合か、回らなかった割合か(観察 5.1):分離子・論文446・519。
結び:リサイクル率は高いほど、残りの一点が効く。一回使うたびに割合 $r$ が回るとき、新しい材料一単位で使える回数は $1/(1-r)$ で、$0.9$ で $10$ 回、$0.99$ で $100$ 回になる。新しい材料は回した割合ではなく、回らなかった割合に比例するからである。そのため同じ $0.05$ の改善でも、$0.90$ から $0.95$ では新しい材料が $0.500000$ 倍になり、$0.50$ から $0.55$ では $0.900000$ 倍にしかならない。回らなかった割合が、前者では半分に、後者では一割減にしかならないからである。率を回収 $0.9$ と歩留まり $0.8$ の積とすると、回収を $1.0$ にして $5.000000$ 回、歩留まりを $0.9$ にして $5.263158$ 回で、もとが小さいほうを上げたほうが効く。既刊との位置:論文446 の「高い率の一点が高くつく」の隣に「高い率の一点がよく効く」を置き、論文519 が既知とした等比級数の和を使える回数として数えた。正直に言えば、率・回収・歩留まりは模型の値で、材料の劣化による回数の上限は入れていない。
参考文献
- Ashby, M. F. (2012). Materials and the Environment: Eco-informed Material Choice. Butterworth-Heinemann.
- 山岸勇輝 (2026). 『理論の下限は、たくさん取ろうとすると上がる』[論文446]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/446 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22732460
- 山岸勇輝 (2026). 『ゼノンの四つの逆理は、一つの解決を共有していない』[論文519]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/519 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22862469
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「リサイクル率は高いほど、残りの一点が効く」[論文862]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/862
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/862・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). リサイクル率は高いほど、残りの一点が効く [論文862]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/862
Yamagishi, Y. (2026). The Higher the Recycling Rate, the More the Last Point Counts [Paper 862]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/862
@misc{yamagishi2026yoi862,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {The Higher the Recycling Rate, the More the Last Point Counts},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/862},
note = {Preprint, edition 1}
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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