要旨
R001 で求めた式(ある分類の数 = 134.93 × log₁₀(人口) − 378.69、R² = 0.925)に、社人研の将来推計人口(令和5年推計)を入れて、2050年に市区町村にある産業小分類の数がどうなるかを計算した。
対象1,876市区町村の人口は、2020年 124,902,873 人から 2050年 103,722,106 人へ、−17.0% になる。 市区町村ごとの2050年÷2020年の中央値は 0.664(−33.6%)で、341市区町村(18.2%)は半分以下になる。
式の上での増減は、中央値 −24.0 分類。 10分類以上減る市区町村が1,453(77.5%)、20分類以上が1,097(58.5%)、30分類以上が717(38.2%)、40分類以上が361(19.2%)。増えるのは104(5.5%)だけである。
いま50分類を下回る市区町村は37だが、見込みでは179になる。4.8倍である。
釧路総合振興局管内は、8市町村すべてで人口が3割以上減る見込み。 白糠町は0.39で −55.2分類(いま132 → 見込み77)、弟子屈町 −43.0、厚岸町 −42.0。管内の合計は0.58で、式の増減の中央値は −33.7 分類である。
北海道は188市区町村の35.6%が半分以下になり、式の増減の中央値は −35.3分類(全国 −24.0)である。
この計算は、R001 の式が2050年にも成り立つと仮定したものである。それが成り立つかどうかは分からない。
1. はじめに
R001 は、市区町村にある産業小分類の数が人口の常用対数でほぼ決まることを示した(R² = 0.925)。R002 はその分類が現れる人口を、R003 は「1軒だけ」の分類を数えた。どれもいまの姿である。
社人研は、市区町村ごとの2050年までの人口を推計して公表している。その人口を、R001 の式に入れることができる。
式は単純である。人口が P₀ から P₁ に変われば、
Δ = 134.93 × log₁₀(P₁ / P₀)
人口が半分になれば −40.6分類、3割減れば −20.9分類になる。
いまの関係がそのまま続くとしたら、2050年に町から何分類が消えるのか。
2. データと式
| 将来推計人口 | 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」令和5年推計 結果表1(総人口、2020年〜2050年の5年刻み) |
| いまの分類の数 | 「令和3年 経済センサス-活動調査」産業小分類別 事業所数(市区町村別) |
| 単位の確認 | 総務省「住民基本台帳に基づく人口」2026年1月1日(R001 の単位A) |
推計の行は1,951。市などの別は a=都道府県47、1=政令市20、0=区198、2=市769、3=町村916、9=福島県「浜通り地域」13市町村のまとめ1である。
区・市・町村のうち、経済センサスの表と住民基本台帳(単位A)の両方にあるのは 1,876市区町村。これを対象とした。
福島県の13市町村は「浜通り地域」としてまとめられており、個別の推計値が無い。 したがって対象から外れている。
式は R001 のものをそのまま使う。
ある分類の数 = 134.93 × log₁₀(人口) − 378.69 (R² = 0.925、残差の標準偏差 25.6分類、1,889市区町村)
3. 結果
3-1 人口は17.0%減る
| 2020年(1,876市区町村の合計) | 124,902,873人 |
| 2050年 | 103,722,106人 |
| 増減 | −17.0%(21,180,767人の減) |
だが、市区町村ごとに見ると、減り方はずっと大きい。
| 2050年 ÷ 2020年 | |
|---|---|
| 中央値 | 0.664(−33.6%) |
| いちばん減る | 0.252 |
| いちばん増える | 1.247 |
| 半分以下になる市区町村 | 341(18.2%) |
| 増える市区町村 | 104(5.5%) |
全国の合計で17%減るのに、市区町村の中央値は33.6%減る。 人口の多い市区町村ほど減り方が小さいためである。
3-2 式の上では、中央値で24分類減る

図1 人口の変化と、R001 の式が示す分類の増減(1,876市区町村)。
灰色は市区町村、橙は釧路総合振興局管内の8市町村、青の破線は中央値。
| 式の上での増減 | |
|---|---|
| 中央値 | −24.0分類 |
| 平均 | −24.5分類 |
| いちばん減る | −80.8 |
| いちばん増える | +12.9 |
| 減る幅 | 市区町村 | 割合 |
|---|---|---|
| 10分類以上 | 1,453 | 77.5% |
| 20分類以上 | 1,097 | 58.5% |
| 30分類以上 | 717 | 38.2% |
| 40分類以上 | 361 | 19.2% |
| (増える) | 104 | 5.5% |
4分の3以上の市区町村で、10分類以上が減る計算になる。
| 減りが大きい | 2020年 | 2050年 | 比 | 式の増減 | いまの分類 |
|---|---|---|---|---|---|
| 群馬県 南牧村 | 1,611 | 406 | 0.25 | −80.8 | 63 |
| 熊本県 球磨村 | 2,433 | 650 | 0.27 | −77.3 | 48 |
| 奈良県 野迫川村 | 357 | 98 | 0.27 | −75.8 | 27 |
| 北海道 歌志内市 | 2,989 | 838 | 0.28 | −74.5 | 72 |
| 奈良県 御杖村 | 1,479 | 422 | 0.29 | −73.5 | 61 |
| 北海道 夕張市 | 7,334 | 2,154 | 0.29 | −71.8 | 124 |
| 増える | 2020年 | 2050年 | 比 | 式の増減 | いまの分類 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東京都 中央区 | 169,179 | 210,897 | 1.25 | +12.9 | 445 |
| 千葉県 流山市 | 199,849 | 241,539 | 1.21 | +11.1 | 303 |
| 東京都 港区 | 260,486 | 312,556 | 1.20 | +10.7 | 455 |
| 東京都 千代田区 | 66,680 | 79,828 | 1.20 | +10.5 | 446 |
| 沖縄県 中城村 | 22,157 | 26,102 | 1.18 | +9.6 | 173 |
減る側は、いまの分類が27〜124の小さい町。増える側は、いまの分類が173〜455の都市部である。 差が広がる向きに動く。
3-3 50分類を下回る市区町村が4.8倍になる
「いまの分類の数 + 式の増減」を2050年の見込みとした(0と526で頭打ち)。
| いま | 2050年の見込み | |
|---|---|---|
| 中央値 | 213 | 188 |
| 最小 | 16 | 0 |
| 最大 | 455 | 466 |
| 50分類を下回る市区町村 | 37 | 179 |
| 100分類を下回る市区町村 | 237 | 444 |
いま50分類を下回るのは37市区町村だが、見込みでは179になる。4.8倍である。
R003 では「1軒だけの商売」を数えた。50分類を下回るというのは、526分類のうち10分の1も無いということである。
3-4 釧路総合振興局管内
| 市町村 | 2020年 | 2050年 | 比 | 式の増減 | いまの分類 | 2050の見込み |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 釧路市 | 165,077 | 98,544 | 0.60 | −30.2 | 340 | 310 |
| 釧路町 | 19,105 | 10,659 | 0.56 | −34.2 | 184 | 150 |
| 厚岸町 | 8,892 | 4,343 | 0.49 | −42.0 | 161 | 119 |
| 浜中町 | 5,507 | 3,162 | 0.57 | −32.5 | 106 | 73 |
| 標茶町 | 7,230 | 4,102 | 0.57 | −33.2 | 132 | 99 |
| 弟子屈町 | 6,955 | 3,337 | 0.48 | −43.0 | 142 | 99 |
| 鶴居村 | 2,558 | 1,791 | 0.70 | −20.9 | 72 | 51 |
| 白糠町 | 7,289 | 2,841 | 0.39 | −55.2 | 132 | 77 |
8市町村すべてで人口が3割以上減る。 管内の合計は222,613人から128,779人へ、0.58 になる。式の増減の中央値は −33.7分類で、全国の −24.0 より大きい。
白糠町の0.39がもっとも厳しい。 人口が6割減り、式の上では55.2分類が消える。いま132ある分類が77になる計算である。
釧路市も0.60で、−30.2分類。 人口15万の市でも、3割の分類が消える計算になる。
鶴居村は0.70で管内ではもっとも減りが小さいが、いまの分類が72しか無いため、見込みは51になる。
3-5 北海道
| 区・市・町村 | 188 |
| 2020年 | 5,224,614人 |
| 2050年 | 3,820,016人 |
| 比 | 0.73 |
| 式の増減の中央値 | −35.3分類(全国 −24.0) |
| 人口が半分以下になる市区町村 | 67/188(35.6%) |
全国では18.2%だが、北海道では35.6%が半分以下になる。ほぼ2倍である。
4. 考察
4-1 これは予測ではない
本稿は、R001 の式が2050年にも成り立つと仮定して、将来推計人口を入れただけである。
その仮定が成り立つ保証は無い。R001 の式は、令和3年の事業所数と2026年1月の人口から作った。その間の関係が、30年後にもそのままである理由は何も示されていない。
通信販売が広がれば、小さい町でも買えるものは増える。移動手段が変われば、隣町まで行く距離が変わる。産業分類そのものも改定される。どれも式には入っていない。
言えるのは、「いまの関係がそのまま続くなら、こうなる」ということだけである。
4-2 全国の17%と、町の33.6%
人口の合計は17.0%減るが、市区町村の中央値は33.6%減る。この2つの数字の差が、この問題の形である。
大きい市区町村ほど減り方が小さく、小さい市区町村ほど大きい。だから全国の合計を見ていると、町で起きていることが見えない。
I006 で「宿は全国で2.74倍に増えている」が9県の減少を隠していたのと、同じ形である。平均や合計は、向きの違うものを足して1つにしてしまう。
4-3 差は、広がる向きに動く
式の増減がもっとも大きいのは、いまの分類が27〜124しか無い小さな町である。増えるのは、いま173〜455ある都市部である。
R001 で見たとおり、分類の数は人口の対数で決まる。対数なので、同じ比率で人口が減れば、失う分類の数は町の大きさによらずほぼ同じになる。だが、もともと持っている数が少ない町ほど、それは重くのしかかる。
奈良県野迫川村はいま27分類しか無い。式の上では75.8分類減るが、27を下回ることはできない。そういう町では、式そのものが当てはまらなくなる。
4-4 釧路管内で、いま何ができるか
管内8市町村の合計人口は0.58になる。式の上では中央値で33.7分類が消える。
だが、これを動かせない前提として読む必要はない。式が言っているのは「人口がこう変われば、いままでの関係のままならこうなる」であって、関係のほうを変えられるなら結果も変わる。
たとえば、
- 1事業所あたりが小さい商売ほど、小さい町にも残る(X001、r = −0.417)。小さくできる商売は残りやすい
- 通信販売は、店のある場所に縛られない(I014 で、ネット販売の割合は人口と無関係だった。1位は新潟、東京は下から3番目)
- 許可や届出の数は、店の数ではない(I005・I011・I013)。制度の数で地域を語ると外す
「人口が減るから店が減る」は、いまの関係の記述であって、動かせない法則ではない。
5. 限界
- R001 の式は、令和3年の事業所と2026年1月の人口で作ったものである。 それが2050年にも成り立つかは分からない。本稿は「式をそのまま当てるとどうなるか」を示すだけで、予測ではない
- 将来推計人口は社人研 令和5年推計(令和2年国勢調査が基準)。推計であって予測ではない
- 福島県の13市町村は「浜通り地域」としてまとめられており、個別の推計値が無いため対象から外れている
- 式の増減は人口の比だけで決まる。産業の構造変化・通信販売・移動手段の変化は入っていない
- 「2050の見込み」は、いまの分類の数に式の増減を足したもので、0と526で頭打ちにした。いまの分類が少ない町では、式の減少幅がもとの数を超える
- 分類の数は「1事業所以上ある分類の数」で、秘匿の扱いは元の表に従う
- 人口が増える市区町村では式は分類が増えると出すが、そうなるとは限らない
- 経済センサスは令和3年、人口の基準は2020年と2050年で、時点がそろっていない
6. 再現の手順
- 社人研「日本の地域別将来推計人口」令和5年推計の結果表1を取得する。総人口の列は2020年から2050年まで5年刻み(列4〜10)
- 「市などの別」が 0(区)・2(市)・3(町村)の行だけを使う。a(都道府県)・1(政令市)・9(福島県浜通り地域)は外す
- 経済センサス 令和3年の産業小分類別 事業所数から、市区町村ごとに「1事業所以上ある分類の数」を数える
- 住民基本台帳(単位A)にもある市区町村に絞る(1,876)
- 式の増減 Δ = 134.93 × log₁₀(2050年人口 ÷ 2020年人口) を出す
- いまの分類の数に Δ を足し、0 と 526 で頭打ちにする
本稿の数値は、すべて1本のスクリプト(kensan_204)の出力である。中間の数値を手で書き写していない。市区町村ごとの見込みは kensan_204_2050.csv に出した。
この論文の位置づけ
新しい理論を主張するものではない。R001 で作った式に、社人研の将来推計人口を入れて計算しただけである。式が将来も成り立つという前提を置いており、その前提は確かめていない。したがってこれは予測ではなく、「いまの関係がそのまま続くなら」という条件つきの計算である。市区町村ごとの結果を CSV で付した。
参考文献・データの出典
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」令和5年推計 結果表1
- 総務省統計局・経済産業省「令和3年 経済センサス-活動調査」産業小分類別 事業所数(市区町村別)
- 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」2026年1月1日現在
- 山岸勇輝「市区町村の人口と、そこにある産業小分類の数」(R001)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22872218
- 山岸勇輝「その商売は、人口何人の町から現れるか」(R002)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22872356
- 山岸勇輝「町に1軒だけの商売」(R003)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22872474
- 山岸勇輝「その商売は、1事業所あたり何人か」(X001)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22877856
版の記録
| 版 | 日付 | 内容 |
|---|---|---|
| 第1版 | 2026-09-21 | 初出 |
引用のしかた
山岸勇輝(2026)「2050年、その町から何分類が消えるか、R001の式に将来推計人口を入れると、中央値で24分類減る [R005]」Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22877595
(この DOI は concept DOI。常に最新の版を指す。引用にはこれを使う)
© 2026 山岸 勇輝(Yuuki YAMAGISHI)
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書誌
山岸勇輝(2026)「2050年、その町から何分類が消えるか」[R005]. Zenodo.
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 2050年、その町から何分類が消えるか [R005]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/R005 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22877595
Yamagishi, Y. (2026). How Many Trades Will Leave a Town by 2050? Feeding Projected Population into R001’s Equation Gives a Median Loss of 24 Subcategories [R005]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/R005; DOI: 10.5281/zenodo.22877595
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