m=4π は、密度が距離の二乗に反比例する(1/r²)球で、半径 1 の中の質量を数えると、ちょうど全方向の立体角 4π になる、という計算の結果です(論文02「4π質量相殺定理」)。自然の新しい定数ではなく、密度の係数と半径を 1 と置く単位の選び方のもとでの値です。
この文章は、査読を経ていない、著者自身による公開(プレプリント)の論文の内容をまとめたものです。
要点
- 出どころは、球の表面積 4πr² の r² と、密度 1/r² の打ち消し合いです。
- 殻ごとの質量が半径によらず同じになる指数は 2 だけです(論文01 の唯一性定理)。
- 積分に残る 4π は立体角そのもので、選べません(事実)。
- その数を質量として式に入れる(たとえば E=4πc²)のは、質量の単位の選び方です(規約)。
- 新しい物理法則は主張しません。単位の選び方では、単位を持たない数(重力の弱さなど)は変わりません。
どこから出てくるか
三次元の空間で、密度が ρ(r)=1/r² の球を考えます。半径 r の殻一枚の面積は 4πr² なので、殻一枚ぶんの質量の増え方は dm/dr=4πr²×(1/r²)=4π で、半径によりません。
半径 0 から 1 まで足すと、m=∫₀¹ (1/r²)·4πr² dr=4π。面積の r² と密度の 1/r² がちょうど打ち消し合い、全方向の立体角 4π だけが残ります。これが論文02 の「4π質量相殺定理」です。
論文01 は同じことを逆向きに示しています(n=2 の唯一性定理のページで、図を動かして確かめられます)。密度を ρ=r⁻ⁿ としたとき、殻ごとの増え方 dm/dr=4πr²⁻ⁿ が半径によらず一定になるのは n=2 のときだけです(唯一性定理)。
1/r² の密度の分布そのものは、天体物理では特異等温球の名で知られています。体系が加えたのは、それを「殻ごとの増え方が半径によらない唯一の指数」として述べ、出発点に置いたことです。
指数を変えるとどうなるか
同じ積分を一般の指数 n(n<3)に広げると m(n)=4π/(3−n) になります。n=1 なら 2π、n=2 なら 4π です。質量の数が立体角 4π そのものに一致するのは n=2 だけです(論文02)。
二つの 4π:事実の 4π と、規約の 4π
積分に残る 4π は、全方向の立体角です。ガウスの法則やクーロンの法則の 4π と同じもので、選ぶことはできません(論文13・35)。
一方、その数を質量として式に入れると(m=4π と置いて E=mc² を E=4πc² と書くなど)、その 4π は立体角ではありません。エネルギーには質量の次元が要り、立体角には次元がないからです。ここでの 4π は「質量の単位をどう名づけるか」という規約です(論文60・116)。
厳密には、密度は ρ=k/r²(k は質量÷長さの次元を持つ係数)と書くべきもので、m=4π は k=1・半径 1 という単位の選び方のもとでの値です(論文01・02 の射程の注記)。
体系は、この二つの 4π を同じものとして扱いません。同じ数が二つの場所に出ても、同じ根とは限らないからです(論文35・300)。論文60 は、面のつながり方(位相)から出る 4π も加えて、式に出る 4π を三つに分けて数えています。前の二つ(立体角と位相)は空間の形が決める事実で、三つ目(置いた質量)は私たちが選んだ規約です。
m=4π が言っていないこと
- 自然の新しい定数や、新しい物理法則は主張しません。
- 「すべての質量は 4π である」という主張ではありません。
- 単位の選び方では、単位を持たない数は変わりません。たとえば重力の弱さを表す数 Gm²/(ħc)(陽子でおよそ 5.9×10⁻³⁹)は、どう置いても動かず、重力がなぜ弱いかは説明されません(論文35)。
- 測定値(重力定数など)を導くものでもありません。
では、何の役に立つか
m=4π と置くと、式の中の π がどこから来たかが見えやすくなります。体系では、有名な物理の式 103 本の π の出どころを点検し、m=4π を入れて π が消える式について、消えたのが立体角か、一回りの角度か、単位の置き場所かを一本ずつ分けました(その続きが論文1081〜1089)。
役に立つのは「式の見え方を整えて、π の出どころを分けること」までで、自然について新しい事実を言うものではありません。
点検の結果は、記事「物理の式の π:103 本を点検して分かった、出どころの見分け方」にまとめています。
よくある質問
m=4π は、標準の物理の式ですか?
いいえ。教科書の物理では m は質量そのもので、4π に等しいとは扱いません。m=4π は、密度 1/r² の球で半径 1 の中の質量を数えた値で、密度の係数と半径を 1 と置く単位の選び方のもとでの値です。
「質量は 4π に等しい」という主張ですか?
いいえ。主張しているのは、1/r² の密度の球では面積の r² と密度の 1/r² が打ち消し合い、半径 1 の中の質量の数が全方向の立体角 4π と一致する、という計算の事実(論文02)と、その指数が 2 に限られること(論文01)です。
なぜ 1/r² の密度なのですか?
殻一枚ぶんの質量の増え方が半径によらず同じになる指数が 2 だけだからです(論文01 の唯一性定理)。球の表面積が r² で増えるので、密度が 1/r² で減るとちょうど釣り合います。
E=4πc² の 4π は立体角ですか?
いいえ。エネルギーには質量の次元が要り、立体角には次元がありません。E=4πc² の 4π は、質量の単位の選び方(規約)です(論文60・116)。
Zero-Tension とは何ですか?
面積の増え方と密度の減り方がちょうど釣り合う状態に、体系が付けた名前です。摩擦や張力にあたる量を定義するものではありません(論文02)。
もとの論文
- 論文1「球対称密度分布における n=2 の唯一性定理」 YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/1 ・ DOI: 10.5281/zenodo.21403186
- 論文2「4π質量相殺定理」 YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/2 ・ DOI: 10.5281/zenodo.21403931
- 論文13「宇宙OS記述言語としての物理法則:力学・電磁気・重力が共有する立体角 4π について」 YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/13 ・ DOI: 10.5281/zenodo.21404917
- 論文35「山岸万有引力定数解凍理論(第3版):4πG に含まれる二つの 4π と、単位の選択にできないこと」 YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/35 ・ DOI: 10.5281/zenodo.21430118
- 論文60「速度空間の球としての c(第2版)」 YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/60 ・ DOI: 10.5281/zenodo.21598012
- 論文116「c の冪は、何を数えているか」 YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/116 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22003794
- 論文300「三百本目の点呼:同根か別根かは、判定できる」 YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/300 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22171914
書いた人:山岸勇輝(Yuuki YAMAGISHI)・ORCID 0009-0006-8587-3450。論文はどれも CC BY 4.0 で公開しています。