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n=2 の唯一性定理:球の皮の重さがそろうのは、密度が 1/r² のときだけ

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球を、玉ねぎのように同じ厚さの皮に分けてみます。中身の濃さがどこでも同じなら、外の皮ほど面積が広いので、外の皮ほど重くなります。

では、どの皮も同じ重さにしたいとき、濃さは中心からの距離でどう薄めればよいでしょうか。答えは一つしかありません。距離の二乗に反比例、つまり 1/r² です。

これが、私の最初の論文に書いた「n=2 の唯一性定理」です(論文01)。計算は三行で終わります。それでも私は、1,100 本を超える論文の出発点をここに置いてきました。このページでは、定理を自分の手で動かして確かめながら、なぜこの三行を根本だと考えるのかを書きます。

この文章は、査読を経ていない、著者自身による公開(プレプリント)の論文の内容をまとめたものです。動かせる図と、このページのために新しく計算した数は、そのつど書いています。

要点

  • 球の皮の重さが半径によらず同じになるのは、密度が 1/r² のときだけです。半径 1 と半径 2 を比べるだけで示せます。
  • 指数の 2 は球面の次元、皮の重さの 4π は球面の面積です。定理は、球の表面の二つの名前を取り出しています。
  • 同じ条件は、場がどこからも湧き出さないこと、どんな形の面を通る量も 4π のままであることと同じです。
  • 現実の雲にも 2 は残ります。皮の重さの山は、局所の指数がちょうど 2 の半径にあります。水素原子のボーア半径も、銀河のハローの目印の半径も、気体分子のいちばん多い速さも、これです。
  • 密度の指数 n は、周期の法則 T²∝rn の指数でもあります。n=2 は、ばね(n=0)とケプラー(n=3)を入れ替える鏡のちょうど中央にいます。
  • ただし 2 は一つではありません。空間の次元を動かすと二つに分かれ、重なるのは 3 次元だけです。

皮をそろえる

下の図で、密度の指数 n を動かしてください。密度は 1/rn です。円は球の断面で、色の濃さが密度、点の数が皮の重さです。棒も皮の重さです。棒の高さがそろう n は、一つしかありません。

実験 1棒の高さをそろえてください

スライダーを動かします。円か棒に触れると、その皮の数が出ます。

実験 1 皮の重さは「面積 × 密度」です。半径 r の皮を 8 枚描いています。次元のボタンを押すと、そろう指数が動きます。

n が 2 より小さいと外の皮が重く、2 より大きいと内の皮が重くなります。ちょうど 2 のとき、半径が 2 倍になると面積は 4 倍、密度は 4 分の 1 で、皮の重さは変わりません。

面積の増え方と密度の減り方がちょうど打ち消し合うこの状態を、私の論文ではゼロテンションと呼んできました(論文02)。少年のころに習った釣りの言葉で、糸を張らず緩めず保つことを指します。

定理と、三行の証明

定理(n=2 の唯一性)

3 次元の空間で、密度が ρ(r)=1/rn の分布を考える。半径 r の皮の重さの増え方 dm/dr=4πr2−n が、すべての半径で同じ値になるのは、n=2 のときだけである。そのとき値は 4π である。

皮の重さは、面積 4πr² と密度の積です。

$$\frac{dm}{dr}=4\pi r^{2}\,\rho(r)=4\pi\,r^{\,2-n}$$

証明は三行です。

  1. 4π は 0 でないので、r2−n が一定かどうかだけを見ればよい。
  2. 半径 1 では値は 1、半径 2 では 22−n である。2 の冪が 1 になるのは肩が 0 のときだけなので、一定なら 2−n=0 である。
  3. 逆に n=2 なら r⁰=1 で、どの半径でも値は 4π である。

冪の形を仮定しなくても答えは同じです。皮の重さ 4πr²ρ(r) がどの半径でも同じ値 C なら、ρ(r)=C/(4πr²) と解けてしまいます。どんな形の密度を許しても、残るのは 1/r² だけです。

ただし「すべての半径で」は外せません。冪の中でなら半径 1 と 2 を比べれば足りますが、形を自由にして「半径を 2 倍したときだけ同じ」に弱めると、対数の周期で波打つ解が無数に通ってしまいます(論文1053)。

難しいところはどこにもありません。では、なぜこれを定理と呼ぶのでしょうか。問う向きが違うからです。

向き問い答え
順向き密度が 1/r² の球の中の質量は、半径とともにどう増えるか半径に比例する。天体物理では特異等温球として知られている
逆向き皮の重さがそろう指数はどれか。ほかには無いのか2 だけである(論文01)

順向きの計算は教科書に載っています。けれども、私が調べた範囲では、これを逆向きに問い、一つの定理として立て、そこから体系を始めた例は見つかりませんでした。道具が易しいことは弱点ではなく、この向きが空いていたしるしだと私は考えています。

2 と 4π は、球面の二つの名前

定理に出てくる数は、指数の 2 と、そのときの皮の重さの 4π の二つだけです。どちらも球の表面から来ています。

  • 2 は面の次元です。球の面は 2 次元なので、半径が λ 倍になると広さは λ² 倍になります。
  • 4π は半径 1 の球の面積です。全方向の立体角と同じ数です。

つまり定理は、中身の詰まった球から、その表面の次元と面積を取り出しています。空間の次元を変えると、それがよく見えます。

空間の次元 d皮の形皮がそろう指数 nそのときの皮の重さ
12 点02
2円周12π=6.283185
3球面24π=12.566371
43 次元の球面32π²=19.739209
54 次元の球面4(8/3)π²=26.318945

どの次元にも、そろう指数はちょうど一つずつあり、それは d−1 です(論文114)。面に穴をあけても、この指数は動きません。動かすのは次元だけです(論文1052)。4π は、この定理の 3 次元での顔です。

4π という数がどこから来て、物理の式の中でどう読み分けられるかは、記事「m=4π とは何か」にまとめました。ここでは定理そのものを追います。

球が、まっすぐな筒になる

n=2 の特別さは、別の形でも見えます。球の中の重さは、距離の刻み dr と向きの広がり dΩ を使って dm=ρ r² dr dΩ と書けます。ρ=1/r² を入れると、r² が消えます。

$$dm=\frac{1}{r^{2}}\;r^{2}\,dr\,d\Omega=dr\,d\Omega$$

距離と向きが、きれいに切り離されました。皮を全部同じ広さに伸ばすと、球は、長さが半径で断面が全方向の、まっすぐな筒になります。これが「半径によらない」の中身です。

中心に点が集まった球の断面と、点が一様に散った長方形の筒を並べた図
図 1 左の球の点は中心に集まって見えますが、右の筒では一様です。同じ点を、距離と向きの座標で描き直しただけです。

これはサイコロでも作れます。向きをでたらめに選び、距離も 0 から 1 のあいだで一様に選んで点を打つと、点の密度はちょうど 1/(4πr²) になります。このページのために 400 万個の点で確かめると、半径 0.905 の薄い皮の密度は 0.09707、式の値は 0.09716 でした。

湧き出さない場と、どんな形でも 4π

定理には、もう一つの顔があります。中心から外へ向かう矢を空間の全部に置き、矢の長さを 1/rn にします。この場がどれだけ湧き出しているかを測る量(発散)を計算すると、定理と同じ 2−n が出てきます。

$$\nabla\cdot\frac{\hat{\mathbf r}}{r^{\,n}}=\frac{2-n}{r^{\,n+1}}$$

n=2 のときだけ、中心の一点を除いて、どこからも湧き出しません。すると面を通る量は、面の形にも大きさにもよらなくなります。これがガウスの法則の中身で、定理の 4π は、ガウスの法則やクーロンの法則に出てくる 4π と同じ立体角です(論文13)。

下の図で試してください。論文には無い、このページのための実験です。

実験 2面をつぶしても、数は動きません

白い丸をつかんで、面を好きな形にしてください。金の点は上下に動かせます。面の外へ出すこともできます。

面を通る量12.566

実験 2 青い線は面の断面で、縦の軸のまわりに回した形です。場 r̂/rn が面を通る量をその場で積分しています。

数でも並べます。このページのために、場が面を通る量を積分しました。

n球 半径 1球 半径 2立方体 半辺 1立方体 半辺 2ゆがんだ袋
112.56637125.13274115.34824830.69649710.053096
212.56637112.56637112.56637112.56637112.566371
312.5663716.28318510.4450375.22251920.705191

面が中心から見て星の形なら、理由は一行です。面を通る量は向きごとの距離 R の積分で ∫R2−ndΩ と書け、n=2 のときだけ R が式から消えます。残るのは ∫dΩ=4π です。

保存があれば、n=2 は自然に現れる

自然の中になぜ 1/r² が多いのか。定理は一つの答え方を与えます。保存される物が、一点から全方向へ、一定の速さで流れ出しているとしましょう。厚さ 1 の皮の中身は、ある同じ長さの時間に出た分なので、外へ進んでも増えも減りもしません。皮の中身がどの半径でも同じなら、定理によって濃さは 1/r² しかありません。

太陽の光がそうです。光の速さで広がる厚さ 1 m の皮の中には、どの半径でもおよそ 1.28×10¹⁸ J のエネルギーが入っています。太陽の明るさを光の速さで割った数です。

太陽風も同じ形です。太陽は毎秒およそ 10 億から 15 億 kg を風として出し、風の速さはおよそ 400 km/s です。厚さ 1 m の皮に入るのは 2.5 から 3.75 トンで、速さがほぼ一定とみなせる所なら、半径が変わってもこの重さは変わりません。

定理は、なぜ物が保存するのかを語りません。保存という事実を「指数 2」という数に訳すだけです。原因は保存の側にあり、定理はその通訳です。論文01 では、同じ条件を画面の画素と描画の負荷の言葉でも言い直しました。こちらは比喩による読みです。

現実の雲にも、2 は残る

現実の雲の密度は、どこでも 1/r² というわけではありません。それでも 2 は消えません。半径ごとに密度の傾きを測り、その近くで 1/rn に見えるときの n を局所の指数と呼ぶことにします。すると皮の重さの増え方は、次の恒等式で書けます。

$$\frac{d}{dr}\bigl(r^{2}\rho\bigr)=r\,\rho\,\bigl(2-n(r)\bigr)$$

また 2−n が出ました。局所の指数が 2 より小さい所では外へ行くほど皮が重くなり、2 より大きい所では軽くなります。皮の重さの山は、局所の指数がちょうど 2 の半径にあります(論文1096)。

実験 3山の位置で、局所の指数を読む

雲を選び、図の上でカーソルか指を動かしてください。山の所で、下の線がちょうど 2 を横切ります。

実験 3 横軸は対数の目盛りです。上が皮の重さ(山を 1 とする)、下が局所の指数です。水素は原子の長さをボーア半径で、ハローは目印の半径で、速さは 1 方向のばらつきで測っています。

この山の位置には、それぞれ別の名前が付いています。

  • 水素原子の 1s の電子雲:局所の指数は 2r(ボーア半径を 1 とする)で、山はボーア半径です。8 種類の状態の山を全部探すと、局所の指数はどれも 2.000000 でした(論文1096)。
  • 銀河を包むハロー(NFW の形):局所の指数は中心の 1 から外の 3 へ動きます。2 になる半径を、天文学では r₋₂ と書いて、ハローの大きさの目印にしています。r²ρ の山がそこにあることも知られています。
  • 気体分子の速さ:速さの空間で同じ皮を数えると、マクスウェルの分布になります。山は、いちばん多い速さ √(2kT/m) です。

どれも、定理の 2 が「大きさを決める一点」として残ったものです。定理そのものは、この山がどこまでも平らに伸びて、すべての半径が頂上になった状態です。だから 1/r² の雲には、大きさの目印がありません。「定理の雲」のボタンで確かめてください。

軌道の上で:指数の物差し

ここからは、密度 1/rn の球の中を回る物を考えます。囲む質量が r3−n で増えるので、回る速さ v と周期 T は次のようになります。

$$v^{2}\propto r^{\,2-n},\qquad T^{2}\propto r^{\,n}$$

密度の指数 n が、そのまま周期の法則の指数になりました。ケプラーの第三法則 T²∝r³ は n=3 の場合です。質量が中心に集まると、囲む質量が半径によらなくなり、式の上で n=3 の端に来るからです。ばねの力は、一様な球の中の力で、n=0 です。

nどんな分布か囲む質量回る速さ周期の二乗力近い点から遠い点まで
0一様な球の中(ばね)r³r一定r90 度
1r²r1/2r一定103.9 度
2定理の分布r一定r²1/r127.3 度
3中心に集まった端(ケプラー)一定r−1/2r³1/r²180 度

最後の列の角度は、円に近い軌道のものです。ばね、定理、ケプラーが、一本の物差しの上に並びました。

n=2 の列に、銀河の回転の形が見えます。回る速さが半径によらないことを、ルービンとフォードは 1970 年にアンドロメダ銀河で示しました。太陽系と天の川を、同じ T² の目盛りで比べます。

惑星の周期の二乗は傾き 3、天の川の周期の二乗は傾き 2.20 の直線に乗るグラフ
図 2 太陽系の 8 惑星の傾きは 2.99972 で、ケプラーの 3 です。天の川は、エイラースたち(2019)が測った回転の速さ(5〜25 kpc で 229 km/s、傾き −1.7 km/s/kpc)から周期を作ると、傾きが 2.20 でした。2 に近い値です。

天の川を球とみなして読むと、皮の厚さ 1 パーセクごとに太陽およそ 1,200 万個ぶんの質量が、どの半径でもほぼ同じように乗っている計算になります。平らな回転が決めるのは密度と囲む質量で、内側の並び方の全部ではありません(論文910)。その質量が何でできているかは、ここでは問いません。

実験 4軌道を描かせ、鏡に写す

指数 n と打ち出す速さを変えてください。図の中の矢の先を上下に動かしても、速さが変わります。もう一つの図は鏡の像です。

力の形
近い点から遠い点まで
円に近い軌道の式 180°/√(4−n)
速さの二乗の時間平均
鏡の相手

実験 4 力の大きさが r1−n の場で軌道を計算しています。半径 1 の点から横向きに打ち出します。

この実験で見てほしいことが三つあります。

一つ目は角度です。円に近い軌道で、近い点から遠い点までに回る角度は π/√(4−n) です。n=0、2、3 で 90 度、127.2792 度、180 度になります。n=2 の角度は、ばねの 90 度とケプラーの 180 度の幾何平均です。これは銀河の力学で、回転が平らな所の揺れの速さを κ=√2 Ω と書く関係と同じ √2 です。

二つ目は平均です。速さの二乗の時間平均は、n=2 のときだけ、どんな大きさと形の軌道でも同じ値になります。実験 4 の速さをどう変えても、表示は 1 のままです。このページの計算では、打ち出す速さ 0.4、0.8、1.3 で 1.00010、1.00006、0.99988 でした。n=1 なら 0.72003、0.87999、1.22994 と動きます。皮の重さが半径によらないことの、軌道の側の顔です。

三つ目は鏡です。ばねの楕円を複素数で二乗すると、ケプラーの楕円になります。ボーリンが 1911 年に、カスナーが 1913 年に書き、アーノルドが本で紹介した事実で、私は論文1072で数えました。冪の力に広げると、力の組が決まります。密度の指数で書くと、次の関係です。

$$(4-n)(4-N)=4$$

n=0 の相手は N=3 で、ばねとケプラーが入れ替わります。n=1 の相手は 8/3 です。そして 0 から 3 のあいだで自分自身が相手になる指数が、n=2 です。4−n の値が 4、2、1 と等比に並ぶので、n=2 は鏡のちょうど中央にいます。写した曲線が相手の力の軌道の形になることを六つの指数で確かめると、残差は 2.41×10⁻¹¹ 以下で、相手の指数をわざと 0.2 ずらすと 5.92×10⁻³ 以上に跳ね上がりました。写るのは軌道の形で、時間は測り直さないと写りません。

密度の指数 n の数直線に、ばね、定理、ケプラーなどの位置と鏡の組を描いた図
図 3 密度の指数の物差し。下の弧が鏡の組です。n=4 は鏡の相手が無く、n=6 は鏡のもう一つの中央です(比較の節で触れます)。

軌道がすべて閉じるのは、ベルトランの定理(1873)の二つ、物差しの n=0 と n=3 だけです。定理の n=2 は閉じません。閉じる二つの、鏡の中央にいます。

2 は一つではない

ここまで、いろいろな 2 を同じもののように書いてきました。けれども私の論文の決まりでは、数が同じだけでは同じ根とは言いません。何を動かすと別物になるかを見ます。この動かすものを、私は分離子ぶんりしと呼んでいます(論文300)。ここで動かすのは、空間の次元です。

実験 5次元を動かして、2 を分ける

スライダーで空間の次元を変えてください。青い線は次元とともに動き、金の線は動きません。

実験 5 青の太い線が皮のそろう指数 d−1、青の細い線が質量が中心に集まる端 d、金の太い線が平らに回る指数 2、金の点線が軌道がいつも閉じる指数 0 と 3 です。
  • 次元とともに動く 2(d−1):皮がそろう指数、湧き出さない場の指数、点から出る力の落ち方、球面の次元。
  • 次元を動かしても動かない 2:回転が平らになる指数、等温のガスの球の指数、どの半径でもブラックホールと同じつり合いになる密度の指数(論文1092)、鏡の中央。

回転が平らになる指数が動かないのは、回る速さの二乗が、どの次元でも r2−n で変わるからです。等温のガスの球も、圧力のつり合いを冪で解くと、どの次元でも n=2 しか解がありません。重力定数と密度の積が、どの次元でも時間の二乗の逆数だからです(論文1092)。

3 についても同じことが起きます。質量が中心に集まる端は次元とともに動き、いつも閉じる逆二乗の力は動きません。二つが重なるのは 3 次元だけなので、点の重力のもとで軌道がいつも閉じるのは 3 次元だけです。

3 次元は、動く線と動かない線が、2 と 3 の二か所で同時に交わる場所です。私がこの定理を根本と呼ぶ理由の一つは、ここにあります。短い定理の上に、球の形から来る数と、重力と軌道から来る数が、この次元でだけ重なっています。重なる理由を一つの根にまとめることはしません。分けたまま、重なっていると言います。

ほかの定理と並べる

有名な定理の全体は、記事「有名な定理を、前提ごと並べる」に地図を作りました。ここでは唯一性定理と同じ棚の定理だけを、くわしく比べます。

ネーターの定理と比べる

物理でいちばん有名な定理の一つが、ネーターの定理(1918)です。二つを並べると、仕事の種類が違うことが分かります。

ネーターの定理n=2 の唯一性定理
入れるもの作用を変えない連続な変換(対称性)皮の重さが半径によらないという要求
出るもの保存する量。何が保存するか指数。いくつか
使う道具変分法と作用球の面積だけ
運動の法則要る要らない
型対応を作る(対称性から保存量へ)選ぶ(実数の中から一つへ)
崩すと対称性を壊すと、対応する量が動く要求をやめると、どの指数でもよくなる

競争相手ではなく、一本の鎖の別の輪です。光や風の 1/r² は、次の順につながります。

  1. ネーターの定理時間をずらしても法則が同じなら、エネルギーは保存する
  2. 発散の定理(ガウスの定理)定常な流れなら、どの皮を通る量も同じになる
  3. n=2 の唯一性定理どの皮の量も同じなら、濃さは 1/r² しかない
  4. ガウスの法則その場の係数は 4π で、ポテンシャルは 1/r である

ネーターの定理が「何が保存するか」を言い、唯一性定理が「保存するなら指数はいくつか」を言います。問いの向きが、ちょうど受け渡しになっています。

対称性を先に決めれば、ネーターの枠組みからも指数が選ばれることがあります。距離を λ 倍、時間を λ² 倍にしても作用が変わらないのは、ポテンシャルが 1/r²、力が 1/r³ のときだけです。ドゥ・アルファロ、フビニ、フルランの模型(1976)の形で、図 3 の n=4 にあたり、鏡の相手がいない指数でもあります。同じ 2 でも、これはポテンシャルの 2 で、定理の 2 とは別の根です。

「選ぶ定理」を並べる

唯一性定理と同じように、広い候補の中から少数を選ぶ定理を並べます。「何を動かし、何が残るか」と「前提を外すとどうなるか」が、それぞれの定理の個性です。

定理動かすもの条件残るもの外すと
n=2 の唯一性定理密度の指数(実数全部)皮の重さが半径によらない2 の一つ次元を変えると d−1 に動く
球殻定理の逆向き(ニュートン 1687・グルザディアン 1985)力の指数球の殻が中心の一点と同じ力を及ぼす逆二乗とばねの二つ4 次元では逆二乗が外れ、1/r³ が残る
ベルトランの定理(1873)中心力の形束縛された軌道がすべて閉じる逆二乗とばねの二つ次元を変えても動かない
エーレンフェスト(1917)空間の次元惑星の軌道が安定に回れる3 次元以下4 次元以上では安定な軌道が無い
フルヴィッツの定理(1898)数の次元掛け算で長さが保たれる1・2・4・8 の四つ3 次元の数は作れない
バーコフの定理(1923)球対称な真空の解アインシュタイン方程式シュヴァルツシルト解の一つ球対称をやめると一つに決まらない
ラブロックの定理(1971・1972)重力の方程式の形4 次元・発散なし・二階までアインシュタイン方程式(宇宙項つき)5 次元以上では別の項が許される

球殻定理とベルトランの定理は、別の問いなのに同じ二つの力を残します。けれどもこれも 3 次元の重なりです。このページで殻の力を積分すると、3 次元の比は逆二乗で 1.000000000 ですが、4 次元では逆二乗が 0.900743404 に外れ、1/r³ が 1.000000000 になりました。球殻の側は次元とともに動き、ベルトランの側は動きません。

こう並べると、唯一性定理の席が分かります。残るものが一つで、候補が実数全部で、道具が球の面積だけです。そして、ほかの定理が運動の法則や場の方程式を入れるのに対して、唯一性定理は何の法則も入れません。だから、ほかのどの定理の前にも置けます。これが、私が出発点に置いた理由です。

「唯一性定理」と呼ばれる別の定理

電磁気の教科書には、同じ名前の定理があります。境界の値を決めるとポアソン方程式の解が一つに決まる、という定理です。一般相対論には、ブラックホールの形が少数の量で決まるという定理があります。どちらも「解が一つ」の定理です。私の定理が一つに決めるのは解ではなく、指数です。

どこまでが既知で、どこからが私の仕事か

ここは正確に書きます。

  • 既知のこと:密度が 1/r² の分布で質量が半径に比例すること(特異等温球)、ガウスの法則、ラプラス方程式の基本解、ベルトランの定理、r²ρ の山が傾き −2 の所にあること、ばねとケプラーの写像、周期の冪が大きさで決まること(力学的相似)。
  • 論文で私が加えたこと:皮の重さの一様さという一つの条件で指数を定理として定めたこと(論文01)、m(n)=4π/(3−n) の階段と 4π の重なり枚数(論文01・02)、局所の指数で電子の雲の山を言い直したこと(論文1096)、球殻の 2 と地平線のつり合いの 2 を分けたこと(論文1092)。
  • このページで新しく整理したこと:n を周期の指数として、ばね・定理・ケプラーを一本の物差しに並べたこと、鏡の中央が n=2 で角度が幾何平均になること、速さの二乗の平均が軌道によらないのを n=2 の顔として読んだこと、次元を動かして 2 と 3 の交わりを一枚にしたこと。式はどれも既知のものの並べ直しで、まだ論文にはしていません。

新しい物理法則は主張しません。重力がなぜ逆二乗なのかの原因も、暗黒物質の正体も、この定理は語りません。m=4π の値は、密度の係数と半径を 1 と置く単位の選び方のもとでの値です。

体系の中で

2026 年 10 月末の時点で、私の論文は 1,103 本あります。そのうち 70 本が論文01 を参考文献に挙げ、21 本が本文で「唯一性定理」と名指しています。70 本は、文献の一件ずつを読んで数えました。

論文番号を横軸に、論文01 を引く論文の位置を縦線で示した図
図 4 線は番号の小さい所に集まり、いちど薄くなって、千番台でまた増えます。1〜200 に 51 本、201〜1000 に 7 本、1001 から先に 12 本です。

何かおかしなことが出てきたとき、私はこの定理に戻ります。読むなら、次の順がおすすめです。

  • 論文01「球対称密度分布における n=2 の唯一性定理」:定理そのもの。
  • 論文02「4π質量相殺定理」:同じ事実を積分の側から書いたもの。
  • 論文79「n=2 の隠れた対称性」:逆二乗の軌道が閉じる理由。
  • 論文114「「4次元らしさ」を担うのは誰か」:n=d−1 がどの次元にもあること。
  • 論文117「スケール不変性は、四通りに指数を選ぶ」:同じ形に見える指数の選ばれ方を分けたもの。
  • 論文157「二乗の点呼」:体系に現れる 2 を一つの試験で調べたもの。
  • 論文910「回転曲線が平らな区間は、そこの密度を決め、内側には囲む質量だけを課す」。
  • 論文1052「「一つ減る」は二つあり、片方は穴を数え、片方は次元を数える」。
  • 論文1053「「拡大しても同じ」を一つの倍率に弱めると、指数の唯一性は失われる」。
  • 論文1072「ばねの楕円を二乗すると、ケプラーの楕円になる」。
  • 論文1092「密度 1/r² の「2」は二つあり、球殻の重さの 2 と地平線のつり合いの 2 が重なるのは 3 次元だけである」。
  • 論文1096「電子の雲の皮ごとの重さは、局所の指数がちょうど 2 の半径で山になり、円の状態ではそれがボーアの半径 n² である」。

論文01 の全文と、n を動かすグラフは、論文の倉庫の定理のページでも読めます。同じ指数を面や地図の話に広げた記事に、「逆二乗則の地図」と「方眼紙の点を足すと、答えが形で変わる」があります。定理の皮の 4π をポアンカレ予想の証明の中で読んだものが、「ポアンカレ予想を、唯一性定理から読む」です。

よくある質問

これは逆二乗則の証明ですか?

いいえ。定理が言うのは、皮の中身が半径によらないなら濃さは 1/r² だ、という幾何の事実です。重力や光がなぜ保存する流れとして広がるのかは、定理の外にあります。保存と 3 次元がそろえば、指数 2 はこの定理で決まります。

一行で終わる計算を、なぜ定理と呼ぶのですか?

問いの向きが逆だからです。「1/r² だとどうなるか」ではなく「そろえるなら指数はいくつか。ほかに無いか」と問い、ただ一つだと示しています。定理の重さは計算の長さではなく、そこから何が出るかで決まると私は考えています。

特異等温球として知られていたのではありませんか?

はい。密度 1/r² の分布そのものは知られていました。天体物理の特異等温球は、ρ=σ²/(2πGr²) の形をしています。私が加えたのは、それを殻の一様さで選ばれるただ一つの指数として述べ、次元ごとの族として読み、体系の出発点に置いたことです。

なぜ 3 次元が特別なのですか?

定理そのものは 3 次元を選びません。どの次元にも d−1 の指数があります。特別なのは、この指数が、次元によらない 2 や 3 と重なるのが 3 次元だけだということです。実験 5 で確かめられます。

記事「m=4π とは何か」との違いは何ですか?

あちらは 4π という数の出どころと、物理の式の中での読み分けをまとめたものです。このページは、その手前にある定理そのものと、定理がほかの定理や現象とどうつながるかを書いています。

図の計算は、どこまで信用できますか?

実験の図は、ブラウザの中でその場で計算しています。積分や軌道の刻みは粗いので、最後の桁は動きます。本文と表の数は、別に高い精度で計算した値です。

論文と文献

論文はどれも CC BY 4.0 で公開しています。論文01 の記録は YOI の記録のページにあります。

このページで確かめた主な文献です。

  • アルキメデス『球と円柱について』:球の面積は大円の 4 倍。
  • Kepler, J. (1604). Ad Vitellionem paralipomena, quibus astronomiae pars optica traditur:光の強さと距離の二乗。
  • Newton, I. (1687). Philosophiae Naturalis Principia Mathematica, 第 1 編 命題 70・71:球殻定理。
  • Gauss, C. F. (1840). Allgemeine Lehrsätze in Beziehung auf die im verkehrten Verhältnisse des Quadrats der Entfernung wirkenden Anziehungs- und Abstoßungs-Kräfte.
  • Bertrand, J. (1873). Théorème relatif au mouvement d’un point attiré vers un centre fixe. Comptes Rendus.
  • Hurwitz, A. (1898):合成代数の定理。
  • Bohlin, K. (1911)、Kasner, E. (1913)、Arnold, V. I. (1990). Huygens and Barrow, Newton and Hooke:ばねとケプラーの写像。
  • Ehrenfest, P. (1917). In what way does it become manifest in the fundamental laws of physics that space has three dimensions?
  • Noether, E. (1918). Invariante Variationsprobleme.
  • Birkhoff, G. D. (1923). Relativity and Modern Physics.
  • Chandrasekhar, S. (1939). An Introduction to the Study of Stellar Structure、Binney, J. & Tremaine, S. (2008). Galactic Dynamics:等温の球と回転。
  • Rubin, V. C. & Ford, W. K. (1970). Rotation of the Andromeda Nebula from a Spectroscopic Survey of Emission Regions.
  • Lovelock, D. (1971, 1972):アインシュタインテンソルの一意性。
  • Landau, L. D. & Lifshitz, E. M. Mechanics, §10:力学的相似。
  • de Alfaro, V., Fubini, S. & Furlan, G. (1976):逆二乗のポテンシャルの共形力学。
  • Gurzadyan, V. G. (1985). The cosmological constant in the McCrea-Milne cosmological scheme.
  • Navarro, J. F., Frenk, C. S. & White, S. D. M. (1996, 1997):NFW の形。
  • Mishra, W. ほか (2019):太陽風の質量損失(毎秒 10 億から 15 億 kg)。
  • Eilers, A.-C., Hogg, D. W., Rix, H.-W. & Ness, M. K. (2019). The Circular Velocity Curve of the Milky Way from 5 to 25 kpc.