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メタンの109.47度は、数えるだけで決まる:水の角は、まわりの四つが等しくないぶんだけずれる

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前の読みもの「まん丸の原子は、なぜくっつくのか」では、決まった向きを持たない揺らぎで、まん丸の原子どうしが引き合うことを確かめました。今回はその反対の側、向きを持つ結合の角です。

メタンの四本の結合は、どの二本の間も109.4712206度で開いています。水は104.4776度、アンモニアは106.67度と、少し狭くなります。この角のどこまでが「数えるだけ」で決まり、どこからが別の理由で決まるのでしょうか。

この文章の計算は、このページのために新しく行ったものと、査読を経ていない、著者自身による公開(プレプリント)の論文によります。

要点

  • 長さの等しい向きをN本、和が0になるように等しい角で並べると、角の余弦は−1/(N−1)に決まります。三次元に入るのは4本まで。4本なら109.4712206度で、これがメタンの角です。
  • 球の上の点を押し合わせると、2・3・4・6・12個の形は、押し合う力の法則をどう取り替えても動きません。5個だけは、力の冪がs=15.0481を超えると三角両錐から四角錐に替わります。
  • 水やアンモニアの角が狭いのは、まわりの四つ(水素と結ぶ二つと、結ばない二つ)が等しくないからです。点の模型で、水に合わせた一つの比が、アンモニアの角を106.74度と、実測の106.67度の近くに置きました。
  • 水の104.4776度は、四次元の正四面体の仲間の角104.4775122度と、0.0001度もずれません。それでも、これは数えた角ではありません。
  • 水が4℃でいちばん重いのも、角のせいではありません。重水にすると11℃あまりに、圧力や塩でも動きます。

数えるだけで決まる角

長さ1の向きをN本、どの二本の間も同じ角になるように置き、全部を足すと0になるようにします。全部を足した長さの二乗は、N+N(N−1)×(角の余弦)です。これが0なので、角の余弦は−1/(N−1)に決まります。2本なら180度、3本なら120度、4本なら109.4712206度です。

ところが5本以上は、三次元には入りません。N本の向きは、ちょうどN−1次元を要するからです。5本を等しい角104.4775122度で並べるには、四次元以上が要ります。

原子の中の電子の部屋でも、同じ数え方が出てきます。丸いsの部屋が一つと、向きを持つpの部屋が三つあります。これを混ぜて四つの等しい部屋にすると、どの部屋もsを4分の1、pを4分の3ずつ持ちます。二つの部屋が別々の部屋であるという条件から、部屋どうしの角の余弦は−1/3、つまり109.4712206度です。この3は、pの部屋の数で、それは空間の次元です(論文1110)。

球の上の点の六つの形。向かい合う二点、正三角形、正四面体、正八面体は力の法則によらず、5個は三角両錐と四角錐の二つ
図1 球の上の点を押し合わせた形。2・3・4・6個は力の法則によらず同じ形で、5個だけが力の法則で替わります。

力の法則を取り替える

数え方で決まった角なら、押し合う力の法則を取り替えても動かないはずです。確かめます。球の上にN個の点を置き、どの二点も、距離のs乗に反比例するエネルギーで押し合うとします(s=1が電気の力で、力は距離のs+1乗に反比例します)。エネルギーがいちばん低くなる並びを探します。

実験1球の上の点を押し合わせる

点の数を選び、つまみで力の冪sを変えます。もう一つのつまみで、絵を回せます。

点の数
形
角(組の数)
sを動かすと

実験1 右(狭い画面では下)の図は、点どうしの角をsに対して描いたものです。縦の点線は、5個の形が入れ替わるs=15.0481です。

2・3・4・6・12個は、sを0.5から40まで動かしても、角が一つも動きません。12個の正二十面体のエネルギーは、私が前に数えた値(論文1014)と同じでした。CohnとKumar(2007年)は、広い範囲の力の法則のどれでも最小になる並びを「普遍に最適」と呼び、球の上では2・3・4個(正単体)、6個(正八面体)、12個(正二十面体)がそうであること、5個ではそうならないことを示しています。

5個だけが替わります。sが15.048077を超えると、三角両錐(北と南に一つずつ、赤道に三つ)より、四角錐(頂に一つ、底に四つ)のほうが低くなります。Schwartz(2016年)が計算機を使って証明した境S=15.048...と、示された桁で一致しました。5個は三次元で等しい角に並べられないので、極と赤道、頂と底のような二種類の席ができます。どちらの並びが低いかを、力の法則が決めます。

6個と12個は、等しい角の数え方ではありませんが、どの点も同じ立場にある対称な形で、これも力の法則によりません。動かない角を決めているのは、力の法則の外にあるもの、数え方か対称性です。

まわりの四つが等しくないとき

水の酸素のまわりには、水素と結ぶ部屋が二つと、結ばない部屋が二つあります。四つは等しくありません。結ばない部屋のほうが強く押す、と読む見方があります(GillespieとNyholm、1957年)。これを点の模型で試します。四つの点のうち、いくつかに電荷q、残りに1を置いて押し合わせ、電荷1の点どうしの角を測ります。

実験2電荷の違う点を混ぜる

つまみで電荷の比qを変えます。ボタンで力の冪sを選び、「水に合わせる」で、水の形の角が104.4776度になるqを探します。大きい点が電荷qの点です。

力の冪s
水の形:電荷1の点どうし
水の形:電荷qの点どうし
距離の積÷二乗
アンモニアの形:電荷1の点どうし

実験2 水の形は電荷qの点が二つと1の点が二つ、アンモニアの形は電荷qの点が一つと1の点が三つです。点線は、水とアンモニアの実測の角です。

電荷がそろうq=1では、どちらの形も109.4712度で、sを替えても動きません。qが1を超えると角は狭まり、狭まり方はqとsの両方で動きます。部品が等しくなくなった所から、力の法則が角に入ってきます。

それでも、一つだけ動かないものが残りました。水の形で、同じ電荷どうしの距離の積は、違う電荷の間の距離の二乗にいつも等しくなります(表の「距離の積÷二乗」は1)。釣り合いの式を二つ掛けると電荷が消えるからで、冪の力なら、sにも電荷にもよりません。とれる形は一本の道筋に決まっていて、その上のどこに止まるかを、電荷とsが決めます。

水の104.4776度に合わせると、電荷の比は、s=1で1.245468、s=12で1.757134と大きく動きます。ところが、電荷qの点どうしの角はどのsでも114.6236度のままです。同じ比でアンモニアの形にすると、角は106.7364度(s=1)から106.8303度(s=12)で、実測の106.67度より0.07度から0.16度大きいだけでした。これは点の模型の話で、電子の対が点の電荷だと言っているわけではありません。

実際の角から、部屋の混ぜ方を読む

逆に、実際の角から部屋の混ぜ方を読むこともできます。二つの部屋が別々である条件を使うと、結ぶ部屋のpの重みλ²は、角θから−1/cosθで決まります。sの部屋が全部で1つ分なので、結ばない部屋が残りのsを持ちます。角は、アメリカのNIST(標準技術研究所)の表から引きました。

分子実測の角(度)pの重みλ²結ぶ部屋一つのs結ばない部屋のsの合計
水104.47763.999980.20000.6000
アンモニア106.673.4860.22290.3313
ホスフィン93.317.370.05440.8367
硫化水素92.1127.160.03550.9290

重みは、整数に並びません。硫化水素とホスフィンは、結ぶ部屋にsがほとんど入らず、ほぼ純粋なpで、角は90度に近くなります。メタンのように四つが等しければ重みはちょうど3ですが、四つが等しくないと、重みは部屋どうしの違いに応じて、どんな値にもなります。

pの重みλ²と角の関係の曲線。λ²が1、2、3、4の黒い点と、水、アンモニア、ホスフィン、硫化水素の四つのひし形
図2 等しい二つの部屋の角と、pの重みλ²(cosθ=−1/λ²)。黒い点は整数の重み、ひし形は実測の角から読んだ四つの分子です。λ²=4の点は、水のひし形と重なっています。

104.4776度と104.4775度

表の水の重み3.99998は、ほとんど4です。重み4の角は104.4775122度で、四次元に五本の等しい向きを並べた角(四次元の正四面体の仲間の、中心から頂点への角)と同じです。水の平衡の角104.4776度との差は0.0000878度で、測定の不確かさ0.0019度の内に入ります。

では水の角は、四次元の数え方なのでしょうか。そうではありません。理由は二つあります。

一つ目は個数です。数え方の104.4775122度は、等しい向きが五本あって、十組の角が全部同じになるときの角です。水の部屋は三次元に四つで、しかも結ぶ二つと結ばない二つで重みが違います。水の重み4は部屋の数ではなく、一つの部屋の中のsとpの比です。

二つ目は仲間です。同じ族のアンモニア、ホスフィン、硫化水素の重みは3.486、17.37、27.16で、整数に並びません。水だけが整数に乗る理由は、数え方の側にはありません。数が一致しても、根が同じとは限りません。これは私が前に書いた「同根か別根か」の判定の、ちょうどよい見本です(論文300)。

水が4℃で重いのは、角のせいか

水は4℃のときいちばん重く、氷は水に浮きます。この理由として、水の104.5度の角が氷の籠を作り、それが4℃の山を生む、という説明を見かけることがあります。角と4℃は、本当につながっているのでしょうか。

氷の中では、酸素のまわりに四つの相手が正四面体に近い向きに並び、すき間の多い網になります。氷が軽いのはこのためで、まわりが四つだからすき間が残る、というのはこのページの前半の数え方の側の話です。一方、4℃の山は、冷えて縮む働きと、網ができかけてふくらむ働きの釣り合いです。その温度は、分子の角をほとんど変えずに動きます。

  • 重水:水素を重い水素に替えた水です。分子の角は水とほぼ同じですが(原子核の重さは、つり合いの形を変えないという近似)、いちばん重い温度は11℃あまりです。国際的な重水の式(Herrigら、2018年)で私が計算すると11.598℃で、同じやり方で純水は3.978℃でした。重水の熱による膨張のデータは食い違いが大きいとされ(Kell、1977年)、小数点以下は資料によって揃いませんが、4℃から7℃以上離れていることは変わりません。
  • 圧力:純水を押すと、いちばん重い温度は下がります。国際的な水の式(WagnerとPruß、2002年)で、5 MPa(50気圧ほど)で2.981℃、10 MPa(100気圧ほど)で1.932℃でした。
  • 塩:塩が増えるほど、いちばん重い温度は下がり、やがて凍る温度より下へ行きます。海水の国際的な式(TEOS-10)で計算すると、その境は実用塩分23.73でした(教科書では24.7がよく引かれます)。ふつうの海水(実用塩分35)は、凍るまで冷やしても重くなり続けます。それでも、海の氷は浮きます。
左は1気圧の水と重水の密度の山。水は3.98度、重水は11.60度でいちばん重い。右は塩分に対する、いちばん重い温度と凍る温度の二本の線で、23.73で入れ替わる
図3 左は、1気圧の水と重水の密度を山の高さで割ったもの。右は、塩分ごとのいちばん重い温度と凍る温度です。いちばん重い温度の線は、凍る温度より下では式の外なので破線にしました。

まとめると、すき間ができること(まわりが四つ)は数え方の側、4℃という温度は、水素結合の強さと熱の揺れの釣り合いというエネルギーの側の話です。104.4776度という角が4℃を決めているわけではありません。

次元を動かす

数え方の角は、次元を動かすとどうなるでしょう。d次元の正四面体の仲間(正単体)の、中心から頂点への角は、余弦が−1/dです。三次元で−1/3、四次元で−1/4。sの部屋一つとpの部屋d個を混ぜた角も、同じ式です。

前に書いた石けん膜の論文(論文1102)で、膜の縁が四本会う角109.4712206度は、正八面体の二面角(面と面の角)と同じ根だ、と書きました。これは次元を動かしても成り立つのでしょうか。答えは、正八面体をどの仲間として広げるかで変わります。

実験3次元を動かす

つまみで次元dを変えます。ボタンで、決まった次元へ跳べます。

正単体の中心角
切り詰めた正単体の二面角
交差多面体の二面角
交差多面体との差

実験3 白抜きの丸は、正四面体を切り詰めた形の仲間の二面角で、どの次元でも正単体の中心角と重なります。四次元の点のそばの小さなひし形は、水の104.4776度です。

正八面体は、正四面体の辺の真ん中を結んだ形(正四面体を切り詰めた形)でもあり、座標軸の上の点を結んだ形(交差多面体)でもあります。切り詰めた形の仲間では、隣り合う面の向きが、正四面体の中心から頂点への向きと、別の頂点の向きを裏返したものになります。そのため二面角は、どの次元でも正単体の中心角と同じです。交差多面体の仲間では、二面角は次元とともに開き、重なるのは三次元だけです。

だから「同じ根」は、切り詰めた形の仲間として読めば、どの次元でも残ります(論文1110)。次元を動かして確かめるときは、何を保って動かすかを先に決めないと、答えが出ません。

よくある問い

水の角が104.5度になるわけは、分かっているのですか?

このページでは計算していません。四つの部屋のエネルギーの違いが、角をどれだけずらすかを決めていると考えられます。ここで確かめたのは、ずれが数え方からではなく、部屋の違いから来ることまでです。

部屋を「混ぜる」というのは、本当に起きていることですか?

混ぜた部屋は、電子の入り方を読むための一つの書き方です。結ばない二つの部屋をどう分けるかは一つに決まらず、合計だけが決まります。このページでは等しく分けて読んでいます。

5個の点の形が替わるsの値は、どこまで確かですか?

Schwartzが計算機を使った証明で、境S=15.048...を示しています。私の計算は、三角両錐と四角錐のエネルギーを比べたたどり直しで、示された桁で一致しました。

論文と文献

論文はどれもCC BY 4.0で公開しています。

  • 論文1110「メタンの109.47度は、力の法則を取り替えても動かない数え方の角であり、水の角は、まわりの四つが等しくないぶんだけそこからずれる」:このページの計算のもと。
  • 論文1109「平均ではまん丸の原子どうしも、揺らぎの片寄りが向きをそろえて、距離の6乗に反比例して引き合う」:向きを持たない引き合い。
  • 論文1102「輪の間の石けん膜は間隔が半径の1.3255倍で切れるが、同じ形の鎖はいつでも垂れる」:膜の縁の109.47度。
  • 論文1014「トムソン問題の最適配置は分からないが、配位の欠陥の総和はいつも12である」:球の上の点。
  • 論文300「三百本目の点呼:同根か別根かは、判定できる」:数の一致と根。
  • Pauling, L. (1931). The nature of the chemical bond. Application of results obtained from the quantum mechanics and from a theory of paramagnetic susceptibility to the structure of molecules. Journal of the American Chemical Society.
  • Gillespie, R. J., and Nyholm, R. S. (1957). Inorganic stereochemistry. Quarterly Reviews, Chemical Society.
  • Cohn, H., and Kumar, A. (2007). Universally optimal distribution of points on spheres. Journal of the American Mathematical Society.
  • Schwartz, R. E. (2016). The phase transition in 5 point energy minimization. arXiv:1610.03303.
  • Johnson, R. D. III (ed.) (2022). NIST Computational Chemistry Comparison and Benchmark Database. NIST Standard Reference Database Number 101, Release 22.
  • Hoy, A. R., and Bunker, P. R. (1979). A precise solution of the rotation bending Schrödinger equation for a triatomic molecule with application to the water molecule. Journal of Molecular Spectroscopy.
  • Wagner, W., and Pruß, A. (2002). The IAPWS Formulation 1995 for the Thermodynamic Properties of Ordinary Water Substance for General and Scientific Use. Journal of Physical and Chemical Reference Data.
  • Herrig, S., Thol, M., Harvey, A. H., and Lemmon, E. W. (2018). A Reference Equation of State for Heavy Water. Journal of Physical and Chemical Reference Data.
  • Kell, G. S. (1977). Effects of isotopic composition, temperature, pressure, and dissolved gases on the density of liquid water. Journal of Physical and Chemical Reference Data.
  • IOC, SCOR and IAPSO (2010). The international thermodynamic equation of seawater - 2010: Calculation and use of thermodynamic properties. Intergovernmental Oceanographic Commission, Manuals and Guides No. 56, UNESCO.