E(3D)=(4/3)πc³ は、記事「E=4πc² とは何か」で見た表面積の形 4πc² を、半径について 0 から c まで積み上げた式です(論文12)。論文12 はこれを体積復元方程式と呼び、左辺を E(3D) と書きました。右辺は、半径 c の球の体積と同じ形です。
名前には E が付いていますが、単位を数えるとエネルギーではありません。積み上げるときに半径の幅を掛けるので、単位がひとつ増えるからです。この記事では、これを体積の形と呼びます。
それでも、半径 c の球の中身は、物理の中に本当にあります。光が単位時間に届く範囲と、ありうる速さの集まりです。そして速さの集まりのほうは、どの物差しで測るかで、体積がまるで違う顔を見せます。
この文章は、査読を経ていない、著者自身による公開(プレプリント)の論文の内容をまとめたものです。二つの論文を組み合わせてこの記事で計算したところは、そう書いています。
要点
- E(3D) は、表面積の形 4πr² を半径について 0 から c まで足したものです(論文12)。0 から足すので、積分の定数 +C は出てきません。
- 単位はエネルギーではなく、エネルギーに速さを掛けた形になります。名前の E は、エネルギーの式 E=4πc² から出発した道筋を表しています。
- 光が単位時間に届く範囲は、時間の単位を決めると半径 c の球で、その体積が (4/3)πc³ です(論文61)。
- ありうる速さの集まりも半径 c の球です。ふつうの物差しでは体積は (4/3)πc³ ですが、相対論の物差しでは体積に限りがなく、そのほとんどが光の速さのすぐ手前に集まっています(論文60 と 論文208 を組み合わせた、この記事の計算)。
- 私の論文 1,097 本のうち 10 本が、本文で (4/3)πc³ か「体積復元」を書いています。
どこから出てくるか
半径 r の球の表面積は 4πr² です。中心から半径 c まで、ごく薄い殻を重ねていくと、殻の面積を半径について足した量が、球の体積になります。式で書くと ∫₀ᶜ 4πr² dr = (4/3)πc³ です(論文12)。グラフで言えば、殻の面積の曲線の下の面積が、球の体積です。

0 から c まで足しているので、積分の定数 +C は出てきません。足しはじめる場所を決めずに書くと +C が付き、それを宇宙定数と並べて読む論文もあります(論文62・72)。ただし論文62 の結論は、+C と宇宙定数は同じものではない、というものです。
名前は E、単位は体積の側
m=4π と置いた E=4πc² の右辺は、質量(kg)と速さの二乗の積で、ジュールの単位を持ちます。半径について 0 から c まで足すときには、半径の幅(ここでは速さの単位)を掛けるので、(4/3)πc³ の単位は kg と速さの三乗の積、つまりジュールと速さの積になります。だから (4/3)πc³ は、エネルギーそのものではありません。E(3D) という名前は、エネルギーの式から出発して、その形を体積の側へ伸ばした道筋を表しています。
半径 c の中身は、本当にある(一):光が届く範囲
一点から出た光は、時間 t のあいだに、半径 ct の球の内側まで届きます。時間の単位を一つ決めて t=1 とすると、届く範囲は半径 c の球で、その体積が (4/3)πc³ です(論文61)。届く範囲を、光の薄い殻が重なったものとして見れば、体積復元の積分そのものになります(論文61)。
ただし、(4/3)πc³ という数そのものは、単位の選び方で変わります。光の速さの数が、メートルと秒の決め方しだいだからです。論文112 は、残るのは数ではなく、届く範囲は球で、その体積は (ct)³ に比例して増える、という形のほうだと書いています。
半径 c の中身は、本当にある(二):速さの球
物の速さには上限 c があるので、ありうる速さを全部集めると、半径 c の球の内側になります(論文59・60)。この球の体積をふつうの物差しで測ると、ちょうど (4/3)πc³ です。E(3D) の形は、ここにそのまま現れます。
けれど、相対論にはそれ自身の物差しがあります。二つの速さの違いを相対論の足し算のきまりで測ると、速さの球は曲率 −1/c² の双曲空間になります(論文60)。双曲空間の球の体積には閉じた式があり(論文208)、それを速さの球にあてはめると、速さ v までの体積は πc³(sinh 2φ − 2φ) です。φ は v/c の逆双曲線正接で、相対論の距離を c で割ったものです。ここから先の数は、論文60 と論文208 を組み合わせて、この記事で計算したものです。
速さ 0.5c までの体積は、ふつうの物差しで測った値の 1.41 倍、0.9c までなら 6.72 倍、0.99c までなら 73 倍、0.999c までなら 746 倍です。ふつうの物差しでは、速さの球の体積は (4/3)πc³ で頭打ちなのに、相対論の物差しでは、光の速さに近づくほどいくらでも大きくなります。

しかも、その体積のほとんどは、光の速さのすぐ手前にあります。0.99c までの球で、0.9c から 0.99c のあいだが占める割合は、ふつうの物差しでは 24.9% ですが、相対論の物差しでは 93.1% です。

論文208 は、双曲空間では球をいくら大きくしても、体積の 86% が外側の厚さ 1(曲率の半径ひとつ分)の殻に住み続けることを示しました。速さの球では、この厚さは相対論の距離で c にあたります。0.99c の球なら、0.928c から 0.99c までの殻に体積の 89.2% が入っています。ふつうの物差しで同じ速さの殻を測ると 17.5% です。
皮と中身の釣り合いも変わります。球の表面積を体積で割った値は、ふつうの物差しでは 3/v で、球が大きくなるほど中身が皮を引き離していきます。相対論の物差しでは、この値は 2/c に近づいて止まり(0.99c で 2.09/c)、中身が皮を引き離すことがありません(論文208)。論文208 の題名のとおり、曲がりが、次元を上げたときと同じ仕事をしています。平らな空間で同じ混み方を作るには、次元を半径の二倍に育て続けなければなりません(論文208)。

どちらの物差しも、幾何としては正しいものです。違うのは物差しで、どちらで測ったかを言わないと、速さの球の体積の話はかみ合いません。
同じ 4/3 でも、根が違う
(4/3)πc³ の 4/3 は、球の体積の 4/3 です。宇宙の膨張をニュートンの殻で読むときの臨界密度にも 4π/3 が入りますが、これは殻の内側の質量(球の体積と密度の積)として入るので、球の体積と同じ 4π/3 です(論文907)。
一方、電子を帯電した小さな球と見たときの電磁質量にも 4/3 が出ますが、こちらは場の向きの平均 2/3 の 2 倍で、球の体積とは別の根です(論文908)。空間の次元 d を動かすと、二つは d=2 と 3 でだけ同じ数で、d=4 で分かれます。

次元を変えると
論文12 は、同じ積み上げを 4 次元でも行い、(π²/2)c⁴ を出しました。論文59 は、c の冪が半径 c の球の体積の次元にそろい、積み上げるたびに次元が一つ上がることを書いています。論文1080 は、3 次元と 4 次元の球の体積が同じ数になる半径が 8/(3π)=0.849 であることを示しました。c を 1 とすれば 4 次元の 4.93 のほうが 3 次元の 4.19 より大きく、どちらが大きいかは速さの単位で入れ替わります。
なお、c³ の 3 が 3 次元の 3 になっているのは、c を球の半径として置いたからです。物理の式に出る c の冪が、空間の次元を数えているわけではありません(論文116)。
私の論文の中の (4/3)πc³:10 本
本文(参考文献より前)に (4/3)πc³ か「体積復元」を書いている論文を数えました。1,097 本のうち 10 本で、どう使っているかを読んで分けると、七つになりました。

| 使われ方 | 論文 | していること |
|---|---|---|
| 出どころ | 12 | 表面積の形 4πr² を半径について 0 から c まで積み上げ、(4/3)πc³ を出す(体積復元方程式)。4 次元では (π²/2)c⁴ |
| 一覧の表 | 13 | 体系の一覧の表に、論文12 の式として載せる |
| 光が満たす球 | 61 | 光が単位時間に届く範囲の体積として読む |
| 積分定数 +C と宇宙定数 | 62 · 72 | 不定積分の +C と、宇宙定数(ユニモジュラー重力の積分定数)を、同じではないが双対として並べる |
| 数は単位の産物 | 112 | (4/3)πc³ の数そのものは単位の産物で、残るのは、届く範囲は球で体積は (ct)³ で増える、という形 |
| 次元 | 59 · 1080 | c の冪と球の体積の次元(59)、3 次元と 4 次元の球の体積が同じ数になる半径(1080) |
| 同じ 4/3 の行き先 | 907 · 908 | 臨界密度の 4π/3 は殻の中の質量で、球の体積と同じ根(907)。電磁質量の 4/3 は場の向きの平均で、別の根(908) |
E(3D) が言っていないこと
- 新しい物理法則や、新しいエネルギーを主張しません。
- (4/3)πc³ がエネルギーだとは言いません。単位は、ジュールと速さの積です。
- +C を宇宙定数そのものだとは言いません。論文62 の結論は、同じものではない、です。
- (4/3)πc³ という数そのものは、単位の選び方で変わります(論文112・1080)。
- 速さの球の体積を相対論の物差しで測った話は、幾何の計算です。新しい物理量や予言を出すものではありません。
では、何の役に立つか
一つは、皮と中身を見分ける物差しになることです。表面積の形と体積の形を並べると、何が皮で何が中身かがはっきりします。この見方は、臨界質量を皮から漏れる分と中身で増える分の釣り合いとして数えた論文1007 でも使いました。
もう一つは、物差しを変えると、同じ「半径 c の球」がまったく違う中身を持つことを見せてくれることです。ふつうの物差しでは中身は (4/3)πc³ で頭打ちで、中身が皮を引き離していきます。相対論の物差しでは中身に限りがなく、そのほとんどが皮のすぐ内側にあり、皮と中身の比は一定に近づきます。
そして、同じ数 4/3 でも根が違うことがある、と確かめる練習台になります(論文907・908)。
よくある質問
E(3D) はエネルギーですか?
いいえ。単位を数えると、エネルギーに速さを掛けた形です。名前の E は、エネルギーの式 E=4πc² から出発したことを表しています。
+C は宇宙定数ですか?
同じものではありません。論文62 は、+C と、ユニモジュラー重力で積分定数として出てくる宇宙定数を並べ、同じものではないが、体積の自由度について双対の位置にある、と結論しています。
速さの球の体積に限りがない、というのは本当ですか?
相対論の物差し(速さの足し算で測る距離)で測ると、そうなります。ふつうの物差しで測れば (4/3)πc³ です。どちらも幾何として正しく、違うのは物差しです。この点は、論文60 と論文208 を組み合わせてこの記事で計算しました。
なぜ c³ の 3 は、3 次元の 3 なのですか?
c を球の半径として置いたからです。半径 c の 3 次元の球の体積は c³ に比例します。物理の式に出る c の冪が、そのまま空間の次元を数えるわけではありません(論文116)。
E=4πc² の記事との関係は?
記事「E=4πc² とは何か」は、表面積の形(皮)の側をまとめたものです。この記事は、それを積み上げた体積の形(中身)の側をまとめています。
もとの論文
- 論文12「境界エネルギーから体積エネルギーへ」
- 論文59「単位球の体積は 5 次元で最大になる」
- 論文60「速度空間の球としての c」
- 論文61「光球としての c」
- 論文62「+C と Λ:体積の自由度における双対」
- 論文112「割り当てられた領域と、その中の自由」
- 論文116「c の冪は、何を数えているか」
- 論文208「曲率は、次元と同じ仕事をする」
- 論文908「電子の電磁質量の 4/3 は、球の体積ではなく場の向きの平均から来る」
- 論文1080「3 次元と 4 次元の球の体積が同じ数になる半径は、最大の次元が移る境である」
論文はどれも CC BY 4.0 で公開しています。
この話を一冊で
E=4πc² と、それを積み上げた体積の形 (4/3)πc³ は、Kindle の本『一枚の皮と、その中身』で、たとえ話と計算を添えて順に説明しています(Amazon)。