E=4πc² は、アインシュタインの式 E=mc² の質量 m に 4π を置いた式です(論文12)。4π は、密度が距離の二乗に反比例する球で、半径 1 の中の質量を数えた値です(論文02・記事「m=4π とは何か」)。右辺は、半径 c の球の表面積と同じ形をしています。
新しい物理法則ではなく、よく知られた式を別の形として読み直したものです。ただ、読み直してみると、c を半径とする球が物理の中に本当に二つ見つかります。ありうる速さを全部集めた球と、光が広がる球(時間の単位を一つ決めたとき)です。
この文章は、査読を経ていない、著者自身による公開(プレプリント)の論文の内容をまとめたものです。
要点
- E=4πc² は、ふつうの E=mc² に m=4π を入れたものです。答えは何も変わらず、変わるのは式の見え方です。
- 右辺は、半径 c の球の表面積と同じ形です(論文12)。同じ形であって、エネルギーが面積になったわけではありません。
- この 4π は立体角ではなく、質量です。質量の単位の選び方で置いた数(規約)です(論文60・116)。
- それでも、半径 c の球は本当にあります。ありうる速さの集まりは半径 c の球で、その曲率は −1/c² です。この曲がりは実験で測られています(論文60)。
- 私の論文 1,097 本のうち 22 本が、本文に E=4πc² の式を書いています。使われ方は七つに分かれます。
どこから出てくるか
論文02 の計算では、密度が 1/r² の球で半径 1 の中の質量を数えると 4π になります。これを E=mc² の m に置くと E=4πc² です。球の表面積の式 4πr² の r のところに、c が入った形になっています。

単位で確かめます。E はジュール(kg·m²/s²)、c² は m²/s² です。両辺の単位がそろうには、c² に掛かる数が kg を持っていなければなりません。単位を持たない立体角では、kg の分が足りません。だから E=4πc² の 4π は、立体角ではなく質量です(論文60)。
式に出る 4π は三つある
論文60 は、物理の式に出てくる 4π を三つに分けて数えました。

| 4π | どこから来るか | 単位 | 身分 |
|---|---|---|---|
| 立体角(全方向ぶん) | 球面の形(論文01) | なし | 事実 |
| 2π × |オイラー標数|(穴が二つの面) | 面のつながり方(論文67) | なし | 事実 |
| 質量 m=4π | 質量の単位の選び方(論文56・116) | 質量 | 規約 |
数字が同じでも、出どころ(根)が違えば別のものとして扱う、というのが私の論文の決まりです(論文35・300)。E=4πc² では、この見分けがいちばんはっきり出ます。
半径 c の球は、本当にある(一):速さの球
物の速さには上限 c があります。向きと大きさを持つ速さを一つの点で表し、とりうる速さの点を全部集めると、半径 c の球の内側がちょうど埋まります。論文59 と論文60 は、この球については「c を半径と読む」ことがたとえではなく、文字どおりに成り立つと書いています。
相対論では速さを単純に足せないので、二つの速さの違いも、相対論の足し算のきまりで測ります。そう測ると、この球は一様に負に曲がった空間(双曲空間)になり、その曲率は K=−1/c² です。1910 年にヴァリチャクが示したことです。速さ 0.9c の点は中心から 1.47c、0.99c の点は 2.65c、0.999c の点は 3.80c の距離にあり、縁の c にはいくら進んでも着きません。

この曲がりは、絵ではなく測られている量です。加速、向きの変更、減速をひと巡りさせると、回転している物(スピン)の向きが、元に戻らずに少し回ります。トーマス歳差(1926 年)と呼ばれる回転で、原子の中のスピンと軌道の相互作用に出てくる因子 1/2 がその現れです(論文60)。
曲率の大きさ |K| は 1/c² なので、c² を 1/|K| に置き換えられます。すると E=mc² は E=m/|K|、つまり「静止エネルギーは、速さの空間の曲がり具合の逆数に比例する」と読めます。この置き換えに 4π は要らず、どんな m でも成り立ちます。そのため論文60 は、自分の結論を「4π ではなく c についての結果だった」とまとめています。
速さの空間で、中心から距離 r の球の面積は 4πc² sinh²(r/c) です(論文60)。半径が小さいうちは平らな空間の 4πr² とほとんど同じで、0.537c を過ぎると平らなときより 1 割以上広くなります。4πc² は、この空間の曲がりが効きはじめる面積の目盛りです。なお、この面積の式の 4π は一つ目の立体角で、E=4πc² の 4π(質量)とは別のものです。

半径 c の球は、本当にある(二):光の球
一点から出た光は、半径 ct の球の面となって広がります。論文61 はこの球を光球と呼びます。時間の単位を一つ決めて t=1 とすると、光球の半径は c、面積は 4πc² です。このときの 4πc² は、長さの二乗の単位を持つ、本物の面積です。
ただし、t=1 をどれだけの時間にするかは、私たちが決めています。論文21 によると、私の体系では単位の選び方を、質量(m=4π)・重力の定数(G=4π)・量子の定数(ħ=1/(4π))の三つにもう使っています。c を長さとして読むのは四つ目の選び方になるので、使うときはそう断ってから使う、という決まりです。そして光球の面積に立つ 4π は一つ目の立体角で、E=4πc² の 4π(質量)とは別のものです。同じ数の並びでも、光球の側は面積、E=4πc² の側はエネルギーで、量の種類が違います。

光球は、逆二乗則の出どころとしても読めます。同じ光が半径 ct の面に広がるので、強さは 1/(ct)² で薄まります(論文61)。そして光球は、速さの球の縁 v=c にあたります。光の側から見た表面と、速さの側から見た内部は、同じ c の二つの顔です(論文61)。逆二乗則がほかにどこで出てくるかは、記事「逆二乗則の地図」にまとめています。
私の論文の中の E=4πc²:22 本、七つの使われ方
本文(参考文献より前)に E=4πc² の式を書いている論文を数えました。4πc² のほかに、速さの空間での書き方 4π/|K| と、光球の面積 4π(ct)² も数えています。1,097 本のうち 22 本で、どう使っているかを読んで分けると、七つになりました。

| 使われ方 | 論文 | していること |
|---|---|---|
| 出どころ | 12 | m=4π を E=mc² に置き、半径 c の球の表面積と同じ形として読む。表面積を半径について積み上げると、体積の形 (4/3)πc³ が出てくる(体積復元方程式) |
| 一覧の表と図式 | 13 · 38 · 526 | 体系の一覧の表や図式に、論文12 の式として載せる |
| 4π の身分と、同じ形の式 | 18 · 913 · 1082 · 1083 | 運動エネルギー(18)、散乱長の式(1082)、h/m(1083)で、m に置いた 4π が質量の単位の選び方であることを同じ勘定で確かめる。転がる輪の運動エネルギーが同じ形の 4πv² になることも見直す(913) |
| 速さの空間(E=4π/|K|) | 60 · 63 · 66 · 76 · 77 | ありうる速さの集まり(半径 c の球・曲率 −1/c²)の言葉で書き直し、時空の曲がり(63)、重力による赤方偏移(66)、位置と運動量の空間(76・77)へつなぐ |
| 光球(半径 ct) | 61 · 65 · 75 | 光が広がる球の面積 4π(ct)² から読む。逆二乗則の薄まり(61)、光球のエントロピー(65)、時間の矢(75) |
| エネルギーと運動量の三角形 | 21 · 34 · 56 | E²=(pc)²+(4πc²)² の形で使う |
| 皮と中身を、ほかの現象へ | 59 · 908 · 1007 | 表面積の形から体積の形へ(59)、電磁質量の 4/3 が球の体積の 4/3 ではなく場の向きの平均から来ること(908)、臨界質量を皮と中身の釣り合いで見ること(1007) |
論文12 で生まれた読み方が、論文1083 まで使われ続けています。いちばん多いのは、速さの空間の 5 本です。
E=4πc² が言っていないこと
- 新しい物理法則や、自然の新しい定数は主張しません。
- エネルギーが面積だとは言いません。E の単位はジュールで、面積の単位ではありません。
- この 4π を立体角だとは言いません。質量の単位の選び方で置いた数です。
- 単位の選び方では、単位を持たない数は変わりません。たとえば陽子どうしの重力の弱さを表す数 Gm²/(ħc)(およそ 5.9×10⁻³⁹)は、どう置いても動きません(論文35)。
- 速さの空間での書き方 E=4π/|K| は、重力による赤方偏移を説明しません。速さの空間の c と、曲がった時空で座標から読む c は別のものだからです(論文66)。
では、何の役に立つか
一つは、式の中の 4π を見分ける練習台になることです。同じ 4π が、ある式では立体角、別の式では質量として立っています。私はこの見分けを、物理の式の π の出どころの点検に使い、散乱長の式(論文1082)や、プランク定数を質量で割った式(論文1083)で、消えた π がどの π かを一本ずつ分けました。
もう一つは、c を「速さの球の半径」として読む入口になることです。E=m/|K| は、m を何にしても成り立つ読み方で、その曲がりはトーマス歳差として測られています(論文60)。
そして、表面積の形を半径について 0 から c まで積み上げると、体積の形 (4/3)πc³ が出てきます。論文12 はこれを体積復元方程式と呼んでいます。体積の形の側は、記事「E(3D)=(4/3)πc³ とは何か」にまとめました。
よくある質問
E=4πc² は、標準の物理の式ですか?
いいえ。標準の式は E=mc² です。E=4πc² は、質量の単位を選んで m=4π と置いたときの書き方で、答えは E=mc² と同じです。
エネルギーは面積なのですか?
いいえ。形が同じでも、単位が違います。時間の単位を一つ決めると、4πc² は光球の面積になりますが、そのときの 4π は立体角で、E=4πc² の 4π(質量)とは別のものです。
c は速さなのに、なぜ半径と呼べるのですか?
ありうる速さの集まりが、本当に半径 c の球だからです(論文59・60)。光球のほうは、時間の単位を一つ決めると半径が c になります(論文61)。
E=4π/|K| とは何ですか?
速さの空間の曲率 K=−1/c² を使って、E=4πc² を書き直したものです。4π を外した E=m/|K| は、どんな m でも成り立ちます(論文60)。
m=4π の記事との違いは何ですか?
記事「m=4π とは何か」は、4π という質量の数がどこから来るかをまとめたものです。この記事は、その数を E=mc² に置いたあとの式が、私の論文の中でどう読まれ、どう使われているかをまとめています。
もとの論文
- 論文02「4π質量相殺定理」
- 論文12「境界エネルギーから体積エネルギーへ」
- 論文21「恒等式にゼロテンションは効かない」
- 論文59「単位球の体積は 5 次元で最大になる」
- 論文60「速度空間の球としての c」
- 論文61「光球としての c」
- 論文66「速度空間の曲率と重力赤方偏移」
- 論文116「c の冪は、何を数えているか」
論文はどれも CC BY 4.0 で公開しています。
この話を一冊で
E=4πc² と、それを積み上げた体積の形 (4/3)πc³ は、Kindle の本『一枚の皮と、その中身』で、たとえ話と計算を添えて順に説明しています(Amazon)。