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質量を4πに置けば、物理の無限大は消えるのか:決めていたのは、薄まる速さと次元だった

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アインシュタインのE=mc²は、質量とエネルギーが同じものの二つの姿だと言います。質量の単位をうまく選んでmを4πと置くと、式はE=4πc²になります。4πは、半径1の球の表面積と同じ数で、私の論文にはあちこちに出てくる数です。この式がこれまで私の論文でどう使われてきたかは「E=4πc²とは何か」にまとめました。

物理には、計算すると無限大が出てきて困る場面がいくつもあります。光速に近づく物体のエネルギー、点のように小さな電荷のエネルギー、真空のエネルギー。では、mを4πに置けば、こうした無限大は消えるのでしょうか。

答えは「消えない」です。一つも消えません。けれど、なぜ消えないのかを追っていくと、無限大がどこから来るのかがはっきり見えてきます。決めていたのは質量ではなく、ものが中心からどれだけ速く薄まるかと、空間の次元の比べ合いでした。

この文章の計算は、このページのために新しく行ったものと、査読を経ていない、著者自身による公開(プレプリント)の論文によります。

要点

  • 質量に1を置いても、4πを置いても、1000を置いても、無限大は一つも消えません。答えが同じ割合で大きくなるだけです。
  • 無限大になるかどうかは、中心から離れるにつれて濃さが薄まる速さ(n)と、空間の次元(d)の比べ合いで決まります。
  • nがdより大きいと中心であふれ、小さいと外であふれ、ちょうど等しいと、どちらの端でもゆっくり(対数で)増え続けます。
  • 同じ無限大が、距離で数えると中心に、波で数えると外に現れます。物理で「紫外発散」と呼ぶものは、その一つです。

mを4πにして光速に近づけると、どうなるか

まず、いちばん身近な無限大から確かめます。速さvで動く物体のエネルギーはE=γmc²です。γは、vが光速cに近づくと限りなく大きくなる数です。

実験1mを1と4πにして、光速に近づける

つまみを右へ動かすと、光速に近づきます。目盛りの1は光速の90%、2は99%、6は99.9999%です。

速さ(光速の何 %か)
γ
エネルギー(m=1)
エネルギー(m=4π)
二つの比

実験1 縦の目盛りは10倍ごとです。二本の線は平行で、間はいつも4π倍です。光速の単位を1にして描いています。

光速の90%でγは2.294、99%で7.089、99.9999%で707.1です。mに4πを置くと、エネルギーは28.83、89.08、8885.8になります。どの速さでも、二つの比は4π=12.566のままです。

γは速さだけで決まり、mはその外から掛かっているだけです。mに何を置いても、光速に近づけばエネルギーは限りなく大きくなります。無限大を作っているのはγの側で、mの側ではありません。

無限大は、どこから来るのか

もう少し広く考えます。ある量が、中心から離れるにつれて薄まっていくとします。点の電荷のまわりの電場のエネルギーや、星の明るさがそうです。その濃さが、距離のn乗に反比例して薄まるとき、全部でどれだけあるかを数えます。

玉ねぎを思い浮かべてください。中心から外へ、薄い皮を一枚ずつ足していきます。皮一枚が持つ量は、皮の広さ×濃さです。3次元の皮の広さは半径の2乗に比例し、濃さは半径のn乗に反比例するので、皮一枚の量は半径の(2−n)乗に比例します。d次元の空間なら(d−1−n)乗です。

皮一枚の量

半径rの皮一枚の量 ∝ rd−1−n

皮の枚数は、中心へ近づいても、外へ広げても、いくらでも増えます。足した合計が有限に収まるかどうかは、皮一枚の量が中心と外でどう振る舞うかで決まります。

  • nがdより小さいと、中心の皮は軽いので中心では収まり、外の皮が重いので外へあふれます。
  • nがdより大きいと逆で、中心であふれ、外では収まります。
  • nとdがちょうど等しいと、皮を100倍細かく足すたびに、同じだけ(4.605ずつ)増え続けます。これが「対数で増える」です。
実験2薄まる速さと次元を動かして、どこであふれるかを見る

つまみでnとdを動かすか、下の名前を押してください。係数を替えると線は上下にずれますが、傾きは変わりません。

皮一枚の量
中心の側
外の側
aを100分の1にしたとき
Rを100倍にしたとき

実験2 左は地図で、斜めの線が境目n=dです。右は、中心の近くを切る長さaを小さくしたとき(青)と、外の大きさRを広げたとき(金)の合計の増え方で、縦も横も10倍ごとの目盛りです。

3次元でn=4のとき、中心の近くを切る長さaを100分の1にするたびに、合計は99、9999、999999と、100倍ずつ増えます。n=2なら0.99、0.9999、0.999999で、1に収まります。n=3は境目で、4.61、9.21、13.82と、同じ幅ずつ増えていきます。

係数は、なぜ効かないのか

皮一枚の量には、もう一つ数が掛かっています。皮の広さの係数(3次元では4π)と、質量や電荷のような全体の大きさです。この「全体の係数」を1から4πや1000に替えても、合計は同じ割合で大きくなるだけです。

3次元でn=4のとき、aを1万分の1から100万分の1にすると、合計は、係数が1でも4πでも1000でも100.0099倍になりました。グラフにすると、線は上下にずれるだけで、傾きは変わりません。

左は中心まで足した合計が n=2 で収まり、n=3 で対数、n=4 で 1/a で増える線。右は係数を 1、4π、1000 にした平行な三本の線
図1 左:中心まで足した合計の増え方。右:n=4の合計に係数1、4π、1000を掛けた線。上下にずれるだけで、傾きは同じです。

係数を0にすれば合計は0になりますが、それは量そのものを消すことで、無限大を有限にすることではありません。単位の選び方は人の決めごとで、有限か無限かは単位によらない事実です。決めごとは、事実を動かせません。

夜空がよい例です。宇宙に星が一様に、どこまでも並んでいるとします。遠くの皮ほど星の数は半径の2乗で増え、一つの星の明るさは半径の2乗で暗くなります。だから皮一枚の明るさは、遠くても近くても同じです。それを無限に足すと、夜空は無限に明るくなるはずです(オルバースのパラドックス)。この計算では、球の広さの4πが二度出てきて、約分されて消えます。それでも無限大は残ります(論文496)。係数が消えても残り、4πになっても残ります。本当の夜空が暗いのは、宇宙の年齢が有限で、遠くの光がまだ届いていないからです。

有名な無限大を、一枚の地図に置く

物理で有名な無限大を、次元dと薄まる速さnの地図に置きました。斜めの線がn=dの境目で、その上は中心であふれ、下は外であふれます。

次元と薄まる速さの地図に、十の無限大を置いた図。斜めの線の上は中心であふれ、下は外であふれる
図2 黒丸は距離で数えた点、白い四角は波で数えた点です。番号は下の表と同じです。
番号無限大次元d薄まる速さnあふれる所増え方
①点の電荷の電場のエネルギー34中心1/a
②点の質量の重力の場のエネルギー34中心1/a
③一様な濃さの球の質量30外R³
④回転が平らな銀河の外側の質量(濃さ1/r²)32外R
⑤一様に並んだ星の明るさ(夜空)32外R
⑥平面の渦や、まっすぐな電線のまわりの場のエネルギー22両端対数
⑦ボース気体の凝縮していない粒(3次元・波で数える)32なし有限
⑧ボース気体の凝縮していない粒(2次元・波で数える)22長い距離対数
⑨真空の零点エネルギー(波で数える)3−1短い距離Λ⁴
⑩ヒッグスの質量の補正(波で数える)42短い距離Λ²

aは中心の近くを切る長さ、Rは外の大きさ、Λは波数の上限です。どの点の位置も、次元と薄まる速さだけで決まります。質量の値は、地図のどこにも出てきません。

⑥ の渦や電線は、ちょうど境目にいます。お店が人を引き寄せる力を距離の2乗で割る商圏のモデルも、人が住む2次元の地図の上で、ちょうどこの境目にいます(論文1094)。⑧ のボース気体は、2次元では凝縮が起きないことと関わっています(論文482)。

距離で数えるか、波で数えるか

点の電荷のエネルギーは、中心に近いほど濃く、中心であふれます。同じエネルギーを、いろいろな長さの波に分けて数えることもできます(フーリエ変換)。短い距離は、細かい波、つまり波数の大きい側にあたります。

波で数えると、同じ無限大が「波数の外」であふれます。物理で紫外発散と呼ぶのは、この数え方での名前です。地図の上では、点は境目について折り返した位置に移ります。点の電荷は、距離ではn=4、波ではn=2です。距離の指数と波の指数を足すと、いつも次元の2倍(3次元なら6)になります。

電荷を、幅σの小さな雲にぼかすと、エネルギーは有限になります。σが1、0.1、0.01のとき0.282、2.82、28.2で、距離で数えても波で数えても同じ値です。σを10分の1にするたびに10倍になり、σを0にすると無限大です。ぼかしは、どこで切るかの入れ方の一つで、係数ではありません。

次元を動かすと、何が起きるか

地図の座標のうち、nは物理が決めます。けれどdは、計算の上では動かせます。素粒子の計算で使われる次元正則化は、次元を3や4ではなく、1.9や2.5のような実数として扱います。

1/(k²+1)をd次元で足すと、dが2より小さいときだけ有限です。d=1で3.14159(π)、d=1.9で57.76です。この有限な答えを、dの式として3まで延ばすと、−19.739(−2π²)になります。

実験3次元を実数で動かす

つまみで次元dを動かします。dを3に合わせると−2π²が出ます。2と4の近くでは値が飛びます。

次元d
値
この次元では

実験3 青い帯(d<2)では、足し合わせが有限です。その外の値は、帯の中の式を延ばしたものです。

延ばした値は、本当の合計ではありません。3次元で波数Λまで足すと、Λ=100で1237.02になり、Λとともにいくらでも増えます。ここから4πΛを引くと−19.6135、Λ=100万では−19.7391962で、−2π²に近づきます。次元正則化の値は、Λに比例して増える部分を数えないと決めたときに残る数です。無限大は消えたのではなく、数えない側に置かれました。

d=2とd=4には極(値が飛ぶ所)があります。1/(k²+1)を大きなkで展開すると、各項の薄まる速さは2、4、6、… です。その各項が、ちょうど境目n=dに乗る次元が、極の場所です。

質量が無限大になる場面は、どうなっているのか

素粒子の理論では、電子の質量そのものにも、無限大の補正が出てきます。補正は、波数の上限の対数でゆっくり増え、その大きさは電子の質量に比例します。ここでは質量が、まさに無限大の前の係数になっています。

この無限大は、「繰り込み」という手続きで、観測される質量の定義の中へ吸収されます。無限大が入っていく先は質量です。けれど、質量の値が無限大を消しているのではありません。mを4πにしても、上限を上げたときに対数で増えることは変わりません。

では、4πを置いて分かったことは何か

mを4πに置いても、無限大は消えません。けれど、置いてみたことで分かったことがあります。4πは、無限大の外にいる係数だということです。球の表面積の4πは、皮一枚の量に掛かる数で、合計が有限か無限かには関わりません。無限大の場所と速さは、残りの「半径の何乗か」が決めます。

論文02では、濃さが1/rⁿの球の質量をm(n)=4π/(3−n)と書きました。この式でも、4πは係数で、無限大になる場所を決めているのは3−nのほうです。

点の電荷のエネルギーも、点の質量の重力も、夜空も、真空のエネルギーも、ヒッグスも、一枚の地図に乗りました。個々の事実は、どれも物理の教科書に書かれています。私がしたのは、十の無限大を一つの地図に並べ、全体の係数を替えても増え方が変わらないこと、距離と波で指数が境目について折り返すこと、次元正則化が地図の上の横の移動であることを、計算で確かめて並べたことです(論文1106)。

よくある問い

単位を変えれば、無限大は消えますか?

消えません。単位を変えると、答えは何倍かになるだけです。有限な量は有限のまま、無限大は無限大のままです。

繰り込みは、無限大を消しているのですか?

消してはいません。無限大を、観測される質量や電荷の定義の中へ吸収させています。どこを数えないかの選び方によって、残る有限な部分は変わります(論文230)。

計算に無限大が出たら、計算が間違っているのですか?

間違っているとは限りません。多くの場合、式を、それが使える範囲の外まで足したことを知らせています。どこまで足したかを書けば、答えは有限な数になります。

論文と文献

論文はどれもCC BY 4.0で公開しています。

  • 論文1106「物理の無限大は、質量ではなく、薄まる速さと次元の比べ合いで決まる」:このページの計算のもと。
  • 論文02「4π質量相殺定理」:m(n)=4π/(3−n)。
  • 論文496「4πが二度現れて約分され、そのあと和が発散する」:夜空。
  • 論文482「「臨界次元」という同じ語が、上と下で別の数を指している」:ボース気体。
  • 論文1094「商圏の重力モデルの「距離の2乗」は、地図の上では客の総数がちょうど収まらなくなる境目の指数である」:地図の上の境目。
  • 論文230「「−」は七つあり、そのうち一つは足し算を戻さない」:発散の引き方。
  • Peskin, M. E., and Schroeder, D. V. (1995). An Introduction to Quantum Field Theory. Addison-Wesley.
  • Bollini, C. G., and Giambiagi, J. J. (1972). Dimensional renormalization: The number of dimensions as a regularizing parameter. Il Nuovo Cimento B.
  • 't Hooft, G., and Veltman, M. (1972). Regularization and renormalization of gauge fields. Nuclear Physics B.