【論文328】同じ楕円が三ヶ月ずれていたことが、原因が別だという証拠になった

要旨

恒星は一年かけて空に小さな楕円を描く。本稿が問うのは、その楕円は一種類かである。答は、二種類あり、位相で見分けられるである。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。

第一に、光行差は $\mathbf{20.49552}$ 秒角である(第2節)。

第二に、これが本稿の芯である。光行差は距離に依らず、視差は距離に反比例する(第3節)。

第三に、最も近い恒星でも $\mathbf{26.6442}$ 倍ひらく。$1$ キロパーセクなら $\mathbf{20495}$ 倍(第3節)。

第四に、振幅では分けられない場合がある。ある距離では二つが同じ大きさになる(第3節)。

第五に、位相が四分の一ずれている。ブラッドリーはそれで見分けた(第4節)。

第六に、分離子は「位置で決まるか、速度で決まるか」である(第5節)。

射程(何を示さないか)

新しい数学定理も新しい法則も主張しない。光行差、年周視差、ブラッドリーの $1728$ 年の観測、光行差定数の定義はいずれも標準的である。天体力学を作らない。使うのは二つの角度と、その位相差だけである。相対論的な扱いをしない。光行差の相対論的公式には立ち入らない。$v/c$ の一次までで足りる場面だけを見る。固有運動を扱わない。恒星自身の運動は周期的でないので、本稿の二つとは分けられる。触れるにとどめる。測定の歴史を裁定しない。誰が最初に何を見たかの帰属には立ち入らない。距離はしごを扱わない。視差より遠い段は論文297 の射程である。既刊との関係:論文297 は宇宙の距離が七段のはしごで、直接測られているのは一段目だけだと示した。その一段目が視差であり、本稿はその隣に立つもう一つの楕円を見る。論文325 は虹の角度に半径が入らないと示した。同じ型であり、ここでは光行差に距離が入らない。論文300 は同根か別根かは判定できると示した。本稿は「同じ形をしていても別根」の実例であり、判定に使ったのは値ではなく位相である。論文327 は二つの曲線が $0.083$ パーセントしか違わないと示した。そこでは見た目が同じで別物、ここでは大きさが同じでも別物である。論文313 は体系が「同期」を複数の意味で使ってきたと示した。位相という語がここでも判定の道具になっている。加えたのは光行差定数を単純計算と文献値の両方で示し、その差を明示したこと、距離ごとの比を三桁にわたって出したこと、二つが同じ振幅になる距離を求めたこと、分離子を位置と速度の別に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:恒星を一年間観測すると、空の上で小さな楕円を描く。その楕円には、二つの原因がありうる。

名前 何のせいか
年周視差 地球の位置が変わるから
光行差 地球の速度が変わるから

観察 1.1 どちらも一年周期で、どちらも楕円である。形では区別がつかない。何かほかの手がかりが要る。

問い:二つは、何によって見分けられるのか。

2. 光行差は $20.49552$ 秒角である

設定:雨の中を走ると、雨が前から降ってくるように見える。光でも同じことが起きて、傾きは $\tan\alpha=v/c$ である。

検算 2.1:地球の公転速度から計算する(本稿で計算)。

量 値
公転速度 $v$ $29784.8$ m/s
$v/c$ $9.935140\times10^{-5}$
単純計算 $\arctan(v/c)$ $20.492697$ 秒角
文献値(光行差定数 $\kappa$) $\mathbf{20.49552}$ 秒角
差 $0.002823$ 秒角($0.0138\%$)

観察 2.2 正直に書くべき点、本稿の単純計算は文献値と $0.0138$ パーセント違う。定数 $\kappa$ は軌道の離心率などを含む定義であり、円軌道の平均速度から出した値ではない。本稿が使うのは文献値 $20.49552$ 秒角で、単純計算は桁を見るための値である。

観察 2.3 $20$ 秒角は小さい。満月の見かけの直径の約 $1/88$、肉眼では絶対に見えない。

観察 2.4 この式に恒星までの距離が入っていない。$\tan\alpha=v/c$ に現れるのは観測者の速度と光速だけである。見ている相手の情報が、一つも入らない。

3. 芯:片方は距離に依り、片方は依らない

検算 3.1:距離ごとに、二つの角度を並べる。視差は $1/d$($d$ はパーセク、視差は秒角)。

恒星 距離 [pc] 視差 [秒角] 光行差 [秒角] 比
プロキシマ $1.30$ $0.769231$ $20.49552$ $\mathbf{26.6442}$
$10$ パーセク $10.00$ $0.100000$ $20.49552$ $204.9552$
$100$ パーセク $100.00$ $0.010000$ $20.49552$ $2049.5520$
$1$ キロパーセク $1000.00$ $0.001000$ $20.49552$ $\mathbf{20495.5200}$

観察 3.2 これが本稿の芯である。右の列は一度も動かない。光行差は、どの恒星についても同じ $20.49552$ 秒角である。

観察 3.3 最も近い恒星ですら、$\mathbf{26.6442}$ 倍ひらいている。一番有利な相手でこれである。視差を探しているとき、視差より $27$ 倍大きい別の効果が常に乗っている。

観察 3.4 二つが同じ大きさになる距離を求めると

$$\frac{1}{d}=20.49552\quad\Rightarrow\quad d=0.048791\ \text{pc}=0.159135\ \text{光年}$$

そんな恒星は存在しない。最も近いプロキシマでも $4.2$ 光年である。つまり振幅の大小では、常に光行差が勝つ。

観察 3.5 論文325 は「虹の角度に水滴の大きさが入っていない」と書いた。同じ型である。そこでは大きさが、ここでは距離が、答に入らない。

観察 3.6 そして入らない理由も同じ形をしている。虹では球がどの大きさでも相似だから、光行差では速度の合成が相手の位置を見ないから、どちらも「相手の情報が式に入る道が無い」。

4. 位相が四分の一ずれている

設定:振幅では分けられないなら、いつ最大になるかを見る。

検算 4.1:一年を十二ヶ月として、変位の位相を並べる。

経過 視差の変位 光行差の変位
$0$ ヶ月 $+1.0000$ $0.0000$
$3$ ヶ月 $0.0000$ $+1.0000$
$6$ ヶ月 $-1.0000$ $0.0000$
$9$ ヶ月 $0.0000$ $-1.0000$

観察 4.2 ちょうど $90$ 度、三ヶ月ずれている。視差は地球の位置で決まり、光行差は地球の速度で決まる。円運動では、速度は位置の四分の一周期先を向く。

観察 4.3 ブラッドリーは $1728$ 年に、これで見分けた。視差を探していて楕円は見つかったが、季節がずれていた。探していたものではないと、位相が告げた。

観察 4.4 振幅が合わないことは、証拠として弱い。距離を知らないので、視差の予想値が立たないからである。位相は距離を知らなくても予想できる。

観察 4.5 これは「別根の判定に、値ではなく構造を使った」例である。論文300 の基準に当てる。

基準 結果
恒等式を保つ対応があるか 無い。片方に $d$ が入り、片方に入らない
同じ量が現れるか 現れない。$v/c$ と $1/d$
変数を動かして一致し続けるか しない。$d$ を動かすと片方だけ動く

観察 4.6 三行とも別根を指している。そして位相の四分の一ずれが、それを観測で示している。判定基準と観測が、同じ答を出している。

5. 分離子:位置で決まるか、速度で決まるか

観察 5.1 分離子、その効果が、観測者の位置で決まるか、速度で決まるか。

決めるもの 距離への依存 位相
年周視差 位置 $1/d$ 基準
光行差 速度 無し $90$ 度先

観察 5.2 三つの列が、全部同じ一点から出ている。位置か速度かが決まれば、距離依存も位相も自動的に決まる。独立に見えた三つの違いが、一つの違いである。

観察 5.3 地球を止めれば、片方だけが消える。速度が零なら光行差は消え、位置は依然として太陽の反対側にある。分離子は動かせる。

観察 5.4 正直に書くべき点、実際の観測には第三の動きが乗っている。恒星自身の固有運動である。ただしこれは周期的でないので、一年で戻ってこないことで分けられる。

観察 5.5 論文297 との位置関係。297 は距離のはしごの一段目が視差だと書いた。本稿は、その一段目のすぐ隣に、距離を一切含まない同じ形の楕円が乗っていることを言う。はしごの一段目は、単独では立っていない。

観察 5.6 最後に一つ、ブラッドリーは探していたものを見つけられず、探していなかったものを見つけた。そしてそれは光速の測定になった。$20$ 秒角という角度から、$v/c$ が読めるからである。見つからなかったことが、別のものの物差しになった。

6. 点呼と結び

  1. 光行差は $20.49552$ 秒角(検算2.1):単純計算との差 $0.0138$ パーセントは明記した。
  2. 満月の $1/88$(観察2.3):肉眼では見えない。
  3. 式に距離が入らない(観察2.4):$v$ と $c$ だけ。
  4. プロキシマで $26.6442$ 倍(検算3.1):最も有利な相手で。
  5. $1$ キロパーセクで $20495.5200$ 倍(検算3.1):視差は $1/d$。
  6. 同じ大きさになる距離は $0.159135$ 光年(観察3.4):そんな恒星は無い。
  7. 位相が $90$ 度ずれる(検算4.1):位置と速度の関係。
  8. ブラッドリーは $1728$ 年(観察4.3):季節がずれていた。
  9. 位相は距離を知らなくても予想できる(観察4.4):振幅は立たない。
  10. はしごの一段目は単独で立たない(観察5.5):297 の隣。

結び:恒星は一年かけて空に小さな楕円を描き、その原因は二つありうる。地球の位置が変わるからの年周視差と、地球の速度が変わるからの光行差である。どちらも一年周期の楕円で、形では区別がつかない。光行差は $\tan\alpha=v/c$ から出て $\mathbf{20.49552}$ 秒角、満月の見かけの直径の約 $1/88$ である。(本稿の単純計算 $20.492697$ は文献値と $0.0138$ パーセント違い、$\kappa$ は離心率を含む定義なので、本稿が使うのは文献値である)。そしてこの式には、恒星までの距離が入っていない。現れるのは観測者の速度と光速だけで、見ている相手の情報が一つも入らない。最も近いプロキシマですら視差の $\mathbf{26.6442}$ 倍、$1$ キロパーセクでは $\mathbf{20495.5200}$ 倍ひらく。二つが同じ大きさになる距離は $0.159135$ 光年で、そんな恒星は存在しない。振幅の大小では、常に光行差が勝つ。分けたのは振幅ではなく、位相である。円運動では速度は位置の四分の一周期先を向くので、二つの楕円はちょうど三ヶ月ずれる。ブラッドリーは $1728$ 年、視差を探していて楕円を見つけ、季節がずれていることで探し物ではないと知った。振幅が合わないことは証拠として弱い。距離を知らなければ視差の予想値が立たないからで、位相は距離を知らなくても予想できる。分けるものは一つ、その効果が観測者の位置で決まるか、速度で決まるか。それが決まれば距離依存も位相も自動的に決まり、独立に見えた三つの違いが一つの違いになる。論文297 は距離のはしごの一段目が視差だと書いた。本稿はその一段目のすぐ隣に、距離を一切含まない同じ形の楕円が乗っていることを言う。はしごの一段目は、単独では立っていない。最後に一つ、ブラッドリーは探していたものを見つけられず、探していなかったものを見つけた。そしてそれは光速の測定になった。$20$ 秒角という角度から $v/c$ が読めるからである。見つからなかったことが、別のものの物差しになった。

参考文献

  1. Bradley, J. (1728). A Letter from the Reverend Mr. James Bradley… Giving an Account of a New Discovered Motion of the Fix’d Stars. Philosophical Transactions of the Royal Society, 35(406).
  2. Bessel, F. W. (1838). Bestimmung der Entfernung des 61sten Sterns des Schwans. Astronomische Nachrichten, 16(365).
  3. International Astronomical Union (1976). IAU System of Astronomical Constants. Resolution of the XVIth General Assembly, Grenoble.
  4. Gaia Collaboration (2021). Gaia Early Data Release 3: Summary of the Contents and Survey Properties. Astronomy and Astrophysics, 649.
  5. 山岸勇輝 (2026). 宇宙の距離は七段のはしごで、直接測られているのは一段目だけである [論文297]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171788
  6. 山岸勇輝 (2026). 三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる [論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  7. 山岸勇輝 (2026). 体系は「同期」を四つの意味で使ってきて、五つ目だけが閾値を持つ [論文313]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22174953
  8. 山岸勇輝 (2026). 虹の角度に、水滴の大きさは入っていない [論文325]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22209848
  9. 山岸勇輝 (2026). 二つの曲線は 0.083 パーセントしか違わず、それでも別物である [論文327]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22210286

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「同じ楕円が三ヶ月ずれていたことが、原因が別だという証拠になった」[論文328]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22210340

YOI 328第1版・2026年8月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 同じ楕円が三ヶ月ずれていたことが、原因が別だという証拠になった [論文328]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/328 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22210340

Yamagishi, Y. (2026). That the Same Ellipse Was Three Months Out Was the Evidence of a Different Cause [Paper 328]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/328; DOI: 10.5281/zenodo.22210340

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