【論文485】ミッチェルの半径は当たっていたが、当たっていた理由は違う

要旨

同じ式が出たなら、同じことを言っていると思われている。本稿が示すのは、一点で厳密に一致した二つの導出が、隣の一点では $\mathbf{2}$ 倍外れることである。一致は同根の証拠にならない。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、太陽のシュヴァルツシルト半径は $\mathbf{2.954008}$ km である(第2節)。

第二に、ニュートン力学で脱出速度を $c$ と置く計算が、厳密に同じ式を返す。差は $\mathbf{0.000\times10^{0}}$ m である(第2節)。

第三に、次元解析だけでは $GM/c^{2}=1.477004$ km までしか出ず、係数 $2$ が決まらない(第2節)。

第四に、これが本稿の芯である。同じニュートン流のやり方を光の曲がりに当てると $\mathbf{0.8758}$ 秒角で、一般相対論の $\mathbf{1.7516}$ 秒角のちょうど $\mathbf{2.000000000000}$ 分の $1$ になる(第3節)。

第五に、その一般相対論の値は既知の $1.75$ 秒角と合う。外れているのはニュートン側である(第3節)。

第六に、分離子は「一点で合ったのか、族として合ったのか」である(第4節)。

キーワード:ミッチェルの暗黒星、シュヴァルツシルト半径、ブラックホール、光の偏向、一般相対論。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。ミッチェルの暗黒星、シュヴァルツシルト半径、光の偏向角は、いずれも標準的である。歴史を主題にしない。ミッチェルやラプラスが何をどこまで考えていたかの史料的判断には立ち入らない。現代の記法で計算を再現し、値を比べるだけである。事象の地平線を論じない。因果構造、座標特異性と真の特異性の区別、内部解は主題ではない。半径という一つの数だけを見る。偏向角の内訳を書き直さない。$4$ の内訳は論文134 が扱っており、本稿はその結果を検査として借りるだけである。近似の階層を扱わない。ポスト・ニュートン展開の高次項は入れない。先頭項どうしを比べる。既刊との関係:論文300 は数値の一致だけでは同根と見なさないという基準を置いた。本稿はその基準が実際に効く一例を出す。論文134 は光の曲がりの $4$ が $2\times2$ であり、後ろの $2$ は $v=c$ の性質だと示した。本稿はその $2$ を、二つの導出を分ける検査として使う。論文169 はシアマの「偶然の一致」が恒等式だと示した。そこでは一致に理由があった。本稿の一致には無い。論文481 は分離子が無いと反証の行き先が決まらないと示した。本稿はその分離子を一本書く。加えたのは、$2.954008$ km を両方の導出で出したこと、差が $0.000\times10^{0}$ m だと確かめたこと、次元解析が $1.477004$ km までしか出さないことを示したこと、同じやり方が曲がりでは $0.8758$ 対 $1.7516$ と外れることを並べたこと、一致と不一致を一つの表に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:質量 $M$ の球のまわりで、二つの量を計算する。一つは、脱出速度が $c$ になる半径

$$\frac{1}{2}mv^{2}=\frac{GMm}{r},\qquad v=c\ \Longrightarrow\ r=\frac{2GM}{c^{2}}$$

もう一つは、衝突径数 $b$ で通り過ぎる光の偏向角である。どちらもニュートン力学だけで書ける。同じ量を一般相対論でも出し、二つを並べる。

観察 1.1 同じ式が出たなら、同じことを言っていると思われている。$2GM/c^{2}$ が両方から出る。ならば古い理論は正しかった、という像である。

観察 1.2 だが式が一致することと、理論が一致することは別である。一点で合っただけかもしれない。確かめるには、隣の点でも合うかを見ればよい。

問い:一致はどこまで続き、どこで切れるのか。

2. 半径では、厳密に一致する

計算 2.1:太陽質量で二通りに計算する。

出し方 半径
シュヴァルツシルト半径 $2GM/c^{2}$ $\mathbf{2.954008}$ km
脱出速度を $c$ と置いたニュートン計算 $\mathbf{2.954008}$ km
差 $\mathbf{0.000\times10^{0}}$ m

観察 2.2 数値が近いのではなく、式が同じである。差 $0.000\times10^{0}$ m、丸めの範囲ではなく、記号として一致している。

観察 2.3 一致するのは係数 $2$ まで含めてである。次元解析だけなら $GM/c^{2}=1.477004$ km、ちょうど $2.000000000000000$ 倍違い、無次元の係数は次元では決まらない。

観察 2.4 だからこの一致は、次元が揃っているだけではない。$1$ と $2$ を分ける情報が入っている。偶然にしては細かい。

観察 2.5 そしてこの一致は、二つの理論の主張が違っても成り立つ。ニュートン側は「光が落ちて戻ってくる面」、相対論側は「外へ出る道が無くなる面」、同じ半径に、別の意味が乗っている。

3. 曲がりでは、ちょうど二倍外れる

計算 3.1:太陽の縁をかすめる光の偏向角を、同じ二通りで出す。

出し方 偏向角 秒角
ニュートン流 $0.000004246$ rad $\mathbf{0.8758}$
一般相対論 $0.000008492$ rad $\mathbf{1.7516}$
比 、 $\mathbf{2.000000000000}$

観察 3.2 比はちょうど $2$ である。$2.000000000000$、近い値ではなく、係数そのものが違う。

観察 3.3 一般相対論の側が観測と合う。$1.7516$ 秒角は既知の $1.75$ 秒角と合う。外れているのはニュートン側であり、どちらが外れたかは測定が決めている。

観察 3.4 この $2$ には理由がある。論文134 が示したとおり、後ろの $2$ は重力の性質ではなく $v=c$ の性質である。速さ $v$ の粒子ならニュートン値の $1+v^{2}/c^{2}$ 倍で、$v/c=1$ でだけ $2$ になる。

観察 3.5 だから半径での一致は、光を $v=c$ の粒子として扱えたことを意味しない。同じ扱いが曲がりでは半分にしかならない。半径の計算には、その扱いの誤りが現れない位置にあった。

観察 3.6 一致と不一致が同じ理論の同じやり方から出ている。半径 差 $0.000\times10^{0}$/曲がり 比 $2.0000$、一つの方法が、二つの答えを出した。

4. 分離子

分離子:一致したのが一点でか、族としてか。

観察 4.1 一点なら、それは値の一致である。$2.954008$ km、隣の量では外れうるし、実際に外れた。

観察 4.2 族としてなら、それは構造の一致である。パラメータを動かしても追随する。そのときだけ、同じことを言っていると呼べる。

観察 4.3 この二つは論文300 の基準で別根である。どちらも「$2GM/c^{2}$ が出た」と言える。しかし数値の一致だけでは同根と見なさない、というのがその基準だった。

観察 4.4 本稿はその基準が実際に切れる例になっている。切ったのは曲がりの $2$ である。一致の側だけを見ていれば、どこまでも同根に見えた。

観察 4.5 論文169 の一致とは向きが逆である。シアマの「偶然の一致」には理由があり、恒等式だった。こちらは理由が無く、隣で切れる。一致に理由があるかどうかが、二つを分ける。

観察 4.6 これは論文481 でいう分離子の一本である。「古い理論でも同じ答が出る」という主張が外れたとき、値が外れたのか、族が外れたのかで、直す先が違う。

観察 4.7 正直に言えば、一致が偶然だとまでは示していない。どちらの導出にも $GM/c^{2}$ という同じ組合せが現れ、次元がそれを強いている。示したのは、係数 $2$ までの一致が隣の量へは伸びないことであって、なぜ半径では合うのかの説明ではない。

5. 点呼と結び

  1. 太陽で $2.954008$ km(計算 2.1):二通りとも同じ。
  2. 差は $0.000\times10^{0}$ m(観察 2.2):記号として一致。
  3. 次元解析は $1.477004$ km(観察 2.3):係数 $2$ が決まらない。
  4. 同じ半径に別の意味(観察 2.5):落ちて戻る面と、出る道の無い面。
  5. 曲がりは $0.8758$ 対 $1.7516$(計算 3.1):本稿の芯。
  6. 比はちょうど $2.000000000000$(観察 3.2):係数が違う。
  7. $1.7516$ は既知と合う(観察 3.3):外れたのはニュートン側。
  8. $2$ は $v=c$ の性質(観察 3.4):論文134 による。
  9. 分離子は一点か族か(観察 4.3):論文300 の基準で別根。
  10. 偶然だとは示していない(観察 4.7):示したのは伸びないことだけ。

結び:同じ式が出たなら、同じことを言っていると思われている。$2GM/c^{2}$ が両方から出るなら古い理論は正しかった、という像である。だが式が一致することと理論が一致することは別で、一点で合っただけかもしれない。確かめるには、隣の点でも合うかを見ればよい。半径では、厳密に一致する。太陽質量で、シュヴァルツシルト半径 $2GM/c^{2}$ も、脱出速度を $c$ と置いたニュートン計算も $\mathbf{2.954008}$ km を返し、差は $\mathbf{0.000\times10^{0}}$ m である。数値が近いのではなく、記号として式が同じである。一致するのは係数 $2$ まで含めてで、次元解析だけなら $GM/c^{2}=1.477004$ km までしか出ず、ちょうど $2.000000000000000$ 倍違う。無次元の係数は次元では決まらない。だからこの一致は次元が揃っているだけではなく、$1$ と $2$ を分ける情報が入っており、偶然にしては細かい。そしてこの一致は、二つの理論の主張が違っても成り立つ、ニュートン側は「光が落ちて戻ってくる面」、相対論側は「外へ出る道が無くなる面」で、同じ半径に別の意味が乗っている。曲がりでは、ちょうど二倍外れる。太陽の縁をかすめる光の偏向角は、ニュートン流で $\mathbf{0.8758}$ 秒角、一般相対論で $\mathbf{1.7516}$ 秒角となり、比は $\mathbf{2.000000000000}$ である。近い値ではなく、係数そのものが違う。一般相対論の $1.7516$ 秒角は既知の $1.75$ 秒角と合い、外れているのはニュートン側で、どちらが外れたかは測定が決めている。この $2$ には理由があり、論文134 が示したとおり後ろの $2$ は重力の性質ではなく $v=c$ の性質で、速さ $v$ の粒子ならニュートン値の $1+v^{2}/c^{2}$ 倍、$v/c=1$ でだけ $2$ になる。だから半径での一致は、光を $v=c$ の粒子として扱えたことを意味しない。同じ扱いが曲がりでは半分にしかならず、半径の計算はその扱いの誤りが現れない位置にあった。一致と不一致が同じ理論の同じやり方から出ている。半径では差 $0.000\times10^{0}$、曲がりでは比 $2.0000$。一つの方法が、二つの答えを出した。分けているものは一つ、一致したのが一点でか、族としてか。一点ならそれは値の一致で、隣の量では外れうるし、実際に外れた。族としてならそれは構造の一致で、パラメータを動かしても追随する。そのときだけ、同じことを言っていると呼べる。この二つは論文300 の基準で別根であり、どちらも「$2GM/c^{2}$ が出た」と言えるが、数値の一致だけでは同根と見なさないというのがその基準だった。本稿はその基準が実際に切れる例になっており、切ったのは曲がりの $2$ である。一致の側だけを見ていれば、どこまでも同根に見えた。論文169 の一致とは向きが逆で、シアマの「偶然の一致」には理由があり恒等式だったが、こちらは理由が無く隣で切れる。一致に理由があるかどうかが、二つを分ける。これは論文481 でいう分離子の一本で、「古い理論でも同じ答が出る」という主張が外れたとき、値が外れたのか族が外れたのかで直す先が違う。正直に言えば、一致が偶然だとまでは示していない。どちらの導出にも $GM/c^{2}$ という同じ組合せが現れ、次元がそれを強いている。示したのは、係数 $2$ までの一致が隣の量へは伸びないことであって、なぜ半径では合うのかの説明ではない。

参考文献

  1. Michell, J. (1784). On the Means of Discovering the Distance, Magnitude, &c. of the Fixed Stars. Philosophical Transactions of the Royal Society of London.
  2. Schwarzschild, K. (1916). Über das Gravitationsfeld eines Massenpunktes nach der Einsteinschen Theorie. Sitzungsberichte der Königlich Preussischen Akademie der Wissenschaften.
  3. Dyson, F. W., Eddington, A. S., & Davidson, C. (1920). A Determination of the Deflection of Light by the Sun’s Gravitational Field. Philosophical Transactions of the Royal Society A.
  4. 山岸勇輝 (2026). 『光の曲がりの $4$ は、$4\pi$ ではなく $2(1+\gamma)$ である』[論文134]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22080727
  5. 山岸勇輝 (2026). 『シアマの「偶然の一致」は、恒等式である』[論文169]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22093563
  6. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  7. 山岸勇輝 (2026). 『「法則が破れた」は、どの仮定へも落とせる』[論文481]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22733927

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「ミッチェルの半径は当たっていたが、当たっていた理由は違う」[論文485]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22759928

YOI 485第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). ミッチェルの半径は当たっていたが、当たっていた理由は違う [論文485]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/485 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22759928

Yamagishi, Y. (2026). Michell’s Radius Was Right, but Not for the Reason It Gave [Paper 485]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/485; DOI: 10.5281/zenodo.22759928

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