【F041】分に丸めた記録のずれは、反応したかどうかに属している

要旨

本稿が問うのは、分までしか残っていない記録をミリ秒の市場と突き合わせるとき、参照をどこに取ると答えが変わるか、である。答えは、参照ではなく、記録した人が分の中で反応したかどうかで決まる。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。

第一に、★ 予言①は外れた。方向が分の外から来るなら、参照を分の頭に取ってもずれは作られない。 四銘柄・六年の 24 通りで中央 −0.0038 pips、正だったのは 8 である(第3節・第6節)。

第二に、★ 予言②も外れた。参照を分の平均に変えても、−0.0088 pips である。 ①が 0 だったので、比べる意味が無い。どちらも 0.01 pips 未満である(第3節・第7節)。

第三に、これが本稿の芯である。★ ずれを作るのは、記録した人が分の中の動きに反応したかどうかである。 反応した場合、参照を分の頭に取ると 0.7944 pips になる(第4節)。

第四に、★ そこで参照を分の平均に変えると、0.2139 pips まで減る。 0.5805 pips、3.7141 倍の差である。参照の取り方が効くのは、反応があるときだけである(第4節)。

第五に、★ 分内順位は、どちらの参照でも同じように見分ける。 方向が分の外から来れば 49.5483、反応していれば 61.1288 である。順位は丸めにも参照の取り方にも左右されない(第3節・第4節)。

第六に、★ 反応の効果のほとんどは、市場のものではない。 合成乱数でも参照A で 0.6544 pips 出る。実測 0.7944 のうち 0.8238 が乱数で説明され、市場のものは 0.1400 pips である(第5節)。

本稿の射程(scope note):新しい数学定理も新しい法則も主張しない。時刻の丸め、系統誤差、順位統計量はすべて既知である。特定の商材や提唱者を論じない。実在の教材、その著者、販売元は主題ではなく、一切名指さない。実在の取引記録を扱わない。記録はティックから合成したもので、本稿は他者の実績を検証していない(第7節)。売買を論じない。コストもスリッページも入れておらず、中値で測っている(第7節)。予言①②が外れた。方向が分の外から来るなら、参照の取り方はずれを作らなかった(第3節・第7節)。反応の作り方を一通りに固定している。分の中の動きの符号だけで、部分的な反応は測っていない(第7節)。射程は日中・少数銘柄に限る。四銘柄・六年・分の標本は各 20,000 である。月次の時系列モメンタム(数十市場・保有1〜12ヶ月)は学術的に文書化されており、本稿はそれを否定しない。予測を主張しない。

1. 記法と問い

取引の記録は、しばしば分までしか残っていない。市場のほうはミリ秒で動いている。

言われること 言われないこと
記録と市場価格を突き合わせた その分の、どの時点と比べたか
記録の価格は市場より不利だった 記録した人が、その分の中で何かを見て動いたのか
丸めの影響は小さい 丸めに強い統計量が別にあること

観察 1.1:★ 分に丸めた記録の真の約定は、その分のどこかにある。 どこかは分からない。

観察 1.2:だから参照を一点に決めなければならない。 ★ 分の最初のティックか、分の平均か。この選択は前処理の細部のように見える。 規約の取り方が答えを作る例は [F040] で測ってある。

観察 1.3:分離子は、参照する時点である。 記録・分・銘柄・期間をすべて固定し、何と比べるかだけを変える。

問い:分に丸めた記録をミリ秒の市場と突き合わせるとき、参照をどこに取ると答えが変わるのか。

2. 測る量と設計を、先に書く

走らせる前に宣言し、実行時には変えていない。

もと ティック(中値)。一分ごとにまとめる
標本 銘柄・年ごとに無作為 20,000 分(ティック 10 本以上・前の分が続いているもの・種は固定)
記録 分の中の一様に無作為な時刻の中値。時刻は分の頭に丸める
参照 A 分の最初のティック / B 分の平均 / C 分内順位(0〜100)
方向 P1 前の分の符号 / P2 分内の動きの符号 / P3 ランダム
測る量 (記録 − 参照)× 方向(pips)/分内順位/一分の値動き
基準線 分の中のティックを、同じ本数・同じ一歩のばらつきの合成乱数に置き換える
分離子 参照する時点(分の頭か、分の平均か、順位か)
銘柄・期間 USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD/2019–2024

観察 2.1:★ 記録は、分の中の一様に無作為な時刻から作る。 実際の約定時刻が分の中で一様なら、これが正しい模型である。

観察 2.2:★ 方向の作り方が三つあるのが要である。 P1 は分の外の情報だけ、P2 は分の中を見て反応した人、P3 は対照である。

観察 2.3:P2 は定義から必ず正になる。 ★ 上限として置いてあり、発見ではない。

観察 2.4:標本は銘柄ごとに 120,000 分、全体で 480,000 分である。

予言(測る前に書いた)

① 参照を分の最初のティックに取ると、前の分の向きに建てた記録は系統的にずれて見える(0 にならない)。

② 参照を分の平均に取ると、そのずれはほぼ 0 になる。

③ 方向をランダムにすると、どの参照でもずれは 0 になる。

④ 分内順位は、前の分の向きで建てた場合には 50 の近くにとどまる。

⑤ 合成乱数では、①のずれが消える(一分のモメンタムが無いため)。

3. 参照をどこに取るかで、答えがどれだけ変わるか

同じ記録・同じ分。違うのは「何と比べたか」だけである。

計算 3.1 四銘柄・六年の中央

方向 参照A 分の頭 参照B 分の平均 参照C 分内順位
P1 前の分の符号 −0.0038 −0.0088 49.5483
P2 分内の符号 0.7944 0.2139 61.1288
P3 ランダム −0.0008 −0.0012 50.0255

観察 3.2:★ 予言①は外れた。 P1 の参照A は −0.0038 pips である。一分の値動き(記録と分の頭の距離の平均)は 0.7944 pips なので、その −0.0048 倍にすぎない。

観察 3.3:★ 予言②も外れた。 参照B は −0.0088 pips で、参照A より 0 から遠い。①が 0 だったので、比べる意味が無い。

観察 3.4:銘柄ごとに見ても同じである。 P1 の参照A は USDJPY 0.0115、EURUSD −0.0042、GBPUSD −0.0090、XAUUSD −0.0112 pips である。★ 符号が揃わず、どれも 0.02 pips 未満である。

観察 3.5:★ 分内順位は 49.5483 で、50 のすぐそばである。 予言④は当たった。

観察 3.6:一分の値動きは銘柄で違う(USDJPY 0.7701、EURUSD 0.5524、GBPUSD 0.7627、XAUUSD 1.9812 pips)。★ それでも P1 のずれは 0 のままである。

4. ずれを作るのは、参照ではなく反応である

計算 4.1 方向の作り方で、何が変わるか

方向 参照A 参照B 参照C
前の分の符号(先読み無し) −0.0038 −0.0088 49.5483
分内の符号(反応した人) 0.7944 0.2139 61.1288
ランダム(対照) −0.0008 −0.0012 50.0255

観察 4.2:★ これが本稿の芯である。ずれを作るのは参照ではなく、反応したかどうかである。 反応すれば参照A で 0.7944 pips になり、しなければ −0.0038 pips である。

観察 4.3:P2 の参照A は、一分の値動き 0.7944 pips とほぼ同じである。 ★ 定義から、記録は分の頭から動いた先にあるので、そうなる。検算にはなるが発見ではない。

観察 4.4:予言③は当たった。 P3 の参照A は −0.0008 pips、参照C は 50.0255 である。

計算 4.5 では参照を変えると、反応の効果はどれだけ減るか(★ 後から足した)

ここは後出しである。予言①②が外れてから、問いを立て直して測った。

参照A 分の頭 参照B 分の平均 A ÷ B
方向は分の外から −0.0038 −0.0088 0.4324
方向は分の中から 0.7944 0.2139 3.7141

観察 4.6:★ 反応した場合、参照を分の頭から分の平均に変えると 0.7944 → 0.2139 pips へ、0.5805 pips 減る。 3.7141 倍の差である。

観察 4.7:★ 方向が分の外から来る場合は、どちらでも 0.0038 / 0.0088 pips で、どちらも 0.01 pips 未満である。 参照の取り方が効くのは、反応があるときだけである。

観察 4.8:★ 分内順位は、どちらの参照とも独立に反応を見分ける。 反応すれば 61.1288、しなければ 49.5483 である。順位は丸めにも参照の取り方にも左右されない。

図1 参照を変えるだけで、同じ記録が別の答えになる

図1:三つの方向の作り方について、(記録 − 参照)× 方向(pips)。左から参照A(分の頭)、参照B(分の平均)、合成乱数の参照A である。

5. 基準線、分の中を合成乱数に置き換える

同じ本数・同じ一歩のばらつき。違うのは一分のモメンタムが無いことだけである。

計算 5.1 実測と合成乱数

方向 参照A 実測 参照A 乱数 参照B 実測 参照B 乱数 参照C 実測 参照C 乱数
P1 −0.0038 0.0007 −0.0088 −0.0002 49.5483 49.9556
P2 0.7944 0.6544 0.2139 0.2094 61.1288 62.8083
P3 −0.0008 0.0018 −0.0012 0.0010 50.0255 50.0561

観察 5.2:予言⑤は当たった。 実測 −0.0038 に対し合成乱数 0.0007 pips である。★ もっとも実測がすでに 0 だったので、消えるものが無かった。 この基準線が何についてゼロなのかは [F033] で測ってある。

計算 5.3 反応の効果のうち、市場のものはどれだけか(★ 後から足した)

実測 合成乱数 差 乱数の割合
参照A 0.7944 0.6544 0.1400 0.8238
参照B 0.2139 0.2094 0.0045 0.9789
参照C 61.1288 62.8083 −1.6795 1.1509

観察 5.4:★ 反応の効果のほとんどは、市場のものではない。 参照A では 0.8238、参照B では 0.9789 が合成乱数で説明される。

観察 5.5:★ 分内順位にいたっては、合成乱数の方が大きい(62.8083 対 61.1288)。割合は 1.1509 で、1 を超える。

観察 5.6:★ つまり「反応して建てた人の記録が、分の頭より不利に見える」のは、市場の性質ではない。 分の中で動いた先を記録するという算術から出ている。

図2 分内順位は、参照の取り方に左右されない

図2:三つの方向の作り方について、分内順位(0〜100)。濃い方が実測、薄い方が合成乱数で、破線が 50 である。

6. 年ごとに見る

計算 6.1 P1 の参照A(pips)

年 USDJPY EURUSD GBPUSD XAUUSD 中央
2019 −0.0100 −0.0058 −0.0038 −0.0100 −0.0079
2020 0.0116 −0.0163 −0.0411 −0.0574 −0.0287
2021 0.0099 −0.0027 0.0032 −0.0124 0.0003
2022 0.0254 −0.0155 −0.0252 −0.0563 −0.0203
2023 0.0460 −0.0010 0.0019 −0.0021 0.0004
2024 0.0115 0.0049 −0.0141 −0.0038 0.0006

観察 6.2:★ 24 通りの中央は −0.0038 pips、幅は −0.0574 から 0.0460 で、正だったのは 8 である。 符号が揃わない。

観察 6.3:参照B も同じである。 中央 −0.0088、幅 −0.0571 から 0.0004、正は 1 である。★ わずかに負へ偏るが、大きさは 0.01 pips 台である。

観察 6.4:参照C の幅は 48.9215 から 49.9028 である。 ★ 24 通りすべてが 50 のすぐ下に収まる。

観察 6.5:USDJPY の 2023 年だけ 0.0460 と大きめである。 ★ 機序は測っていない。

7. 限界

  1. ⚠️ 予言①②が外れた。 方向が分の外から来るなら、参照の取り方はずれを作らなかった。本稿はその外れを書き、問いを「参照か、反応か」に立て直している。
  2. 実在の取引記録を扱っていない。 記録はティックから合成したもので、他者の実績を検証したものではない。
  3. 約定時刻が分の中で一様だと仮定している。 実際に偏っていれば、結果は変わる。
  4. 反応の作り方を一通りに固定している。 分の中の動きの符号だけで、部分的な反応は測っていない。
  5. 売買を論じていない。 コストもスリッページも入れておらず、中値で測っている。
  6. 標本を分ごとに 20,000 に絞っている。 全部の分を使えば値は少し変わる。
  7. USDJPY の 2023 年の大きさの機序を測っていない。
  8. 四銘柄・六年である。 他の市場、他の期間について述べるものではない。

結び

取引の記録は、しばしば分までしか残っていない。市場のほうはミリ秒で動いている。突き合わせるには、参照を一点に決めなければならない。

★ 予言は二つ外れた。方向が分の外から来るなら、参照をどこに取ってもずれは作られない。 参照を分の頭に取って −0.0038 pips、分の平均に取って −0.0088 pips である。24 通りの幅は −0.0574 から 0.0460 で、正だったのは 8。符号すら揃わない。

★ ずれを作るのは、参照ではない。記録した人が分の中の動きに反応したかどうかである。 反応すれば、参照を分の頭に取ったときのずれは 0.7944 pips になる。それは一分の値動き 0.7944 pips とほぼ同じで、定義から出る値である。

★ そのときだけ、参照の取り方が効く。 分の平均に変えると 0.2139 pips まで減る。0.5805 pips、3.7141 倍の差である。

★ そして反応の効果のほとんどは、市場のものではない。 合成乱数でも参照A で 0.6544 pips 出る。実測 0.7944 のうち 0.8238 が乱数で説明され、市場のものは 0.1400 pips である。 参照B では 0.9789 が乱数で、残りは 0.0045 pips しかない。

★ 分内順位だけは、丸めにも参照の取り方にも左右されない。 方向が分の外から来れば 49.5483、反応していれば 61.1288 である。合成乱数では 62.8083 で、実測より大きい。

したがって、分に丸めた記録を突き合わせるときに必要なのは、参照をどこに取ったかではない。 ★ 記録した人が、その分の中で何かを見て動いたのかどうかである。 そして「不利に約定したように見える」の 0.8238 は、市場ではなく算術から出ている。

データと再現

データ 為替は Dukascopy 由来のティック(2019 年以降はミリ秒・bid・ask まで一致することを確認済み)。金は Dukascopy
期間 2019–2024(六年)
銘柄 USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD
もと ティックの中値。一分ごとにまとめる
標本 銘柄・年ごとに無作為 20,000 分(ティック 10 本以上・前の分が続いているもの)。全体で 480,000 分
記録 分の中の一様に無作為な時刻の中値。時刻は分の頭に丸める
参照 A 分の最初のティック/B 分の平均/C 分内順位(0〜100)
方向 P1 前の分の符号/P2 分内の動きの符号/P3 ランダム
測る量 (記録 − 参照)× 方向(pips)/分内順位/一分の値動き
基準線 分の中のティックを、同じ本数・同じ一歩のばらつきの合成乱数に置き換える
検算 検算/F041.py(--zu で図も書き出す)。本文の数字はすべて 検算/F041_output.txt から取っている
図 図/F041_zu1・図/F041_zu2(png・svg・英語版)
乱数の種 固定。再実行しても同じ値が出る
土台の検査 _ツール/audit_bars.py(足の先読み・夏時間・日の区切り)。記録は _土台の検査.txt

参考文献

  • 山岸勇輝 (2026). 合成乱数には、ボラティリティの群れが無い [F033]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22893674
  • 山岸勇輝 (2026). 練行足の転換点は、完成するまで転換点ではない [F040]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22894529

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「分に丸めた記録のずれは、反応したかどうかに属している」[F041]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22894667

YOI F041FX と金融ビットコインに記録済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F041・DOI 10.5281/zenodo.22894667・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 分に丸めた記録のずれは、反応したかどうかに属している [F041]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F041 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22894667

Yamagishi, Y. (2026). The Bias in a Minute-Rounded Record Belongs to Whether the Recorder Reacted [F041]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F041; DOI: 10.5281/zenodo.22894667

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指紋(SHA-256)と確かめ方
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