【I013】医薬品等の営業697,897のうち、薬局は9.1%

要旨

薬機法にもとづく医薬品等の営業(許可・登録・届出)の施設数を、衛生行政報告例(令和6年度末、厚生労働省【薬事】第2表)で数え、I007 の薬局・経済センサスと突き合わせた。

総数は 697,897。6区分の合計は総数とぴったり一致する。 うち医療機器が 555,185 で 79.6%、医薬品128,458(18.4%)、化粧品8,830、医薬部外品3,744、再生医療等製品1,224、体外診断用医薬品456である。

いちばん多いのは「販売業(管理医療機器)」の 343,210 で、総数の 49.2%。 体温計・血圧計・コンタクトレンズ・電気マッサージ器などを売るのに要る届出で、薬局やドラッグストア以外の店も入る。

薬局63,203は、総数の 9.1% にすぎない。 医薬品128,458のなかでも49.2%である。

薬局+店舗販売業 92,738 を、経済センサスの603(医薬品・化粧品小売業)90,344 と比べると 1.03倍。 I007 で「603は薬局と同じものではない」と書いたが、区分を足し直せばほぼ一致する。

配置販売業(いわゆる置き薬)は 4,362 施設・配置従業者 8,302 人。人口10万人あたりでは富山県が 11.2 で1位である。

立入検査率は全国27.7%だが、長野県91.6%から奈良県4.1%まで22.1倍の開きがある。

1. はじめに

I007 は薬局63,203を数え、無薬局町村が140あることと、94.4%が開設者の店でないことを示した。

だが薬機法が扱うのは薬局だけではない。医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・体外診断用医薬品・再生医療等製品の製造・販売・貸与・修理に、それぞれ許可か登録か届出が要る。

薬に関わる営業は、いくつあるのか。そのうち薬局は何割か。

2. データ

医薬品等の営業 厚生労働省「令和6年度 衛生行政報告例」【薬事】第2表 医薬品等営業許可・登録・届出施設数・薬事監視立入検査施行施設数、営業の種類・都道府県別(令和6年度末現在。立入検査は年度中)
経済センサス 「令和3年 経済センサス-活動調査」産業小分類 603 医薬品・化粧品小売業(令和3年6月1日、全国の行)
人口・65歳以上 総務省「住民基本台帳に基づく人口」2026年1月1日

47都道府県すべての行がそろい、合計は全国の欄と一致する。6区分の合計も総数とぴったり一致する(差0)。

一般医療機器の販売業・貸与業などは、表に「・」(数値なし)と記されている。 総数はそれを含まない。

衛生行政報告例には市区町村別が無い(都道府県・指定都市・中核市まで)。本稿は都道府県を単位とした。

3. 結果

3-1 8割は医療機器

区分 施設 割合
医療機器 555,185 79.6%
医薬品 128,458 18.4%
化粧品 8,830 1.3%
医薬部外品 3,744 0.5%
再生医療等製品 1,224 0.2%
体外診断用医薬品 456 0.1%
総数 697,897

「薬事」という言葉から思い浮かべるものと、数の中身は違う。 8割は医療機器である。

3-2 半分は「管理医療機器の販売業」

横棒グラフ。医薬品等の営業を区分ごとに並べた数。管理医療機器の販売業343,210が突出し、青で示している。薬局63,203は緑。

図1 医薬品等の営業の中身(令和6年度末、主な区分)。
青は医療機器、緑は薬局、灰色はそれ以外。

医療機器の内訳 施設 総数に占める割合
販売業(管理医療機器) 343,210 49.2%
販売業(高度管理医療機器等) 79,717 11.4%
貸与業(管理医療機器) 73,275 10.5%
貸与業(高度管理医療機器等) 44,627 6.4%
修理業(知事許可分) 6,703 1.0%
製造業 4,664 0.7%

販売業(管理医療機器)だけで、総数の49.2%を占める。

管理医療機器は、体温計・血圧計・コンタクトレンズ・電気マッサージ器・補聴器などである。売るには届出が要るので、薬局やドラッグストアだけでなく、眼鏡店・家電量販店・コンビニ・通信販売なども入る。

販売業をあわせると422,927、貸与業をあわせると117,902。貸与は販売の0.28倍である。介護用ベッドや車椅子の貸与がここに入る。

3-3 薬局は9.1%

施設 総数に占める割合
薬局 63,203 9.1%

医薬品128,458のなかで見ると、次のようになる。

医薬品の内訳 施設 医薬品に占める割合
薬局 63,203 49.2%
店舗販売業 29,535 23.0%
卸売販売業 12,241 9.5%
配置販売業 4,362 3.4%

薬局63,203は、I007 で数えたものと同じ数である。

3-4 区分を足し直すと、経済センサスと合う

数 比
薬局 + 店舗販売業 92,738 1.03倍
経済センサス 603 医薬品・化粧品小売業 90,344

I007 では、薬局63,203と603(90,344)を比べて0.70倍となり、「603はドラッグストア・化粧品小売を含むので、薬局と同じものではない」と書いた。

店舗販売業29,535を足すと、1.03倍でほぼ一致する。 店舗販売業は、薬剤師でなくとも登録販売者がいれば第2類・第3類医薬品を売れる店で、ドラッグストアの多くがここに入る。

I009 の公衆浴場でも、総数では10.34倍離れたが、銭湯とだけ比べれば1.19倍で合った。「合う区分を選べば合う」の2つ目の例である。

3-5 置き薬は、富山県に残っている

配置販売業 4,362 施設
配置従業者 8,302 人
1施設あたり 1.90 人

配置販売業は、あらかじめ薬を置いておき、使った分だけ後で代金を受け取る商売である。いわゆる置き薬。

件数では大阪府206、東京都183、埼玉県173の順で、1位でも全国の4.7%にすぎず、集中していない。

だが人口あたりでは、はっきり分かれる。

人口10万人あたりの配置販売業 多い 少ない
富山県11.2/和歌山県10.8/佐賀県9.3 沖縄県1.7/神奈川県1.4/東京都1.3

富山県が1位である。 富山の置き薬という言い方は知られているが、それが人口あたりの届出の数として、いまも1位に現れる。

3-6 立入検査率は22.1倍ちがう

立入検査施行施設(年度中) 193,543
総数に対して 27.7%

I012 の特定建築物(14.4%)の約2倍である。

立入検査率 高い 低い
長野県91.6%/静岡県65.8%/三重県45.9% 青森県10.4%/佐賀県4.8%/奈良県4.1%

上と下で22.1倍。 同じ法律にもとづく監視でありながら、県によってこれだけ違う。本稿は理由を確かめていない。

3-7 都道府県ごと

人口10万人あたりの総数(全国564、中央値563) 多い 少ない
島根697/栃木695/広島694 山口458/神奈川445/沖縄408

上と下で 1.71倍。高齢化率との相関はほぼ0(r = +0.019)。

医療機器が占める割合(全国79.6%) 高い 低い
愛知84.5%/栃木84.3%/広島83.3% 和歌山71.8%/山口71.6%/富山67.3%

高齢化率との相関は r = −0.387、人口の常用対数との相関は r = +0.443。人口の多い県ほど、医療機器の割合が高い。

富山県の割合がいちばん低いのは、医薬品(配置販売業を含む)の側が厚いためとみられる。

3-8 北海道と釧路総合振興局管内

北海道の総数は 30,845。人口10万人あたり617で47都道府県中 9位。全国の564を上回る。

医療機器は25,401(82.4%、6位)で全国より高く、薬局は2,342(7.6%)で全国の9.1%より低い。

立入検査率は11.7%で43位。 全国27.7%の半分以下である。

釧路管内は、衛生行政報告例に市区町村別が無いため、経済センサスの603のみを示す(603は薬局と同じものではない)。

市町村 人口 603 事業所 人口10万人あたり
釧路市 151,566 110 72.6
釧路町 18,021 12 66.6
厚岸町 7,976 5 62.7
浜中町 5,172 2 38.7
標茶町 6,698 5 74.6
弟子屈町 6,327 7 110.6
鶴居村 2,368 0 0.0
白糠町 6,840 5 73.1

I007 と同じく、鶴居村は0である。

4. 考察

4-1 「薬事」の数の中身

薬機法の許可・登録・届出は697,897ある。そのうち薬局は9.1%、医療機器が79.6%である。

さらに医療機器のなかでも、販売業(管理医療機器)1区分で総数の半分近く(49.2%)を占める。これは体温計や血圧計を売る店の届出であって、専門の医療機器業者だけの数ではない。

I009 の公衆浴場(23,668のうち銭湯2,730)、I011 の届出食品営業(865,122のうち自動販売機174,742)と同じ形である。制度の数を業界の数と読むと、大きく外れる。

4-2 合う区分を選べば合う

I007 では、薬局63,203と経済センサスの603(90,344)が0.70倍で合わなかった。本稿で店舗販売業29,535を足すと、1.03倍でほぼ一致する。

I009 でも、公衆浴場の総数では10.34倍離れたが、銭湯とだけ比べれば1.19倍だった。

統計が合わないときは、比べる区分が違っている。 ただし、どの区分を足せば合うかは、両方の定義を読んで数えてみるまで分からない。

4-3 1つの店が、いくつも持っている

総数697,897は、店の数ではない。 1つの店が、薬局の許可と、管理医療機器の販売業の届出と、高度管理医療機器の販売業の許可を、同時に持つことがある。

したがってこの697,897は、許可・登録・届出の数に近い。本稿はその重なりを確かめていない。

I011 の百貨店(1店に平均30件の届出)と同じ型である。

4-4 監視の強さが、県で22.1倍ちがう

立入検査率は長野県91.6%、奈良県4.1%である。

同じ薬機法にもとづく監視でありながら、1年のうちに9割を回る県と、4%しか回らない県がある。これは事業者にとって、実際に受ける規制の強さが県で違うということである。

I012 の特定建築物の立入検査は全国14.4%だった。制度によっても、県によっても、監視の密度は大きく違う。

理由は本稿では確かめていない。 検査の定義や計上のしかたが県で違う可能性も含む。

4-5 置き薬が残っている場所

配置販売業は人口10万人あたり、富山県11.2、東京都1.3で8.6倍の差がある。

置き薬は江戸期からの商売で、富山がその中心だったことは広く知られている。その痕跡が、いまの届出の数にも残っている。

I011 の行商(宮崎県に21.0%)と同じく、古い商売の形が、1つの県に濃く残る例である。ただし本稿は歴史的な経緯を確かめていない。

5. 限界

  • 衛生行政報告例は令和6年度末、経済センサスは令和3年6月1日、人口は2026年1月1日。時点が違う
  • 一般医療機器の販売業・貸与業などは表に「・」(数値なし)と記されており、総数に含まれない
  • 1つの店が複数の許可・登録・届出を持つ。 総数697,897は店の数ではなく、許可・登録・届出の数に近い
  • 本稿は、その重なりを確かめていない
  • 配置従業者は人数で、施設ではない
  • 経済センサスの603はドラッグストア・化粧品小売を含み、薬局と同じものではない
  • 立入検査率が県で22.1倍違う理由は、本稿では確かめていない(検査の定義や計上のしかたの差を含む)
  • 富山県に配置販売業が多い理由について、歴史的な経緯を確かめていない
  • 衛生行政報告例には市区町村別が無い。釧路管内はセンサスの値のみ
  • 売上・取扱量は見ていない

6. 再現の手順

  1. e-Stat から「令和6年度 衛生行政報告例」【薬事】第2表(CSV)を取得する
  2. 47県の合計が全国の欄と一致すること、6区分(医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・体外診断用医薬品・再生医療等製品)の合計が総数と一致することを確かめる(総数 697,897)
  3. 「許可・登録・届出施設数(年度末現在)」の列は、区分ごとに2列おきに並ぶ。医療機器の販売業(管理医療機器)は列69である
  4. e-Stat から令和3年 経済センサスの産業小分類別 事業所数を取得し、全国の行の603を使う
  5. 住民基本台帳の人口・65歳以上人口を都道府県ごとに合計する
  6. 薬局+店舗販売業と603の比、人口10万人あたりの配置販売業、立入検査率を出す

本稿の数値は、すべて1本のスクリプト(kensan_202)の出力である。中間の数値を手で書き写していない。

この論文の位置づけ

新しい理論を主張するものではない。薬機法の許可・登録・届出の数を区分ごとに開き、薬局が占める割合を示し、経済センサスと合う区分を探したものである。I007(薬局)の続きにあたる。総数は店の数ではなく許可・登録・届出の数に近いこと、立入検査率が県で22.1倍違うことを示した。重なりの程度、検査率の差の理由、富山県に置き薬が多い経緯は確かめていない。

参考文献・データの出典

  1. 厚生労働省「令和6年度 衛生行政報告例」【薬事】第2表
  2. 総務省統計局・経済産業省「令和3年 経済センサス-活動調査」産業小分類別 事業所数(市区町村別)
  3. 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」2026年1月1日現在
  4. 山岸勇輝「薬局が1つも無い町村が140ある」(I007)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876130
  5. 山岸勇輝「「公衆浴場」23,668のうち、銭湯は2,730」(I009)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876425
  6. 山岸勇輝「届出を要する食品営業は865,122」(I011)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876599
  7. 山岸勇輝「特定建築物48,608を管理する登録営業所は17,842」(I012)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22877101

版の記録

版 日付 内容
第1版 2026-09-21 初出

引用のしかた

山岸勇輝(2026)「医薬品等の営業697,897のうち、薬局は9.1%、半分は「管理医療機器の販売業」 [I013]」Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22877276

(この DOI は concept DOI。常に最新の版を指す。引用にはこれを使う)

© 2026 山岸 勇輝(Yuuki YAMAGISHI)

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書誌

山岸勇輝(2026)「医薬品等の営業697,897のうち、薬局は9.1%」[I013]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22877276

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 医薬品等の営業697,897のうち、薬局は9.1% [I013]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I013 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22877276

Yamagishi, Y. (2026). Pharmacies Are 9.1% of 697,897 Pharmaceutical-Related Businesses [I013]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I013; DOI: 10.5281/zenodo.22877276

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