【論文867】込み合った林では、本数を半分にしても林全体の量は一割も減らない

要旨

木を半分に伐れば、林の量もそれだけ減る、と思いやすい。本稿は、込み合った林では減るのは本数であって林全体の量ではないことを、逆数の収量の式で数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、一本あたりは、込み合うほど縮む。一本あたりの大きさを $1/(1+0.01N)$ と置くと、$1000$ 本で $0.090909$、$2000$ 本で $0.047619$ である(第2節)。

第二に、これが本稿の芯である。本数を半分にしても、林全体はほとんど変わらない。$2000$ 本を $1000$ 本にすると、林全体は $\mathbf{0.954545}$ 倍にしか減らず、一本あたりは $\mathbf{1.909091}$ 倍になる(第3節)。

第三に、林全体には上限がある。本数を増やしても林全体は $100.000000$ を超えず、$4000$ 本で $97.560976$ である(第2節)。

第四に、込み合っていない林では話が変わる。$500$ 本から $250$ 本では林全体が $\mathbf{0.857143}$ 倍に減る。一割を境にする本数は $\mathbf{800.000000}$ 本で、二分法と閉じた式が差 $10^{-6}$ 未満で一致した(第3節)。

第五に、競争が無ければ、林全体は本数に比例する。式の係数を $0$ にすると、林全体は本数と差 $10^{-9}$ 未満で一致した。半分にして一割も減らないのは、込み合いの効き目である(第2節)。

第六に、分離子は、林全体の量を問うか、一本あたりの大きさを問うかである。込み合った林で本数を半分にすると、林全体はほとんど動かず、一本あたりが $2$ 倍に近づく(第4節)。

キーワード:間伐、最終収量一定の法則、密度効果、林全体の量、一本あたりの大きさ、模型。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。密度が高いほど一本あたりが小さくなり、林全体の量が一定に近づくこと(密度効果・最終収量一定の法則)、それを逆数の収量の式で書くことは、いずれも既知である。実在の値を主張しない。係数 $0.01$ と上限 $100$ は模型の値で、どの樹種にもどの林にも対応しない。時間を入れない。本数を半分にすることは、本数の違う林を同じ条件で育てきったときの比べとして数える。伐った直後の量、そこから育つ道のり、枯死や自然な間引きは入れない。材を論じない。太さによる材の質や値段は扱わない。間伐を勧めない。伐るべきかどうか、何本にすべきかには答えない。既刊との関係:論文581 は、森が炭素を吸う速さの頂点と、ためる量の頂点が別の林齢にあることを示し、射程注記で土の炭素・枯死・間伐・災害を入れていないと書いた。本稿はその席に座る(先客は無い)。ただし炭素ではなく、林全体の量と一本あたりの大きさで数える。加えたのは、本数ごとに一本あたりと林全体を並べたこと、$2000$ 本を $1000$ 本にして林全体が $0.954545$ 倍にしかならないと測ったこと、一割を境にする本数 $800.000000$ を二通りに出して境の両側を確かめたこと、分離子を「林全体の量か、一本あたりの大きさか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:同じ面積に $N$ 本の木を植え、同じ条件で育てきったときの一本あたりの大きさ $w$ と林全体の量 $Y$ を、逆数の収量の式で置く。

$$w(N)=\frac{w_{\max}}{1+aN},\qquad
Y(N)=Nw(N)=\frac{w_{\max}N}{1+aN},\qquad
\frac{Y(N/2)}{Y(N)}=\frac{1+aN}{2+aN}$$

$w_{\max}=1$、$a=0.01$ とした。本数を半分にすることは、$N$ 本の林と $N/2$ 本の林を比べることとして数える。

問い:本数を半分にすると、林全体の量も半分になるのか。

2. 本数と量

計算 2.1:本数ごとに、一本あたりの大きさと林全体の量を出した。

本数 一本あたり 林全体
$250$ $0.285714$ $71.428571$
$500$ $0.166667$ $83.333333$
$1000$ $0.090909$ $90.909091$
$2000$ $0.047619$ $95.238095$
$4000$ $0.024390$ $97.560976$

観察 2.2 林全体は上限に寄っていく。本数を $250$ から $4000$ へ $16$ 倍にしても、林全体は $71.428571$ から $97.560976$ にしか増えず、上限 $100.000000$ を超えない。一本あたりが本数とともに縮むからである。係数 $a$ を $0$ にすると林全体は本数と差 $10^{-9}$ 未満で一致し、上限は消える。

3. 本数を半分にする

計算 3.1:半分にする前の本数ごとに、林全体と一本あたりが何倍になるかを出した。

本数 林全体 一本あたり
$4000$ から $2000$ $0.976190$ $1.952381$
$2000$ から $1000$ $0.954545$ $1.909091$
$1000$ から $500$ $0.916667$ $1.833333$
$500$ から $250$ $0.857143$ $1.714286$

観察 3.2 これが本稿の芯である。込み合った林では、本数を半分にしても林全体はほとんど変わらない。$2000$ 本を $1000$ 本にすると、林全体は $0.954545$ 倍にしか減らず、一本あたりは $1.909091$ 倍になる。伐った分の量は、残った木が一本あたり大きくなることでほぼ埋まる。

観察 3.3 込み合っていない林では、半分にすれば一割を超えて減る。$500$ 本から $250$ 本では林全体が $0.857143$ 倍になる。比 $(1+aN)/(2+aN)$ が $0.9$ になる本数は $800.000000$ 本で、二分法で出した値と閉じた式 $8/a$ が差 $10^{-6}$ 未満で一致した。$1000$ 本からでは $0.9$ 倍より多く、$500$ 本からでは少ない。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、林全体の量を問うか、一本あたりの大きさを問うかである。林全体を問えば、込み合った林の間伐はほとんど何も変えない。一本あたりを問えば、同じ間伐が大きさを $1.909091$ 倍にする。どちらが大きく動くかを決めるのは、込み合いの度合い $aN$ である。

観察 4.2 論文581 の席に座る。581 は森が炭素を吸う速さの頂点とためる量の頂点が別の林齢にあることを示し、射程注記で間伐を入れていないと書いた。本稿はその席に、炭素ではなく林全体の量と一本あたりの大きさで座る。581 が「何を最大にするかで答えが変わる」と言ったのと同じく、ここでも問う量で間伐の効き方が逆に見える。

観察 4.3 言わないこと。実在の樹種や林の値も、伐った直後の量や育つ道のりも、枯死や材の質や値段も扱わない。間伐すべきかにも答えない。示したのは、込み合った林で本数を半分にすると、減るのは本数であって林全体の量ではないということである。

5. 点呼と結び

  1. 一本あたりは $1/(1+aN)$(第1節):逆数の収量の式。
  2. $2000$ 本で一本あたり $0.047619$(計算 2.1):込み合うほど縮む。
  3. 林全体の上限 $100.000000$(観察 2.2):$4000$ 本で $97.560976$。
  4. $2000$ 本から $1000$ 本で林全体 $\mathbf{0.954545}$ 倍(計算 3.1):本稿の芯。
  5. 一本あたり $\mathbf{1.909091}$ 倍(計算 3.1):伐った分を埋める。
  6. $4000$ 本から $2000$ 本で $0.976190$ 倍(計算 3.1):込み合うほど動かない。
  7. $500$ 本から $250$ 本で $\mathbf{0.857143}$ 倍(計算 3.1):一割を超えて減る。
  8. 境は $\mathbf{800.000000}$ 本(観察 3.3):二分法と閉じた式。
  9. 係数 $0$ で本数に比例(観察 2.2):込み合いの効き目。
  10. 林全体か、一本あたりか(観察 4.1):分離子・論文581 の席。

結び:込み合った林では、本数を半分にしても林全体の量は一割も減らない。一本あたりの大きさが $1/(1+0.01N)$ で縮むとき、$2000$ 本を $1000$ 本にすると林全体は $0.954545$ 倍にしか減らず、一本あたりは $1.909091$ 倍になる。伐った分の量を、残った木が一本あたり大きくなることでほぼ埋めるからである。ただし半分にしても一割を超えて減らないのは、半分にする前の本数が $800.000000$ 本より多いときで、$500$ 本から $250$ 本では $0.857143$ 倍に減る。林全体の量を問うか、一本あたりの大きさを問うかで、同じ間伐の効き方は逆に見える。既刊との位置:論文581 が射程注記で空けた間伐の席に、炭素ではなく林全体の量と一本あたりの大きさで座った。正直に言えば、係数と上限は模型の値で、伐ったあとに育つ道のり、枯死、材の質や値段は入れていない。

参考文献

  1. Harper, J. L. (1977). Population Biology of Plants. Academic Press.
  2. Pretzsch, H. (2009). Forest Dynamics, Growth and Yield. Springer.
  3. 山岸勇輝 (2026). 『森が炭素を吸う速さの頂点と、ためる量の頂点は、別の林齢にある』[論文581]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/581 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014343

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「込み合った林では、本数を半分にしても林全体の量は一割も減らない」[論文867]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/867

YOI 867第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 込み合った林では、本数を半分にしても林全体の量は一割も減らない [論文867]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/867

Yamagishi, Y. (2026). In a Crowded Stand, Halving the Number of Trees Takes Less Than a Tenth off the Whole [Paper 867]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/867

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