要旨
網の切れにくさは、何点抜けば切れるかで測る、と思いやすい。本稿は、ラプラシアンの固有値でも切れにくさを測り、点で切る数と並べて、点 $6$ 個のすべてのグラフで数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、ゼロ固有値は成分を数える。点 $6$ 個のすべてのグラフ $32768$ 個で、ゼロ固有値の個数は、辺をたどって数えた成分の数と一致した(第2節)。
第二に、二番目の固有値は、点で切る数を超えない。完全グラフ以外の連結グラフ $26703$ 個すべてで、二番目の固有値 $\le$ 点連結度で、等しいのは $3111$ 個、割合 $\mathbf{0.116504}$ である(第3節)。
第三に、これが本稿の芯である。同じ点の数で切れるグラフでも、二番目の固有値は首の細さを測り分ける。一点で切れるグラフ $15336$ 個で、二番目の固有値は道の $\mathbf{0.267949}$ から星の $1.000000$ まで散らばり、平均は $\mathbf{0.696682}$ である(第3節)。
第四に、点 $6$ 個では、固有値は点連結度の一つ下とのあいだに収まった。点連結度 $2$ で $1$ から $2$、$3$ で $2$ から $3$、$4$ はすべて $4$、完全グラフは $6$ で、点連結度 $1$〜$3$ ではすべて「点連結度 $-1$」と「点連結度」のあいだに入った(第3節)。
第五に、道の値は式と合う。点 $6$ 個の道の二番目の固有値は、$2(1-\cos(\pi/6))$ と差 $10^{-9}$ 未満で一致した(第3節)。
第六に、分離子は、整数で数える点連結度を問うか、連続の値で測る二番目の固有値を問うかである。点連結度は何点で切れるかだけを答え、固有値は切り口のまわりがどれだけ細いかまで答える(第4節)。
キーワード:グラフラプラシアン、代数的連結度、点連結度、固有値、フィードラーの不等式。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。ラプラシアンのゼロ固有値の個数が成分の数に等しいこと、二番目の固有値(代数的連結度)が完全グラフ以外で点連結度を超えないこと(フィードラーの不等式)、道の固有値の式は、いずれも既知である。定理を証明しない。点 $6$ 個のすべてのグラフで数えて確かめるだけである。大きさを一般化しない。「点連結度 $-1$ と点連結度のあいだに入る」は点 $6$ 個で見たことで、大きいグラフでは主張しない。算法に入らない。固有値を使ってグラフを分ける方法には入らない。既刊との関係:論文868 は、どの点にも辺が三本あっても一点を抜けば切れることがあると示した。本稿はその隣に置く。あちらは点で切る数・辺で切る数・最小次数の三つを並べた。ここではそこに二番目の固有値を加え、同じ点の数で切れるグラフのあいだの違いを数える。加えたのは、すべてのグラフでゼロ固有値と成分を突き合わせたこと、二番目の固有値が点連結度に等しい割合 $0.116504$ を測ったこと、点連結度ごとに固有値の散らばりを並べたこと、分離子を「整数の点連結度か、連続の固有値か」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:点 $n$ 個のグラフで、次数を並べた対角行列を $D$、隣り合う点に $1$ を置いた行列を $A$ とし、ラプラシアン $L=D-A$ の固有値を小さい順に $0=\lambda_1\le\lambda_2\le\dots\le\lambda_n$ と並べる。
$$L=D-A,\qquad
\#\{i:\lambda_i=0\}=\text{成分の数},\qquad
\lambda_2\le\kappa\quad(\text{完全グラフ以外})$$
$\kappa$ は点連結度(抜くと残りが繋がらなくなる点の最小の個数)である。点 $6$ 個のラベル付きグラフ $32768$ 個すべてで固有値を出し、成分の数は辺をたどって、点連結度は点の部分集合を全部試して数えた。
問い:固有値で測る切れにくさは、点で切る数と何が違うのか。
2. ゼロ固有値と成分
計算 2.1:すべてのグラフで、絶対値が $10^{-9}$ 未満の固有値の個数と成分の数を比べた。
観察 2.2 ゼロ固有値は成分を数える。$32768$ 個のすべてで二つは一致した。成分が一つの連結グラフは $26704$ 個で、そこではゼロ固有値が一つだけになる。二番目の固有値が $0$ より大きいことが、繋がっていることの印になる。
3. 二番目の固有値と点連結度
計算 3.1:連結グラフを点連結度ごとに分け、二番目の固有値の最小・最大・平均を出した。
| 点連結度 | グラフ | 最小 | 最大 | 平均 |
|---|---|---|---|---|
| $1$ | $15336$ | $0.267949$ | $1.000000$ | $0.696682$ |
| $2$ | $9600$ | $1.000000$ | $2.000000$ | $1.509210$ |
| $3$ | $1692$ | $2.000000$ | $3.000000$ | $2.562857$ |
| $4$ | $75$ | $4.000000$ | $4.000000$ | $4.000000$ |
| $5$(完全) | $1$ | $6.000000$ | $6.000000$ | $6.000000$ |
観察 3.2 二番目の固有値は、点で切る数を超えない。完全グラフ以外の $26703$ 個すべてで $\lambda_2\le\kappa$ で、ちょうど等しいのは $3111$ 個、割合 $0.116504$ だった。完全グラフだけは $\lambda_2=6$ で、点連結度 $5$ を超える。
観察 3.3 これが本稿の芯である。同じ点の数で切れるグラフでも、二番目の固有値は首の細さを測り分ける。一点で切れるグラフ $15336$ 個で、二番目の固有値は $0.267949$ から $1.000000$ まで散らばる。最小は一列に並んだ道で、その値は $2(1-\cos(\pi/6))$ と差 $10^{-9}$ 未満で一致した。最大は一つの点に残りがつながる星で $1.000000$ である。どちらも一点で切れるが、道はどこで切っても長い首が残り、星は中心を抜かない限りどこも細くない。
観察 3.4 点 $6$ 個では、固有値は点連結度の一つ下とのあいだに収まった。点連結度 $1$〜$3$ のグラフは、すべて「点連結度 $-1$」と「点連結度」のあいだに入った。点連結度 $4$ の $75$ 個はすべて $4.000000$ だった。この収まり方は点 $6$ 個で見たことで、大きいグラフでも成り立つとは主張しない。
4. 分離子
観察 4.1 分離子は、整数で数える点連結度を問うか、連続の値で測る二番目の固有値を問うかである。点連結度は、何点で切れるかだけを整数で答える。二番目の固有値は、切り口のまわりがどれだけ細いかまで連続の値で答え、点連結度を上から超えない。同じ $1$ 点で切れる道と星を、$0.267949$ と $1.000000$ で分ける。
観察 4.2 論文868 の隣に置く。868 は、点で切る数・辺で切る数・最小次数の三つを並べ、最小次数が切り口の上限でしかないことを示した。ここではその並びの下側に二番目の固有値を加えた。最小次数は上から、固有値は下から、点で切る数を挟む。
観察 4.3 言わないこと。定理の証明も、点 $7$ 個以上も、固有値でグラフを分ける方法も扱わない。示したのは、二番目の固有値が点で切る数を超えず、同じ数で切れるグラフを細さで分けるということである。
5. 点呼と結び
- $L=D-A$(第1節):ラプラシアン。
- ゼロ固有値の個数 $=$ 成分の数(観察 2.2):$32768$ 個すべて。
- $\lambda_2\le\kappa$(観察 3.2):完全グラフ以外の $26703$ 個すべて。
- 等しいのは $\mathbf{0.116504}$(観察 3.2):$3111$ 個。
- 一点で切れても $\mathbf{0.267949}$ から $1.000000$(計算 3.1):本稿の芯。
- 平均 $\mathbf{0.696682}$(計算 3.1):点連結度 $1$。
- 道は $2(1-\cos(\pi/6))$(観察 3.3):式と一致。
- 点連結度 $2$ で $1$〜$2$、$3$ で $2$〜$3$(計算 3.1):一つ下とのあいだ。
- 完全グラフは $6$(観察 3.2):点連結度 $5$ を超える唯一。
- 整数か、連続か(観察 4.1):分離子・論文868。
結び:ラプラシアンの二番目の固有値は、点で切る数を超えず、同じ数で切れるグラフの首の細さを測り分ける。点 $6$ 個の完全グラフ以外の連結グラフ $26703$ 個すべてで二番目の固有値は点連結度以下で、一点で切れるグラフでも道の $0.267949$ から星の $1.000000$ まで散らばる。点連結度は何点で切れるかだけを整数で答え、固有値は切り口のまわりの細さまで連続の値で答えるからである。ゼロ固有値の個数は $32768$ 個すべてで成分の数と一致し、点 $6$ 個では二番目の固有値が点連結度の一つ下とのあいだに収まった。最小次数が上から、固有値が下から、点で切る数を挟む。既刊との位置:論文868 が並べた点・辺・最小次数の隣に、下から挟む二番目の固有値を置いた。正直に言えば、数えたのは点 $6$ 個のグラフだけで、定理は既知として確かめただけである。
参考文献
- Chung, F. R. K. (1997). Spectral Graph Theory. American Mathematical Society.
- Fiedler, M. (1973). Algebraic Connectivity of Graphs. Czechoslovak Mathematical Journal.
- 山岸勇輝 (2026). 『どの点にも辺が三本あっても、一点を抜けば切れることがある』[論文868]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/868
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「ラプラシアンの二番目の固有値は点で切る数を超えず、同じ数で切れるグラフの首の細さを測り分ける」[論文880]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/880
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). ラプラシアンの二番目の固有値は点で切る数を超えず、同じ数で切れるグラフの首の細さを測り分ける [論文880]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/880
Yamagishi, Y. (2026). The Second Laplacian Eigenvalue Never Exceeds the Vertex Connectivity and Tells Apart Thin Necks Cut by the Same Number [Paper 880]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/880
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author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {The Second Laplacian Eigenvalue Never Exceeds the Vertex Connectivity and Tells Apart Thin Necks Cut by the Same Number},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/880},
note = {Preprint, edition 1}
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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