【論文968】風速計の摩擦の過小と揺らぎの過大は足し算で重なり、打ち消す風速は揺らぎが小さいほど高い

要旨

揺らぐ風では、杯型の風速計は速い風に早く追いつくぶん、平均の風速より多く回る(論文890)が、そこでは軸の摩擦を入れなかった。摩擦は逆に指示を少なくする。本稿は、890 の距離定数 3 m の応答に一定の摩擦の減速(回り始める風速 0.5 m/s から決めた置いた値)を足し、二つの偏りがどう重なり、どの平均の風速で打ち消し合うかを数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、揺らぎのない風では、摩擦の過小は風速の二乗に反比例する。摩擦の減速 $0.083333$ m/s² で、5 m/s の指示は $4.950000$ m/s(式と一致)、回り始める風速より弱い 0.45 m/s では指示は 0 だった。過小の割合は回り始める風速と平均の風速の比の二乗である(第2節)。

第二に、揺らぐ風では、二つの偏りはほぼ足し算で重なる。揺らぎ 0.3・0.5 Hz で平均 1〜8 m/s の六つの風速について、摩擦ありの偏りと、摩擦なしの過大から比の二乗を引いた値の差は、最大 $\mathbf{0.000122}$ だった(第3節)。

第三に、弱い風では過小、強い風では過大になる。揺らぎ 0.3 で、摩擦ありの偏りは 1 m/s で $-0.205592$、2 m/s で $-0.019469$、3 m/s で $+0.013136$、5 m/s で $+0.025360$ だった(第3節)。

第四に、打ち消し合う風速は、揺らぎが小さいほど高い。偏りが 0 になる平均の風速は、揺らぎ 0.1・0.2・0.3 で $\mathbf{10.6926}$・$3.8133$・$2.4345$ m/s で、回り始める風速をその風速での過大の平方根で割った $10.6776$・$3.8078$・$2.4309$ m/s と 0.05 m/s 以内だった(第4節)。

第五に、分離子は、偏りが風速の二乗に反比例するか、風速にほとんどよらない割合かである。摩擦の過小は平均の風速の二乗に反比例して弱い風で大きい。揺らぎの過大は 1〜8 m/s で $+0.044530$ から $+0.026708$ とゆるやかにしか変わらない。二つが等しくなる風速で偏りが消えた(第5節)。

キーワード:風速計、軸の摩擦、回り始める風速、オーバースピーディング、距離定数、測定の偏り。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。杯型の風速計が距離定数で特徴づけられること、軸の摩擦のために回り始める風速があり弱い風で指示が少なくなること、揺らぐ風で指示が多くなること(オーバースピーディング)は、いずれも気象測器で知られている。摩擦を一定の減速と置く。摩擦は回る速さによらない一定の減速で、回り始める風速 $0.5$ m/s から $U^2/L$ で決めた。実在の軸受の摩擦の形(速さによる変化、始動と運動の違い)は入れない。揺らぎを単純にした。890 と同じく、揺らぎは一つの速さ(0.5 Hz)の正弦で、乱流の広い周波数の揺らぎ、風向の揺らぎ、斜めの風は扱わない。実在の測器を主張しない。距離定数 3 m と回り始める風速は模型の値で、どの風速計にも対応しない。既刊との関係:論文890 の射程注記は、羽根の形と風向を入れず、杯の形、風向の揺らぎ、軸の摩擦、斜めからの風は入れないと書いた。本稿はそのうち軸の摩擦の席に座る(先客なし)。論文890 は、揺らぐ風で杯型の風速計が速い風に早く追いつくぶん平均より多く回り、揺らぎ 0.3・0.5 Hz・5 m/s で過大が $0.035459$ になることを示した。ここでは、その過大に摩擦の過小を重ね、打ち消し合う平均の風速を数える。加えたのは、揺らぎのない風で摩擦の過小を式と一致させたこと、六つの風速で二つの偏りが足し算で重なると確かめたこと、三つの揺らぎで打ち消し合う風速を探したこと、その風速を回り始める風速と過大の平方根で言い表したこと、分離子を「風速の二乗に反比例するか、割合か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:論文890 と同じく、風速を $U(t)=U_0(1+I\sin2\pi ft)$、指示の速さを $V$ とし、距離定数 $L=3$ m の応答 $dV/dt=U(U-V)/L$ に、回っているあいだ一定の摩擦の減速 $a$ を足す。

$$\frac{dV}{dt}=\frac{U(U-V)}{L}-a\quad(V>0),\qquad a=\frac{U_{th}^2}{L}$$

止まっているときは $U^2/L>a$ になるまで回り始めない。回り始める風速 $U_{th}=0.5$ m/s は置いた値で、$a=0.083333$ m/s² である。揺らぎのない風で釣り合う指示は $V=U-aL/U$ で、過小の割合は $(U_{th}/U)^2$ になる。890 と同じく 0.002 秒刻みで 600 秒回し、初めの 60 秒を除いて平均し、偏りを「指示の平均÷風の平均−1」とする。

問い:摩擦の過小と揺らぎの過大はどう重なり、どの平均の風速で打ち消し合うか。

2. 揺らぎのない風の摩擦

計算 2.1:摩擦を入れずに 5 m/s・揺らぎ 0.3・0.5 Hz で過大 $+0.035459$ を出し、890 と $10^{-6}$ 以内で一致した。摩擦を入れ揺らぎを除くと、5 m/s の指示は $4.950000$ m/s で式 $U-aL/U=4.950000$ と一致し、0.45 m/s では指示は $0.000000$ だった。

観察 2.2 揺らぎのない風では、摩擦の過小は風速の二乗に反比例する。過小の割合 $(U_{th}/U)^2$ は 1 m/s で $0.250000$、2 m/s で $0.062500$、5 m/s で $0.010000$、8 m/s で $0.003906$ である。回り始める風速より弱い風では回らない。

3. 揺らぐ風の二つの偏り

計算 3.1:揺らぎ 0.3・0.5 Hz での偏り。

平均の風速 摩擦なしの過大 摩擦ありの偏り 足し算の見積もり 差
$1.0$ m/s $+0.044530$ $-0.205592$ $-0.205470$ $-0.000122$
$1.5$ m/s $+0.043945$ $-0.067287$ $-0.067166$ $-0.000121$
$2.0$ m/s $+0.043150$ $-0.019469$ $-0.019350$ $-0.000120$
$3.0$ m/s $+0.041028$ $+0.013136$ $+0.013250$ $-0.000114$
$5.0$ m/s $+0.035459$ $+0.025360$ $+0.025459$ $-0.000099$
$8.0$ m/s $+0.026708$ $+0.022727$ $+0.022801$ $-0.000074$

足し算の見積もりは「摩擦なしの過大 $-(U_{th}/U)^2$」で、六つの風速で差の最大は $0.000122$ だった。

観察 3.2 二つの偏りはほぼ足し算で重なり、弱い風では過小、強い風では過大になる。偏りは 2 m/s で負、3 m/s で正で、打ち消し合う風速がその間にあった。足し算からのずれはどの風速でも負で、大きさは $0.000074$ から $0.000122$ だった。

4. 打ち消し合う風速

計算 4.1:摩擦ありの偏りが 0 になる平均の風速を、1〜40 m/s の二分法で探した。

揺らぎ 打ち消し合う風速(m/s) そこでの摩擦なしの過大 $U_{th}$÷√過大(m/s)
$0.1$ $\mathbf{10.6926}$ $+0.002193$ $10.6776$
$0.2$ $3.8133$ $+0.017242$ $3.8078$
$0.3$ $2.4345$ $+0.042307$ $2.4309$

三つの揺らぎで、打ち消し合う風速は $U_{th}$÷√過大 と 0.05 m/s 以内だった。

観察 4.2 打ち消し合う風速は、回り始める風速を過大の平方根で割った値で、揺らぎが小さいほど高い。足し算が成り立つので、$(U_{th}/U)^2$ が過大に等しくなる風速で偏りが消える。揺らぎ 0.1 では過大が $+0.002193$ と小さく、打ち消し合う風速は $10.6926$ m/s まで上がった。

5. 分離子

観察 5.1 分離子は、偏りが風速の二乗に反比例するか、風速にほとんどよらない割合かである。摩擦の過小は平均の風速の二乗に反比例し、1 m/s で $0.250000$、8 m/s で $0.003906$ と大きく変わる。揺らぎの過大は 1〜8 m/s で $+0.044530$ から $+0.026708$ までしか変わらない。二つの形の違いが、弱い風の過小と強い風の過大、その間の打ち消し合う風速を生んだ。

観察 5.2 言わないこと。実在の軸受の摩擦の形、乱流の揺らぎ、風向と斜めの風、杯の形、どの風速計が正しいかは扱わない。示したのは、一定の摩擦と一つの速さの揺らぎの模型で、二つの偏りが足し算で重なり、打ち消し合う風速が回り始める風速と過大で決まることである。

6. 点呼と結び

  1. 応答の式に一定の摩擦を足す(第1節):過小は $(U_{th}/U)^2$。
  2. 5 m/s で指示 $4.950000$(計算 2.1):式と一致。
  3. 足し算との差の最大 $\mathbf{0.000122}$(計算 3.1):二つの偏りは重なる。
  4. 揺らぎ 0.3 で 2 m/s は負・3 m/s は正(計算 3.1):弱い風で過小。
  5. 打ち消し合う風速 $\mathbf{10.6926}$・3.8133・2.4345 m/s(計算 4.1):揺らぎが小さいほど高い。
  6. 二乗に反比例か、割合か(観察 5.1):分離子・論文890 の射程注記。

結び:風速計の摩擦の過小と揺らぎの過大は足し算で重なり、打ち消す風速は揺らぎが小さいほど高い。890 の応答に一定の摩擦を足すと、揺らぎ 0.3・0.5 Hz の六つの風速で、偏りは摩擦なしの過大から $(U_{th}/U)^2$ を引いた値と $0.000122$ 以内で一致した。偏りが 0 になる平均の風速は揺らぎ 0.1・0.2・0.3 で $10.6926$・$3.8133$・$2.4345$ m/s で、回り始める風速を過大の平方根で割った値と 0.05 m/s 以内だった。分離子は、偏りが風速の二乗に反比例するか、風速にほとんどよらない割合かである。既刊との位置:論文890 が摩擦なしで数えた揺らぐ風の過大に、論文890 が入れなかった軸の摩擦を重ねた。正直に言えば、摩擦も揺らぎも最も単純な形に置いた。二つの偏りがどう重なり、どこで消えるか、そこまでである。

参考文献

  1. World Meteorological Organization (2008). Guide to Meteorological Instruments and Methods of Observation (7th ed.). WMO.
  2. 山岸勇輝 (2026). 『揺らぐ風では、風速計は速い風に早く追いつくぶん、平均の風速より多く回る』[論文890]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/890

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「風速計の摩擦の過小と揺らぎの過大は足し算で重なり、打ち消す風速は揺らぎが小さいほど高い」[論文968]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/968

YOI 968第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 風速計の摩擦の過小と揺らぎの過大は足し算で重なり、打ち消す風速は揺らぎが小さいほど高い [論文968]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/968

Yamagishi, Y. (2026). A Cup Anemometer’s Friction Undershoot and Gust Overshoot Add, and They Cancel at a Higher Wind the Weaker the Gusts [Paper 968]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/968

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