Yamagishi Complexity Torus Lab山岸勇輝ラボ

立体の楕円体は、外からは平らな円盤と見分けがつかない:球が一つの点に見えるのは、その円盤が点まで縮んだ場合だった

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前の読みもの「箱の中身を入れ替えても、外の重力は少しも変わらない」で、私がいちばん面白いと思ったのは、球だけでなく、立方体のようないろいろな形でも成り立つことでした。閉じた皮で包めば、中で何が起きていても、外から読めるのは決まった数だけです。物は、モジュールになっているのだと思います。

では、球でない形のモジュールでは、中身をどこまで小さくまとめられるのでしょうか。球なら、外から見た重力は、真ん中の一点に全部の重さを置いたのと同じです(ニュートンの球殻定理)。このページでは、楕円体を共焦点の族(あとで説明します)の中で縮めて、これを確かめます。行き止まりは、平らな円盤でした。

この文章の計算は、このページのために新しく行ったものと、査読を経ていない、著者自身による公開(プレプリント)の論文によります。

要点

  • 中身が一様な楕円体の重力は、外から見ると、中に置いた平らな楕円の円盤と同じです。半軸3・2・1の楕円体なら、芯は半軸√8・√3の円盤で、外の場の相対の差は10⁻¹⁴の桁でした。
  • 半軸の二乗から同じ数を引いた楕円体(共焦点の楕円体)どうしは、同じ重さなら外から見分けがつきません。外から読める角度の型ごとの数も、同じです。
  • 共焦点のまま一番つぶした芯は、球で点、細長い楕円体で線分、楕円体で平らな円盤です。芯の次元は0・1・2で、球殻定理は、芯が一点まで縮む一番小さい場合でした。
  • 皮の中で力が0になるのは、球だけではありません。楕円の皮でも、厚みを中心から接平面までの距離に比例させれば、中の力は0です。どこも同じ厚みでは0になりません。球では、二つの塗り方が同じ皮になります。
  • 共焦点の芯と、ホメオイドの平らな中は、場が質量の無いラプラスの方程式に従うとき(力が距離の2乗で弱まるとき)に成り立ちます。3乗で弱まる力や、方程式が二階でも質量のある湯川の場では、崩れます。ただし球だけは、湯川の場でも外から点と同じ形の場を出します。

球は、外から見ると一つの点

重さ1の一様な球の外では、重力は、真ん中に重さ1の点を置いたときと同じで、距離の2乗で弱まります。これがニュートンの球殻定理です。論文1114は、点・皮・1/r²の球・一様な球の四つが外から同じ場を出し、中では分かれることを数えました。球では、中身を一点まで縮めても、外は変わりません。

球でない形では、そうはいきません。論文1107が示したように、外から読めるのは角度の型ごとに一つの数です。全体の重さ(型0)のほかに、楕円のような伸び方(型2)や、もっと細かい型の数も外へ出ます。点一つでは、それを全部は出せません。では、どこまで縮められるのでしょうか。

共焦点のまま縮めても、外は変わらない

楕円体の三つの半軸を二乗して、そこから同じ数λを引きます。こうしてできる楕円体は、もとの楕円体と焦点を共にするので、共焦点の楕円体と呼ばれます。半軸3・2・1の楕円体から0.5を引くと、半軸は2.9155・1.8708・0.7071になり、ずっと平たくなります。それでも同じ重さを一様に入れると、外の3点で場の相対の差(差の大きさ÷力の大きさ)は6.81×10⁻¹⁵から4.51×10⁻¹⁴で、計算の誤差の大きさでした。マクローリン(1742年)が回転楕円体で示し、一般の楕円体ではラプラスとアイヴォリー(1809年)の名で知られる定理です。比べに、共焦点でない楕円体(半軸2.9155・1.9644・0.6734)を同じ重さにすると、7.24×10⁻³から1.91×10⁻²違いました。

実験1楕円体を縮めて、外の点の力を見る

形を選び、つまみで縮めます。「共焦点で縮める」と「短い半軸だけ縮める」を比べてください。外の点の向きも動かせます。

今の半軸
外の点の力(G=1、重さ1)
もとの形との差
この形の芯

実験1 破線はもとの形の切り口、塗った楕円は縮めた形、太い線や点や薄く塗った円盤はその形の芯です。外の点は、もとの形の一番長い半軸の1.25倍に0.6を足した距離にあります。力は、一様な楕円体の外の場の式を、ブラウザの中で数値で積分して出しています(中身をじかに足した値との相対の差は10⁻¹⁴の桁)。

外から読める数でも確かめました。楕円体は三つの座標面について鏡に映しても同じ形なので、奇数の型などの数は0になります。残る数は、半軸の二乗をP・Q・Rと書くと、型2の二つの数は(2R−P−Q)/5と(P−Q)/5で、型4の三つの数も、P・Q・Rの差だけで決まります(記号で確かめたのは型4までです)。三つから同じλを引いても、差は変わりません。外から読める数が同じなので、外から見分けがつかないのです。中の満たし方は違い、たとえば中身のz²の平均R/5は、共焦点にずらすと変わります。

一番つぶすと、芯になる

λを短い半軸の二乗まで大きくすると、短い半軸が0になり、楕円体は平らな円盤になります。半軸3・2・1なら、芯は半軸√8・√3(2.828427と1.732051)の楕円の円盤です。濃さは中ほどが厚く、ふちで0になり、√(1−q²)に比例します(qは、円盤のふちを1とした中心からの距離)。これは、もとの楕円体を真上から押しつぶしたときの厚みと同じ形です。

四つの絵。球の同心の円が中心の点へ縮む。細長い楕円が縦の線分へ縮む。横長の楕円が横の線分へ縮む。その線分を上から見た、中ほどが濃い橙の楕円の円盤と、もとの楕円体の切り口の破線
図1 共焦点の族が芯へ縮む様子です。線はどれも、もとの形と共焦点で、重さをそろえれば外には同じ場を出します。球は中心の点へ、細長い回転楕円体(1・1・2)は焦点のあいだの線分へ、楕円体(3・2・1)は横から見ると線分へ縮みます。右端はその芯を上から見たもので、半軸√8・√3の平らな円盤です。

形を変えると、芯も変わります。

形(半軸)芯芯の次元
球(1・1・1)中心の点0
細長い回転楕円体(1・1・2)二つの焦点のあいだの、長さ2√3の線分1
平たい回転楕円体(2・2・1)半径√3の丸い円盤2
楕円体(3・2・1)半軸√8・√3の楕円の円盤2

四つとも、芯は外の3点で、もとの形と同じ場を出しました(相対の差は10⁻¹⁴の桁。点は形ごとに、もとの形の外に選びました)。芯の大きさは、半軸の二乗の差で決まります。球では差がみな0なので、芯は一点に縮みます。球殻定理は、この「芯まで縮める」の、一番小さい場合だったのです。

外から同じでも、中は違います。楕円体の中で、円盤から少し離れた点(0, 0, 0.5)では、立体の楕円体の力と芯の円盤の力の差は、立体の力の1.911392倍でした。

中の力が0になる楕円の皮

球の皮の中では、どこにいても力が0です。楕円の皮ではどうでしょうか。皮の塗り方を二つ比べます。一つは、厚みを中心から接平面までの距離pに比例させる塗り方で、もとの楕円体と、それを少しだけ大きくした相似な楕円体のあいだの殻に当たります。これをホメオイドと呼びます。もう一つは、どこも同じ厚みで塗る塗り方です。

半軸3・2・1では、pは長い軸の先で3、短い軸の先で1になります。皮の重さを1にして中の3点の力を足すと、ホメオイドでは10⁻¹⁵の桁(計算の誤差の大きさ)、どこも同じ厚みの皮では1.28×10⁻²から3.79×10⁻²でした。球ではpがどこでも同じなので、二つの塗り方は同じ皮になります。だから、球だけを見ていると、この違いには気づけません。

実験2皮の塗り方を替えて、中の力を見る

皮の塗り方を選び、つまみで形を球から楕円体へ変えます。中の点の場所も動かせます。

半軸
接平面までの距離の範囲
中の点の力(G=1、皮の重さ1)

実験2 z=0の切り口です。皮の厚みは大きく描いています。中の濃淡はその所の力の大きさの常用対数で、濃いほど大きな力です。力は、皮を120×240の点に分けてじかに足しています。
二つの楕円。左は中が一面に薄い色で、どこでも計算の誤差の大きさ。右は中が濃い色で、0ではない。右に、力の大きさの常用対数の目盛り
図2 楕円体(3・2・1)の薄い皮(重さ1)が、中の点に及ぼす力の大きさ(常用対数、z=0の切り口)。左は厚みを接平面までの距離に比例させた皮で、どこでも10⁻¹⁷から10⁻¹⁵の桁、つまり計算の誤差の大きさです。右はどこも同じ厚みの皮で、中心の近くのほかは10⁻²の桁です。

なぜ中の力が0になるのか

一様な楕円体の中では、重力の位置のエネルギーが、座標の二次式になります(x²・y²・z²の三つの項と定数)。半軸をみな同じ割合で大きくした楕円体では、二次の項はもとと同じで、定数だけが変わります。だから二つのあいだの殻が囲む空洞(内側の楕円体の中)では、位置のエネルギーがどこでも同じで、力が0になります。半軸1.1倍の楕円体ともとの楕円体の差は、中の3点でどれも−4.02684457640873でした。そして、中の位置のエネルギーが二次式になる一様な物は楕円体だけだということが、ディーヴ(1931年)などの結果として引かれます(このページでは原典を読んでいません)。

論文156は、球の殻の中が平らになる理由を、調和であること・球対称・中心で値が無限にならないことの三つに分けました。ホメオイドは球対称ではないのに、中が平らです。ここで球対称の代わりをしているのは、中の位置のエネルギーが二次式になることと、厚みの特別な塗り方です。

4πを三つの向きへ配る

その二次式を二回微分した三つの値を足すと、4πになります。重力の式∇²Φ=4πρの4πです。形に応じて、4πが三つの向きへ配られるのです。球なら4π/3ずつで、論文1084が「縦の取り分」と呼んだ数です。論文1084は、回転楕円体で、この取り分が形で動くことも数えました。半軸3・2・1では、短い軸の向きほど多く、1.964・3.357・7.245と配られます(足すと4π)。

方眼紙の点を足すと、答えが形で変わる(論文1097)は、格子に並べた双極子の場の和が、球で0、細い針で4π/3、薄い板で−8π/3になることを数えました。論文1098は、この三つが、反電場係数で書ける形の項だけから出ることを、回転楕円体で数えています。この三つは、4π/3から、その向きに配られた分を引いた値です。球では4π/3−4π/3=0です。細い針の長い向きには、ほとんど何も配られないので4π/3、薄い板の厚みの向きには、ほとんど全部の4πが配られるので4π/3−4π=−8π/3になります。一様に分極した楕円体の中の場が、同じ二次式で決まるからです。ホメオイドの中の力0と、この三つの値は、同じ二次式から来ています。

逆二乗でなければ、崩れる

力が距離の3乗で弱まるとして、同じ計算をしました。共焦点の二つの楕円体は、外の3点で2.39×10⁻²から2.82×10⁻²違い、ホメオイドの中の力も1.92×10⁻²から1.45×10⁻¹で、0になりません。場の方程式が二階でも、質量のある湯川の場では、やはり崩れます。共焦点の二つは外の3点で3.57×10⁻²から5.20×10⁻²違い、ホメオイドの中の力は1.35×10⁻²から4.27×10⁻²で、半径1の球の皮の中でも6.80×10⁻²になります。論文1107は、外から読める数が皮一枚で済むこと(二階)と、皮に4πが残ること(場の質量が0)を、別の根に分けました。芯も、平らな中も、二階であるだけでは足りず、場が質量の無いラプラスの方程式に従うことに乗っています。

ただし一様な球は、湯川の場でも、外からは点と同じ形の場を出します。半径1の一様な球と中心の点の力の比は、外の3点でどれも3/e=1.103638にそろい、変わるのは重さだけでした。球を点に縮めることには、対称性というもう一つの支えがあるのです。楕円体を円盤に縮めるには、質量の無いラプラスの方程式が要ります。

地球を一様な楕円体とすると

地球の形を表す楕円体(WGS84)は、赤道半径6378137m、極半径6356752.314245mです。地球を仮に一様な楕円体とすると、芯は半径521.854kmの丸い円盤になります。赤道半径の0.0818192倍で、この倍率は楕円体の離心率そのものです。本物の地球は中ほどが重く、層ごとに平たさも違うので、外の重力がこの円盤と同じになるわけではありません。この数は、この形の一様な物の芯が、どれくらいの大きさかを示すだけです。

モジュールという直感について

はじめの考えに戻ります。閉じた皮で包むと、外から読めるのは角度の型ごとに一つの数でした。その個数は場の方程式の階数で決まり、形を選びません(論文1107)。今回分かったのは、共焦点の族の中で、その数を出す「芯」をどこまで小さくできるかは、形で決まることです。球なら点まで、細長い楕円体なら線分まで、楕円体なら平らな円盤まで縮められます。共焦点でない置き方で、もっと小さくできないかは、確かめていません。

外から見ると、立体の楕円体と平らな円盤は区別がつきません。ただし、平らな円盤が立体の中身を生むと言っているのではありません。外から見た重力では区別できない、というだけです。中では、立体と円盤の力ははっきり違います。

分離子:皮の厚みの塗り方と、共焦点かどうか

何を動かすと別のものに替わるかを言うのが、分離子です。ここでの分離子は二つです。一つは皮の厚みの塗り方で、接平面までの距離に比例させれば中の力が0になり、どこも同じ厚みでは0になりません。球では二つが同じ皮になるので、この分離子は球の上では働きません。もう一つは、二つの楕円体が共焦点かどうかで、共焦点なら同じ重さで外から見分けがつかず、そうでなければ違います。

よくある問い

平らな円盤が、立体を作っているのですか?

いいえ。外から見た重力で区別できないだけです。中の力は違い、楕円体の中の点(0, 0, 0.5)では、差が立体の力の1.911392倍でした。

どんな形にも、芯はあるのですか?

このページで確かめたのは、楕円体だけです。楕円体でない形の芯は扱っていません。一般の形でも、外の場を変えずに中身を皮の上へ移すこと(掃き出し)はできます(論文1107)。

回る液体の「マクローリン楕円体」と同じ話ですか?

いいえ。マクローリン楕円体は、回る液体がつり合う形の話です。このページの定理は、同じマクローリンが示した、共焦点の楕円体の外の重力の話で、別のものです。

電気でも同じですか?

はい。力が距離の2乗に反比例する(場が質量の無いラプラスの方程式に従う)なら、電気でも同じです。電気では、4πの配り方を反電場係数と呼びます(論文1084・論文1097)。

論文と文献

論文はどれもCC BY 4.0で公開しています。

  • 論文1116「一様な楕円体は外から見ると平らな焦点の円盤と同じで、球が点と同じなのはその円盤が一点に縮んだ場合である」:このページの計算のもと。
  • 論文1107「場の方程式が二階なら、閉じた皮の外から読める中身は、角度の型ごとに一つの数である」:外から読めるのは角度の型ごとに一つの数。
  • 論文1114「m=4πは半径1の皮を濃さ1で塗った重さで、1/r²の球はその皮を均等にふくらませたもの」:球では、点・皮・球が外から同じ。
  • 論文156「球殻の内部が平らなのは、平均値定理のせいではない」:球の殻の中が平らになる三つの理由。
  • 論文1084「4πは縦の4π/3と横の8π/3に分かれ、水素の21cm線は横の側を測っている」:4π/3の取り分。
  • 論文1097「格子に並べた双極子の場の和は足す形で決まり、球で0、細い針で4π/3、薄い板で−8π/3になる」:形で変わる三つの値。
  • 論文1098「指数が次元に等しい格子の和では、形は縁までの距離の対数の平均として入る」:三つの値が形の項だけから出ること。
  • 論文51「山岸・重力多重極集約理論」:点への集約の許可は球殻定理まで。
  • 論文787「チンボラソはエベレストより2585.39m低いのに、中心から2079.524m遠い」:地球の楕円体の数。
  • 論文300「三百本目の点呼 ── 同根か別根かは、判定できる」:同じ数を、何を動かすと動くかで分ける。
  • Newton, I. (1687). Philosophiæ Naturalis Principia Mathematica.
  • Maclaurin, C. (1742). A Treatise of Fluxions.
  • Ivory, J. (1809). On the attractions of homogeneous ellipsoids. Philosophical Transactions of the Royal Society of London.
  • Dive, P. (1931). Attraction des ellipsoïdes homogènes et réciproques d'un théorème de Newton. Bulletin de la Société Mathématique de France.
  • Osborn, J. A. (1945). Demagnetizing Factors of the General Ellipsoid. Physical Review.
  • Chandrasekhar, S. (1969). Ellipsoidal Figures of Equilibrium. Yale University Press.