要旨
学校保健統計調査で数える子どもの喘息(ぜん息の被患率)と、人口動態統計の子ども(5〜19 歳)の喘息の死亡率が、同じ形で動いたかを確かめた。学校の表は 1948〜2025 年度(ぜん息は 1967 年度から)、死亡は 1950〜2024 年。死亡数が一年で 10 未満になる年は、年を束ねて一年あたりの率にした。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。
第一に、表はそろっている。学校の表は 12 シート(4 学校種 × 計・男・女)で、年の行は 1948〜2025 年度の 78 行、計はどの年度も男と女のあいだにある。人口から戻した子どもの喘息の率は表の率と一致する(第3節)。
第二に、学校で数える喘息は長く上がり続けた。 4 学校種とも被患率がいちばん高いのは 2010〜2013 年度で、1967 年度の 9.6 倍(幼稚園)から 69.3 倍(高等学校)である(第4節)。
第三に、その後、被患率は下がりはじめた。 2025 年度は 4 学校種ともいちばん高い年度より低く、その 0.466(幼稚園)〜0.742(小学校)である(第4節)。
第四に、子どもの喘息の死亡は、同じあいだに大きく減った。 5〜19 歳の喘息の死亡率(人口 10 万対)は 1990 年 0.540、1995 年 0.468、2000 年 0.175、2005・2010 年 0.042、2014〜2024 年 0.010 で、死亡数は 1995 年 105 人から、2014〜2024 年の 11 年で合わせて 18 人になった(第5節)。
第五に、ここが本稿の芯である。1990 年から 2014〜2024 年に、被患率は 2.35〜3.91 倍に上がり、死亡率は 0.019 倍に下がった。 1970→1990 年にも、被患率は 1.40〜9.60 倍に上がり、死亡率は 0.542 倍に下がっている。かかっている子の数と、亡くなる子の数は、向きの違う動きをした(第6節)。
第六に、分けるのはかかっている子の数か、亡くなる子の数か。「喘息の子は増えた」と「喘息で亡くなる子は減った」は、どちらも表のとおりで、互いを打ち消さない。
射程注記:本稿は新しい数学定理も新しい法則も主張しない。被患率と死亡数は公表の表にあり、本稿は並べて比べただけである。本稿は公開の集計データの数の形を述べる構造的解釈であり、医学的な助言・診断・治療の推奨ではない。著者は医師ではない。個人の健康に関する判断は医師・医療機関に相談すること。査読を経ていないプレプリントである。 被患率が上がった理由も、死亡率が下がった理由も論じない。診断のされ方・数え方・治療・環境などには立ち入らない。学校の被患率と死亡の年齢の範囲は同じではない(学校は幼稚園から高等学校、死亡は 5〜19 歳)。一人の見通しではない。 子どもの死亡は小さな数なので、一年で 10 未満の年は束ねた。都道府県や地域・学校は比べない。データについて:学校保健統計調査・人口動態統計(e-Stat)は政府標準利用規約(第2.0版)に従って使い、本稿の率・倍率はそれらを加工して作成した。本稿が加えたこと:学校で数える喘息と子どもの喘息の死亡を同じ年で並べ、向きの違う動きを倍率で示したこと。
1. 記号と問い
- 被患率:学校保健統計調査の「ぜん息」(%・その学校種の子どもの中の割合)。
- 子どもの喘息の死亡率:5〜19 歳の喘息の死亡数 ÷ 5〜19 歳の人口 × 100,000(人口は全死因の死亡数 ÷ 死亡率から戻す)。
- 束ねた年:2005・2010 年(二つの年)と 2014〜2024 年(11 年)。束ねた年と並べる被患率は、同じ年度の平均。
問い:学校で数える子どもの喘息と、子どもの喘息の死亡は、同じ形で動いたか。
観察 1.1:M042 は、喘息の死亡率が 1995→2016 年にどの年齢でも下がったことを示した。本稿はそのうち子どもの年齢を、かかっている子の数(学校の被患率)と並べる。
2. 下見と設計
正直に書く:設計は表を見てから決めた。
| 内容 | |
|---|---|
| かかっている子 | 学校保健統計調査 年次統計 表15 学校種別 疾病・異常被患率等の推移(昭和23年度~令和7年度)の「ぜん息」 |
| 亡くなる子 | 人口動態統計 令和6年 上巻 第5.15表(シート「総数」「09喘息」の 5〜19 歳) |
| 物差し | 被患率の倍率、死亡率の倍率 |
| 束ね方 | 5〜19 歳の喘息の死亡は 2005 年から一年で 10 未満(9・6・3・3・2・1・1・1・3・1・2・1・0 人)→ 年を束ねた |
| 出どころの記録の直し | 最初、中学校と高等学校のぜん息は 1972 年度からと書いていたが、表を読むと 4 学校種とも 1967 年度からあった(直した) |
3. データと確かめ
計算 3.1 取得した 2 本のファイルを SHA-256 で固定し、次を確かめた。
- 学校の表:12 シートの見出しが 幼稚園・小学校・中学校・高等学校 × 計・男・女。どのシートも「ぜん息」の列が一つ。年の行は 1948〜2025 年度の 78 行(和暦の読み替えで抜けも重なりも無い)。計は男と女のあいだにある(全部の年度・4 学校種)。
- 死亡の表:5〜19 歳の 3 階級で、人口(全死因の死亡数 ÷ 死亡率)から戻した喘息の率 = 表の率(丸めの幅の中)。
- 率を出す束(一年ごと・束ねた年)は、どれも死亡数が 10 以上。
4. 学校で数える喘息
計算 4.1 ぜん息の被患率(%)
| 学校種 | 1970 年度 | 1990 年度 | 1995 年度 | 2014〜2024 年度の平均 | いちばん高い年度 | 2025 年度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 幼稚園 | 0.50 | 0.70 | 0.91 | 1.64 | 2.79(2011 年度) | 1.30 |
| 小学校 | 0.40 | 1.05 | 1.38 | 3.40 | 4.34(2011 年度) | 3.22 |
| 中学校 | 0.10 | 0.96 | 1.44 | 2.54 | 3.22(2013 年度) | 2.14 |
| 高等学校 | 0.10 | 0.45 | 0.78 | 1.76 | 2.08(2010 年度) | 1.53 |
観察 4.2:4 学校種とも、被患率がいちばん高いのは 2010〜2013 年度で、1967 年度の 9.6〜69.3 倍である。 2025 年度は、いちばん高い年度の 0.466(幼稚園)〜0.742(小学校)。
5. 子どもの喘息の死亡
計算 5.1 5〜19 歳の喘息の死亡数と、一年あたりの死亡率(人口 10 万対)
| 年 | 死亡数 | 年の数 | 一年あたりの死亡率 |
|---|---|---|---|
| 1970 | 248 | 1 | 0.996 |
| 1980 | 98 | 1 | 0.362 |
| 1990 | 140 | 1 | 0.540 |
| 1995 | 105 | 1 | 0.468 |
| 2000 | 35 | 1 | 0.175 |
| 2005・2010 | 15 | 2 | 0.042 |
| 2014〜2024 | 18 | 11 | 0.010 |
観察 5.2:5〜19 歳の喘息の死亡率は 1970 年の 0.996 から 2014〜2024 年の 0.010 へ下がった。 死亡数は 1995 年に 105 人、2000 年に 35 人で、2005 年からは一年で 10 人に届かない。

図1:上は学校で数える喘息の被患率(%)、下は 5〜19 歳の喘息の死亡率(人口 10 万対・縦は対数)。下の横棒は年を束ねた一年あたりの率(2005・2010 年は二つの年、2014〜2024 年は 11 年)。上が上がっていくあいだに、下は下がる。
6. 芯、同じあいだの、被患率と死亡率
計算 6.1 被患率と死亡率の倍率(被患率は死亡率と同じ年。束ねた年は同じ年度の平均)
| 期間 | 死亡率の倍率 | 幼稚園 | 小学校 | 中学校 | 高等学校 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1970 → 1990 | 0.542 倍 | 1.40 倍 | 2.62 倍 | 9.60 倍 | 4.50 倍 |
| 1990 → 2014〜2024 | 0.019 倍 | 2.35 倍 | 3.24 倍 | 2.65 倍 | 3.91 倍 |
| 1995 → 2014〜2024 | 0.022 倍 | 1.80 倍 | 2.47 倍 | 1.77 倍 | 2.25 倍 |
観察 6.2:1990 年から 2014〜2024 年に、死亡率は 0.019 倍に下がり、被患率は 4 学校種とも 2.35〜3.91 倍に上がった。 1970→1990 年にも、死亡率は 0.542 倍、被患率は 1.40〜9.60 倍で、向きの違う動きは同じである。1995 年からで比べても、死亡率 0.022 倍・被患率 1.77〜2.47 倍である。
7. 限界
- 学校の被患率と死亡の年齢の範囲は同じではない(学校は幼稚園から高等学校、死亡は 5〜19 歳)。
- 学校は年度、死亡は暦年で、同じ数字の年どうしを並べた。
- 子どもの喘息の死亡は小さな数で、2005 年からは年を束ねた。束ねた率は、その年々の揺れをならした値である。
- 被患率が上がった理由・死亡率が下がった理由は論じない。 数え方や診断のされ方が変わった可能性も分けていない。
- 一人の見通しではない。
結び
学校で数える子どもの喘息は、1967 年度から 2010〜2013 年度まで上がり続け、1990 年から 2014〜2024 年に 2.35〜3.91 倍になった。同じあいだに 5〜19 歳の喘息の死亡率は 0.019 倍になり、死亡数は 1995 年の 105 人から、2014〜2024 年の 11 年で合わせて 18 人になった。
分けているものは一つ、かかっている子の数か、亡くなる子の数か。
「その病気は増えている」「その病気は減っている」と聞いたら、かかっている人の数の話か、亡くなる人の数の話かを、一緒に確かめる。
データと再現
| データ | 学校保健統計調査 年次統計 表15 学校種別 疾病・異常被患率等の推移(昭和23年度~令和7年度)、人口動態統計 令和6年(確定数)上巻 第5.15表(e-Stat・2026 年 9 月 26 日に取得) |
| 利用条件 | e-Stat は政府標準利用規約(第2.0版)に従う。本稿の率・倍率は、これらを加工して作成したもので、国が作成した数ではない |
| 範囲 | 日本・学校(幼稚園・小学校・中学校・高等学校)と 5〜19 歳・1950〜2025 年 |
| 検算 | 検算/M043.py(--zu で図も書く)。本文の数字はすべて 検算/M043_output.txt から取った |
| 生データ | data/ に取得した 2 本と SOURCES.md(URL・取得日・SHA-256・利用条件・定義と計算の置き方) |
| 図 | 図/M043_zu1(png・svg・英語版) |
参考文献
- 文部科学省. 学校保健統計調査 年次統計 表15 学校種別 疾病・異常被患率等の推移(昭和23年度~令和7年度). e-Stat(2026年9月26日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
- 厚生労働省. 人口動態統計 令和6年(確定数)上巻 第5.15表. e-Stat(2026年9月26日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
- 山岸勇輝 (2026). 喘息の死亡率は 1995→2016 年に、どの年齢でも 0.066〜0.162 倍に下がった。亡くなる人の 80 歳以上の割合が 0.436 から 0.687 に上がった分の 0.708 は、人口の高齢化による [M042]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22974412
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「学校で数える子どもの喘息は、1990 年から 2014〜2024 年に 2.35〜3.91 倍になり、同じあいだ 5〜19 歳の喘息の死亡率は 0.019 倍になった」[M043]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22974442
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M043・DOI 10.5281/zenodo.22974442・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 学校で数える子どもの喘息は、1990 年から 2014〜2024 年に 2.35〜3.91 倍になり、同じあいだ 5〜19 歳の喘息の死亡率は 0.019 倍になった [M043]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M043 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22974442
Yamagishi, Y. (2026). Asthma Counted at School Rose 2.35–3.91-Fold from 1990 to 2014–2024, While the Asthma Death Rate at Ages 5–19 Fell to 0.019 Times over the Same Span [M043]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M043; DOI: 10.5281/zenodo.22974442
@misc{yamagishi2026yoiM043,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {Asthma Counted at School Rose 2.35–3.91-Fold from 1990 to 2014–2024, While the Asthma Death Rate at Ages 5–19 Fell to 0.019 Times over the Same Span},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M043},
doi = {10.5281/zenodo.22974442},
note = {Preprint}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
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