【F002】一目均衡表の雲は、二十六本先へ描いた過去である

要旨

本稿が問うのは、一目均衡表の雲を二十六本先へずらして描くという規約が、何か情報を足しているのか、である。答えは、足していない、である。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。

第一に、標準の一目で「価格が雲の上なら買い、下なら売り」を信号にすると、選択期間では四銘柄すべてが正(1.1318 から 6.3214 pips)だが、評価期間では四銘柄すべてが負(−0.2312 から −2.0319 pips)になる。四つとも符号が反転する(第3節)。

第二に、これが本稿の芯である。雲をずらす本数を 0・13・26・52・104 と変えると、標準の 26 が最良だったのは 8 通りのうち 1 通りである。偶然なら 1.6 通りになる(第4節)。

第三に、三役好転は件数を 0.741 倍に減らし、そのとき方向の情報は +0.0173 pips しか動かない。そして本稿の 20 セルのうち 7 セルで、全体の平均と日ごとに平均してからの平均は符号が食い違う(第5節)。

第四に、遅行スパンの条件は「今の終値が二十六本前の終値より上か」と、四銘柄すべてで食い違いが 0 件で一致する(第6節)。

第五に、雲の厚みで五分位に分けると、四銘柄すべてで単調にならない。厚みは上下に対称な量であり、向きを持たない(第7節)。

第六に、足の中まで合成乱数で作った系列で同じ測定をすると、実測は 四銘柄すべてで乱数 20 系列の幅の中に入る。そして時間帯を重ならない五区分に分けても、日次 t の絶対値が 2 以上になったセルは 20 のうち 0 である(第7節・第8節)。

本稿の射程(scope note):新しい数学定理も新しい法則も主張しない。一目均衡表の定義、移動する高安の中点、ランダムウォークはすべて既知である。特定の商材や提唱者を論じない。実在の教材、その著者、販売元は主題ではなく、一切名指さない。扱うのは公知の指標そのものである。売買を論じない。本稿が測るのは方向の情報であって、手数料・約定・資金管理を含む売買の成績ではない。射程は日中・少数銘柄に限る。四銘柄・六年・1 時間足の測定である。すべての市場、すべての時間尺度について述べるものではない。とくに、月次の時系列モメンタムのようにより長い保有で文書化されている結果を、本稿は否定しない。予測を主張しない。雲から先の値動きを当てる方法は提案しない。指標の作者を批判しない。本稿が測るのは「二十六本ずらす」という規約の効果だけであり、指標全体の価値を論じるものではない。既刊との関係:論文422 は、規則の核心と名指された条件を外しても成績が動かないことを示した。本稿はその形を、指標の表示の規約に当てる。論文264 は閾値が自分の格子に属することを示した。ここでは二十六という数が自分の足に属している。論文423 は、正しい部品から誤った結論が出ることを示した。雲の計算は正しく、誤るのはその読み方である。本系列の F001 は、移動平均のクロスの「周期」が二本の期間の比から出ることを示した。本稿はその隣で、別の指標の別の数について同じことを測る。加えたのは、ずらす本数を分離子として先に宣言し、五通りで測ったこと、選択期間と評価期間を並べて符号の反転を出したこと、遅行スパンの条件が別の式と恒等であることを件数で確かめたこと、足の中まで乱数で作った基準線を同じ手続きで並べたことである。

1. 記法と問い

一目均衡表は、次の五本の線からできている。

線 定義
転換線 直近 9 本の(高値 + 安値)÷ 2
基準線 直近 26 本の(高値 + 安値)÷ 2
先行スパンA (転換線 + 基準線)÷ 2 を 26 本先へずらして描く
先行スパンB 直近 52 本の(高値 + 安値)÷ 2 を 26 本先へずらして描く
遅行スパン 終値を 26 本後ろへずらして描く

先行スパンAとBに挟まれた帯を雲と呼ぶ。雲はいつもローソク足の先にある。

観察 1.1:先行スパンの値は、その時点までの高値と安値だけから決まっている。26 本先へ描くのは、描画の操作であって、計算に未来を使うことではない。先読みは無い。

観察 1.2:だが「先行」という名前は、その帯が先の値動きについて何かを言っていることを示唆する。示唆しているだけで、確かめられてはいない。

問い:二十六本ずらすという規約は、何か情報を足しているのか。

観察 1.3:この問いは決着させられる。ずらす本数を動かせばよい。 情報が足されているなら、標準の 26 が他の本数より良くなるはずである。どの本数でも同じなら、ずらす操作は答えを変えていない。

2. 測る量と設計を、先に書く

測る量は、方向の情報である。

“`
D = 平均( 信号の符号 × これから h 本先までの値動き ) 単位 pips
“`

信号は、価格が雲の上なら +1(買い)、下なら −1(売り)、雲の中なら 0(何もしない)とする。D は「買いの期待値と売りの期待値の差の半分」と同じ量で、賭ける向きを入れ替えると符号が反転する。上下に対称な量からは 0 になる。

設計(走らせる前に宣言し、実行時に変えていない)

項目 決めたこと
足 1 時間足・中値・完成足の終値のみ(その足の最後のティック)
銘柄 USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD
期間 2019–2024。選択 2019–2021 / 評価 2022–2024(評価は選択に一切使わない)
先までの長さ h = 26(雲の一期間ぶん)を基本とし、1・6・78 も並べる
分離子 雲をずらす本数 k = 0・13・26・52・104
コスト 同じ足のスプレッドの中央値を必ず並べて書く
t 値 必ず日次クラスタ(日ごとに平均してから作る)

観察 2.1:本稿は利確と損切りで切る出口では測らない。足の中で上下どちらに先に触れたかは、足の高値と安値からは決まらないからである。バリアで測るのは別の問いで、別の論文で扱う。

観察 2.2:D はコストを含まない。必ずスプレッドと並べて読む。 方向の情報がスプレッドを下回るなら、それは市場についての事実ではあっても、売買にはならない。

本数は USDJPY 36,534 本・EURUSD 36,554 本・GBPUSD 36,535 本・XAUUSD 34,892 本である。

3. 標準の一目で測る

計算 3.1 雲の上下を信号にする(h = 26)

銘柄 期間 件数 D(全体の平均) Dd(日次平均) 日次 t 件/日 spr
USDJPY 選択 16,083 1.1318 0.8190 0.69 21.0 0.30
USDJPY 評価 15,417 −0.2312 −1.7445 −0.70 19.0 0.60
EURUSD 選択 16,079 2.6359 0.8425 0.73 21.0 0.30
EURUSD 評価 15,223 −1.3477 −1.0494 −0.77 19.0 0.30
GBPUSD 選択 16,059 2.4824 −0.7000 −0.37 21.0 0.90
GBPUSD 評価 15,189 −0.9534 −2.0512 −1.13 19.0 0.90
XAUUSD 選択 14,784 6.3214 3.7842 0.82 20.0 3.44
XAUUSD 評価 14,835 −2.0319 −9.4315 −1.78 20.0 3.57

観察 3.2:選択期間は四銘柄すべて正、評価期間は四銘柄すべて負である。 四つとも符号が反転している。

観察 3.3:四つが揃って反転するのは、四つに共通する何かが変わったということである。本稿はそれが何かを特定していない。 雲の上下は順張りの信号なので、期間ごとの値動きの性質に強く依存する、という読みは立つ。だが測っていないものを、測ったと書かない。

観察 3.4:日次クラスタの t は、八通りすべてで絶対値が 1.78 を超えない。どちらの符号も、雑音と区別できる水準ではない。

観察 3.5:評価期間の D の幅は −2.0319 から −0.2312 で、同じ期間のスプレッドは 0.3000 から 3.5700 である。絶対値がスプレッドを上回ったのは 4 銘柄中 2 銘柄にすぎず、しかもその二つは符号が負である(=信号の逆に賭けた場合の話になる)。

観察 3.6:表には二つの平均が並んでいる。D は全体の平均、Dd は日ごとに平均してからの平均である。一日あたり 19.0 から 21.0 件あるので、件数の多い日はそれだけ全体の平均を強く引く。GBPUSD の選択期間では 2.4824 と −0.7000 で、符号が食い違う。どちらか一方だけを書いてはいけない。

4. ずらす本数を変える。これが分離子である

雲をずらす本数 k を 0・13・26・52・104 と変え、他はすべて同じにして測る。

計算 4.1 k と方向の情報

銘柄 期間 k=0 k=13 k=26 k=52 k=104 最良の k 幅
USDJPY 選択 1.3322 0.9998 1.1318 0.7595 −2.4291 0 3.7613
USDJPY 評価 1.0896 −0.0812 −0.2312 −0.1654 4.7075 104 4.9388
EURUSD 選択 1.8675 2.2486 2.6359 2.4418 −0.5961 26 3.2320
EURUSD 評価 −0.9692 −1.0752 −1.3477 −0.7144 −0.8217 52 0.6333
GBPUSD 選択 2.8444 3.0223 2.4824 1.8827 0.5668 13 2.4555
GBPUSD 評価 −1.3644 −0.6493 −0.9534 0.2530 0.0106 52 1.6175
XAUUSD 選択 6.5993 7.1570 6.3214 4.5092 −8.9438 13 16.1009
XAUUSD 評価 0.2981 −0.1508 −2.0319 4.1274 11.7696 104 13.8015

観察 4.2:標準の 26 が最良だったのは 8 通りのうち 1 通りである。 五通りから無作為に選べば 1.6 通りになるので、実測はそれより少ない。

観察 4.3:最良の k は、同じ銘柄でも選択期間と評価期間で一致しない。 USDJPY は 0 と 104、EURUSD は 26 と 52、GBPUSD は 13 と 52、XAUUSD は 13 と 104 である。四銘柄すべてで一致しない。

観察 4.4:k を動かしたときの D の幅は、中央 3.4966 pips、最大 16.1009 pips である。同じ期間のスプレッドの中央は 0.7500 pips なので、幅はコストの数倍ある。つまり「ずらす本数を選ぶ」という一手だけで、コストの数倍の見かけの差が作れる。

観察 4.5:これは情報ではなく、選ぶ余地である。 幅が大きいのに最良の位置が期間で入れ替わるなら、その幅は雑音を拾える広さを示しているだけである。

図1 標準の 26 は、特別な位置ではない

図1:左が選択期間、右が評価期間。縦軸は方向の情報、横軸はずらす本数。破線が標準の 26 である。左右で曲線の形が逆になる。選択期間で下がっていく右端が、評価期間では上がっていく。

5. 三役好転を、条件ごとに足していく

「三役好転」は、価格が雲の上にあり、転換線が基準線より上にあり、遅行スパンが二十六本前の価格より上にある状態を指す。条件を一つずつ足して、件数と方向の情報がどう動くかを見る。

計算 5.1 条件を重ねる(評価期間・h = 26)

銘柄 条件 件数 D(全体) Dd(日次) 日次 t 件/日 spr
USDJPY ① 雲の上だけ 9,810 4.9429 −6.3441 −1.70 15.0 0.60
USDJPY ② + 転換 > 基準 7,766 4.3843 −6.3394 −1.63 12.0 0.60
USDJPY ③ + 遅行も上 7,361 3.8856 −6.3396 −1.62 12.0 0.60
EURUSD ① 雲の上だけ 7,267 −3.5754 −8.2240 −3.87 12.0 0.30
EURUSD ② + 転換 > 基準 5,546 −3.8626 −7.4324 −3.33 10.0 0.30
EURUSD ③ + 遅行も上 5,318 −3.9104 −7.6880 −3.37 10.0 0.30
GBPUSD ① 雲の上だけ 7,471 −2.7575 −10.9872 −3.95 12.0 0.90
GBPUSD ② + 転換 > 基準 5,729 −1.8482 −10.6912 −3.71 10.0 0.90
GBPUSD ③ + 遅行も上 5,453 −2.3880 −11.1307 −3.82 10.0 0.90
XAUUSD ① 雲の上だけ 7,922 8.4604 −23.7451 −2.94 14.0 3.58
XAUUSD ② + 転換 > 基準 6,195 12.2607 −20.3698 −2.37 11.0 3.60
XAUUSD ③ + 遅行も上 5,941 10.3435 −21.4042 −2.48 11.0 3.60

観察 5.2:三つ重ねると件数は 0.741 倍に減る(最小 0.730・最大 0.750)。四銘柄でほぼ同じ割合である。

観察 5.3:そのとき方向の情報は +0.0173 pips しか動かない(最小 −1.0574・最大 +1.8830)。符号すら揃わない。

観察 5.4:つまり条件を重ねる操作は、件数を四分の三に減らしているだけである。 これは論文422 が示した形と同じである。規則の核心と名指された条件を外しても、成績が動かない。

観察 5.5:この節の D は買いだけを見ているので、第3節の D(買いと売りの差)とは別の量である。同じ記号で二つの量を書かないよう、ここでは買いのみと明記する。

観察 5.6:ここで食い違いが大きい。USDJPY は全体の平均が 4.9429 なのに日次平均は −6.3441 で、XAUUSD は 8.4604 に対し −23.7451 である。本稿の 20 セルのうち 7 セルで符号が食い違った。件数の多い日が、その期間の平均を作っている。 どちらが正しいという話ではない。二つは別の量であり、両方を書く以外に正しい書き方が無い。

図2 三役好転は、件数を減らしているだけである

図2:縦軸は対数の件数。条件を重ねるにつれて四銘柄とも同じ傾きで減っていく。

6. 遅行スパンは、何と同じ式か

遅行スパンは終値を二十六本後ろへずらして描いた線である。「遅行スパンが二十六本前の価格より上」という条件は、書き換えると「今の終値が二十六本前の終値より上」になる。

計算 6.1 二つの条件が一致する件数

銘柄 遅行が上の数 26 本前より上の数 食い違い
USDJPY 19,874 19,874 0
EURUSD 18,060 18,060 0
GBPUSD 18,397 18,397 0
XAUUSD 18,689 18,689 0

観察 6.2:四銘柄すべてで食い違いが 0 件である。 二つは同じ式であり、たまたま近い値ではない。

観察 6.3:だから遅行スパンは、新しい量を持ち込んでいない。 「二十六本前と比べる」という操作を、線として描いているだけである。ただしこれは定義からの帰結であって、発見ではない。本稿が加えたのは、それを件数で確かめたことだけである。

7. 向きを持たない量と、基準線

計算 7.1 雲の厚みで五分位に分ける(評価期間)

銘柄 Q1(薄) Q2 Q3 Q4 Q5(厚) 単調か
USDJPY 4.1615 0.0870 −0.6829 4.0035 −8.7054 単調でない
EURUSD −1.7503 −4.0275 −3.4112 −3.2675 5.7005 単調でない
GBPUSD −4.7125 −1.4113 1.3616 0.5442 −0.5608 単調でない
XAUUSD 3.3120 −5.6702 5.1975 −4.3223 −8.6557 単調でない

観察 7.2:雲の厚みは、上へも下へも同じように大きくなる向きを持たない量である。向きを持たない量で分けても、方向の情報は原理的に並ばない。四銘柄すべてで単調にならなかったのは、その予想と整合する。

計算 7.3 基準線、足の中まで合成乱数で作った系列

実データと同じ時刻・同じ本数で、足の中の動きまで独立な正規増分で作った系列を 20 本用意し、同じ測定をする(種は 0 から 19 に固定)。

銘柄 実測 D 乱数 D の中央 乱数の最小 乱数の最大 幅の中か
USDJPY −0.2312 −2.0411 −6.4987 3.7271 はい
EURUSD −1.3477 −1.4199 −4.4568 2.5373 はい
GBPUSD −0.9534 −2.0182 −6.4397 3.6635 はい
XAUUSD −2.0319 −5.7730 −13.7317 7.6514 はい

観察 7.4:四銘柄すべてで、実測は乱数 20 系列の幅の中にある。 相場の一目均衡表と、トレンドもニュースも参加者も無い系列の一目均衡表を、この測り方で区別できていない。

観察 7.5:「区別できない」は「同じである」ではない。20 系列の幅は広く(USDJPY で −6.4987 から 3.7271)、検出力が低いことも同時に意味している。本稿が言えるのは、この標本と,この測り方では分けられなかった、までである。

計算 7.6 先までの長さ h を変える(評価期間)

銘柄 h=1 h=6 h=26 h=78
USDJPY 0.1416 0.3214 −0.2312 8.4824
USDJPY(t) −0.67 −0.55 −0.70 0.60
EURUSD −0.1818 −0.8360 −1.3477 −3.8018
EURUSD(t) −3.02 −2.46 −0.77 −1.29
GBPUSD −0.0978 −0.6094 −0.9534 2.5410
GBPUSD(t) −2.10 −1.81 −1.13 0.99
XAUUSD 0.1732 1.0432 −2.0319 12.8118
XAUUSD(t) −1.57 −1.20 −1.78 0.93

観察 7.7:h を 1 から 78 まで変えて符号がそろったのは 4 銘柄のうち 1 銘柄だけである。h の取り方で符号が変わるなら、それは方向の情報ではなく窓の偶然である。

観察 7.8:日次クラスタの絶対値が 2 を超えたセルは 16 のうち 3 である。しかもその三つはすべて負で、h が短い側(1 と 6)に寄っている。短い側で負に出るのは、スプレッドの内側で測っていることと整合する。

8. 時間帯で分ける

雲の上下に方向の情報が無いという結果に対して、いちばん先に来る問いは「時間帯で分けたのか」である。東京・ロンドン・ニューヨークで値動きの性質は違うので、どこか一つの時間帯にだけ情報がある、ということはありうる。

設計:協定世界時で重ならない五区分に分ける。東京 0–7 時、ロンドン 7–12 時、重複 12–16 時、ニューヨーク後半 16–21 時、夜間 21–24 時である。

観察 8.1:区分を重ねてはいけない。「ロンドン 7–16 時」と「重複 12–16 時」のように重なる区分を並べると、隣と中身が同じ場所ができ、どこかが良く見えるようになる。排他にすれば、その分だけ余地が減る。

計算 8.2 五区分それぞれの方向の情報(評価期間・h = 26)

銘柄 東京 0–7 ロンドン 7–12 重複 12–16 NY後半 16–21 夜間 21–24
USDJPY 1.21(t 0.02) −0.98(t −0.78) −1.58(t −0.20) −1.46(t −0.95) 1.36(t 0.02)
EURUSD −0.44(t −0.58) −2.88(t −1.53) −1.44(t −1.45) −1.41(t −1.06) −0.77(t −0.05)
GBPUSD −0.74(t −0.52) −2.03(t −1.23) −1.47(t −1.16) −0.96(t −0.76) 1.12(t 0.06)
XAUUSD 0.59(t −0.53) −2.10(t −0.48) −0.91(t −1.06) −4.96(t −0.79) −6.05(t −0.86)

観察 8.3:日次クラスタの t の絶対値が 2 以上になったセルは、20 のうち 0 である。五区分 × 四銘柄を試しているので、偶然でも およそ 0.9 セルは出るはずである。実測はそれを下回る。

観察 8.4:ここで見るのは個々のセルではない。五つ試して一つが有意に見えるのは当たり前だからである。見るのは、有意になった数が偶然より多いかどうかである。

観察 8.5:値の大きさを見ると、ロンドン 7–12 時が四銘柄すべてで負である(−0.98・−2.88・−2.03・−2.10)。ただし t はいずれも 1.53 を超えない。符号が揃っていることと、雑音と区別できることは別である。

9. 限界

  1. 固定の先までのリターンで測っている。 利確と損切りで切る出口では測っていない。足の中でどちらに先に触れたかは、高値と安値からは決まらないからである。バリアで測る版は別の問いであり、本稿はそれを扱っていない。
  2. 格子を一つしか使っていない。 1 時間足に固定してある。日足や 5 分足で同じ形が出るかは測っていない。二十六という数は足の取り方に対して定義されているので、格子を変えれば別の量になる。
  3. 雲の上下という一つの読み方しか見ていない。 雲のねじれ、雲への接近、基準線での押し目といった読み方は扱っていない。
  4. 選択期間と評価期間が各三年である。 符号が四銘柄そろって反転したことは、期間の取り方に依存しうる。二つの期間しか見ていない。
  5. 合成乱数は独立な正規増分である。 実際の値動きが持つ裾の重さやボラティリティの群れは入っていない。基準線としては最も単純なものであり、検出力は高くない。
  6. 四銘柄・六年である。 他の市場、他の期間について述べるものではない。
  7. 指標全体を評価していない。 測ったのは「二十六本ずらす」という規約の効果と、いくつかの読み方だけである。

結び

一目均衡表の雲は、ローソク足の先に描かれる。だが値は、その時点までの高値と安値だけから決まっている。先にあるのは絵であって、情報ではない。

ずらす本数を 0 から 104 まで動かすと、方向の情報は中央 3.4966 pips の幅で動く。コストの数倍である。だが最良の位置は四銘柄すべてで選択期間と評価期間で一致せず、標準の 26 が最良だったのは 8 通りのうち 1 通りだった。幅が広いことは、情報があることではない。選ぶ余地があることである。

分けるものは一つ、ずらしたことで、計算に入る材料が増えたかどうか、である。 増えていない。二十六本先へ描いても、使っている高値と安値は同じである。

そして本稿が測れたのは、固定の先までのリターンで見た方向の情報だけである。この指標を使う人が実際に見ている形(雲のねじれ、接近、押し目)については、ここでは何も答えていない。

データと再現

データ 為替は Dukascopy 由来のティック(2019 年以降はミリ秒・bid・ask まで一致することを確認済み)。金は Dukascopy
期間 2019–2024(六年)。選択 2019–2021 / 評価 2022–2024
銘柄 USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD
足 1 時間足・中値・完成足の終値のみ。ティックの無い足は作らない
検算 検算/F002.py(--zu で図も書き出す)。本文の数字はすべて 検算/F002_output.txt から取っている
図 図/F002_zu1・図/F002_zu2(png・svg・英語版)
乱数の種 0〜19 に固定。再実行しても同じ値が出る

参考文献

  • 山岸勇輝 (2026). 閾値は格子に属する [論文264]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22169720
  • 山岸勇輝 (2026). 規則の核心と名指された条件を外しても、成績が動かない [論文422]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22700081
  • 山岸勇輝 (2026). 表は当たっているのに、売買は負ける [論文423]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22700114
  • 山岸勇輝 (2026). 移動平均のクロスが見つける「周期」は、二本の期間の比が作っている [F001]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22880428

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「一目均衡表の雲は、二十六本先へ描いた過去である」[F002]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22880552

YOI F002FX と金融ビットコインに記録済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS

住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F002・DOI 10.5281/zenodo.22880552・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 一目均衡表の雲は、二十六本先へ描いた過去である [F002]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F002 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22880552

Yamagishi, Y. (2026). The Ichimoku Cloud Is a Past Drawn Twenty-Six Bars Ahead [F002]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F002; DOI: 10.5281/zenodo.22880552

@misc{yamagishi2026yoiF002,
  author = {Yamagishi, Yuuki},
  title = {The Ichimoku Cloud Is a Past Drawn Twenty-Six Bars Ahead},
  year = {2026},
  howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F002},
  doi = {10.5281/zenodo.22880552},
  note = {Preprint}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
35ee33c87697749c85f10c7c3df7f6cc667a37386adffe0277c1b632a981441d yamagishi_F002__20260922_jp.pdf
9f83a751e39d2ca905dfe1e76e3c90febb16158453c7b431adc30fb8b66fab35 yamagishi_F002__20260922_en.pdf

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