【論文222】太陽は、緑にも橙にも赤外にも輝いている

要旨

論文214 では「明るさ」が四つの別の量であった。本稿が扱うのは一つの量であり、それでもピークの位置が一つに決まらない。新しい数学定理も新しい物理法則も主張しない。

第一に、方程式が三つある。$(x-5)e^x+5=0$ の根は $4.965114231744276$、$(x-4)e^x+4=0$ は $3.920690394872886$、$(x-3)e^x+3=0$ は $2.821439372122079$、$5,4,3$ は三つの密度に立つ $x$ の冪である(第2節)。

第二に、これが本稿の芯である。太陽($5772\,\mathrm{K}$)のスペクトルは、波長あたりで見れば $\mathbf{502.039\,\mathrm{nm}}$(緑)、対数あたりで見れば $\mathbf{635.777\,\mathrm{nm}}$(橙)、振動数あたりで見れば $\mathbf{883.479\,\mathrm{nm}}$(赤外)にピークを持つ、三つとも同じ一つのスペクトルである(第3節)。

第三に、比は温度に依らない。振動数と波長の比は $1.759780586$、対数と波長の比は $1.266387736$ であり、太陽でも電球でも人体でも宇宙背景放射でも同じであった(第3節)。

第四に、何が不変かも測れる。$400$ から $700\,\mathrm{nm}$ に入る仕事率の割合は、波長で積分しても振動数で積分しても $\mathbf{0.36638317138174}$ で、差は $0$であった(第6節)。

第五に、最大が動く理由も数で出る。変数を換えると掛かる因子 $\lambda^2/c$ が、この範囲で $5.34\times10^{-22}$ から $4.80\times10^{-21}$ へ九倍に増え、最大を引きずっていく(第7節)。

射程(何を示さないか)

新しい数学定理も新しい物理法則も主張しない。プランクの法則、ウィーンの変位則、シュテファン=ボルツマンの法則、そして「ウィーンのピークはどこか」という問いは、いずれも標準的である。プランクの法則を導かない。本稿は与えられた式を測るだけである。実在の太陽を測定しない。$5772\,\mathrm{K}$ の理想黒体として扱い、大気も吸収線も入れない。視覚の応答を扱わない。「緑に見える」ことの説明はしない。どの変数が「正しい」かを判定しない。書くのは選ぶと何が変わるかだけである。論文214 との関係:214 では「明るさ」が四つの別の量であった。本稿は一つの量についてであり、それでもピークが三つになる。別根はもっと手前にある。論文220 との関係:220 では検査を通ったことが検査についての報せであった。ここでは、ピークの位置が変数についての報せである。加えたのは三つの根を十六桁で出したこと、四つの温度で三つのピークを並べて比が温度に依らないことを見たこと、方程式ではなく曲線そのものを最大化して十桁一致を得たこと、二つのウィーン定数とシュテファン=ボルツマン定数を出して表値と突き合わせたこと、固定した帯の割合が変数に依らないことを測ったこと、ヤコビ因子が九倍動くことを表にしたことである。

1. 記法と位置づけ

黒体の放射は密度である。「波長あたり」の密度 $B_\lambda$ と「振動数あたり」の密度 $B_\nu$ は同じスペクトルの二つの書き方であり、$B_\lambda\,d\lambda=B_\nu\,d\nu$ で結ばれる。第三の書き方として「対数あたり」($\lambda B_\lambda$)も取る。$x=hc/(\lambda kT)$ と置く。

位置づけ:論文214 では「明るさ」が四つの別の量であり、逆二乗に従うのは一つだけであった。本稿はさらに手前で、一つの量についてさえ位置が定まらないことを見る。論文221 では「固有値」がどの行列について言うかで二つに割れた。ここでは「ピーク」がどの変数で数えるかで三つに割れる。

2. 三つの方程式、三つの根

検算 2.1:三つの密度は $x$ の冪が違うので、最大の条件も違う。

何あたりの密度か 最大の条件 根
波長あたり $(x-5)e^x+5=0$ $4.965114231744276$
対数あたり $(x-4)e^x+4=0$ $3.920690394872886$
振動数あたり $(x-3)e^x+3=0$ $2.821439372122079$

観察 2.2 $5,4,3$ は、それぞれの密度に立っている $x$ の冪である。式が違うのは分母の $\lambda$ が五乗か、四乗か、三乗かという一点だけであり、それが根を丸ごと動かす。

3. 芯:同じスペクトルが、三か所でピークを持つ

検算 3.1:

物体 $T\,(\mathrm{K})$ 波長あたり 対数あたり 振動数あたり
太陽 $5772$ $\mathbf{502.039\,\mathrm{nm}}$ $\mathbf{635.777\,\mathrm{nm}}$ $\mathbf{883.479\,\mathrm{nm}}$
白熱電球 $2800$ $1034.92\,\mathrm{nm}$ $1310.61\,\mathrm{nm}$ $1821.23\,\mathrm{nm}$
人 $310$ $9347.65\,\mathrm{nm}$ $11837.8\,\mathrm{nm}$ $16449.8\,\mathrm{nm}$
宇宙背景放射 $2.725$ $1.0634\,\mathrm{mm}$ $1.34668\,\mathrm{mm}$ $1.87136\,\mathrm{mm}$

比は、振動数 $\div$ 波長 が $1.759780586$、対数 $\div$ 波長 が $1.266387736$。

観察 3.2 太陽のスペクトルは、緑にも橙にも赤外にもピークを持つ。三つとも同じ一つのスペクトルについての、正しい答である。「太陽のピークは緑」と「太陽のピークは近赤外」は、どちらも教科書に書かれている。

観察 3.3 比は温度にまったく依らない。$5772\,\mathrm{K}$ でも $2.725\,\mathrm{K}$ でも、三つのピークの並び方は同じである。ずれは物体の性質ではなく、書き方の性質だからである。

4. 方程式ではなく、曲線そのものを最大化して確かめる

検算 4.1:$T=5772\,\mathrm{K}$ のプランク曲線を、三分探索で直に最大化する。

最大化したもの 数値で得た位置 方程式から出した位置
波長あたりの密度 $502.0394933\,\mathrm{nm}$ $502.0394933\,\mathrm{nm}$
対数あたりの密度 $635.7766571\,\mathrm{nm}$ $635.7766571\,\mathrm{nm}$
振動数あたりの密度 $883.4793537\,\mathrm{nm}$ $883.4793537\,\mathrm{nm}$

観察 4.2 十桁まで一致した。三つの位置は式の変形の産物ではなく、実際の曲線の本当の最大である。

5. 出てくる定数

検算 5.1:

定数 本稿の値 表の値
ウィーン(波長) $2.89777195519\times10^{-3}\,\mathrm{m\,K}$ $2.897771955\times10^{-3}$
ウィーン(振動数) $5.87892575765\times10^{10}\,\mathrm{Hz/K}$ $5.878925757\times10^{10}$
シュテファン=ボルツマン $5.67037441918\times10^{-8}$ $5.670374419\times10^{-8}$

曲線を全域で積分すると $62938592.4708\,\mathrm{W/m^2}$、$\sigma T^4$ は $62938592.4703$、比は $1.0000000000074$ であった。

観察 5.2 ウィーンの定数が二つあることに注意、$2.898\times10^{-3}$ と $5.879\times10^{10}$ は互いに変換できない。一方、総量 $\sigma T^4$ は一つであり、どの変数で積分しても同じ数である。

6. 何が不変か:あらかじめ決めた帯の中のエネルギー

検算 6.1:$400$ から $700\,\mathrm{nm}$ に入る仕事率の割合を、二通りに計算する。

どう積分したか 割合
波長で積分 $0.36638317138174$
振動数で積分 $0.36638317138174$
差 $\mathbf{0}$

観察 6.2 全桁一致する。変数を換えて動くのは最大の位置であり、動かないのは、あらかじめ決めた帯に入るエネルギーである。前者は密度の値を比べており、後者は積分である。積分は変数変換で不変であり、密度の値は不変でない。

7. なぜ最大が動くのか

密度には「何あたり」が付いている。波長から振動数へ移ると $|d\lambda/d\nu|=\lambda^2/c$ が掛かり、この因子自身が急峻なので、最大を引きずる。

検算 7.1:

波長 波長あたりの密度 $\times\ \lambda^2/c$ $=$ 振動数あたりの密度
$400\,\mathrm{nm}$ $2.2913188\times10^{13}$ $5.3370255\times10^{-22}$ $1.2228827\times10^{-8}$
$502\,\mathrm{nm}$ $\mathbf{2.6239591\times10^{13}}$ $8.4059486\times10^{-22}$ $2.2056865\times10^{-8}$
$636\,\mathrm{nm}$ $2.3185429\times10^{13}$ $1.3492534\times10^{-21}$ $3.128302\times10^{-8}$
$883\,\mathrm{nm}$ $1.4019471\times10^{13}$ $2.6007626\times10^{-21}$ $\mathbf{3.6461316\times10^{-8}}$
$1200\,\mathrm{nm}$ $6.8551652\times10^{12}$ $4.803323\times10^{-21}$ $3.2927573\times10^{-8}$

観察 7.2 左の欄は $502$ で、右の欄は $883$ で最大になる。その差を作っているのは真ん中の欄だけで、それは範囲内で $5.34\times10^{-22}$ から $4.80\times10^{-21}$ へ、九倍に増える。どの数も間違っていない。二つの別の密度を、一つの曲線であるかのように並べたのである。

8. 分離子と柵

観察 8.1 (分離子) 「ピーク」を分けているのは何を単位として数えるかである。波長あたりか、対数あたりか、振動数あたりか。そして単調な変数変換のどれを取っても別の答が出る:三つは代表にすぎない。

観察 8.2 (柵) 「黒体のピークはここにある」という言い方を囲っている柵は、どの密度について言うかを決めていることである。柵の外では、この文は偽ですらなく、空である。220 で「独立を確かめた」が空であったのと同じ形である。

観察 8.3 そして不変な量はちゃんとある:総仕事率 $\sigma T^4$ と、固定した帯に入る割合である。どちらも積分であり、密度の値そのものではない。「どこが一番強いか」は変数の性質、「どれだけ入っているか」はスペクトルの性質である。

観察 8.4 論文214 では「明るさ」が四つの別の量であった。本稿では量は一つであり、それでもピークが三つになる。別根は量の名前より手前、「何あたり」という助詞のところにあった。

9. 点呼と結び

本稿が測ったことを並べる。

  1. 三つの根(検算2.1):$4.9651$、$3.9207$、$2.8214$。
  2. 太陽は三か所でピークを持つ(検算3.1):$502$、$636$、$883\,\mathrm{nm}$。
  3. 比は温度に依らない(検算3.1):$1.759780586$ と $1.266387736$。
  4. 曲線を直に最大化しても同じ(検算4.1):十桁一致。
  5. 定数は表値と一致(検算5.1):$\sigma$ の積分比 $1.0000000000074$。
  6. 帯の割合は不変(検算6.1):$0.36638317138174$、差 $0$。
  7. ヤコビ因子が九倍(検算7.1)。

結び:「太陽の放射は緑で最も強い」と書かれた本と、「近赤外で最も強い」と書かれた本がある。どちらも正しい。前者は波長あたりで数え、後者は振動数あたりで数えているだけである。同じスペクトルであり、同じ温度であり、同じ物理である。動いているのは太陽ではなく、数える単位のほうである。そして動かない量もちゃんとある:総量と、あらかじめ決めた帯に入る割合。前者は密度の値であり、後者は積分である。変数を換えて壊れるのは値のほうで、積分は壊れない。「どこが一番強いか」という問いは、答える前に、何あたりで数えるかを言わねばならない。

参考文献

  1. Stefan, J. (1879). Über die Beziehung zwischen der Wärmestrahlung und der Temperatur. Sitzungsberichte der Kaiserlichen Akademie der Wissenschaften in Wien, 79.
  2. Boltzmann, L. (1884). Ableitung des Stefanschen Gesetzes. Annalen der Physik, 258.
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  4. Planck, M. (1901). Über das Gesetz der Energieverteilung im Normalspectrum. Annalen der Physik, 4.
  5. Rybicki, G. B., Lightman, A. P. (1979). Radiative Processes in Astrophysics. New York: Wiley.
  6. Soffer, B. H., Lynch, D. K. (1999). Some paradoxes, errors, and resolutions concerning the spectral optimization of human vision. American Journal of Physics, 67.
  7. Heald, M. A. (2003). Where is the Wien peak? American Journal of Physics, 71.
  8. 山岸勇輝 (2026). パルスの山は、入る前に出ることがある [論文210]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22111747
  9. 山岸勇輝 (2026). レンズは明るくできるが、明るさは増やせない [論文214]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22119392
  10. 山岸勇輝 (2026). 縞は消えて、また戻ってくる [論文218]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22119760
  11. 山岸勇輝 (2026). 平らな板が、焦点を結ぶ [論文219]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22119788
  12. 山岸勇輝 (2026). 「独立」は四つあり、たがいに何も言わない [論文220]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22119838
  13. 山岸勇輝 (2026). 最後の桁を一つ変えると、固有値が 0.16 動く [論文221]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22120012

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「太陽は、緑にも橙にも赤外にも輝いている」[論文222]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22120199

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 太陽は、緑にも橙にも赤外にも輝いている [論文222]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/222 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22120199

Yamagishi, Y. (2026). The Sun Peaks in the Green, in the Orange and in the Infrared [Paper 222]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/222; DOI: 10.5281/zenodo.22120199

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