要旨
湿度が上がるのは、水が増えるからだと思える。本稿が示すのは水の量を一切変えずに湿度を $100$ パーセントにできることである。持ち上げるだけでよい。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、気温 $25$ 度・露点 $15$ 度の空気の相対湿度は $\mathbf{53.80}$ パーセントである(第2節)。
第二に、持ち上げると気温は $9.8$ K/km、露点は $1.8$ K/km で下がり、差が $8.0$ K/km で縮む(第1節)。
第三に、これが本稿の芯である。$1250$ m で気温と露点がちょうど同じ $\mathbf{12.75}$ 度になり、相対湿度が $100.000000$ パーセントになる(第2節)。
第四に、そのあいだ混合比は $1$ パーセント以内で保たれている。水は増えていない(第2節)。
第五に、雲底の高さに上昇気流の強さは入っていない。$125$ m/K の一本で決まる(第3節)。
第六に、分離子は「水が増えたか、容れ物が縮んだか」である(第5節)。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。持ち上げ凝結高度、乾燥断熱減率、マグナス式、エスピーの経験則はすべて気象学で既知である。天気を予報しない。雲の発生や降水は主題ではない。一つの空気塊の熱力学だけを見る。雲物理を作らない。凝結核・過飽和・雲粒の成長には立ち入らない。飽和に達する高度だけを見る。断熱を仮定している。周囲の空気との混合(エントレインメント)は無視する。実際の雲底はこれより高くなりうる。露点の減率を定数と置いている。$1.8$ K/km は代表値であり、厳密には気圧に依る。雲の形を扱わない。雲頂・雲の種類・対流の構造は主題ではない。既刊との関係:論文392 は沸点が物質と圧力の対の性質であることを示した。ここでは飽和が水の量と温度の対で決まる。論文386 は溶解度が物質と溶媒と温度の組で決まることを示した。同じ形で、飽和も一つの量の性質ではない。論文379 は「二倍の温度」に三つの答があることを示した。ここでは「湿度」が二つを指している。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。絶対湿度と相対湿度は、その基準で別根である。加えたのは、四つの条件で相対湿度と雲底高度を数に出したこと、雲底で気温と露点がちょうど一致することを二本の直線から独立に確かめたこと、混合比が保たれることを確かめたこと、差だけが効いて絶対値が効かないことを示したこと、分離子を「水が増えたか、容れ物が縮んだか」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:飽和水蒸気圧をマグナス式で書く。
$$e_{s}(T)=6.112\exp\!\left(\frac{17.67\,T}{T+243.5}\right)\ \text{hPa},\qquad
\text{相対湿度}=\frac{e_{s}(T_{d})}{e_{s}(T)}$$
空気塊を持ち上げると、気温は乾燥断熱減率 $9.8$ K/km で、露点は約 $1.8$ K/km で下がる。
$$z_{\text{LCL}}=\frac{T-T_{d}}{9.8-1.8}\ \text{km}=125\,(T-T_{d})\ \text{m}$$
観察 1.1 相対湿度は分数である。分子が水の量、分母が容れ物の大きさ、どちらを動かしても上がる。
観察 1.2 持ち上げても分子は変わらない。混合比は保存される。変わるのは分母だけである。
観察 1.3 気温のほうが露点より速く下がる。$9.8$ 対 $1.8$、差が $8.0$ K/km で縮み、いつか出会う。
問い:湿度が $100$ パーセントになるのは、何が起きたときか。
2. $1250$ m で、気温と露点が $12.75$ 度で出会う
計算 2.1:地上の条件に対する相対湿度と雲底高度(本稿で計算)。
| 地上気温 [度] | 露点 [度] | 相対湿度 [%] | 雲底高度 [m] |
|---|---|---|---|
| $25$ | $20$ | $73.78$ | $625.0$ |
| $\mathbf{25}$ | $\mathbf{15}$ | $\mathbf{53.80}$ | $\mathbf{1250.0}$ |
| $25$ | $10$ | $38.74$ | $1875.0$ |
| $30$ | $15$ | $40.14$ | $\mathbf{1875.0}$ |
観察 2.2 これが本稿の芯である。相対湿度 $53.80$ パーセントの空気が、$1250$ m 上がるだけで $100$ パーセントになる。気温は $25-9.8\times1.25=12.75$ 度、露点は $15-1.8\times1.25=12.75$ 度で、独立に追った二本の直線がちょうど一致する。
観察 2.3 そこでの相対湿度は $100.000000$ パーセントである。$e_{s}(12.75)/e_{s}(12.75)$、定義から自動的にそうなるのではなく、二本の直線が交わった結果である。
観察 2.4 そのあいだ、混合比は $1$ パーセント以内で保たれている。水は一滴も足していない。増えたのは湿度であって、水ではない。
観察 2.5 最後の二行が同じ $1875.0$ m である。$25/10$ と $30/15$、相対湿度は $38.74$ と $40.14$ で違うのに、雲底は同じ。
観察 2.6 つまり雲底を決めているのは差だけである。$T-T_{d}$、相対湿度でも絶対湿度でもない。
3. 雲底の高さに、上昇気流の強さは入っていない
観察 3.1 式 $z=125(T-T_{d})$ に速度が現れない。地上の二つの温度だけ、ゆっくり上がっても速く上がっても、同じ高さで凝結する。
観察 3.2 だから雲の底が平らになる。水平方向に $T$ と $T_{d}$ がほぼ一様、上昇の強さがばらついても、凝結する高さは揃う。
観察 3.3 雲の底は物体の下面ではなく、一つの高度の面である。そこを通った空気だけが白くなる。「浮かんでいる」のではない。
観察 3.4 雲頂は平らにならない。上端は上昇の強さで決まる。下端だけが揃うのは、下端だけが速度に依らないからである。
観察 3.5 $125$ m/K は独立に知られた経験則である。エスピーの式、$1/(9.8-1.8)$ km/K から出た $125$ m/K と一致する。
観察 3.6 露点が高いほど雲底が低い。$625\to1250\to1875$ m、蒸し暑い日に雲が低いのは、この一本の式である。
4. 「湿度」という語が、二つを指している
観察 4.1 絶対湿度(混合比)は持ち上げても変わらない。保存量、空気塊についてまわる。
観察 4.2 相対湿度は持ち上げると変わる。$53.80$ から $100$ へ、温度に依存する量である。
観察 4.3 論文300 の基準で別根である。一方は水の量が、一方は水の量と温度の組が決める。同じ「湿度」という語が、根の違う二つを指している。
観察 4.4 論文392 と同じ形である。論文392 では沸点が物質と圧力の対の性質だった。ここでは相対湿度が水の量と温度の対の性質である。
観察 4.5 だから「今日は湿度 $80$ パーセント」は、水の量を言っていない。冬の $80$ パーセントより夏の $50$ パーセントのほうが水は多い。比べているのは同じものではない。
5. 分離子:水が増えたか、容れ物が縮んだか
観察 5.1 分離子、分子が増えたか、分母が減ったか。
| 起きたこと | 混合比 | 相対湿度 | 露点 |
|---|---|---|---|
| 水が蒸発して加わった | 増える | 上がる | 上がる |
| 持ち上げて冷えた | 不変 | 上がる | 下がる |
観察 5.2 右端の列が逆を向いている。同じ「湿度が上がった」でも、露点は上がるか下がるか、ここで区別がつく。
観察 5.3 相対湿度だけを見ていては判定できない。どちらでも上がる。必要なのは、露点をもう一つ測ることである。
観察 5.4 分離子は動かせる。周囲の乾いた空気が混ざれば混合比が下がり、雲底は計算より高くなる。断熱の仮定が破れる場所である。
観察 5.5 正直に言えば、$1250$ m も $12.75$ 度も、減率を定数と置いた模型の値である。露点の減率 $1.8$ K/km は気圧で少し動く。動かないのは、混合比が保たれることと、二本の直線が必ず交わることである。
観察 5.6 最後に一つ、「飽和した」は、水がいっぱいになったという意味ではない。同じ量の水が、容れ物が縮んだせいで溢れただけである。溢れるかどうかは、水の量だけでは決まらない。
6. 点呼と結び
- 相対湿度は分数(観察 1.1):分母を動かしても上がる。
- $25/15$ 度で $53.80$ パーセント(計算 2.1):飽和にはほど遠い。
- $1250$ m で $100$ パーセント(観察 2.2):持ち上げただけ。
- 気温も露点も $12.75$ 度(観察 2.2):独立な二本が一致。
- 混合比は $1$ パーセント以内で保たれる(観察 2.4):水は増えていない。
- $25/10$ と $30/15$ が同じ $1875$ m(観察 2.5):差だけが効く。
- 式に上昇速度が入っていない(観察 3.1):だから底が平ら。
- 雲頂は平らにならない(観察 3.4):上端は速度で決まる。
- $125$ m/K は既知の経験則と一致(観察 3.5):エスピーの式。
- 露点を測れば区別がつく(観察 5.2):相対湿度だけでは足りない。
結び:湿度が上がるのは水が増えるからだと思える。だが水の量を一切変えずに、$100$ パーセントにできる。相対湿度は $e_{s}(T_{d})/e_{s}(T)$ という分数で、分子が水の量、分母が容れ物の大きさである。持ち上げても分子(混合比)は保存され、変わるのは分母だけである。気温は $9.8$ K/km、露点は $1.8$ K/km で下がるので、差が $8.0$ K/km で縮み、いつか出会う。気温 $25$ 度・露点 $15$ 度の空気は相対湿度 $\mathbf{53.80}$ パーセントで、飽和にはほど遠い。ところが $1250$ m 上がるだけで $100$ パーセントになる。気温は $25-9.8\times1.25=\mathbf{12.75}$ 度、露点は $15-1.8\times1.25=\mathbf{12.75}$ 度、独立に追った二本の直線がちょうど一致する。そこでの相対湿度は $100.000000$ パーセントで、そのあいだ混合比は $1$ パーセント以内で保たれている。増えたのは湿度であって、水ではない。雲底を決めているのは差だけである。$25/10$ 度と $30/15$ 度は相対湿度が $38.74$ と $40.14$ で違うのに、雲底はどちらも $1875.0$ m で同じである。$z=125(T-T_{d})$ に相対湿度も絶対湿度も現れない。そして上昇気流の速度も現れない。ゆっくり上がっても速く上がっても、同じ高さで凝結する。だから雲の底が平らになる。水平方向に $T$ と $T_{d}$ がほぼ一様なので、上昇の強さがばらついても凝結する高さは揃う。雲の底は物体の下面ではなく、一つの高度の面であり、そこを通った空気だけが白くなる。「浮かんでいる」のではない。雲頂が平らにならないのは、上端が上昇の強さで決まるからで、下端だけが揃うのは下端だけが速度に依らないからである。$125$ m/K はエスピーの経験則として独立に知られた値と一致する。分けているものは一つ、分子が増えたか、分母が減ったか。水が蒸発して加われば混合比も露点も上がるが、持ち上げて冷えたなら混合比は変わらず露点は下がる。相対湿度はどちらでも上がるので、判定には露点をもう一つ測ることが要る。論文300 の基準で別根であり、絶対湿度は水の量が、相対湿度は水の量と温度の組が決める。論文392 で沸点が物質と圧力の対の性質だったのと同じ形である。だから「今日は湿度 $80$ パーセント」は水の量を言っておらず、冬の $80$ パーセントより夏の $50$ パーセントのほうが水は多い。正直に言えば、$1250$ m も $12.75$ 度も減率を定数と置いた模型の値であり、露点の減率 $1.8$ K/km は気圧で少し動く。動かないのは、混合比が保たれることと、二本の直線が必ず交わることである。最後に一つ、「飽和した」は、水がいっぱいになったという意味ではない。同じ量の水が、容れ物が縮んだせいで溢れただけである。溢れるかどうかは、水の量だけでは決まらない。
参考文献
- Espy, J. P. (1841). The Philosophy of Storms. Boston: Charles C. Little and James Brown.
- Bolton, D. (1980). The Computation of Equivalent Potential Temperature. Monthly Weather Review.
- Lawrence, M. G. (2005). The Relationship between Relative Humidity and the Dewpoint Temperature in Moist Air. Bulletin of the American Meteorological Society.
- Wallace, J. M., Hobbs, P. V. (2006). Atmospheric Science: An Introductory Survey (2nd ed.). Amsterdam: Academic Press.
- 山岸勇輝 (2026). 『第三百回の点呼、同根か別根かは判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
- 山岸勇輝 (2026). 『「二倍の温度」には三つの答があり、比が 2 になるのは一つだけである』[論文379]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22698802
- 山岸勇輝 (2026). 『溶解度は一つも動いていないのに、溶ける速さが 1000 倍になる』[論文386]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22699119
- 山岸勇輝 (2026). 『沸点は物質の性質ではない。物質と圧力の、対の性質である』[論文392]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22699237
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「水を一滴も足さずに、湿度が 53.80 パーセントから 100 パーセントになる」[論文399]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22699338
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 水を一滴も足さずに、湿度が 53.80 パーセントから 100 パーセントになる [論文399]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/399 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22699338
Yamagishi, Y. (2026). The Humidity Goes from 53.80 Per Cent to 100 Without a Drop of Water Being Added [Paper 399]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/399; DOI: 10.5281/zenodo.22699338
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