【論文957】層の境は度数の平方根の累積で等分すれば最適とほぼ同じで、本数で揃えるといちばん悪い

要旨

林を層に分けて標本を取るとき、層の境をどこに引くかで推定の誤差が変わる。本稿は、大きい木が少なく小さい木が多い片寄った材積の分布を三つの層に分け、層のばらつきに合わせて $30$ か所を配るときの平均の推定の分散を、値の幅で揃えた境・本数で揃えた境・度数の平方根の累積を等分する境・探した最適な境で比べる。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、度数の平方根の累積で等分した境は、探した最適とほとんど同じ誤差になる。推定の分散は最適の $\mathbf{1.002608}$ 倍で、単純無作為に対しては $0.141324$ 倍(最適は $0.140956$ 倍)だった(第2節)。

第二に、本数で揃えた境がいちばん悪い。三つの層に同じ本数が入るように境を引くと、推定の分散は最適の $\mathbf{1.680702}$ 倍で、値の幅で揃えた境の $1.454160$ 倍より大きかった(第2節)。

第三に、境の位置も最適に近い。度数の平方根の累積で等分した境は $103.181$・$267.212$、探した最適な境は $108.272$・$268.497$ で、本数で揃えた境は $63.779$・$127.050$ と小さい側に寄った(第2節)。

第四に、どの境でも層に分ける得は大きい。単純無作為の分散 $457.395297$ に対して、いちばん悪い本数で揃えた境でも $108.359509$($0.236906$ 倍)まで下がった(第2節)。

第五に、分離子は、境を値の幅で揃えるか、本数で揃えるか、その間で揃えるかである。片寄った分布では、本数で揃えると境は小さい側に寄り、値の幅で揃えると大きい側に寄った。度数の平方根で揃えると、その間の、探した最適に近い境になった(第3節)。

キーワード:層別抽出、層の境、ダレニウス=ホッジスの方法、ネイマン配分、推定の分散、片寄った分布。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。層別抽出とネイマン配分、層の境を度数の平方根の累積で等分する方法(ダレニウスとホッジス)、その方法が最適に近い境を与えることは、いずれも標本調査の理論で既知である。置いた分布である。材積は対数の平均 $4.5$・対数の標準偏差 $0.8$ の対数正規分布と置いた。どの林や樹種にも対応せず、他の片寄りの分布での順は主張しない。層を決める値と測る値を同じと置く。実際の調査では、材積を測る前に別の目安で層を分けるが、ここでは材積そのもので層を分けた。費用と二段の取り方を扱わない。層ごとに測る費用の違い、区画の中の抜き取り、層の数を三つ以外にすることは扱わない。既刊との関係:論文938 の射程注記は、層の決め方と費用を扱わず、層の境をどう引くか、層ごとに測る費用が違う場合、区画の中をさらに抜き取る二段の取り方は扱わないと書いた。本稿はそのうち層の境をどう引くかの席に座る(先客なし)。論文938 は、林を層に分けて標本を取ると層の間の違いが誤差から消え、ばらつく層に多く配るとさらに減ることを示した。ここでは、同じ配り方でも、境の引き方で誤差がさらにどれだけ変わるかを数える。加えたのは、四つの境の引き方で推定の分散を比べたこと、度数の平方根の累積の境が探した最適の $1.002608$ 倍に届くことを出したこと、片寄った分布では本数で揃えた境がいちばん悪いことを示したこと、最適な境を格子の外まで詰めて確かめたこと、分離子を「値の幅か、本数か、その間か」に置いたことである。

1. 記法と問い

分布:材積を対数正規分布(対数の平均 $4.5$・対数の標準偏差 $0.8$)と置く。平均は $123.965091$、標準偏差は $117.373463$ で、大きい木が少なく小さい木が多い。分布は等しい確率の $20000$ 点で表した。

推定の分散:境 $b_1<b_2$ で三つの層に分け、層の割合を $W_h$、層の中の標準偏差を $S_h$ として、ネイマン配分で $n=30$ か所を配るときの平均の推定の分散は次のとおりである。

$$V=\frac{\left(\sum_h W_hS_h\right)^2}{n}$$

境の引き方:①値の幅で揃える:$1$ パーセント点 $13.998$ から $99$ パーセント点 $578.870$ の間を三等分する。②本数で揃える:三つの層に同じ割合が入るように引く。③度数の平方根の累積:度数の平方根を値に沿って足し、その合計を三等分する点に引く(ダレニウスとホッジス)。④探した最適:分位点の $180$ 点の候補から二つを総当たりで選び、ネルダー=ミードの方法で格子の外まで詰める。

問い:片寄った分布で、層の境をどう引けば推定の誤差が小さくなるか。

2. 四つの境の引き方

計算 2.1:境とネイマン配分での推定の分散。

引き方 境 推定の分散 単純無作為に対する比 最適に対する比
値の幅で揃える $202.289$・$390.580$ $93.753723$ $0.204973$ $1.454160$
本数で揃える $63.779$・$127.050$ $108.359509$ $0.236906$ $\mathbf{1.680702}$
度数の平方根の累積 $103.181$・$267.212$ $64.640924$ $0.141324$ $\mathbf{1.002608}$
探した最適 $108.272$・$268.497$ $64.472760$ $0.140956$ $1.000000$

単純無作為($30$ か所)の分散は $457.395297$ だった。総当たりの最適 $64.474556$(境 $108.418$・$267.458$)は、ネルダー=ミードで $64.472760$ まで詰まった。

観察 2.2 度数の平方根の累積は最適にほとんど届き、本数で揃えるのがいちばん悪い。度数の平方根の累積で引いた境は、探した最適な境の近くに来て、分散は最適の $1.002608$ 倍だった。本数で揃えた境は小さい側に寄り、分散は最適の $1.680702$ 倍と、値の幅で揃えた $1.454160$ 倍より大きかった。それでも単純無作為の $0.236906$ 倍で、層に分ける得そのものは大きい。

3. 分離子

観察 3.1 分離子は、境を値の幅で揃えるか、本数で揃えるか、その間で揃えるかである。本数で揃えると、境は小さい木の多い側に寄った($63.779$・$127.050$):値の幅で揃えると、境は大きい側に寄った($202.289$・$390.580$)。度数の平方根の累積は、度数そのもの(本数)と度数を問わない値の幅の間をとり、その境は探した最適に近かった。

観察 3.2 言わないこと。他の片寄りの分布での順、層の数を三つ以外にしたとき、層を別の目安で決めるとき、層ごとの費用、二段の取り方、実在の林は扱わない。示したのは、置いた片寄った分布で、境の引き方によってネイマン配分の誤差が最適の $1.002608$ 倍から $1.680702$ 倍まで変わることである。

4. 点呼と結び

  1. ネイマン配分の分散と四つの引き方(第1節):値の幅・本数・度数の平方根・最適。
  2. 度数の平方根の累積で最適の $\mathbf{1.002608}$ 倍(計算 2.1):ほとんど届く。
  3. 本数で揃えると $\mathbf{1.680702}$ 倍(計算 2.1):いちばん悪い。
  4. 値の幅で揃えると $1.454160$ 倍(計算 2.1):その間。
  5. どれも単純無作為の $0.236906$ 倍以下(計算 2.1):層に分ける得は大きい。
  6. 値の幅か、本数か、その間か(観察 3.1):分離子・論文938 の射程注記。

結び:層の境は度数の平方根の累積で等分すれば最適とほぼ同じで、本数で揃えるといちばん悪い。片寄った材積の分布を三つの層に分けてネイマン配分で $30$ か所を配ると、度数の平方根の累積で引いた境の分散は探した最適の $1.002608$ 倍だった。本数で揃えた境は $1.680702$ 倍、値の幅で揃えた境は $1.454160$ 倍で、どれも単純無作為よりはずっと小さかった。分離子は、境を値の幅で揃えるか、本数で揃えるか、その間で揃えるかである。既刊との位置:論文938 が層の配り方で数えた誤差の減り方に、論文938 が扱わなかった境の引き方を加えた。正直に言えば、実際の調査で層をどう決めるべきかは言わない。置いた分布で、境の引き方が誤差をどれだけ変えるか、そこまでである。

参考文献

  1. Cochran, W. G. (1977). Sampling Techniques. Wiley.
  2. Dalenius, T., & Hodges, J. L. (1959). Minimum variance stratification. Journal of the American Statistical Association.
  3. 山岸勇輝 (2026). 『林を層に分けて標本を取ると層の間の違いが誤差から消え、ばらつく層に多く配るとさらに減る』[論文938]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/938

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「層の境は度数の平方根の累積で等分すれば最適とほぼ同じで、本数で揃えるといちばん悪い」[論文957]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/957

YOI 957第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 層の境は度数の平方根の累積で等分すれば最適とほぼ同じで、本数で揃えるといちばん悪い [論文957]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/957

Yamagishi, Y. (2026). Stratum Boundaries at Equal Steps of Cumulative Root Frequency Come Close to Optimal, While Equal Counts Do Worst [Paper 957]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/957

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  author = {Yamagishi, Yuuki},
  title = {Stratum Boundaries at Equal Steps of Cumulative Root Frequency Come Close to Optimal, While Equal Counts Do Worst},
  year = {2026},
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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