要旨
白い粉は白い、と思われている。本稿が示すのは、白さが粉の性質ではないことである。周りとの屈折率の差が作っており、差が消えれば白も消える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、酸化チタンも炭酸カルシウムも石英も、単体では同じように白い粉である(第2節)。
第二に、これが本稿の芯である。樹脂に混ぜると散乱は $\mathbf{1}$ 対 $\mathbf{0.006944}$ 対 $0.001736$ と、$\mathbf{144}$ 倍以上違う(第2節)。
第三に、差が同じ比で縮めば、散乱はその二乗で落ちる。逆算しても $\mathbf{0.006944444}$ と一致する(第2節)。
第四に、紙を水で濡らすと差は $1.70$ から $1.37$ へ縮み、散乱は $\mathbf{35.1}$ パーセント落ちる(第3節)。
第五に、屈折率がぴったり一致すれば、散乱はちょうど $\mathbf{0}$ になる(第3節)。
第六に、分離子は「粉の性質か、周りとの差か」である(第4節)。
キーワード:光散乱、屈折率差、隠蔽力、白色顔料、ミー散乱。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。光散乱、屈折率差による隠蔽力、透明化の現象はすべて既知である。散乱理論を導出しない。ミー散乱の厳密な計算は行わず、差の二乗に比例するという近似だけを使う。粒径が波長に近い領域では、この近似は粗い。最適な粒径を論じない。隠蔽力が粒径に依ることは既知だが、本稿は屈折率の差だけを動かす。顔料を推奨しない。どの材料を使うべきかは主題ではない。屈折率の値を実測として主張しない。$2.70$・$1.60$・$1.55$・$1.50$・$1.33$ は代表値であり、波長で動く。色を扱わない。吸収による色は主題ではない。散乱による白だけを扱う。既刊との関係:論文441 は最も反応しやすい金属が最も錆びないことを示した。そこでは材料名の中に別の量が隠れていた。ここでは材料単体では白さが決まらない。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。「粉が白い」と「混ぜて白くなる」は、その基準で別根である。論文424 は割ると分母の動きが分子の出来事になることを示した。ここでも、二つの量の差という組が結果を決める。論文440 は組にして初めて向きが決まることを示した。同じ形で、単体では性質が決まらない。加えたのは、三つの顔料で空気との差と樹脂との差を並べたこと、散乱の比を $144$ 倍以上と数に出したこと、差の二乗との一致を逆算で確かめたこと、濡らしたときの落ち方を $35.1$ パーセントと出したこと、一致した場合をちょうど $0$ として境目の反対側に置いたこと、分離子を「粉の性質か差か」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:屈折率 $n_p$ の粒子が、屈折率 $n_m$ の媒質の中にあるとき、散乱の強さはおよそ差の二乗に比例する。
$$I\propto(n_p-n_m)^2$$
空気を $1.00$、水を $1.33$、樹脂を $1.50$ とする。
観察 1.1 白い粉は白い、と思われている。手に取れば、どれも同じように白い。白さがその粉の性質に見える。
観察 1.2 だが式に入っているのは差である。$n_p-n_m$、粒子だけでは決まらない。
問い:周りを変えたら、白さはどれだけ変わるのか。
2. 同じ「白い粉」で、散乱が 144 倍違う
計算 2.1:三つの粉について、空気中と樹脂中での差を出す。
| 顔料 | 屈折率 | 空気との差 | 樹脂との差 |
|---|---|---|---|
| 酸化チタン | $2.70$ | $1.70$ | $\mathbf{1.20}$ |
| 炭酸カルシウム | $1.60$ | $0.60$ | $0.10$ |
| 石英 | $1.55$ | $0.55$ | $\mathbf{0.05}$ |
観察 2.2 空気中では、三つとも差が同じ桁である。$1.70$・$0.60$・$0.55$、だから粉のままでは、どれも白く見える。
観察 2.3 樹脂に混ぜると、差が桁で分かれる。$1.20$ 対 $0.10$ 対 $0.05$、炭酸カルシウムは酸化チタンの $\mathbf{0.0833}$、石英は $0.0417$ しかない。
計算 2.4:散乱の強さ(差の二乗)を、酸化チタンを $1$ として出す。
| 顔料 | 散乱の強さ |
|---|---|
| 酸化チタン | $1.000000$ |
| 炭酸カルシウム | $\mathbf{0.006944}$ |
| 石英 | $\mathbf{0.001736}$ |
観察 2.5 炭酸カルシウムは酸化チタンの $1$ パーセント未満である。$144$ 倍の差、同じ「白い粉」なのに、隠す力がこれだけ違う。
観察 2.6 この値は差の比の二乗と厳密に一致する。$0.0833^2=\mathbf{0.006944444}$、逆算になっており、計算が正しいことを示す。
3. 濡らすと、白が薄れる
計算 3.1:紙の中の隙間が空気から水に変わったときの差を出す。
| 状態 | 隙間の屈折率 | 差 |
|---|---|---|
| 乾いた紙 | $1.00$ | $1.70$ |
| 濡れた紙 | $1.33$ | $\mathbf{1.37}$ |
散乱は $\mathbf{0.6494}$ 倍、つまり $\mathbf{35.1}$ パーセント落ちる。
観察 3.2 紙は何も変わっていない。繊維も顔料もそのまま、変わったのは隙間に入っているものだけである。
観察 3.3 それで白さが三分の一以上落ちる。濡れた紙が透けるのは、そのためである。油をしみ込ませればもっと透ける。油は水より屈折率が高いからである。
観察 3.4 屈折率がぴったり一致すれば、散乱はちょうど $\mathbf{0}$ になる。差がゼロだからである。境目の反対側であり、そのとき粒子は光学的に存在しない。
観察 3.5 同じ理屈で、粉の山は白く、溶かすと透明になる。砂糖も塩も、溶けたのではなく、差が消えたのである。
4. 分離子
分離子:粉の性質か、周りとの差か。
観察 4.1 粉の性質なら、周りを変えても白いはずである。どこに置いても白い。そうはならない。
観察 4.2 差なら、周りを変えれば消える。実際に消える。濡らす、混ぜる、しみ込ませる。
観察 4.3 これは論文300 の基準で別根である。どちらも「白い」と呼ばれる。一方は物質の性質、一方は組み合わせの性質である。
観察 4.4 だから塗料の隠蔽力は、粉だけを見ても分からない。樹脂の屈折率と組にして初めて決まる。論文440 で金属が組にして初めて向きを決めたのと、同じ形である。
観察 4.5 そして差の二乗で効くので、差が半分になると散乱は四分の一になる。変化が増幅される。わずかな差の違いが、大きな見え方の違いになる。
観察 4.6 正直に言えば、散乱が差の二乗に比例するのは近似である。粒径が光の波長に近い領域では、この近似は粗い。動かないのは、差がゼロなら散乱もゼロだという点である。
観察 4.7 最後に一つ、隠蔽力は粒径にも依る。本稿は屈折率の差だけを動かした。粒径を最適に選ぶという別の軸があり、それは扱っていない。
5. 点呼と結び
- 空気中の差は $1.70$・$0.60$・$0.55$(計算 2.1):同じ桁。
- 樹脂中は $1.20$・$0.10$・$0.05$(計算 2.1):桁で分かれる。
- 炭酸カルシウムは $0.0833$(観察 2.3):酸化チタン比。
- 散乱は $0.006944$(計算 2.4):$144$ 倍の差。
- 差の比の二乗と一致(観察 2.6):$0.006944444$。
- 濡らすと差は $1.70\to1.37$(計算 3.1):隙間だけが変わる。
- 散乱は $35.1$ % 落ちる(計算 3.1):紙が透ける。
- 一致すれば散乱はちょうど $0$(観察 3.4):境目の反対側。
- 溶かすと透明も同じ理屈(観察 3.5):差が消える。
- 分離子は粉の性質か差か(観察 4.3):論文300 の基準で別根。
結び:白い粉は白い、と思われている。手に取ればどれも同じように白いので、白さがその粉の性質に見える。だが式に入っているのは差 $n_p-n_m$ であって、粒子だけでは決まらない。周りを変えると、桁で分かれる。空気中では酸化チタン・炭酸カルシウム・石英の差は $1.70$・$0.60$・$0.55$ と同じ桁で、粉のままではどれも白く見える。ところが樹脂に混ぜると $\mathbf{1.20}$ 対 $0.10$ 対 $\mathbf{0.05}$ になり、炭酸カルシウムは酸化チタンの $\mathbf{0.0833}$ しかない。散乱は差の二乗で効くので、強さは $\mathbf{1}$ 対 $\mathbf{0.006944}$ 対 $0.001736$、$\mathbf{144}$ 倍以上の差になる。この値は差の比の二乗 $0.0833^2=\mathbf{0.006944444}$ と厳密に一致し、逆算になっている。そして差が縮めば、白は薄れる。紙の隙間が空気から水に変わると差は $1.70$ から $\mathbf{1.37}$ へ縮み、散乱は $\mathbf{35.1}$ パーセント落ちる。紙は何も変わっておらず、繊維も顔料もそのままで、変わったのは隙間に入っているものだけである。それで白さが三分の一以上落ちる。濡れた紙が透けるのはそのためで、油をしみ込ませればもっと透ける。油は水より屈折率が高いからである。屈折率がぴったり一致すれば散乱はちょうど $\mathbf{0}$ になり、そのとき粒子は光学的に存在しない。砂糖や塩の山が白く、溶かすと透明になるのも同じ理屈で、溶けたのではなく差が消えたのである。分けているものは一つ、粉の性質か、周りとの差か。粉の性質ならどこに置いても白いはずだが、そうはならない。差なら周りを変えれば消え、実際に濡らす・混ぜる・しみ込ませるで消える。論文300 の基準で別根であり、一方は物質の性質、一方は組み合わせの性質である。だから塗料の隠蔽力は粉だけを見ても分からず、樹脂の屈折率と組にして初めて決まる。論文440 で金属が組にして初めて向きを決めたのと、同じ形である。そして差の二乗で効くので、差が半分になれば散乱は四分の一になり、わずかな差の違いが大きな見え方の違いになる。正直に言えば、散乱が差の二乗に比例するのは近似で、粒径が光の波長に近い領域では粗い。動かないのは、差がゼロなら散乱もゼロだという点である。最後に一つ、隠蔽力は粒径にも依る。本稿は屈折率の差だけを動かしており、粒径を最適に選ぶという別の軸は扱っていない。
参考文献
- Mie, G. (1908). Beiträge zur Optik trüber Medien. Annalen der Physik.
- Kubelka, P., & Munk, F. (1931). Ein Beitrag zur Optik der Farbanstriche. Zeitschrift für Technische Physik.
- van de Hulst, H. C. (1957). Light Scattering by Small Particles. New York: Wiley.
- Bohren, C. F., & Huffman, D. R. (1983). Absorption and Scattering of Light by Small Particles. New York: Wiley.
- 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
- 山岸勇輝 (2026). 『割ると、分母の動きが分子の出来事になる』[論文424]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22700141
- 山岸勇輝 (2026). 『守るためには、先に溶けるものが要る』[論文440]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22732388
- 山岸勇輝 (2026). 『最も反応しやすい金属が、最も錆びない』[論文441]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22732392
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「白は色ではなく、屈折率の差が作っている」[論文442]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22732404
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 白は色ではなく、屈折率の差が作っている [論文442]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/442 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22732404
Yamagishi, Y. (2026). White Is Made by a Difference, Not by a Colour [Paper 442]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/442; DOI: 10.5281/zenodo.22732404
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author = {Yamagishi, Yuuki},
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note = {Preprint, edition 1}
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