要旨
平方剰余の相互法則は、数論の定理として証明されるものだと思われている。本稿が示すのは、格子点を二通りに数えるだけで符号が出ることである。五組の素数すべてで合う。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、$p=7$、$q=11$ で格子点は $8$ と $7$、和は $\mathbf{15}$ である(第2節)。
第二に、それが $((p-1)/2)((q-1)/2)=3\times5=15$ にちょうど等しい(第2節)。
第三に、これが本稿の芯である。$(-1)^{15}=\mathbf{-1}$ が、独立に計算したルジャンドル記号の積 $\mathbf{-1}$ と一致する(第3節)。
第四に、五組の素数すべてで、和も符号も合う(第3節)。
第五に、一つ数え間違えると符号が反転する。検査が数に反応している(第3節)。
第六に、分離子は「割った余りを問うか、面積を分けるか」である(第4節)。
キーワード:平方剰余の相互法則、アイゼンシュタインの証明、格子点、数論、数え上げ。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。平方剰余の相互法則も、アイゼンシュタインの格子点による証明も標準的である。証明を書き下ろさない。本稿は五組の素数で数を合わせるだけで、一般の $p$、$q$ についての証明は与えない。補充法則を扱わない。$(-1|p)$ と $(2|p)$ の場合は入れない。奇素数どうしの組だけを見る。計算量を主題にしない。格子点を数える手間と、ルジャンドル記号を直に計算する手間の比較はしない。平方根を求めない。可否が分かっても平方根そのものは出ないことは論文166 が扱っており、本稿は入らない。既刊との関係:論文166 は平方剰余の相互法則を扱い、射程注記で「本稿は法則を証明しない」と書いた。本稿はその一行が空けておいた席に座る。論文331 は面積が二種類の点を数えれば出ると示した。格子点を数えるという同じ操作が、こちらでは代数の定理を出す。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。数え上げと剰余の判定は別根であり、それでも同じ答を返す。論文481 は分離子が無いと反証の行き先が決まらないと示した。本稿はその分離子を一本書く。加えたのは、五組の素数で格子点を数えたこと、和が積に一致することを確かめたこと、符号がルジャンドル記号の積と一致することを確かめたこと、平方剰余を直に列挙して裏取りしたこと、一つ数え間違えると符号が反転することを示したことである。
1. 記法と問い
設定:相異なる奇素数 $p$、$q$ に対し、原点から傾き $q/p$ で引いた直線の下にある格子点を数える。$x$ の側から数えた個数を
$$\mu(q,p)=\sum_{x=1}^{(p-1)/2}\left\lfloor\frac{qx}{p}\right\rfloor$$
と書き、$y$ の側から数えた $\mu(p,q)$ も同様に定める。一方、ルジャンドル記号 $(a|p)$ はオイラーの基準 $a^{(p-1)/2}\bmod p$ で独立に計算する。以下、両者を突き合わせる。
観察 1.1 平方剰余の相互法則は、数論の定理として証明されるものだと思われている。剰余の議論、割り算と合同式の世界の話である、という像である。
観察 1.2 だが同じ答が、格子点を数えるだけで出る。長方形を対角線で切る。幾何の操作である。
問い:数えた結果は、本当に符号を決めているのか。
2. 格子点を二通りに数える
計算 2.1:$p=7$、$q=11$ で数える。
| 量 | 値 |
|---|---|
| $\mu(q,p)$($x$ の側) | $8$ |
| $\mu(p,q)$($y$ の側) | $7$ |
| 和 | $\mathbf{15}$ |
| $((p-1)/2)((q-1)/2)=3\times5$ | $\mathbf{15}$ |
観察 2.2 和が積にちょうど等しい。$15$ 対 $15$、長方形の格子点が、対角線の上下に過不足なく分かれている。
観察 2.3 対角線の上に格子点が乗らない。$p$ と $q$ が互いに素だから、乗れば、上下の和が長方形の点の数に届かなくなる。
観察 2.4 二つの数え方は、同じ点を別の順で数えている。$x$ の側と $y$ の側、どちらも同じ長方形の、対角線で切った片側である。
観察 2.5 ここまでに剰余は一度も出てこない。床関数と足し算だけ、合同式を使っていない。
3. 符号が、独立な計算と一致する
計算 3.1:五組の素数で、格子点の和とルジャンドル記号の積を並べる。
| $p$ | $q$ | 格子点の和 | $(q|p)(p|q)$ | $(-1)^{\text{和}}$ |
|---|---|---|---|---|
| $7$ | $11$ | $\mathbf{15}$ | $\mathbf{-1}$ | $\mathbf{-1}$ |
| $5$ | $13$ | $12$ | $+1$ | $+1$ |
| $13$ | $17$ | $48$ | $+1$ | $+1$ |
| $19$ | $23$ | $99$ | $-1$ | $-1$ |
| $29$ | $31$ | $210$ | $+1$ | $+1$ |
観察 3.2 五組すべてで符号が合う。$-1$、$+1$、$+1$、$-1$、$+1$、格子点を数えた側と、剰余を計算した側が、別々に同じ答を返す。
観察 3.3 ルジャンドル記号は平方剰余の列挙で裏が取れる。$7$ の平方剰余は $\{1,2,4\}$、$11$ の平方剰余は $\{1,3,4,5,9\}$、$11\bmod7=4$ は前者に入り、$7$ は後者に入らない。だから $(+1)\times(-1)=-1$ である。
観察 3.4 一つ数え間違えると符号が反転する。$(-1)^{16}=+1$ 対 $(-1)^{15}=-1$、検査が数に反応しており、たまたま合っているのではない。
観察 3.5 和が大きくなっても合い続ける。$29$ と $31$ で $210$、$15$ の $14$ 倍でも、偶奇の判定が保たれている。
観察 3.6 効いているのは和そのものではなく、偶奇である。$12$ も $48$ も $210$ も偶数、どれも $+1$ を返す。数の大きさは答に入らない。
4. 分離子
分離子:割った余りを問うているのか、面積を分けているのか。
観察 4.1 余りを問うなら、合同式の世界である。$a^{(p-1)/2}\bmod p$、冪乗と剰余で答が出る。
観察 4.2 面積を分けるなら、幾何の世界である。床関数の和、長方形を対角線で切るだけである。
観察 4.3 二つは論文300 の基準で別根である。どちらも同じ符号を返す。一方は剰余の性質、一方は点の個数の偶奇で、使っている道具に共通部分が無い。
観察 4.4 それでも答が一致する。五組すべてで、論文300 の基準では、数値の一致だけでは同根と見なさない。ここでは一致が偶然ではないことが、証明として知られている。
観察 4.5 論文166 はこの席を空けておいた。射程注記に「本稿は法則を証明しない」。あちらは法則が何を答えるかを測り、本稿はその答がどこから出るかを見ている。
観察 4.6 論文331 とも同じ操作である。格子点を数えると面積が出る。あちらは面積、こちらは代数の定理。同じ数え上げが、別の分野の答を返す。
観察 4.7 正直に言えば、証明を書いてはいない。五組で合わせただけである。一般の $p$、$q$ について和が積に等しいことは、長方形の格子点が対角線で過不足なく分かれるという議論から出るが、本稿はその議論を書き下ろしていない。示したのは、五組で数が合うということまでである。
5. 点呼と結び
- $p=7$、$q=11$ で $8$ と $7$(計算 2.1):和は $15$。
- 和が $3\times5$ に等しい(観察 2.2):過不足なく分かれる。
- 対角線に点が乗らない(観察 2.3):互いに素だから。
- 剰余が一度も出てこない(観察 2.5):床関数と足し算だけ。
- 五組すべてで符号が合う(計算 3.1):本稿の芯。
- 平方剰余の列挙で裏が取れる(観察 3.3):$(+1)\times(-1)=-1$。
- 一つ間違えると反転する(観察 3.4):検査が数に反応。
- 効いているのは偶奇だけ(観察 3.6):大きさは入らない。
- 分離子は余りか面積か(観察 4.3):論文300 の基準で別根。
- 証明は書いていない(観察 4.7):五組で合わせた。
結び:平方剰余の相互法則は、数論の定理として証明されるものだと思われている。剰余の議論であり、割り算と合同式の世界の話だという像である。だが同じ答が、格子点を数えるだけで出る。長方形を対角線で切るという、幾何の操作である。格子点を二通りに数える。$p=7$、$q=11$ で、$x$ の側から数えると $8$、$y$ の側から数えると $7$、和は $\mathbf{15}$ である。それが $((p-1)/2)((q-1)/2)=3\times5=\mathbf{15}$ にちょうど等しく、長方形の格子点が対角線の上下に過不足なく分かれている。$p$ と $q$ が互いに素なので対角線の上に格子点が乗らず、乗れば上下の和が長方形の点の数に届かなくなる。二つの数え方は同じ点を別の順で数えており、どちらも同じ長方形の、対角線で切った片側である。そしてここまでに剰余は一度も出てこない。床関数と足し算だけで、合同式を使っていない。符号が、独立な計算と一致する。$(7,11)$ で和 $15$・符号 $-1$、$(5,13)$ で $12$・$+1$、$(13,17)$ で $48$・$+1$、$(19,23)$ で $99$・$-1$、$(29,31)$ で $210$・$+1$。五組すべてで、格子点を数えた側と剰余を計算した側が別々に同じ答を返す。ルジャンドル記号は平方剰余の列挙で裏が取れる。$7$ の平方剰余は $\{1,2,4\}$、$11$ の平方剰余は $\{1,3,4,5,9\}$ で、$11\bmod7=4$ は前者に入り $7$ は後者に入らないので $(+1)\times(-1)=-1$ である。一つ数え間違えると $(-1)^{16}=+1$ となって符号が反転し、検査が数に反応している。和が $210$ まで大きくなっても偶奇の判定は保たれ、効いているのは和そのものではなく偶奇である。分けているものは一つ、割った余りを問うているのか、面積を分けているのか。余りを問うなら合同式の世界で、$a^{(p-1)/2}\bmod p$ という冪乗と剰余で答が出る。面積を分けるなら幾何の世界で、床関数の和、長方形を対角線で切るだけである。二つは論文300 の基準で別根であり、どちらも同じ符号を返すが、一方は剰余の性質、一方は点の個数の偶奇で、使っている道具に共通部分が無い。それでも五組すべてで答が一致する。論文300 の基準では数値の一致だけでは同根と見なさないが、ここでは一致が偶然でないことが証明として知られている。論文166 はこの席を空けておいた。射程注記に「本稿は法則を証明しない」とあり、あちらは法則が何を答えるかを測り、本稿はその答がどこから出るかを見ている。論文331 とも同じ操作で、格子点を数えるとあちらでは面積が、こちらでは代数の定理が出る。正直に言えば、証明を書いてはいない。五組で合わせただけであり、一般の $p$、$q$ について和が積に等しいことは長方形の格子点が対角線で過不足なく分かれるという議論から出るが、本稿はその議論を書き下ろしていない。示したのは、五組で数が合うということまでである。
参考文献
- Eisenstein, G. (1844). Geometrischer Beweis des Fundamentaltheorems für die quadratischen Reste. Journal für die reine und angewandte Mathematik.
- Gauss, C. F. (1801). Disquisitiones Arithmeticae. Fleischer, Leipzig.
- Ireland, K., & Rosen, M. (1990). A Classical Introduction to Modern Number Theory (2nd ed.). Springer.
- 山岸勇輝 (2026). 『定義は $d$ を $p$ で割り、定理は $p$ を判別式で割る』[論文166]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22093052
- 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
- 山岸勇輝 (2026). 『面積という連続量が、二種類の点を数えるだけで厳密に出る』[論文331]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22681503
- 山岸勇輝 (2026). 『「法則が破れた」は、どの仮定へも落とせる』[論文481]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22733927
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「数えるという操作が、代数の定理を証明してしまう」[論文513]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22862214
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 数えるという操作が、代数の定理を証明してしまう [論文513]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/513 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22862214
Yamagishi, Y. (2026). An Act of Counting Turns Out to Prove a Theorem of Algebra [Paper 513]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/513; DOI: 10.5281/zenodo.22862214
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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