要旨
一回の分裂で得られる割合の式は、落ちてくる粒子がそこまで届くかを問わない(論文939)。そこでは遠くで静止していた粒子だけを扱い、速さを持って投げ込んだ粒子を扱わなかった。本稿は、939 と同じカーの赤道面の分裂で、投げ込んだ粒子(遠くでのエネルギー E0 が 1 より大きい)が二つの光子に割れるとき、外へ出る光子が取り出す量と割合を、保存則と光子の殻の条件を数値で解いて出す。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、投げ込むほど、取り出す量は減る。回転 1・地平線のすぐ外($r=1.0001$)で、E0 = 1・1.1・1.5・2・5・10 に取り出した量は $\mathbf{0.207071}$・$0.193270$・$0.151360$・$0.118012$・$0.049500$・$\mathbf{0.024933}$ だった(第2節)。
第二に、取り出す割合はさらに速く減る。同じ点で取り出した割合 (E1 − E0)/E0 は、E0 = 1 の $0.207071$ から 2 の $0.059006$、10 の $\mathbf{0.002493}$ まで下がった(第2節)。
第三に、取り出す量は一つの形に一致した。四つの r と六つの E0 の 24 点で、取り出した量は (√(E0² − 1 + 2/r) − E0)/2 と $\mathbf{9.030}$×10⁻⁸ 以内で一致した。式は導いていない(第3節)。
第四に、大きく投げ込むと、取り出す量は投げ込むエネルギーに反比例して小さくなる。この形で E0 × 取り出す量は、$r=1.0001$ の E0 = 1000 で $0.249950$、$r=1.5$ で $0.083333$ となり、(2/r − 1)/4 と一致した(第3節)。
第五に、分離子は、遠くでのエネルギーを足すか、割れる点を深くするか。どの E0 でも、割れる点を $r=1.8$ から地平線のすぐ外へ深くすると取り出す量は増えた(E0 = 2 で $0.013794$ から $0.118012$)。遠くでのエネルギーを足すと、どの r でも減った(第4節)。
キーワード:ペンローズ過程、カーのブラックホール、エルゴ球、投げ込んだ粒子、エネルギーの取り出し、一般相対論。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。ペンローズ過程、カーのブラックホールのエルゴ球、分裂する粒子の速さで取り出せる量が変わることは、いずれも一般相対論で知られている。単位を揃えた。重力定数と光の速さと穴の質量を 1 とし、回転は 1、投げ込む粒子の質量は 1 とした。分裂の形を限る。赤道面の上で、投げ込んだ粒子が折り返しの点で二つの光子に割れ、光子もその点で折り返す場合だけを扱う。二つの粒子の衝突による取り出し、質量を持つ破片との組み合わせ、赤道面の外、多段の分裂は扱わない。届くかを問わない。投げ込んだ粒子が分裂の点まで届くか(論文939)は確かめず、その場の条件だけで数える。式を導かない。取り出す量の形は、数値の解がその形と一致することを確かめただけで、導いてはいない。既刊との関係:論文939 の射程注記は、分裂の形を限り、投げ込んだ粒子、質量を持つ破片、赤道面の外、多段の分裂は扱わないと書いた。本稿はそのうち投げ込んだ粒子の席に座る(先客なし。質量を持つ破片の席には論文995 が座った)。論文939 は、一回の分裂で得られる割合の式は落ちてくる粒子がそこまで届くかを問わないことを示した。ここでは、同じその場の条件で、遠くでのエネルギーを変える。論文995 は、分裂の破片に質量があると取り出せる割合は下がり、落ちる破片の重さがより強く効くことを示した。ここでは破片は光子のまま、割れる粒子の側を変える。論文887 は、回るブラックホールから取り出せるエネルギーの総量が最大で質量の 0.292893 であることを示した。ここでは総量ではなく一回の分裂を数える。加えたのは、四つの r と六つの遠くでのエネルギーで取り出す量と割合を出したこと、取り出す量が一つの形と一致すると確かめたこと、投げ込むほど量が減ることをどの r でも確かめたこと、大きい E0 での小さくなり方を出したこと、分離子を「遠くでのエネルギーか、割れる点の深さか」に置いたことである。
1. 記法と問い
分裂:重力定数・光の速さ・穴の質量を 1 とし、回転 $a=1$ のカーの時空の赤道面で、質量 1 の粒子を遠くでのエネルギー $E_0\ge1$ で投げ込み、半径 $r$ の折り返しの点で二つの光子に割る。折り返しの条件は
$$\bigl[E(r^2+a^2)-aL\bigr]^2=\Delta\bigl[\mu^2r^2+(L-aE)^2\bigr],\qquad \Delta=r^2-2r+a^2$$
で、割れる粒子は $\mu=1$、光子は $\mu=0$ である。$E_1+E_2=E_0$、$L_1+L_2=L_0$ を満たし、どちらの光子も未来を向き、落ちる光子のエネルギー $E_2$ が負になる解を数値で探し、取り出した量 $E_1-E_0$ の最大を取った。$E_0=1$・1.1・1.5・2・5・10、$r=1.0001$・1.2・1.5・1.8 とした。
問い:割れる粒子を速く投げ込むと、一回の分裂で取り出せるエネルギーはどう変わるか。
2. 取り出す量と割合
計算 2.1:取り出した量 $E_1-E_0$(かっこ内は割合 $(E_1-E_0)/E_0$)。
| $E_0$ | $r=1.0001$ | $r=1.2$ | $r=1.5$ | $r=1.8$ |
|---|---|---|---|---|
| $1$ | $\mathbf{0.207071}$ | $0.145497$ | $0.077350$ | $0.027046$ |
| $1.1$ | $0.193270$($0.175700$) | $0.134957$($0.122689$) | $0.071155$($0.064686$) | $0.024698$($0.022453$) |
| $1.5$ | $0.151360$($0.100907$) | $0.103913$($0.069275$) | $0.053638$($0.035758$) | $0.018295$($0.012197$) |
| $2$ | $0.118012$($0.059006$) | $0.080123$($0.040062$) | $0.040833$($0.020416$) | $0.013794$($0.006897$) |
| $5$ | $0.049500$($0.009900$) | $0.033114$($0.006623$) | $0.016611$($0.003322$) | $0.005549$($0.001110$) |
| $10$ | $\mathbf{0.024933}$($\mathbf{0.002493}$) | $0.016639$($0.001664$) | $0.008326$($0.000833$) | $0.002777$($0.000278$) |
$E_0=1$ の値は光子の閉じた形 $(\sqrt{2/r}-1)/2$ と同じで、論文939 の分裂である。四つの r のどれでも、$E_0$ を大きくすると取り出した量は減り続けた。
3. 取り出す量の形
計算 3.1:24 点で、取り出した量と
$$E_1-E_0=\frac{1}{2}\left(\sqrt{E_0^2-1+\frac{2}{r}}-E_0\right)$$
の差の最大は $9.030$×10⁻⁸ だった。$E_0=1$ でこの形は $(\sqrt{2/r}-1)/2$ に戻る。
計算 3.2:この形で大きい $E_0$ を入れると、$r=1.0001$ で $E_0=100$・1000 に取り出す量 $2.499438$×10⁻³・$2.499499$×10⁻⁴、$E_0$ × 取り出す量 $0.249944$・$0.249950$、$r=1.5$ で $0.083333$ となり、$(2/r-1)/4$($0.249950$ と $0.083333$)に近づいた。
観察 3.3 投げ込むエネルギーを足しても、取り出す量は増えなかった。割れる粒子が持ち込むエネルギーは $E_0$ だけ増えるが、外へ出る光子は $E_0$ より $E_1-E_0$ だけ多く持ち出すにとどまる。その差は $E_0$ が大きいほど小さく、大きい $E_0$ では $E_0$ に反比例した。形を導いてはいないので、なぜ減るかは本稿では言わない。
4. 分離子
観察 4.1 分離子は、遠くでのエネルギーを足すか、割れる点を深くするか。どの $E_0$ でも、割れる点を $r=1.8$ から地平線のすぐ外へ深くすると取り出す量は増え、$E_0=2$ で $0.013794$ から $0.118012$ になった。遠くでのエネルギーを足すと、どの r でも取り出す量は減った。取り出す量を増やしたのは割れる点の深さで、遠くでのエネルギーではなかった。
観察 4.2 言わないこと。投げ込んだ粒子が分裂の点まで届くか、二つの粒子の衝突による取り出し、質量を持つ破片との組み合わせ(論文995)、赤道面の外、多段の分裂、形の導き方、実在の天体やジェットは扱わない。示したのは、その場の条件で解いた一回の分裂で、遠くでのエネルギーを足すと取り出す量がどう変わるかである。
5. 点呼と結び
- 投げ込んだ粒子の分裂(第1節):遠くでのエネルギー E0 を変える。
- E0 = 10 で取り出す量 $\mathbf{0.024933}$(計算 2.1):E0 = 1 の $\mathbf{0.207071}$ から減る。
- 割合は $\mathbf{0.002493}$ まで(計算 2.1):さらに速く減る。
- 形と差 $\mathbf{9.030}$×10⁻⁸(計算 3.1):24 点で一致。
- E0 × 取り出す量は (2/r − 1)/4 へ(計算 3.2):反比例して小さくなる。
- 遠くでのエネルギーか、割れる点の深さか(観察 4.1):分離子・論文939 の射程注記。
結び:速く投げ込んだ粒子を割っても、取り出せるエネルギーは増えず、投げ込むほど減る。939 と同じカーの赤道面の分裂で遠くでのエネルギーを 1 から 10 に上げると、地平線のすぐ外で取り出す量は $0.207071$ から $0.024933$ に、割合は $0.002493$ に下がった。取り出す量は 24 点で (√(E0² − 1 + 2/r) − E0)/2 と $9.030$×10⁻⁸ 以内で一致し、大きい E0 では E0 × 取り出す量が (2/r − 1)/4 に近づいた。割れる点を深くすると、どの E0 でも取り出す量は増えた。分離子は、遠くでのエネルギーを足すか、割れる点を深くするか。既刊との位置:論文939 が遠くで静止していた粒子で数えた一回の分裂に、論文939 が扱わなかった投げ込んだ粒子を足し、論文995 が破片の側で見た下がり方を割れる粒子の側で見た。正直に言えば、その場の条件だけで解いた分裂の数を並べ、一つの形と一致することを確かめた。形は導いていない。投げ込むと取り出す量がどう変わるか、そこまでである。
参考文献
- Bardeen, J. M., Press, W. H., & Teukolsky, S. A. (1972). Rotating black holes: locally nonrotating frames, energy extraction, and scalar synchrotron radiation. The Astrophysical Journal.
- 山岸勇輝 (2026). 『回るブラックホールから取り出せるエネルギーは回転の二乗で増え始め、最大で質量の 0.292893』[論文887]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/887
- 山岸勇輝 (2026). 『一回の分裂で得られる割合の式は、落ちてくる粒子がそこまで届くかを問わない』[論文939]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/939
- 山岸勇輝 (2026). 『分裂の破片に質量があると取り出せる割合は下がり、落ちる破片の重さがより強く効く』[論文995]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/995
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「速く投げ込んだ粒子を割っても、取り出せるエネルギーは増えず、投げ込むほど減る」[論文999]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/999
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 速く投げ込んだ粒子を割っても、取り出せるエネルギーは増えず、投げ込むほど減る [論文999]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/999
Yamagishi, Y. (2026). Splitting a Particle Thrown in Faster Extracts No More Energy, and the Harder It Is Thrown, the Less [Paper 999]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/999
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author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {Splitting a Particle Thrown in Faster Extracts No More Energy, and the Harder It Is Thrown, the Less},
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note = {Preprint, edition 1}
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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