要旨
本稿が問うのは、停止則を変えると何が動いて何が動かないのか、である。答えは、損益の形が動き、方向は動かない。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。
第一に、形は完全に変わる。 二十通りの停止則で勝率は 0.0562 から 0.9443(差 0.8881)、中央値は −40.0000 から +40.0000 pips(差 80.0000)、歪度は −8.4093 から +8.4366(差 16.8459)まで動く(第3節)。
第二に、勝率と歪度の相関は −0.9345 である。 勝率が高い則ほど歪度は負で、小さな勝ちを積んで大きく負ける形になる。★ 勝率は形の指標であって、良し悪しの指標ではない(第5節)。
第三に、これが本稿の芯である。★ 方向の情報がゼロだと分かっている合成乱数でも、形は同じだけ動く。 勝率の相関は +0.9922、差の中央は −0.0056(幅 −0.0550 から +0.0570)である。形は停止則の性質であって、市場の性質ではない(第6節)。
第四に、測る前に書いた予言②の分類が外れた。 「対称な停止則では買いと売りの平均 M が恒等的に 0」と書いたが、そうなるのは柵の無い則だけである(0.000000 ちょうど・12 セル)(第4節)。
第五に、★ 固定の利確 = 損切りでは、M は −(曖昧率 × 柵) にぴったり一致する。 差は 0.0000 pips(8 セル)である。負の M は市場ではなく、曖昧な足を保守的に倒したことそのものである(第4節)。
第六に、そして測ってから恒等式をひとつ見つけた。 「利確のみ」の M と「損切りのみ」の M は符号が逆で絶対値が等しく、ずれは 0.000000 pips である。★ これは検定ではなく恒等式である(第4節)。
本稿の射程(scope note):新しい数学定理も新しい法則も主張しない。任意停止定理、トリプルバリア法、トレーリングストップ、ランダムウォークはすべて既知である。特定の商材や提唱者を論じない。実在の教材、その著者、販売元は主題ではなく、一切名指さない。売買を論じない。コストを入れていないので、本稿の数字は売買の成績ではない(第7節)。方向は D に、ドリフトも D に入る。買いの期待値そのものは −4.3840 から +27.4471 pips まで動くが、その大半は期間中のドリフトである(第4節)。射程は日中・少数銘柄に限る。四銘柄・六年・1 時間足の測定である。月次の時系列モメンタム(数十市場・保有1〜12ヶ月)は学術的に文書化されており、本稿はそれを否定しない。曖昧な足は保守的に倒している。F025 で測ったとおり、この規約は宣言しないと読めない(第2節・第4節)。トレールは前の足までで更新している。足の中の順番を仮定しないための規約で、別の規約なら数字が変わる(第7節)。重複を除いていない。全部の足から建てているので観測は重なる。t 値は報告していない(第7節)。予測を主張しない。既刊との関係:F012 は利確と損切りを四十九通りに置いても期待値が動かないことを、F025 は曖昧な足の扱いが勝率と期待値を作ることを示した。本稿は停止則を二十通りに広げ、形と方向を分けて測る。加えたのは、買いと売りを両方走らせて M と D に分けたこと、M が 0 にならない分を規約の効果として突き止めたこと、同じことを方向の情報がゼロの系列でやったことである。
1. 記法と問い
「損小利大にする」「建値に逃がす」「トレールで伸ばす」。どれもいつ切るかの規則であって、どちらへ建てるかの規則ではない。
| 報告されること | 報告されないこと |
|---|---|
| その停止則での勝率と損益 | 同じ入口で別の停止則なら何が出たか |
| 損益比 | 買いと売りを両方走らせたらどうなるか |
| 資金曲線の形 | エッジが無い系列でも同じ形が出ないか |
観察 1.1:停止則は、いつ切るかしか決めない。 入口の向きは変えない。★ だから方向の情報は原理的に増えない。
観察 1.2:★ 方向とそれ以外を分けるには、同じ入口から買いと売りを両方走らせればよい。 M = (買 + 売) / 2 は方向の効果を消し、D = (買 − 売) / 2 に方向とドリフトが入る。
観察 1.3:分離子は、いつ切るかである。 入口・データ・期間・銘柄をすべて固定し、停止則だけを変える。
観察 1.4:★ そして比べる相手が要る。 方向の情報がゼロだと分かっている系列で同じ二十通りを走らせ、形が同じだけ動くかを見る。
問い:停止則を変えると、何が動いて何が動かないのか。
2. 測る量と設計を、先に書く
予言(走らせる前に書いた)
① 勝率・中央値・歪度・最悪・最良は、停止則で大きく動く。
② M = (買 + 売) / 2 は、コストを入れなければ 0 である。ただし対称な停止則では恒等的に 0(経路ごとに打ち消す)。非対称な停止則では恒等式ではないので、そこが検定になる。
③ ★ 方向の情報がゼロの合成乱数でも、同じ帯に入る。
④ 差 D = (買 − 売) / 2 はドリフトを拾うので、停止則で動きうる。
設計(走らせる前に宣言し、実行時に変えていない)
| 項目 | 決めたこと |
|---|---|
| 入口 | 1 時間足の終値。全部の足から建てる。買いと売りを両方 |
| 期限 | 24 本(一日)。触れずに終われば期限の終値で切る |
| 固定 | 利確/損切り = (10,10) (20,20) (20,10) (10,20) の 4 通り |
| トレール | 最大益から 5・10・20・40 pips 引いたところで切る(4 通り) |
| 建値移動 | 損切り 20 pips。5・10・20 pips 進んだら損切りを建値へ(3 通り) |
| 時間だけ | 6・24・72 本で切る(柵なし・3 通り) |
| 利確のみ | 10・20・40 pips(損切りなし・期限まで・3 通り) |
| 損切りのみ | 10・20・40 pips(利確なし・期限まで・3 通り) |
| 曖昧な足 | 保守的に倒す(不利な側を先とする)。★ F025 のとおり宣言しないと読めない |
| トレール | 最大益は前の足までで更新する(足の中の順番を仮定しない) |
| コスト | 入れない |
| 基準線 | 足の中まで合成乱数(3 系列) |
| 銘柄 | USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD |
| 期間 | 2019–2024 |
観察 2.1:★ 二十通りはすべて同じ入口から走る。 違うのはいつ切るかだけである。
観察 2.2:売りは、上下を裏返した足の上で買いを走らせて作る。 こうすると買いと売りで規約が完全に揃う。
観察 2.3:コストを入れないのは、理論の値をはっきりさせるためである。 ★ 合成乱数にはドリフトが無いので、そこでは買いの期待値そのものが理論 0 になる。
足の本数は 36,534・36,554・36,535・34,892 本である。
3. 形は、停止則で大きく動く
計算 3.1 形(USDJPY・買い)
| 停止則 | 勝率 | 中央値 | 歪度 | 最悪 | 最良 | 保有の中央 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 固定 10/10 | 0.4636 | −10.0000 | 0.1462 | −10.00 | 10.00 | 2.0 |
| 固定 10/20 | 0.6403 | 10.0000 | −0.6011 | −20.00 | 10.00 | 2.0 |
| トレール 5 | 0.3483 | −5.0000 | 4.3259 | −5.00 | 231.80 | 1.0 |
| トレール 40 | 0.4347 | −6.2500 | 1.8764 | −40.00 | 369.90 | 14.0 |
| 建値 5/SL20 | 0.1076 | 0.0000 | 4.4808 | −20.00 | 387.10 | 3.0 |
| 時間 24 | 0.5469 | 4.9000 | −0.8285 | −702.30 | 387.10 | 24.0 |
| 時間 72 | 0.5547 | 11.7500 | −0.8244 | −1021.45 | 542.65 | 72.0 |
| 利確のみ 10 | 0.8325 | 10.0000 | −5.8006 | −702.30 | 10.00 | 4.0 |
| 損切りのみ 10 | 0.1920 | −10.0000 | 3.9576 | −10.00 | 377.90 | 4.0 |
観察 3.2:予言①は当たった。 二十通り・四銘柄で、勝率は 0.0562 から 0.9443(差 0.8881)、中央値は −40.0000 から +40.0000 pips(差 80.0000)、歪度は −8.4093 から +8.4366(差 16.8459)まで動く。
観察 3.3:USDJPY の「利確のみ 10」は勝率 0.8325 である。 ★ 損切りを置かなければ、勝率は上げられる。 だが最悪は −702.30 pips で、それは勝率に現れない。
観察 3.4:同じ USDJPY の「建値 5/SL20」は勝率 0.1076 である。 ★ 建値に逃がすと損益ちょうど 0 の件が大量に出るので、「勝ち」が減る。 中央値も 0.0000 になる。
観察 3.5:★ 同じ入口・同じデータである。 変えたのはいつ切るかだけで、勝率は 0.1076 から 0.8325 まで、最良は 10.00 から 542.65 pips まで動く。

図1:横が勝率、縦が歪度。塗りつぶしが実測、白抜きが合成乱数で、二十通りの停止則が点になっている。
4. では期待値は動くか、M = (買 + 売) / 2
計算 4.1 停止則ごとの M(pips)
| 停止則 | 宣言時に対称としたか | USDJPY | EURUSD | GBPUSD | XAUUSD |
|---|---|---|---|---|---|
| 固定 10/10 | ○ | −0.725139 | −0.393619 | −0.864438 | −3.597932 |
| 固定 20/20 | ○ | −0.373540 | −0.232443 | −0.360365 | −2.650201 |
| 固定 20/10 | × | −0.194242 | −0.256804 | −0.274746 | −2.074813 |
| トレール 5 | ○ | 1.038890 | 0.599239 | 0.945928 | 1.921923 |
| 建値 5/SL20 | × | 1.500037 | 0.602420 | 0.894338 | 1.543841 |
| 時間 6 | ○ | 0.000000 | 0.000000 | 0.000000 | 0.000000 |
| 時間 24 | ○ | 0.000000 | 0.000000 | 0.000000 | 0.000000 |
| 時間 72 | ○ | 0.000000 | 0.000000 | 0.000000 | 0.000000 |
| 利確のみ 10 | × | −1.229658 | 0.055478 | −0.154499 | −0.886441 |
| 損切りのみ 10 | × | 1.229658 | −0.055478 | 0.154499 | 0.886441 |
計算 4.2 固定 利確 = 損切り の M は、規約の効果そのものである
| 銘柄 | 停止則 | 曖昧率 | −曖昧率 × 柵 | 実測 M | 差 |
|---|---|---|---|---|---|
| USDJPY | 固定 10/10 | 0.0725 | −0.7251 | −0.7251 | 0.0000 |
| USDJPY | 固定 20/20 | 0.0187 | −0.3735 | −0.3735 | 0.0000 |
| EURUSD | 固定 10/10 | 0.0394 | −0.3936 | −0.3936 | 0.0000 |
| EURUSD | 固定 20/20 | 0.0116 | −0.2324 | −0.2324 | 0.0000 |
| GBPUSD | 固定 10/10 | 0.0864 | −0.8644 | −0.8644 | −0.0000 |
| GBPUSD | 固定 20/20 | 0.0180 | −0.3604 | −0.3604 | 0.0000 |
| XAUUSD | 固定 10/10 | 0.3598 | −3.5979 | −3.5979 | −0.0000 |
| XAUUSD | 固定 20/20 | 0.1325 | −2.6502 | −2.6502 | −0.0000 |
観察 4.3:★ 予言②の分類そのものが外れた。 「対称な停止則では M が恒等的に 0」と書いたが、宣言時に対称とした 36 通りの M は最大の絶対値 3.597932 pips ある。測ってから三つに分け直す。
観察 4.4:★ ① 柵の無い則では、M はちょうど 0 である。 「時間だけ」の 12 セルすべてで 0.000000 である。買いと売りが経路ごとに打ち消すので、これは恒等式である。
観察 4.5:★ ② 固定 利確 = 損切り では、M は −(曖昧率 × 柵) にぴったり一致する。 8 セルすべてで差は 0.0000 pips である。負の M は市場ではなく、曖昧な足を保守的に倒して買いにも売りにも損を付けたことそのものである。
観察 4.6:③ 残り 60 セルでは打ち消さない。 M は中央 +0.3573 pips、幅 −4.4154 から +2.1625 である。★ トレールと建値移動を「対称」と宣言したのは誤りだった。買いは最大益から下へ、売りは最小益から上へ追うので、経路ごとに打ち消さない。
観察 4.7:★ そして測ってから恒等式をひとつ見つけた。 「利確のみ」の M と「損切りのみ」の M は符号が逆で絶対値が等しく、ずれは 0.000000 pips である。売りの「利確のみ」は、買いの「損切りのみ」の符号を変えたものだからである。 ★ これは検定ではない。
観察 4.8:一方、買いの期待値そのものは −4.3840 から +27.4471 pips まで動く。 ★ だがその大半はドリフトで、D = (買 − 売) / 2 は −1.9414 から +27.4471 pips と同じ幅を持つ。 時間 72 の XAUUSD が +27.4471 なのは、三日で金が上がった期間だったからである。

図2:横が二十通りの停止則、縦が pips。薄い線が買いの期待値、濃い線が M、点線が 0 である。
5. 勝率が高い則は、どういう形か
計算 5.1 四銘柄の中央(二十通り)
| 停止則 | 勝率 | 中央値 | 歪度 | M |
|---|---|---|---|---|
| 固定 10/10 | 0.4595 | −10.0000 | 0.1625 | −0.794788 |
| 固定 10/20 | 0.6390 | 10.0000 | −0.5873 | −0.794165 |
| トレール 5 | 0.3387 | −5.0000 | 4.5125 | 0.992409 |
| トレール 40 | 0.4003 | −10.1138 | 1.8067 | 0.877153 |
| 建値 5/SL20 | 0.0858 | 0.0000 | 4.6119 | 1.197188 |
| 時間 24 | 0.5194 | 2.7000 | −0.3559 | 0.000000 |
| 利確のみ 10 | 0.8475 | 10.0000 | −5.6229 | −0.520470 |
| 利確のみ 40 | 0.6087 | 27.5750 | −2.5854 | −0.843513 |
| 損切りのみ 10 | 0.1569 | −10.0000 | 4.0411 | 0.520470 |
| 損切りのみ 40 | 0.4205 | −23.3750 | 1.7241 | 0.843513 |
観察 5.2:★ 勝率と歪度の相関は −0.9345 である。 勝率が高い則ほど歪度は負で、小さな勝ちを積んで大きく負ける形になる。
観察 5.3:勝率と中央値の相関は +0.5797 である。 勝率が高ければ中央値も高い、とは限らない。 「建値 5/SL20」は勝率 0.0858 で中央値 0.0000 である。
観察 5.4:★ したがって勝率は、良し悪しではなく形を測っている。 「勝率 84%」と「勝率 9%」は、同じ入口から同じデータで作れる。
観察 5.5:そして M は、勝率がどれだけ動いても −0.794788 から +1.197188 の範囲にとどまる(第4節の三分類で説明できる分を含む)。方向の側は動いていない。
6. 基準線、方向の情報がゼロの系列で、同じことをする
計算 6.1 実測と合成乱数(四銘柄の中央)
| 停止則 | 実測 勝率 | 乱数 勝率 | 実測 歪度 | 乱数 歪度 | 実測 M | 乱数 M |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 固定 10/10 | 0.4595 | 0.4771 | 0.1625 | 0.0917 | −0.794788 | −0.453480 |
| 固定 10/20 | 0.6390 | 0.6439 | −0.5873 | −0.6013 | −0.794165 | −0.738910 |
| トレール 5 | 0.3387 | 0.3500 | 4.5125 | 2.0679 | 0.992409 | 2.804208 |
| 建値 5/SL20 | 0.0858 | 0.0919 | 4.6119 | 3.5044 | 1.197188 | 3.027589 |
| 時間 24 | 0.5194 | 0.5065 | −0.3559 | 0.0414 | 0.000000 | 0.000000 |
| 利確のみ 10 | 0.8475 | 0.8738 | −5.6229 | −3.2864 | −0.520470 | −2.019161 |
| 利確のみ 40 | 0.6087 | 0.6291 | −2.5854 | −1.2576 | −0.843513 | −1.691569 |
| 損切りのみ 10 | 0.1569 | 0.1300 | 4.0411 | 3.2720 | 0.520470 | 2.019161 |
| 損切りのみ 40 | 0.4205 | 0.3748 | 1.7241 | 1.2527 | 0.843513 | 1.691569 |
観察 6.2:★ 予言③は当たった。これが本稿の芯である。 二十通りの勝率は、実測と合成乱数で相関 +0.9922、差の中央 −0.0056(幅 −0.0550 から +0.0570)である。
観察 6.3:★ したがって形は、停止則の性質であって市場の性質ではない。 どの停止則がどんな勝率を出すかは、当たっていない系列でもほぼ同じである。
観察 6.4:歪度は乱数の方が小さい(トレール 5 で 4.5125 対 2.0679)。★ 実測の方が裾が長いためで、これは市場の性質でありうる。だが勝率はほぼ一致する。
観察 6.5:合成乱数の M は、対称と宣言した則で最大の絶対値 6.884495 pips ある。 第4節の三分類のとおり、トレールと建値移動は打ち消さないので、この値は分類の誤りの現れである。
観察 6.6:合成乱数の買いの期待値は中央 +1.5707 pips、幅 −14.9559 から +20.4750 pips である(理論は 0)。 ★ ドリフトが無い系列でもこれだけ散る。 一本の経路には、その経路の実現したドリフトが乗るからである。 ⇒ 買いの期待値だけを見て市場を語ってはいけない。
7. 限界
- ⚠️ ★ 予言②の分類が外れた。 「対称な停止則では M が恒等的に 0」は、柵の無い則にしか当てはまらなかった。本稿はその外れを書き、測ってから三つに分け直している。
- ★ 恒等式を測ってから見つけた。 「利確のみ」と「損切りのみ」の M が符号違いで等しいのは検定ではない。恒等式を検定として数えないために、ここに書いている。
- 曖昧な足を保守的に倒している。 F025 のとおり、この規約は結果を作る。本稿の M の負の分は、この規約の効果としてちょうど説明できる(差 0.0000)。
- トレールは前の足までで最大益を更新している。 足の中で更新する規約なら数字が変わる。測っていない。
- コストを入れていない。 したがって本稿の数字は売買の成績ではない。
- 重複を除いていない。 全部の足から建てているので観測は重なる。t 値は報告しておらず、有意性は論じていない。
- 停止則を二十通りに固定している。 分割決済、ピラミッディング、ボラティリティ連動の幅は扱っていない。
- 四銘柄・六年である。 他の市場、他の期間について述べるものではない。
結び
二十通りの停止則で、勝率は 0.0562 から 0.9443、中央値は −40.0000 から +40.0000 pips、歪度は −8.4093 から +8.4366 まで動く。同じ入口・同じデータで、変えたのはいつ切るかだけである。
そして勝率と歪度の相関は −0.9345 である。勝率が高い則ほど、小さな勝ちを積んで大きく負ける形になる。 USDJPY の「利確のみ 10」は勝率 0.8325 で最悪 −702.30 pips、「建値 5/SL20」は勝率 0.1076 で中央値 0.0000 である。★ 勝率は良し悪しではなく形を測っている。
★ そして形は、合成乱数でも同じだけ動く。 二十通りの勝率は実測と乱数で相関 +0.9922、差の中央 −0.0056 である。どの停止則がどんな勝率を出すかは、当たっていない系列でもほぼ同じである。
測る前に書いた予言②の分類は外れた。 「対称な停止則では M が恒等的に 0」と書いたが、そうなるのは柵の無い則だけ(0.000000 ちょうど)である。固定の利確 = 損切りでは M = −(曖昧率 × 柵) にぴったり一致し(差 0.0000)、★ 負の M は市場ではなく、曖昧な足を保守的に倒したことそのものである。 トレールと建値移動は、買いが最大益から下へ、売りが最小益から上へ追うので経路ごとに打ち消さない。
★ したがって、停止則が変えるのは損益の形であって、方向ではない。 そして買いの期待値そのものは −4.3840 から +27.4471 pips まで動くが、方向の情報がゼロの合成乱数でも −14.9559 から +20.4750 pips まで散る。 買いの期待値だけを見て市場を語ってはいけない。
データと再現
| データ | 為替は Dukascopy 由来のティック(2019 年以降はミリ秒・bid・ask まで一致することを確認済み)。金は Dukascopy |
| 期間 | 2019–2024(六年) |
| 銘柄 | USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD |
| 足 | 1 時間足・中値・完成足のみ。ティックの無い足は作らない |
| 入口 | 1 時間足の終値。全部の足から建てる。買いと売りを両方 |
| 停止則 | 固定4・トレール4・建値移動3・時間3・利確のみ3・損切りのみ3 の二十通り。期限 24 本 |
| 規約 | 曖昧な足は保守的に倒す。トレールの最大益は前の足まで |
| コスト | 入れない |
| 検算 | 検算/F026.py(--zu で図も書き出す)。本文の数字はすべて 検算/F026_output.txt から取っている |
| 図 | 図/F026_zu1・図/F026_zu2(png・svg・英語版) |
| 乱数の種 | 固定。再実行しても同じ値が出る |
| 土台の検査 | _ツール/audit_bars.py(足の先読み・夏時間・日の区切り)。記録は _土台の検査.txt |
参考文献
- 山岸勇輝 (2026). 利確と損切りを四十九通りに置いても、期待値は動かない [F012]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22891608
- 山岸勇輝 (2026). 同じ足で両方の柵に触れたときの扱いが、勝率と期待値を作る [F025]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22892549
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「停止則が変えるのは損益の形であって、方向ではない」[F026]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22892604
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F026・DOI 10.5281/zenodo.22892604・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 停止則が変えるのは損益の形であって、方向ではない [F026]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F026 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22892604
Yamagishi, Y. (2026). A Stopping Rule Changes the Shape of the Profit and Loss, Not the Direction [F026]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F026; DOI: 10.5281/zenodo.22892604
@misc{yamagishi2026yoiF026,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {A Stopping Rule Changes the Shape of the Profit and Loss, Not the Direction},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F026},
doi = {10.5281/zenodo.22892604},
note = {Preprint}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
cfef7c09fe251c8d00f8d569f3530ca6ca344ced815ba3f00390d4359764e125 yamagishi_F026__20260922_jp.pdfadcc47037a87182cbb891e29c0f8f4bb0c29415a28fea6be4f223b1b65b36d35 yamagishi_F026__20260922_en.pdfPDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。