要旨
本稿が問うのは、片方のデータだけ夏に一時間ずれていたとき、存在しない予測がどれだけ作られるか、である。答えは、ゼロだったものが十二対すべてで有意になる。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。
第一に、時刻が正しければ、一時間先を当てる力は無い。 十二対の D は中央 −0.0363 pips、日次 t の絶対値が 2 以上になった対は 0 である(第3節)。
第二に、これが本稿の芯である。★ 夏のあいだだけ一時間ずらすと、十二対すべてが 2 を超える。 EURUSD → GBPUSD は 27.5623、GBPUSD → EURUSD は 28.5147 である(第3節)。
第三に、冬は何も変わっていない。 冬の差(ずれ − 正しい)は最大の絶対値 0.000000 である。★ 触ったのは夏だけなので、当然である。検算にはなるが発見ではない(第4節)。
第四に、★ ずれた夏の値は、同時刻の値そのものである。 十二対すべてで差の絶対値は 0.000000 である。一時間先を測っているつもりで、同じ一時間を測っていた(第5節)。
第五に、★ だから符号は、同時刻の相関の符号に従う。 USDJPY → XAUUSD は −8.6852、EURUSD → XAUUSD は 9.3861 pips である。「予測」の向きは、ただの同時刻の向きである(第5節)。
第六に、★ 年ごとに見ると、六年すべてで正になる対が 12 のうち 6 できる。 正しい時刻では 0 である。「六年中六年黒字」という見かけが、ずれだけで作られる(第6節)。
本稿の射程(scope note):新しい数学定理も新しい法則も主張しない。夏時間、時刻の突き合わせ、同時刻相関はすべて既知である。特定の商材や提唱者を論じない。実在の教材、その著者、販売元は主題ではなく、一切名指さない。実在のデータ提供元を論じない。ずれは本稿が意図的に作ったもので、どの提供元がずれているという主張はしない(第7節)。売買を論じない。コストもスリッページも入れておらず、中値で測っている(第7節)。予測の存在を主張しない。正しい時刻での一時間先はゼロであり、本稿はそれを確かめただけである(第3節)。ずれ方を一通りに固定している。欧州夏時間の期間だけ、一時間ぶんだけである(第7節)。射程は日中・少数銘柄に限る。四銘柄・六年・1 時間足の測定である。月次の時系列モメンタム(数十市場・保有1〜12ヶ月)は学術的に文書化されており、本稿はそれを否定しない。予測を主張しない。
1. 記法と問い
別々の出所のデータを突き合わせるとき、片方だけ現地時刻だったことがある。
| 言われること | 言われないこと |
|---|---|
| 片方が一時間先を予測している | 二つの時刻が同じ規約かどうか |
| どの年でも黒字だった | 夏と冬で成績が違わないか |
| t 値が大きいので確かである | 大きな t は、ずれでも作れること |
観察 1.1:★ 夏時間のある地域の現地時刻は、夏のあいだだけ協定世界時から一時間ずれる。 冬は一致する。
観察 1.2:★ そのとき「一時間先」を要求すると、夏のあいだは「同じ一時間」が返る。 同時刻の相関は強いので、予測でないものが予測に見える。
観察 1.3:分離子は、時刻の扱いである。 データ・量・対・期間をすべて固定し、夏のあいだの参照を一本ずらすかどうかだけを変える。 規約の取り方が答えを作る例は [F040] で、参照する時点の効果は [F041] で測ってある。
問い:夏だけ一時間ずれていると、存在しない予測はどれだけ作られるのか。
2. 測る量と設計を、先に書く
走らせる前に宣言し、実行時には変えていない。
| 格子 | 1 時間足(中値・完成足のみ)。時刻は協定世界時 |
| 先行 | その一時間の値動きの符号 |
| 後追い | 次の一時間の値動き(pips) |
| ずれ | 欧州夏時間(三月最終日曜 01:00 UTC 〜 十月最終日曜 01:00 UTC)のあいだだけ、後追いの参照を一本前にする(=同時刻になる) |
| 対 | 四銘柄から十二通りの順序対 |
| 測る量 | D =(先行の符号 × 後追いの値動き)の平均(pips)/日次 t /件数 |
| 同時刻 | 比べるために、後追いの同じ一時間の値動きでも測る |
| 分離子 | 時刻の扱い(正しいか、夏だけ一時間ずれているか) |
| 銘柄・期間 | USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD/2019–2024 |
観察 2.1:★ ずれは本稿が意図的に作っている。 どの提供元がずれているという主張はしない。測っているのは「ずれたら何が起きるか」である。
観察 2.2:対ごとに共通の時刻だけを使う。 USDJPY → EURUSD では 36,106 本で、夏の割合は 0.5802 である。
観察 2.3:★ 先行の符号は、その一時間の始値から終値への向きである。 完成した足なので、次の一時間を見るのに先読みは無い。
観察 2.4:十二通りの順序対をすべて測る。 ★ 先行と後追いを入れ替えた対も別に数える。
予言(測る前に書いた)
① 時刻が正しければ、一時間先の予測はゼロである。
② 夏だけ一時間ずらすと、夏の値が大きく正になり、冬は変わらない。
③ 夏冬をまとめても、正に出る。
④ ずらした版の夏の値は、同時刻の値とほぼ一致する。
⑤ 年ごとに見ると、ほとんどの年で正になる。
3. 時刻が正しいときと、夏だけ一時間ずれているとき
同じデータ・同じ量。違うのは夏のあいだの参照だけである。
計算 3.1 十二の順序対
| 先行 → 後追い | 正しい D | 正しい t | ずれ D | ずれ t |
|---|---|---|---|---|
| USDJPY → EURUSD | −0.0073 | −0.2899 | −1.5362 | −17.8202 |
| USDJPY → GBPUSD | −0.0264 | −0.7194 | −1.8679 | −15.2583 |
| USDJPY → XAUUSD | −0.0054 | 1.3851 | −5.3203 | −11.7157 |
| EURUSD → USDJPY | 0.0324 | 1.5019 | −1.9923 | −14.6412 |
| EURUSD → GBPUSD | −0.1260 | −0.9503 | 3.5583 | 27.5623 |
| EURUSD → XAUUSD | −0.3250 | −1.6847 | 5.5340 | 13.6119 |
| GBPUSD → USDJPY | 0.0951 | 1.4962 | −1.6107 | −10.8203 |
| GBPUSD → EURUSD | −0.0463 | −0.1187 | 2.5690 | 28.5147 |
| GBPUSD → XAUUSD | −0.2287 | −1.2349 | 4.8788 | 11.2282 |
| XAUUSD → USDJPY | 0.0614 | 1.8093 | −2.0629 | −11.7241 |
| XAUUSD → EURUSD | −0.0785 | −1.5087 | 1.5967 | 16.9711 |
| XAUUSD → GBPUSD | −0.1207 | −1.5175 | 1.9406 | 13.5275 |
観察 3.2:予言①は当たった。 正しい時刻の D は中央 −0.0363 pips、日次 t の絶対値が 2 以上になった対は 12 のうち 0 である。
観察 3.3:★ これが本稿の芯である。夏だけずらすと、十二対すべてが 2 を超える。 最大は GBPUSD → EURUSD の 28.5147、次が EURUSD → GBPUSD の 27.5623 である。
観察 3.4:★ 一つの対も例外が無い。 0 対 12 から 12 対 12 へ、ずれだけで移る。
観察 3.5:D の大きさも桁が変わる。 正しい時刻では −0.3250 から 0.0951 pips だが、ずらすと −5.3203 から 5.5340 pips になる。
観察 3.6:★ ただし中央値は 0.0303 pips で小さい。 符号が対によって割れるからである。十二対をまとめた一つの数だけ見ると、異変に気づけない。
4. 夏と冬に分ける
ずらしたのは夏だけである。冬は何も触っていない。
計算 4.1 十二対の中央
| 夏 正しい | 夏 ずれ | 冬 正しい | 冬 ずれ | |
|---|---|---|---|---|
| 十二対の中央 | −0.0109 | 0.0550 | −0.0957 | −0.0957 |
観察 4.2:冬の差(ずれ − 正しい)は、最大の絶対値が 0.000000 である。 ★ 触っていないので当然で、検算にはなるが発見ではない。
観察 4.3:★ 夏の差は中央 0.0887、幅 −8.7858 から 9.6806 である。 対によって符号も大きさもまったく違う。
観察 4.4:★ だから「夏と冬で成績が違う」を見れば気づける。 USDJPY → XAUUSD は夏 −8.6852、冬 −0.1612 pips である。
観察 4.5:逆に、夏と冬を分けずに一つの数で報告すると、気づけない。 ★ 中央値は 0.0303 pips で、正しい時刻の −0.0363 pips とさほど変わらない。

図1:十二の順序対について、D(先行の符号 × 後追いの次の一時間・pips)。左から正しい時刻、夏だけ一時間ずれ、同時刻である。
5. ずれた値は、何の写しか
ずらした版の夏を、同時刻の値と並べる。
計算 5.1 夏の値と、同時刻の値
| 先行 → 後追い | 夏 ずれ | 同時刻 | 差 |
|---|---|---|---|
| USDJPY → EURUSD | −2.6183 | −2.6183 | 0.000000 |
| USDJPY → XAUUSD | −8.6852 | −8.6852 | 0.000000 |
| EURUSD → GBPUSD | 6.1925 | 6.1925 | 0.000000 |
| EURUSD → XAUUSD | 9.3861 | 9.3861 | 0.000000 |
| GBPUSD → XAUUSD | 8.3689 | 8.3689 | 0.000000 |
| XAUUSD → GBPUSD | 3.2700 | 3.2700 | 0.000000 |
観察 5.2:★ 十二対すべてで、差の絶対値は 0.000000 である。 ずらした版の夏は、同時刻の値そのものである。
観察 5.3:★ つまり一時間先を測っているつもりで、同じ一時間を測っていた。 予言④は当たった。設計からそうなるので、これは検算である。
観察 5.4:★ だから符号は、同時刻の相関の符号に従う。 USDJPY → XAUUSD は −8.6852、EURUSD → XAUUSD は 9.3861 pips である。「予測」の向きは、ただの同時刻の向きである。
観察 5.5:同時刻の D を全期間で見ると、中央 −0.0306 pips・日次 t −0.5136 である。 ★ 夏冬をまとめると符号が割れて小さくなるので、対ごとに見なければ大きさは分からない。
6. 年ごとに見る
「N 年中 N 年黒字」という見かけが、ずれだけで作られるか。
計算 6.1 年ごとの中央と、正だった対の数
| 年 | 正しい 中央 | 正しいが正の対 | ずれ 中央 | ずれが正の対 |
|---|---|---|---|---|
| 2019 | 0.0403 | 7 | 0.0536 | 6 |
| 2020 | −0.0866 | 2 | 0.3131 | 6 |
| 2021 | −0.0265 | 6 | 0.2519 | 6 |
| 2022 | −0.1977 | 5 | 0.1736 | 6 |
| 2023 | −0.0388 | 3 | 0.1360 | 6 |
| 2024 | 0.0162 | 6 | 0.0033 | 6 |
観察 6.2:★ 六年すべてで正だった対は、ずれで 12 のうち 6、正しい時刻で 12 のうち 0 である。 予言⑤は当たった。
観察 6.3:★ 「六年中六年黒字」という見かけが、ずれだけで作られる。 しかも半数の対でそうなる。
観察 6.4:年 × 対の 72 通りで正だったのは、正しい時刻で 29、ずれで 36 である。 ★ 全体の割合だけ見ると差は小さい。効いているのは「同じ対がずっと正のままになる」という一貫性のほうである。
観察 6.5:ずれた版は、正の対の数が六年すべてで 6 である。 ★ 年ごとの中央値は 0.0033 から 0.3131 まで動くのに、どの対が正かは動かない。

図2:横が年、縦が十二対の D の中央(pips)。丸が正しい時刻、四角が夏だけ一時間ずれである。 点線は 0 である。
7. 限界
- ⚠️ ずれは本稿が意図的に作ったものである。 どの提供元がずれているという主張はしない。
- ずれ方を一通りに固定している。 欧州夏時間の期間だけ、一時間ぶんだけである。
- 量を一つに固定している。 先行の符号 × 後追いの次の一時間だけで、他の量では測っていない。
- 格子を一つに固定している。 1 時間足なので、ずれがちょうど一本ぶんになる。別の足種では効き方が変わる。
- 売買を論じていない。 コストもスリッページも入れておらず、中値で測っている。
- 同時刻の相関そのものを主題にしていない。 大きさも機序も測っていない。
- 正しい時刻での一時間先がゼロであることを、本稿は確かめただけである。 それ自体は既知である。
- 四銘柄・六年・1 時間足である。 他の市場、他の期間について述べるものではない。
結び
別々の出所のデータを突き合わせるとき、片方だけ現地時刻だったことがある。夏時間のある地域なら、夏のあいだだけ一時間ずれる。
時刻が正しければ、一時間先を当てる力は無い。 十二対の D は中央 −0.0363 pips、日次 t の絶対値が 2 以上になった対は 0 である。
★ 夏のあいだだけ一時間ずらすと、十二対すべてが 2 を超える。 最大は 28.5147、次が 27.5623 である。0 対 12 から 12 対 12 へ、ずれだけで移る。一つの対も例外が無い。
★ そしてずれた夏の値は、同時刻の値そのものである。 十二対すべてで差の絶対値は 0.000000。一時間先を測っているつもりで、同じ一時間を測っていた。
★ だから「予測」の向きは、ただの同時刻の向きである。 USDJPY → XAUUSD は −8.6852、EURUSD → XAUUSD は 9.3861 pips で、符号は同時刻の相関に従う。
★ 年ごとに見ると、六年すべてで正になる対が 12 のうち 6 できる。正しい時刻では 0 である。 「六年中六年黒字」という見かけが、ずれだけで、しかも半数の対で作られる。
そして気づける場所と、気づけない場所がある。 ★ 夏と冬に分ければ、USDJPY → XAUUSD は夏 −8.6852・冬 −0.1612 pips と一目で分かる。 だが十二対をまとめた中央値は 0.0303 pips で、正しい時刻の −0.0363 pips とさほど変わらない。まとめた一つの数だけ見れば、異変は消える。
したがって、別々の出所を突き合わせたら、まず夏と冬に分けて並べるべきである。 ★ そして大きな t は、確かさの証拠ではない。ずれでも作れる。
データと再現
| データ | 為替は Dukascopy 由来のティック(2019 年以降はミリ秒・bid・ask まで一致することを確認済み)。金は Dukascopy |
| 期間 | 2019–2024(六年) |
| 銘柄 | USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD(十二の順序対) |
| 足 | 1 時間足・中値・完成足のみ。時刻は協定世界時。ティックの無い足は作らない |
| そろえ | 対ごとに共通の時刻だけを使う(USDJPY → EURUSD で 36,106 本・夏の割合 0.5802) |
| 先行 | その一時間の始値から終値への向きの符号 |
| 後追い | 次の一時間の値動き(pips) |
| ずれ | 欧州夏時間(三月最終日曜 01:00 UTC 〜 十月最終日曜 01:00 UTC)のあいだだけ、後追いの参照を一本前にする |
| 測る量 | D =(先行の符号 × 後追いの値動き)の平均/日次 t /件数 |
| 検算 | 検算/F042.py(--zu で図も書き出す)。本文の数字はすべて 検算/F042_output.txt から取っている |
| 図 | 図/F042_zu1・図/F042_zu2(png・svg・英語版) |
| 土台の検査 | _ツール/audit_bars.py(足の先読み・夏時間・日の区切り)。記録は _土台の検査.txt |
参考文献
- 山岸勇輝 (2026). 練行足の転換点は、完成するまで転換点ではない [F040]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22894529
- 山岸勇輝 (2026). 分に丸めた記録のずれは、反応したかどうかに属している [F041]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22894667
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「一時間の時刻ずれは、存在しない予測を作る」[F042]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22894848
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F042・DOI 10.5281/zenodo.22894848・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 一時間の時刻ずれは、存在しない予測を作る [F042]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F042 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22894848
Yamagishi, Y. (2026). A One-Hour Timestamp Shift Manufactures a Prediction That Does Not Exist [F042]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F042; DOI: 10.5281/zenodo.22894848
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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