【M042】喘息の死亡率は 1995→2016 年に、どの年齢でも 0.066〜0.162 倍に下がった

要旨

喘息の死亡の減りがどの年齢で起きたかを、人口動態統計の第5.15表(死因年次推移分類 × 5 歳階級 × 年次)で確かめた。比べるのは、同じ分類の中の 1995 年(ICD-10 の適用の年)と 2016 年(2013 年版の適用の前の年)。年齢は 0〜59 歳・60〜69 歳・70〜79 歳・80〜89 歳・90 歳以上の 5 つに束ねた。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。

第一に、表どうしは一致する。年齢階級の和 = 総数、男 + 女 = 総数、人口(全死因の死亡数 ÷ 死亡率)から戻した喘息の率 = 表の率(第3節)。

第二に、ここが本稿の芯である。1995→2016 年に、喘息の死亡率はどの年齢でも 0.066〜0.162 倍に下がった(いちばん下がったのは 70〜79 歳の 0.066 倍、いちばん小さいのは 90 歳以上の 0.162 倍)。年齢をそろえた率の比は 0.093〜0.098 で、公表の年齢調整死亡率の比(男 0.073・女 0.126)の間にある(第4節)。

第三に、死亡数は 7,253 人から 1,455 人へ減った。 この変化は、率の下がりの分 -9,948 人と人口の変化の分 +4,151 人に分かれ、減りがいちばん大きいのは 80〜89 歳(-1,966)、いちばん小さいのは 90 歳以上(-200)である(第5節)。

第四に、亡くなる人の 80 歳以上の割合は 0.436 から 0.687 に上がった。 2016 年の人口に 1995 年の率をそのまま当てても 0.614 になり、上がり幅 0.250 のうち 0.708 は人口の構成(高齢化)で説明がつく(第6節)。

第五に、2017 年に死亡数は 1,455 人から 1,794 人へ 1.233 倍に跳ねた。 同じ死亡票を新旧の分類で数えた比は 1.236 で、2017 年の段差(前後の伸びで割った値)1.323 との差は 0.087 である(第7節)。

第六に、分けるのは率がどの年齢で下がったか、人がどの年齢にいるか。喘息で亡くなる人がほとんど高い年齢になったのは、高い年齢だけ率が下がり残ったからというより、率はどの年齢でも同じくらい下がり、そのあいだに人口が高い年齢へ移ったからである。

射程注記:本稿は新しい数学定理も新しい法則も主張しない。年齢別の死亡数と死亡率は人口動態統計にあり、本稿は年齢を束ねて比べ、変化を分けただけである。本稿は公開の集計データの数の形を述べる構造的解釈であり、医学的な助言・診断・治療の推奨ではない。著者は医師ではない。個人の健康に関する判断は医師・医療機関に相談すること。査読を経ていないプレプリントである。 喘息の死亡率が下がった理由(治療・薬・診断・環境など)には立ち入らない。 喘息にかかっている人の数は扱わない。死亡だけを見る。男女は分けず、年齢は 10 未満の升目を作らないよう束ねた。1995 年より前は分類が違うので、比べる年から外した(表と図には載せる)。都道府県や地域は比べない。データについて:人口動態統計(e-Stat)は政府標準利用規約(第2.0版)に、厚生労働省の資料は公共データ利用規約(第1.0版)に従って使い、本稿の率・比・分け方はそれらを加工して作成した。本稿が加えたこと:同じ分類の 1995→2016 年で、喘息の死亡率がどの年齢でも同じくらい下がったことを示し、亡くなる人の年齢が上がった分を人口の構成と率の違いに分けたこと、2017 年の段差を新旧比と並べたこと。

1. 記号と問い

  • 年齢階級:0〜59 歳・60〜69 歳・70〜79 歳・80〜89 歳・90 歳以上。
  • 人口:全死因の死亡数 ÷ 全死因の死亡率 × 100,000(5 歳階級ごと)。2000 年以前の 90 歳以上は、90 歳以上の死亡数の和 ÷ 90〜94 歳の欄の率(表の注:その年の 90〜94 歳の率は 90 歳以上の率)。
  • 率の下がりの分・人口の変化の分:年齢ごとに、(率の差)×(人口の平均)と(人口の差)×(率の平均)。二つの和は死亡数の変化に等しい。

問い:喘息の死亡の減りは、どの年齢で起きたか。亡くなる人の年齢が上がったのはなぜか。

観察 1.1:M024 と M038 は、死亡数の増えを年齢構成の押し上げと年齢調整の率の動きに分けた。本稿はそれを、減っていく死因(喘息)の年齢の中身に当てる。M041 は 2017 年の分類の変更が死因ごとの段差を言い当てることを示した。喘息はそこで比べた死因(2016 年に 3,000 人以上)に入らなかったので、本稿の第7節で見る。

2. 下見と設計

正直に書く:設計は表を見てから決めた。

内容
死亡数・死亡率 人口動態統計 令和6年 上巻 第5.15表(シート「総数」と「09喘息」・1950〜2024 年)
確かめ 第5.14表(年齢調整死亡率・2015 年モデル人口)、ICD-10 の一部改正の影響の資料の表3(喘息)、平成29年の概況の注(1995 年の ICD-10 の適用)
物差し 年齢別の死亡率の比、年齢をそろえた率の比、死亡数の変化の分け方、80 歳以上の割合の分け方
束ね方 0〜39 歳だけにすると 2024 年に 9 人で 10 未満になる → 0〜59 歳に束ねた
途中で気づいたこと 2000 年以前の 90〜94 歳の率が 90 歳以上の率であることを見落とし、1995 年の 90 歳以上の率を最初 201.33 と出していた。人口から戻した率と表の率の突き合わせで落ちて気づき、直した(正しくは 153.37)

3. データと確かめ

計算 3.1 取得した 4 本のファイルを SHA-256 で固定し、次を確かめた。

  • 喘息の死亡数:年齢階級の和(不詳を含む 22 階級)= 総数(3 つの性 × 24 回)、男 + 女 = 総数。
  • 2000 年以前は 95〜99 歳の死亡率が「…」(表の注どおり、90〜94 歳の欄が 90 歳以上の率)。人口から戻した喘息の率 = 表の喘息の率(61 升・丸めの幅の中)。
  • 本稿が出す升目(6 つの年と 2017 年 × 5 つの年齢)の喘息の死亡数は 10 以上。
  • 平成29年の概況の注に「ICD-10(2003年版)(平成7年1月適用)」とある。影響の資料の表3の喘息は、新 278・旧 225(新旧比 123.6)。

4. 芯、率は、どの年齢でも同じくらい下がった

計算 4.1 喘息の年齢別死亡率(人口 10 万対・男女計)

年齢 1950 1970 1990 1995 2016 2024
0〜59 歳 5.49 2.08 1.08 1.11 0.14 0.11
60〜69 歳 123.33 29.50 7.80 7.41 0.63 0.51
70〜79 歳 285.98 93.29 25.38 24.78 1.64 1.09
80〜89 歳 372.00 212.35 68.68 72.55 6.18 3.72
90 歳以上 293.49 299.53 126.85 153.37 24.87 13.66

計算 4.2 1995 → 2016 年(同じ分類)

年齢 死亡率 1995 → 2016 倍率 死亡数 1995 → 2016 率の下がりの分 人口の変化の分
0〜59 歳 1.11 → 0.14 0.124 1,093 → 113 -879 -101
60〜69 歳 7.41 → 0.63 0.085 1,024 → 115 -1,090 +181
70〜79 歳 24.78 → 1.64 0.066 1,970 → 228 -2,524 +782
80〜89 歳 72.55 → 6.18 0.085 2,487 → 521 -3,936 +1,970
90 歳以上 153.37 → 24.87 0.162 678 → 478 -1,519 +1,319

観察 4.3:5 つの年齢すべてで、率は 0.2 倍より小さくなった(0.066〜0.162 倍)。 いちばん下がったのは 70〜79 歳(0.066 倍)、いちばん小さいのは 90 歳以上(0.162 倍)で、0〜59 歳と 60〜69 歳・80〜89 歳は 0.085〜0.124 倍である。どこか一つの年齢だけで下がったのではない。

観察 4.4:年齢をそろえた率の比は 0.093(1995 年の人口で重み)〜0.098(2016 年の人口で重み)。 公表の年齢調整死亡率(2015 年モデル人口)は男 17.7 → 1.3(0.073 倍)・女 8.7 → 1.1(0.126 倍)で、本稿の比はその間にある。粗死亡率の比は 0.200 で、年齢構成の押し上げは 2.027〜2.146 である。

図1 喘息の年齢別死亡率

図1:喘息の年齢別死亡率(縦は対数)。点線は分類の変わり目(1995 年の ICD-10 の適用と 2017 年の 2013 年版の適用)。1995 年から 2016 年にかけて、5 つの線がそろって下がる。

5. 死亡数の減りを、率と人口に分ける

観察 5.1:死亡数は 1995 年 7,252 人(年齢不詳を除く)から 2016 年 1,455 人へ、-5,797 人。 率の下がりの分は -9,948 人、人口の変化の分は +4,151 人で、人口が高い年齢へ移ったことが減りの一部を打ち消した。年齢ごとには、80〜89 歳の減り(-1,966)がいちばん大きく、70〜89 歳で減りの 0.640 を占める。90 歳以上の減りは -200 人といちばん小さい:率の下がりの分(-1,519)を人口の変化の分(+1,319)がほとんど打ち消した(90 歳以上の人口は 44 万人から 192 万人へ)。

6. 亡くなる人の年齢が上がったのは、率の違いか、人口の構成か

観察 6.1:亡くなる人の 80 歳以上の割合は、1995 年 0.436 から 2016 年 0.687 に上がった。 2016 年の人口に 1995 年の率をそのまま当てると(率がどの年齢でも同じ倍率で下がったのと同じ)、80 歳以上の割合は 0.614 になる。上がり幅 +0.250 のうち、人口の構成の分は +0.177(0.708)、年齢で率の下がり方が違った分は +0.073 である。

図2 喘息で亡くなった人の年齢

図2:喘息の死亡数を年齢階級で積み上げた(1990〜2010 年は 5 年おき、2014 年からは毎年)。

7. 2017 年の段差

観察 7.1:2017 年に死亡数は 1,455 人から 1,794 人へ 1.233 倍に跳ねた。 同じ死亡票を新旧の分類で数えた比は 1.236(旧 225・新 278)。前後の伸び(0.932)で割った 2017 年の段差は 1.323 で、新旧比との差は 0.087 である。2017 年から 2024 年(同じ 2013 年版の分類)には 1,794 人から 1,088 人へ 0.606 倍になった。

8. 限界

  1. 死亡だけを見ており、喘息にかかっている人の数や重さは扱わない。
  2. 男女を分けていない。 公表の年齢調整死亡率の比は男 0.073・女 0.126 と違う。
  3. 年齢は 5 つに束ねたので、束の中の年齢の偏り(たとえば 0〜59 歳の中)は分けていない。
  4. 死因の分類は 1995 年と 2017 年に変わっている。 比べたのは同じ分類の中の 1995〜2016 年である。
  5. 率が下がった理由には立ち入らない。 一人の見通しではない。

結び

1995→2016 年に、喘息の死亡率はどの年齢でも 0.066〜0.162 倍に下がった。死亡数は 7,253 人から 1,455 人へ減り、亡くなる人の 80 歳以上の割合は 0.436 から 0.687 に上がったが、その上がり幅の 0.708 は人口の高齢化で説明がつく。

分けているものは一つ、率がどの年齢で下がったか、人がどの年齢にいるか。

「ある病気で亡くなる人は、いまはほとんど高齢者」と聞いたら、年齢ごとの率がどう動いたかと、人口がどの年齢にいるかを、一緒に確かめる。

データと再現

データ 人口動態統計 令和6年(確定数)上巻 第5.15表・第5.14表(e-Stat・2026 年 9 月 26 日に取得)、厚生労働省「ICD-10 の一部改正の適用による死因統計への影響について」・平成29年 人口動態統計月報年計(概数)の概況(同日取得)
利用条件 e-Stat は政府標準利用規約(第2.0版)、厚生労働省のページは公共データ利用規約(第1.0版)に従う。本稿の率・比・分け方は、これらを加工して作成したもので、国が作成した数ではない
範囲 日本・男女計・1950〜2024 年(比べるのは 1995 年と 2016 年)
検算 検算/M042.py(--zu で図も書く)。本文の数字はすべて 検算/M042_output.txt から取った
生データ data/ に取得した 4 本と SOURCES.md(URL・取得日・SHA-256・利用条件・定義と計算の置き方)
図 図/M042_zu1・図/M042_zu2(png・svg・英語版)

参考文献

  • 厚生労働省. ICD-10 の一部改正の適用による死因統計への影響について(2026年9月26日に利用). https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/icd_2013_eikyo.pdf
  • 厚生労働省. 平成29年 人口動態統計月報年計(概数)の概況 結果の概要(2026年9月26日に利用). https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai17/dl/kekka.pdf
  • 厚生労働省. 人口動態統計 令和6年(確定数)上巻 第5.14表・第5.15表. e-Stat(2026年9月26日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
  • 山岸勇輝 (2026). がんで亡くなる人は増え、年齢調整の率は下がった。年齢構成の押し上げは、部位で乳房の 1.433 倍から前立腺の 2.918 倍まで違う [M024]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22968432
  • 山岸勇輝 (2026). 心不全の死亡が増えたのは年齢構成のためで、心疾患に占める割合が上がったのは急性心筋梗塞が速く減ったため、1995→2020 年の男性で心不全は粗死亡率 2.070 倍・年齢調整死亡率 0.844 倍、急性心筋梗塞の年齢調整死亡率は 0.279 倍 [M038]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22974029
  • 山岸勇輝 (2026). 2017 年の肺炎の死亡の減りは、同じ死亡票を新旧の分類で数え直した比でほぼ言い当てられる。肺炎は実際の段差 0.826 に対して新旧比 0.810、65 の死因で相関 0.969、減った分は認知症・アルツハイマー病・心不全・COPD などへ移った [M041]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22974374

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「喘息の死亡率は 1995→2016 年に、どの年齢でも 0.066〜0.162 倍に下がった」[M042]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22974412

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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M042・DOI 10.5281/zenodo.22974412・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 喘息の死亡率は 1995→2016 年に、どの年齢でも 0.066〜0.162 倍に下がった [M042]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M042 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22974412

Yamagishi, Y. (2026). Asthma Death Rates Fell to 0.066–0.162 Times at Every Age from 1995 to 2016 [M042]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M042; DOI: 10.5281/zenodo.22974412

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