【論文973】膜を通る溶質の液では、浸透圧濃度が等しくても細胞は縮まずに膨らみ続ける

要旨

水だけが膜を通る細胞は、同じ倍率の濃さの違いでも縮むほうが膨らむより速く落ち着く(論文966)。そこでは尿素やブドウ糖のように膜を通る溶質を入れなかった。本稿は、966 の細胞(浸透で動かない体積の割合 0.4)に膜を通る溶質を加え、水との通りやすさの比 ω(置いた値)ごとに、通る溶質だけで 290 mOsm の液と、食塩水 290 mOsm に通る溶質 290 mOsm を足した液で、体積の動きを数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、通る溶質だけの液では、細胞は一度も縮まずに膨らみ続ける。四つの ω(0.1・1・10・1000)のすべてで、体積の最小は $1.000000$ だった(第2節)。

第二に、膨らみ続ける速さは溶質の通りやすさで決まる。体積が 1.6 倍(置いた目安)に届く時間は、ω = 0.1・1・10・1000 で $\mathbf{10.4680}$・$2.1330$・$1.0468$・$0.9015$ で、溶質がすぐに行き渡る極限の閉じた式 $0.900000$ に近づいた(第2節)。

第三に、食塩水に通る溶質を足すと、一度だけ縮んで元に戻る。最小の体積は ω = 0.1・1・10・1000 で $\mathbf{0.732948}$・$0.835040$・$0.956697$・$0.999405$、その時間は $0.7286$・$0.4114$・$0.1398$・$0.0041$ で、最後はどれも 1 に戻った(ω = 0.1 は時間 60 で $0.998592$)(第3節)。

第四に、通りにくい溶質ほど、通らない溶質に近い深さまで縮む。ω が小さいほど一度縮む深さは深く、通らない溶質だけで 580 mOsm にしたときの落ち着く体積 $0.700000$(966)に近づいた(第3節)。

第五に、分離子は、溶質が膜を通るか通らないかである。浸透圧濃度で数えると通る溶質も通らない溶質も同じに数えられるが、通る溶質は時間が経つと中と外で等しくなり、水を動かす働きを失う。働きを失うまでの時間が、膨らみ続ける速さと縮む深さを決めた(第4節)。

キーワード:膜を通る溶質、細胞の体積、浸透圧、尿素、膜の輸送、溶血。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。膜を通る溶質が時間とともに中と外で等しくなり、水を動かす働きを失うこと、浸透圧濃度が等しくても膜を通る溶質の液では細胞が膨らみうること、水と溶質の二つの通りやすさで体積の動きを書く式、一度縮んで戻る動きから溶質の通りやすさを測る方法は、いずれも生理学と膜の輸送で知られている。置いた値である。浸透で動かない体積の割合 0.4 と時間の単位は 966 と同じで、通りやすさの比 ω(0.1・1・10・1000)と溶血の目安の体積 1.6 は本稿で置いた。どの溶質・細胞の値も主張しない。溶質と水の結びつきを入れない。溶質が水の流れに引かれる分(反射係数)、膜の張り、細胞が体積を戻す働き、溶血そのものは入れず、面積は一定とした。医療の使い方を述べない。どの液をいつ使うべきかは扱わない。既刊との関係:論文966 の射程注記は、水だけが膜を通ると置き、尿素やブドウ糖のように膜を通る溶質、溶血する体積、膜の張り、細胞が体積を戻す働きは入れないと書いた。本稿はそのうち膜を通る溶質の席に座る(先客なし)。論文966 は、水だけが通る膜で、細胞は同じ倍率の濃さの違いでも縮むほうが膨らむより速く落ち着くことを示した。ここでは、同じ細胞に膜を通る溶質を加え、浸透圧濃度が等しい液でも体積が動くことを数える。論文922 は、生理食塩水の浸透圧濃度を数え、尿素とブドウ糖は膜を通ると置いた前提で比べた。ここではその前提を時間の動きとして数える。加えたのは、通る溶質だけの液で体積が膨らみ続ける時間を四つの ω で出したこと、極限の閉じた式と比べたこと、食塩水に通る溶質を足した液で一度縮む深さと時間を出したこと、その深さが通らない溶質の値に近づくことを示したこと、分離子を「膜を通るか通らないか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:論文966 と同じく体積をもとの体積との比 $x$、浸透で動かない割合 $b=0.4$、膜の面積は一定とする。中の通らない溶質は $1-b$(290 mOsm×もとの体積を単位)、中の通る溶質を $m$、外の通らない溶質を $r_i$、通る溶質を $r_p$(290 mOsm を単位)とすると、

$$\frac{dx}{dt}=\frac{1-b+m}{x-b}-(r_i+r_p),\qquad \frac{dm}{dt}=\omega\left(r_p-\frac{m}{x-b}\right)$$

とする。$\omega$ は溶質の通りやすさを水の通りやすさで割った比で、0.1・1・10・1000 を置いた。二つの液は、通る溶質だけの液($r_i=0$・$r_p=1$)と、食塩水に通る溶質を足した液($r_i=1$・$r_p=1$)である。溶質がすぐに行き渡る極限では $m=r_p(x-b)$ で、通る溶質だけの液では $(x-b)^2=(1-b)^2+2(1-b)t$ になる。

問い:膜を通る溶質があると、浸透圧濃度が等しい液でも細胞の体積はどう動くか。

2. 通る溶質だけの液

計算 2.1:通る溶質だけで 290 mOsm の液。

$\omega$ 体積の最小 体積 1.6 に届く時間
$0.1$ $1.000000$ $\mathbf{10.4680}$
$1$ $1.000000$ $2.1330$
$10$ $1.000000$ $1.0468$
$1000$ $1.000000$ $0.9015$

溶質がすぐに行き渡る極限の閉じた式で 1.6 に届く時間は $0.900000$ で、ω = 1000 の $0.9015$ と 0.01 以内だった。

観察 2.2 通る溶質だけの液では、細胞は一度も縮まずに膨らみ続ける。初めは中と外の浸透圧濃度が等しく水は動かないが、溶質が入ると中が濃くなり、水が入り続けた。膨らみ続ける速さは ω とともに上がり、ω = 0.1 では 1.6 に届くまで $10.4680$、ω = 1000 では極限に近い $0.9015$ だった。

3. 食塩水に通る溶質を足した液

計算 3.1:食塩水 290 mOsm に通る溶質 290 mOsm を足した液。

$\omega$ 体積の最小 その時間 最後の体積
$0.1$ $\mathbf{0.732948}$ $0.7286$ $0.998592$
$1$ $0.835040$ $0.4114$ $1.000000$
$10$ $0.956697$ $0.1398$ $1.000000$
$1000$ $0.999405$ $0.0041$ $1.000000$

最後の体積は ω = 0.1・1・10 で時間 60、ω = 1000 で時間 5 の値である。通らない溶質だけで 580 mOsm にした 966 の落ち着く体積は $0.700000$ である。

観察 3.2 食塩水に通る溶質を足すと、一度だけ縮んで元に戻る。初めは外が 580 mOsm 相当で水が出て縮み、溶質が入るにつれて水が戻った。四つの ω とも、ω が大きいほど縮む深さは浅く早く底を打ち、ω = 0.1 では通らない溶質の $0.700000$ に近い $0.732948$ まで縮んだ。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、溶質が膜を通るか通らないかである。浸透圧濃度で数えると、通る溶質も通らない溶質も同じ 290 mOsm に数えられる。通る溶質は中と外で等しくなるにつれ水を動かす働きを失い、通らない溶質は働きを持ち続ける。通る溶質だけの液では働きのない外に対して中の通らない溶質が水を引き続け、食塩水を足した液では働きを失うまでの一時だけ縮んだ。その時間が ω で決まった。

観察 4.2 言わないこと。実在の尿素やブドウ糖の透過係数、反射係数、膜の張り、体積を戻す働き、溶血そのもの、医療の使い方は扱わない。示したのは、水と溶質の二つの通りやすさの模型で、浸透圧濃度が等しい液でも細胞の体積が動き、その速さと深さが通りやすさで決まることである。

5. 点呼と結び

  1. 水と溶質の二つの式(第1節):966 の細胞に通る溶質を足す。
  2. 通る溶質だけの液で最小 $1.000000$(計算 2.1):縮まずに膨らみ続ける。
  3. 1.6 に届く時間 $\mathbf{10.4680}$〜0.9015(計算 2.1):極限の式 0.900000 に近づく。
  4. 食塩水を足すと最小 $\mathbf{0.732948}$〜0.999405(計算 3.1):一度だけ縮んで戻る。
  5. ω が小さいほど 0.700000 に近い(計算 3.1):通らない溶質に近づく。
  6. 膜を通るか通らないか(観察 4.1):分離子・論文966 の射程注記。

結び:膜を通る溶質の液では、浸透圧濃度が等しくても細胞は縮まずに膨らみ続ける。966 の細胞に通る溶質を加えると、通る溶質だけで 290 mOsm の液では体積の最小は四つの ω とも $1.000000$ で、1.6 に届く時間は ω = 0.1 で $10.4680$、1000 で $0.9015$ だった。食塩水に通る溶質を足すと一度だけ縮み、最小は ω = 0.1 で $0.732948$、1000 で $0.999405$ で、最後は元の体積に戻った。分離子は、溶質が膜を通るか通らないかである。既刊との位置:論文966 が水だけの膜で数えた体積の動きに、論文966 が入れなかった膜を通る溶質を加え、論文922 が前提として置いた通る溶質の働きを時間の動きで数えた。正直に言えば、反射係数も体積を戻す働きも入れていない。二つの通りやすさだけで、等しい浸透圧濃度の液で体積がどう動くか、そこまでである。

参考文献

  1. Atkins, P., & de Paula, J. (2006). Physical Chemistry. Oxford University Press.
  2. Kedem, O., & Katchalsky, A. (1958). Thermodynamic analysis of the permeability of biological membranes to non-electrolytes. Biochimica et Biophysica Acta.
  3. 山岸勇輝 (2026). 『生理食塩水は粒を数えると六パーセント濃いが、浸透係数を入れると血漿とほぼ等しい』[論文922]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/922
  4. 山岸勇輝 (2026). 『細胞は同じ倍率の濃さの違いでも、縮むほうが膨らむより速く落ち着く』[論文966]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/966

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「膜を通る溶質の液では、浸透圧濃度が等しくても細胞は縮まずに膨らみ続ける」[論文973]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/973

YOI 973第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 膜を通る溶質の液では、浸透圧濃度が等しくても細胞は縮まずに膨らみ続ける [論文973]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/973

Yamagishi, Y. (2026). In a Solution of Membrane-Permeant Solute, a Cell Never Shrinks and Keeps Swelling Even at Equal Osmolality [Paper 973]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/973

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  year = {2026},
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