要旨
埋葬・火葬・改葬の件数を、衛生行政報告例(令和6年度、厚生労働省【生活衛生】第6表)で数え、人口・経済センサスと突き合わせた。
火葬率は 99.9771%。 総数 1,674,520 件のうち火葬が 1,674,137 件、埋葬(いわゆる土葬)は 383 件しかない。
その383件のうち250件、65.3%が神奈川県に集中している。 埋葬が1件以上あった都道府県は29で、残る18は0である。
改葬(いわゆる墓じまい)は 176,105 件。火葬の 10.5% にあたる。 うち無縁墳墓等の改葬が 3,006 件(1.7%)。人口10万人あたりでは長崎県529から福井県33まで 16.2倍 の開きがある。
北海道の改葬は 14,628 件で、全国の 8.3%。 北海道の人口は全国の4.0%なので、2倍の集中である。人口10万人あたり293で47都道府県中4位。
経済センサスの火葬・墓地管理業(795)は 1,568 事業所。1事業所あたり年 1,067.7 件の火葬にあたるが、火葬場は市町村が運営していることが多く、事業所として現れないことがある。
人口10万人あたりの火葬と高齢化率の相関は r = +0.936 ときわめて強い。
1. はじめに
I002 は介護の需要(認定者)を事業所で割り、I001 は車の台数を整備工場で割った。どちらも「その商売が相手にする量」を数えたものである。
亡くなる人の数は、公的統計でもっとも正確に数えられている量の1つである。そして、その処理(埋葬・火葬)には市町村長の許可が要り、件数が全国と都道府県で公表されている。
同じ表には、改葬も載っている。墓を移すことで、いわゆる墓じまいを含む。
いま日本で、土葬は何件あるのか。そして墓じまいは何件あるのか。
2. データ
| 埋葬・火葬・改葬 | 厚生労働省「令和6年度 衛生行政報告例」【生活衛生】第6表 埋葬及び火葬の死体・死胎数並びに改葬数(令和6年度中の件数) |
| 経済センサス | 「令和3年 経済センサス-活動調査」産業小分類 795 火葬・墓地管理業/796 冠婚葬祭業(令和3年6月1日) |
| 人口・65歳以上 | 総務省「住民基本台帳に基づく人口」2026年1月1日 |
47都道府県すべての行がそろい、合計は全国の欄と一致する(総数 1,674,520、埋葬 383、火葬 1,674,137、改葬 176,105)。内訳も死体 1,658,693 + 死胎 15,827 = 1,674,520 で総数と合う。
衛生行政報告例には市区町村別が無い(都道府県・指定都市・中核市まで)。本稿は都道府県を単位とし、経済センサスは市区町村の値を都道府県ごとに合計した。
これらは墓地埋葬法にもとづき市町村長が出した許可の件数である。
3. 結果
3-1 火葬率99.9771%、土葬は383件
| 件数 | 割合 | |
|---|---|---|
| 総数 | 1,674,520 | |
| 火葬 | 1,674,137 | 99.9771% |
| 埋葬(土葬) | 383 | 0.0229% |
| うち死体 | 108 | |
| うち死胎 | 275 |
日本の火葬率が高いことは知られているが、残りが何件かは、この表を開かないと分からない。
土葬383件のうち、死体は108件しかない。 残る275件は死胎(妊娠4か月以後の死児)である。
3-2 土葬の65.3%は神奈川県
| 埋葬が多い | 件数 |
|---|---|
| 神奈川県 | 250 |
| 東京都 | 24 |
| 福岡県 | 23 |
| 埼玉県 | 12 |
| 愛知県 | 12 |
埋葬が1件以上あった都道府県は29。18の都道府県は0である。
神奈川県の250件は、全国383件の 65.3% にあたる。1つの県に集中している。土葬を受け入れる墓地の有無によるとみられるが、本稿では確かめていない。
3-3 改葬(墓じまい)は176,105件
| 件数 | ||
|---|---|---|
| 改葬 | 176,105 | 火葬の 10.5% |
| うち無縁墳墓等の改葬 | 3,006 | 改葬の1.7% |
人口10万人あたりでは全国 142.3、中央値 148.2。
| 人口10万人あたりの改葬 | 多い | 少ない |
|---|---|---|
| 長崎529/山口373/鹿児島365 | 新潟83/宮城62/福井33 |
上と下で 16.2倍 の開きがある。
| 火葬に対する改葬の比(全国10.5%) | 高い | 低い |
|---|---|---|
| 長崎32.2%/山口23.3%/鹿児島22.1% | 山形4.8%/宮城4.8%/福井2.3% |
長崎県では、火葬3件に対して改葬1件が起きている。 福井県では44件に1件である。
件数で見ると、集中の形が変わる。
| 件数が多い | 改葬 | 全国に占める割合 | その県の人口の割合 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 14,628 | 8.3% | 4.0% |
| 東京都 | 12,982 | 7.4% | 11.4% |
| 大阪府 | 10,376 | 5.9% | 7.1% |
| 兵庫県 | 9,431 | 5.4% | 4.3% |
| 神奈川県 | 9,331 | 5.3% | 7.4% |
北海道だけが、人口の割合の2倍の改葬を出している。 東京都と神奈川県は逆に、人口の割合より小さい。
3-4 改葬は北海道に集まっている

図1 人口10万人あたりの改葬件数(47都道府県、令和6年度)。
灰色は都道府県、橙は北海道、青の破線は全国の142.3。
北海道は人口10万人あたり 293で47都道府県中 4位。火葬に対する比は 18.7% で5位である。無縁墳墓等の改葬は239件で、全国3,006の8.0%にあたる。
長崎・山口・鹿児島が上位に並ぶのは、離島や過疎地から本土・都市部へ墓を移す動きとみられるが、本稿は移動先を見ていないので確かめていない。
3-5 火葬1件あたりの事業所
| 事業所(令和3年) | 1事業所あたりの火葬(年) | |
|---|---|---|
| 795 火葬・墓地管理業 | 1,568 | 1,067.7件 |
| 796 冠婚葬祭業 | 12,501 | 133.9件 |
795は都道府県ごとに大きく違う。
| 795の1事業所あたりの火葬 | 多い | 少ない |
|---|---|---|
| 鳥取2,766件/宮城2,403件/岩手2,020件 | 奈良644件/島根567件/高知410件 |
中央値は1,121件。上と下で6.7倍の差があるが、これは需要の差というより、火葬場が事業所として数えられているかどうかの差である可能性が高い。
火葬場の多くは市町村が設置・運営している。 自治体が直営する火葬場は、経済センサスの事業所として現れないことがある。795が0の市区町村は全国1,889のうち 1,120 ある。
796 冠婚葬祭業には結婚式場業も含まれるため、葬儀だけの事業所数ではない。
3-6 高齢化率と火葬
| 人口10万人あたりの火葬(全国1,353) | 多い | 少ない |
|---|---|---|
| 秋田1,970/和歌山1,919/高知1,819 | 愛知1,155/神奈川1,144/東京1,030 |
高齢化率との相関は r = +0.936。 この一連で見たなかで、もっとも強い相関である。
亡くなる人の数が年齢構成で決まるのは当然だが、同じ表の改葬との相関は r = +0.336 にとどまる。 人が亡くなる数は年齢で決まっても、墓を移す数はそうではない。
3-7 釧路総合振興局管内
衛生行政報告例に市区町村別が無いため、経済センサスの数字のみを示す。
| 市町村 | 人口 | 795 火葬・墓地管理業 | 796 冠婚葬祭業 |
|---|---|---|---|
| 釧路市 | 151,566 | 1 | 22 |
| 釧路町 | 18,021 | 0 | 1 |
| 厚岸町 | 7,976 | 0 | 1 |
| 浜中町 | 5,172 | 1 | 0 |
| 標茶町 | 6,698 | 0 | 2 |
| 弟子屈町 | 6,327 | 0 | 2 |
| 鶴居村 | 2,368 | 1 | 1 |
| 白糠町 | 6,840 | 0 | 3 |
795が0の市区町村は全国で 1,120/1,889、796が0は 357/1,889。
管内では795がある市町村は3つだけ(釧路市・浜中町・鶴居村)。ただし火葬場が無いという意味ではない。自治体が直営していれば、事業所として現れない。
4. 考察
4-1 残りの0.0229%を数える
「日本の火葬率はほぼ100%」は正しい。だが383件という実数は、この表を開かなければ出ない。
そして、その383件は全国に散らばっていない。29都道府県にしか無く、65.3%が神奈川県にある。 割合で語ると消えてしまうものが、実数で見ると残る。
R003 で「町に1軒だけの商売」を数えたのと同じ発想である。0に近い数を、0として扱わない。
4-2 改葬は、人が亡くなる数では決まらない
火葬の数は高齢化率でほぼ決まる(r = +0.936)。だが改葬は、高齢化率との相関が +0.336 にとどまり、火葬との相関も +0.347 である。
人口10万人あたりで16.2倍、火葬に対する比で14.0倍(長崎32.2% ⇔ 福井2.3%)の開きがある。これは亡くなる人の数では説明できない。
北海道が全国の8.3%(人口の割合の2倍)を占めることも、同じ向きである。墓を移す動きは、その土地に墓があり、そこに人がいなくなったという条件から生まれるとみられるが、本稿はそれを確かめていない。
4-3 自治体が持っている商売は、事業所に現れない
795 火葬・墓地管理業は全国1,568事業所で、火葬1,674,137件を割ると1事業所あたり1,067.7件になる。都道府県ごとには410件から2,766件まで6.7倍開く。
これを「地域による忙しさの差」と読むのは危うい。火葬場の多くは市町村の直営で、経済センサスの事業所として現れない。 1,889市区町村のうち1,120で795が0である。
I006 の簡易宿所(許可44,901に対し事業所3,265)と似ているが、理由が違う。あちらは小さすぎて事業所にならない。こちらは公営だから事業所にならない。
経済センサスで地域の商売を数えるとき、自治体がやっている部分は抜け落ちる。 R001〜R003 の「ある/無い」にも、この抜けが入っている。
5. 限界
- 衛生行政報告例は令和6年度中の件数、経済センサスは令和3年6月1日、人口は2026年1月1日。時点が違う
- 埋葬・火葬・改葬は墓地埋葬法にもとづき市町村長が出した許可の件数であって、実際に行われた件数と一致するとは限らない
- 「改葬」は墓を移すことで、いわゆる墓じまいを含むが同じものではない。墓を撤去して合葬墓や散骨に移す場合も、別の墓地へ移す場合も含む
- 神奈川県に埋葬が集中する理由は、本稿では確かめていない
- 改葬の移動先は見ていない
- 火葬場の多くは市町村が設置・運営しており、経済センサスの事業所として現れないことがある
- 796 冠婚葬祭業には結婚式場業も含む。 葬儀だけの事業所数ではない
- 衛生行政報告例には市区町村別が無い。釧路管内はセンサスの値のみ
- 費用・墓地の数・埋葬の形(樹木葬・海洋散骨など)は見ていない
6. 再現の手順
- e-Stat から「令和6年度 衛生行政報告例」【生活衛生】第6表(CSV)を取得する。指定都市・中核市の再掲行があるので、都道府県の行だけを使う
- 47県の合計が全国の欄と一致すること、死体+死胎=総数になることを確かめる(総数 1,674,520/埋葬 383/火葬 1,674,137/改葬 176,105)
- e-Stat から令和3年 経済センサスの産業小分類別 事業所数(市区町村別)を取得し、795 と 796 を都道府県ごとに合計する
- 住民基本台帳の人口・65歳以上人口を都道府県ごとに合計する
- 火葬率、人口10万人あたりの改葬件数、火葬に対する改葬の比、795の1事業所あたりの火葬件数を出す
本稿の数値は、すべて1本のスクリプト(kensan_198)の出力である。中間の数値を手で書き写していない。
この論文の位置づけ
新しい理論を主張するものではない。墓地埋葬法にもとづく許可の件数を、人口と経済センサスの事業所数と並べて読んだものである。火葬率の「残り」を実数で数え、改葬の地域差を示し、公営の施設が経済センサスに現れにくいことを1つの例で確かめた。神奈川県への埋葬の集中と、改葬の地域差の原因については、確かめていない。
参考文献・データの出典
- 厚生労働省「令和6年度 衛生行政報告例」【生活衛生】第6表
- 総務省統計局・経済産業省「令和3年 経済センサス-活動調査」産業小分類別 事業所数(市区町村別)
- 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」2026年1月1日現在
- 山岸勇輝「町に1軒だけの商売」(R003)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22872474
- 山岸勇輝「介護の事業所1か所あたりの認定者」(I002)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22875542
- 山岸勇輝「宿の数は、統計によって13.7倍ちがう」(I006)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876047
- 山岸勇輝「「公衆浴場」23,668のうち、銭湯は2,730」(I009)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876425
版の記録
| 版 | 日付 | 内容 |
|---|---|---|
| 第1版 | 2026-09-21 | 初出 |
引用のしかた
山岸勇輝(2026)「土葬は383件、火葬は1,674,137件、そして改葬(墓じまい)は176,105件 [I010]」Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876503
(この DOI は concept DOI。常に最新の版を指す。引用にはこれを使う)
© 2026 山岸 勇輝(Yuuki YAMAGISHI)
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書誌
山岸勇輝(2026)「土葬は383件、火葬は1,674,137件」[I010]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22876503
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 土葬は383件、火葬は1,674,137件 [I010]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I010 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22876503
Yamagishi, Y. (2026). 383 Burials, 1,674,137 Cremations [I010]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I010; DOI: 10.5281/zenodo.22876503
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