【I011】届出を要する食品営業は865,122

要旨

2021年6月の食品衛生法改正でできた届出の制度について、施設数を衛生行政報告例(令和6年度末、厚生労働省【食品衛生】第6表-1)で数え、I005 の許可・経済センサスと突き合わせた。

届出を要する食品関係営業施設は 865,122。 内訳は販売業375,993(43.5%)、旧許可業種であった営業313,215(36.2%)、製造・加工業90,588(10.5%)、左記以外85,326(9.9%)で、4つの合計は総数とぴったり一致する。

そのうち 174,742(20.2%)は自動販売機である。 コップ式自動販売機119,157と、それ以外の自動販売機による販売業55,585。届出の5件に1件は、人のいない機械である。

I005 の許可 1,434,613 と合わせると 2,299,735 施設。 人口1万人あたり185.8。届出が占める割合は37.6%である。

百貨店・総合スーパーは、届出32,465に対して経済センサスの事業所1,097。29.6倍の開きがある。

行商は全国10,408件。そのうち2,187件(21.0%)が宮崎県にある。 人口10万人あたりでは宮崎県211.1で、2位の高知県37.9の5.6倍である。

1. はじめに

I005 は、飲食店営業などの許可を要する食品関係営業を数えた。旧法488,162と改正法946,451を足して1,434,613施設だった。

だが2021年6月の改正でできたのは、許可の組み替えだけではない。許可の要らない食品営業に「届出」の義務が課された。 食品を売る店、作る場所、給食施設、そして自動販売機である。

許可の要らない食品営業は、いくつあるのか。その中身は何か。

2. データ

届出 厚生労働省「令和6年度 衛生行政報告例」【食品衛生】第6表-1 届出を要する食品関係営業施設数、営業の種類・都道府県別(令和6年度末現在)
許可 同 第2表-1・第4表-1(I005 で用いた。合計 1,434,613)
経済センサス 「令和3年 経済センサス-活動調査」産業小分類 561 百貨店,総合スーパー/589 その他の各種商品小売業(令和3年6月1日)
人口・65歳以上 総務省「住民基本台帳に基づく人口」2026年1月1日

47都道府県すべての行がそろい、合計は全国の欄と一致する。4つの内訳の合計も総数とぴったり一致する(差0)。

衛生行政報告例には市区町村別が無い(都道府県・指定都市・中核市まで)。本稿は都道府県を単位とした。

経済センサスの数は全国の行を用いた。市区町村を足した値(561は1,090、589は118,703)は、秘匿の分だけ小さくなる。

3. 結果

3-1 届出865,122の内訳

施設 割合
販売業 375,993 43.5%
旧許可業種であった営業 313,215 36.2%
製造・加工業 90,588 10.5%
左記以外のもの 85,326 9.9%
総数 865,122

「旧許可業種であった営業」は、改正前は許可だったものが届出に移ったものである。魚介類販売業(包装済みのみ)、食肉販売業(包装済みのみ)、乳類販売業、氷雪販売業、コップ式自動販売機の5つが入る。

区分ごとに見ると、次の順になる。

区分 施設 総数に占める割合
その他の食料・飲料販売業 174,804 20.2%
コップ式自動販売機(自動洗浄・屋内設置) 119,157 13.8%
乳類販売業 110,276 12.7%
集団給食施設 63,337 7.3%
自動販売機による販売業 55,585 6.4%
コンビニエンスストア 54,190 6.3%
食肉販売業(包装済みのみ) 47,505 5.5%
その他の食料品製造・加工業 37,270 4.3%
魚介類販売業(包装済みのみ) 34,692 4.0%
野菜果物販売業 32,764 3.8%

3-2 5件に1件は自動販売機

横棒グラフ。届出を要する食品関係営業の区分別施設数。上位13区分を並べ、コップ式自動販売機と自動販売機による販売業を色を変えて示している。

図1 届出を要する食品関係営業の中身(令和6年度末、上位13区分)。
青は自動販売機の2区分、灰色はそれ以外。

施設
コップ式自動販売機(自動洗浄・屋内設置) 119,157
自動販売機による販売業(コップ式を除く) 55,585
合わせて 174,742
総数に占める割合 20.2%

届出の5件に1件は、人のいない機械である。

「食品を扱う営業が何件ある」と数えるとき、その2割は自動販売機である。店の数を数えているつもりで、機械を数えていることになる。

3-3 許可と合わせると2,299,735

施設
許可を要する営業(I005) 1,434,613
届出を要する営業(本稿) 865,122
合計 2,299,735

届出が占める割合は 37.6%。人口1万人あたり 185.8 施設 になる。

2021年6月の改正で、許可でも届出でもない食品営業はほぼ無くなった。 したがってこの2,299,735は、日本で食品を扱う営業のおおよその全体である。

ただし、同じ施設が許可と届出の両方に出ることはありうる。 本稿はそれを確かめていないので、2,299,735は上限に近い数として読むべきである。

3-4 百貨店・総合スーパーは29.6倍

数 比
百貨店・総合スーパーの届出 32,465 29.6倍
経済センサス 561 百貨店,総合スーパー 1,097

1つの店に対して、平均30件の届出が出ている。 1つの店の中に食品を扱う区画がいくつもあり、それぞれ届出になるためとみられるが、本稿では確かめていない。

コンビニエンスストアは逆になる。

数 比
コンビニエンスストアの届出 54,190 0.45倍
経済センサス 589 その他の各種商品小売業 119,435

ただし589にはコンビニ以外も入るので、これは同じものの比較ではない。

I006 の簡易宿所(13.75倍、事業所として捕捉されない)、I010 の火葬場(公営で事業所にならない)に続いて、「施設」と「事業所」がずれる3つ目の型である。ここでは、1つの事業所の中に施設が複数ある。

3-5 都道府県ごと

人口1万人あたりの届出施設(全国69.9、中央値79.8) 多い 少ない
高知124.5/宮崎120.7/岩手104.1 群馬49.5/神奈川47.6/千葉47.4

上と下で 2.62倍。高齢化率との相関は r = +0.594 で、高齢化が進んだ県ほど人口あたりの届出が多い。

自動販売機の割合(全国20.2%) 高い 低い
愛知33.7%/三重30.7%/石川28.3% 青森10.4%/鹿児島8.7%/宮崎7.8%

高齢化率との相関は r = −0.479。 高齢化が進んだ県ほど、自動販売機の割合は低い。同じ「食品営業の数」でも、中身が県によって違う。

3-6 行商の21.0%は宮崎県

人口10万人あたりの行商(全国8.4、全国10,408件) 多い 少ない
宮崎211.1/高知37.9/大阪21.2 岩手1.1/愛知1.1/長野0.5

宮崎県の2,187件は、全国10,408件の21.0%にあたる。 人口10万人あたりでは2位の高知県の 5.6倍 である。

行商は、店を構えず移動して食品を売る営業である。宮崎県に集中する理由は、本稿では確かめていない。

行商が0の都道府県は無い。高齢化率との相関は r = +0.113 で、ほとんど関係が無い。

3-7 北海道と釧路総合振興局管内

北海道の届出は 34,412。人口1万人あたり68.9で47都道府県中 32位。全国の69.9をわずかに下回る。

自動販売機は6,042で17.6%(28位)。行商は997件で、人口10万人あたり20.0(4位)。 集団給食施設は2,335(人口10万人あたり46.7)である。

釧路管内は、衛生行政報告例に市区町村別が無いため、経済センサスの561・589のみを示す。

市町村 人口 561 百貨店・総合スーパー 589 その他の各種商品小売業
釧路市 151,566 0 176
釧路町 18,021 1 23
厚岸町 7,976 0 16
浜中町 5,172 0 10
標茶町 6,698 0 13
弟子屈町 6,327 0 9
鶴居村 2,368 0 4
白糠町 6,840 0 6

人口15万の釧路市に、561(百貨店,総合スーパー)の事業所が0である。 秘匿ではなく、0と記録されている。管内で561があるのは釧路町の1件だけである。

産業小分類561は、衣・食・住にわたる各種の商品を小売し、そのいずれも小売額の50%以上を占めない事業所のうち、従業者が常時50人以上のものである。釧路市に大きな店が無いという意味ではなく、この分類に当てはまる店が無いということである。

4. 考察

4-1 数えているのは、店ではない

届出865,122の20.2%は自動販売機である。さらに「その他の食料・飲料販売業」174,804(20.2%)の中身は、この表からは分からない。

「食品を扱う営業が何件」という数は、店の数ではない。 I005 では飲食店営業の許可が事業所の2.91倍だった。届出も同じで、施設の単位は事業所の単位と違う。

I009 の公衆浴場(23,668のうち銭湯は2,730)と同じ形で、区分の中身を開かないと、その数が何を指しているか分からない。

4-2 「施設」と「事業所」がずれる3つの型

この一連で、施設の数と事業所の数がずれる例を3つ見た。

型 例 向き
事業所として捕捉されない I006 簡易宿所 13.75倍 施設のほうが多い
公営だから事業所にならない I010 火葬場(1,120市区町村で0) 施設のほうが多い
1事業所の中に施設が複数 本稿 百貨店・総合スーパー 29.6倍 施設のほうが多い

三つとも施設のほうが多くなるが、理由が違う。 そして I009 では、区分を選び直せば1.19倍で一致した。

「合わない」には種類がある。

4-3 高齢化した県ほど、食品営業は多く、自動販売機は少ない

人口1万人あたりの届出施設は高齢化率と r = +0.594、自動販売機の割合は r = −0.479 である。向きが逆になる。

R001 で見たとおり、人口が少ない市区町村ほど人口あたりの事業所は多い。高齢化が進んだ県は人口も少ないので、届出が多くなるのは整合する。

自動販売機の割合が低いのは、それとは別の話である。 愛知33.7%と宮崎7.8%で4倍以上違う。ただし本稿は理由を確かめていない。

4-4 行商という残った商売

行商10,408件のうち2,187件が宮崎県にある。1つの県に21.0%が集まっている。

行商は、店を持たずに移動して食品を売る営業である。I007 では薬局が1つも無い町村が140あり、I008 では洗濯業が0の市区町村が192あった。店が無い場所に物を届ける形として、行商は制度の上で残っている。

だが宮崎県への集中は、そうした必要だけでは説明できない。届出の運用が県によって違う可能性もある。本稿は確かめていない。

5. 限界

  • 衛生行政報告例は令和6年度末、経済センサスは令和3年6月1日、人口は2026年1月1日。時点が違う
  • 届出は2021年6月の食品衛生法改正でできた制度。それ以前と単純に比べられない
  • 「旧許可業種であった営業」は、改正前は許可だったものが届出に移ったもの
  • 自動販売機は1台ごとの届出。 人のいる店と同じ1件として数えられている
  • 百貨店・総合スーパーの届出が事業所より多い理由は、本稿では確かめていない
  • 経済センサスの589 その他の各種商品小売業にはコンビニ以外も入る
  • 許可と届出を足した2,299,735は、同じ施設が両方に出ることがありうる
  • 宮崎県に行商が集中する理由は、本稿では確かめていない(届出の運用の差である可能性を含む)
  • 衛生行政報告例には市区町村別が無い。釧路管内はセンサスの値のみ

6. 再現の手順

  1. e-Stat から「令和6年度 衛生行政報告例」【食品衛生】第6表-1(CSV)を取得する。指定都市・中核市の再掲行があるので、都道府県の行だけを使う
  2. 47県の合計が全国の欄と一致すること、4つの内訳の合計が総数と一致することを確かめる(総数 865,122)
  3. コップ式自動販売機と自動販売機による販売業を足して、自動販売機の数を出す(174,742)
  4. I005(kensan_192)の許可の合計 1,434,613 と足す
  5. e-Stat から令和3年 経済センサスの産業小分類別 事業所数を取得し、全国の行の561・589を使う(市区町村を足すと秘匿の分だけ小さくなる)
  6. 住民基本台帳の人口・65歳以上人口を都道府県ごとに合計する

本稿の数値は、すべて1本のスクリプト(kensan_200)の出力である。中間の数値を手で書き写していない。

この論文の位置づけ

新しい理論を主張するものではない。2021年の食品衛生法改正でできた「届出」の施設数を数え、その中身を区分ごとに開き、I005 の許可と合わせたものである。自動販売機が2割を占めること、百貨店・総合スーパーで施設と事業所が29.6倍ずれること、行商が1県に21.0%集中することを示した。ずれの理由と、宮崎県への集中の理由は確かめていない。

参考文献・データの出典

  1. 厚生労働省「令和6年度 衛生行政報告例」【食品衛生】第6表-1
  2. 総務省統計局・経済産業省「令和3年 経済センサス-活動調査」産業小分類別 事業所数(市区町村別)
  3. 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」2026年1月1日現在
  4. 山岸勇輝「飲食店営業の許可は、事業所の2.9倍」(I005)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22875863
  5. 山岸勇輝「宿の数は、統計によって13.7倍ちがう」(I006)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876047
  6. 山岸勇輝「「公衆浴場」23,668のうち、銭湯は2,730」(I009)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876425
  7. 山岸勇輝「土葬は383件、火葬は1,674,137件」(I010)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876503

版の記録

版 日付 内容
第1版 2026-09-21 初出

引用のしかた

山岸勇輝(2026)「届出を要する食品営業は865,122、その5件に1件は自動販売機 [I011]」Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876599

(この DOI は concept DOI。常に最新の版を指す。引用にはこれを使う)

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書誌

山岸勇輝(2026)「届出を要する食品営業は865,122」[I011]. Zenodo.
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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 届出を要する食品営業は865,122 [I011]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I011 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22876599

Yamagishi, Y. (2026). 865,122 Notified Food Businesses [I011]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I011; DOI: 10.5281/zenodo.22876599

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