要旨
体重を背丈の二乗で割った数が、体格の目安として広く使われている。本稿は、その「二乗」が相似の理屈とどうずれるかを数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、同じ体型なら質量は背丈の三乗で増える。長さが $k$ 倍になれば体積は $k^{3}$ 倍になるからである(第2節)。
第二に、これが本稿の芯である。二乗で割る指数は、同じ体型でも動く。背丈 $1.5$ m から $1.9$ m で $\mathbf{1.266667}$ 倍になる(第2節)。
第三に、割る冪を上げると動きは小さくなる。$2.5$ 乗なら $\mathbf{1.125463}$ 倍、三乗なら $1.000000$ 倍で動かない(第2節)。
第四に、同じ体型が区切りをまたぐ。$1.5$ m で $22.0$ の体型を $1.9$ m に伸ばすと $\mathbf{27.866667}$ になり、$25$ を超える(第3節)。
第五に、値を保つには体型を変えなければならない。$1.9$ m で $22.0$ に保つには、相似の質量の $\mathbf{0.789474}$ 倍、つまり背丈の比の逆数まで軽くする(第3節)。
第六に、分離子は、形を問うか、重さを問うかである。二乗の指数は形と大きさを一つの数に混ぜている(第4節)。
キーワード:BMI、体格指数、相似、冪、背丈、模型。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。体重を背丈の二乗で割る指数(ケトレー指数・BMI)が使われていること、相似なら質量が長さの三乗に比例すること、三乗で割る指数(ローレル指数・ポンデラル指数)も在ることは、いずれも既知である。医学の助言をしない。どの値が健康か、どの区切りを使うべきかは述べない。実在の人の分布を主張しない。人は相似に伸びるとは限らない。相似は比べるために置いた模型である。指数を選ばない。二乗と三乗のどちらを使うべきかは述べない。二乗が使われる理由(集団の当てはめ)には入らない。体の中身に入らない。体脂肪や筋肉の割合は扱わない。既刊との関係:論文256 は力学相似が厳密に成り立つ縮尺が $1$ だけであることを示した。本稿はその隣に置く。あちらは縮尺を変えると相似が崩れる。こちらは相似を保ったまま縮尺を変えると、二乗の指数のほうが動く。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。形と重さは、その基準で別根である。加えたのは、割る冪を $2$・$2.5$・$3$ と変えて同じ体型での動きを並べたこと、同じ体型が区切りをまたぐ例を数えたこと、値を保つのに要る質量の倍率が背丈の比の逆数だと確かめたこと、分離子を「形か、重さか」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:質量を $M$、背丈を $h$ とし、質量を背丈の $q$ 乗で割った指数を考える。同じ体型のまま大きさだけを変えると、質量は背丈の $3$ 乗に比例する。
$$I_q=\frac{M}{h^{q}},\qquad M\propto h^{3}\ \Longrightarrow\ I_q\propto h^{\,3-q}$$
広く使われているのは $q=2$ である。
問い:同じ体型の人を背丈だけ変えて並べると、指数はどう動くか。
2. 同じ体型での動き
計算 2.1:背丈 $1.5$ m から $1.9$ m(比 $1.266667$)で、割る冪ごとに指数の倍率を出した。
| 割る冪 $q$ | 同じ体型での指数の倍率 |
|---|---|
| $2.0$ | $1.266667$ |
| $2.5$ | $1.125463$ |
| $3.0$ | $1.000000$ |
観察 2.2 これが本稿の芯である。二乗で割ると、同じ体型でも動く。倍率 $1.266667$ は背丈の比そのものである。質量の三乗から二乗を引いた残りの一乗が、そのまま指数に残るからである。
観察 2.3 三乗で割ったときだけ動かない。$2.5$ 乗では $1.125463$ 倍とまだ動く。指数が体型だけを見るには、割る冪が質量の冪と揃っていなければならない。
3. 区切りをまたぐ
計算 3.1:背丈 $1.5$ m で二乗の指数が $22.0$ になる体型を、そのまま $1.9$ m に伸ばした。
| 量 | 値 |
|---|---|
| $1.5$ m での二乗の指数 | $22.0$ |
| $1.9$ m での二乗の指数 | $27.866667$ |
| 区切りの $25$ を超えるか | 超える |
| 三乗の指数の倍率 | $1.000000$ |
観察 3.2 同じ体型が、二乗の指数でだけ区切りをまたぐ。三乗の指数は同じ値のままである。区切りをまたいだのは体型ではなく、背丈である。
計算 3.3:逆に、$1.9$ m で二乗の指数を $22.0$ に保つための質量を出した。
| 量 | 値 |
|---|---|
| 相似の質量に対する倍率 | $0.789474$ |
| 背丈の比の逆数 | $0.789474$ |
観察 3.4 値を保つには、体型のほうを細くしなければならない。倍率は背丈の比の逆数とちょうど一致する。背の高い人が同じ値を持つとき、その人は背の低い人より細い体型をしている。
4. 分離子
観察 4.1 分離子は、形を問うか、重さを問うかである。三乗の指数は形だけを見て、二乗の指数は形と大きさを一つに混ぜる。どちらが正しいかではなく、何を見ている数かが違う。
観察 4.2 論文256 の隣に置く。256 は力学相似が厳密に成り立つ縮尺が $1$ だけであることを示した。あちらは縮尺を変えると相似が崩れる。こちらは相似を保ったまま縮尺を変えると、二乗の指数のほうが動く。崩れるのが物の側か、数の側かの違いである。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。形と重さは、その基準で別根である。
観察 4.3 言わないこと。どの値が健康かも、どの指数を使うべきかも、人が実際に相似に伸びるかも扱わない。示したのは、二乗の指数が同じ体型でも背丈の一乗で動くということである。
5. 点呼と結び
- 同じ体型なら質量は三乗(第1節):体積だから。
- 二乗で割ると $\mathbf{1.266667}$ 倍(計算 2.1):本稿の芯。
- それは背丈の比そのもの(観察 2.2):一乗が残る。
- $2.5$ 乗なら $\mathbf{1.125463}$ 倍(計算 2.1):まだ動く。
- 三乗なら $1.000000$ 倍(計算 2.1):動かない。
- $22.0$ が $\mathbf{27.866667}$ に(計算 3.1):同じ体型のまま。
- 区切りの $25$ をまたぐ(計算 3.1):またいだのは背丈。
- 保つには $\mathbf{0.789474}$ 倍(計算 3.3):背丈の比の逆数。
- 値が同じなら背の高い人は細い(観察 3.4):形が違う。
- 形か、重さか(観察 4.1):分離子・論文256・300。
結び:体重を背丈の二乗で割る指数は、同じ体型でも背丈とともに動く。同じ体型のまま背丈だけを $1.5$ m から $1.9$ m に変えると、二乗の指数は $1.266667$ 倍、$2.5$ 乗なら $1.125463$ 倍になり、三乗の指数だけが $1.000000$ 倍で動かない。質量が背丈の三乗で増えるので、二乗で割ると一乗が残るからである。そのため $1.5$ m で $22.0$ の体型は、そのまま $1.9$ m に伸ばすと $27.866667$ になって区切りの $25$ をまたぎ、$1.9$ m で $22.0$ に保つには相似の質量の $0.789474$ 倍まで細くしなければならない。区切りをまたいだのは体型ではなく背丈である。二乗の指数は形と大きさを一つの数に混ぜており、三乗の指数は形だけを見る。既刊との位置:論文256 の「相似が縮尺で崩れる」の隣に、相似を保つと数のほうが動く側として置き、論文300 の規律で形と重さを別根として扱った。正直に言えば、人が相似に伸びるとは限らず、ここでの相似は比べるために置いた模型である。
参考文献
- Schmidt-Nielsen, K. (1984). Scaling: Why Is Animal Size So Important? Cambridge University Press.
- 山岸勇輝 (2026). 『力学相似が厳密に成り立つ縮尺は、$1$ だけである』[論文256]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/256 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22168919
- 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/300 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22171914
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「体重を背丈の二乗で割る指数は、同じ体型でも背丈とともに動く」[論文848]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/848
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/848・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 体重を背丈の二乗で割る指数は、同じ体型でも背丈とともに動く [論文848]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/848
Yamagishi, Y. (2026). An Index That Divides Weight by the Square of Height Moves With Height Even at the Same Build [Paper 848]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/848
@misc{yamagishi2026yoi848,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {An Index That Divides Weight by the Square of Height Moves With Height Even at the Same Build},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/848},
note = {Preprint, edition 1}
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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